第26話 能力・万物を刈り取る死神王(ヴェッサル・リーパー)の力
ようやく能力の行使まで書けました。
面白かったらいいな。
エルフの樹海。
そこは、50mの太い樹木がジャングルの様に密林している自然と緑の地。
この世界のエルフ族はこの地を住みかとしている。
自然と共存し、楽しく暮らしている姿は楽園と呼ばれても不思議ではない光景だと思う。
だがしかし、俺はそんな所に偶然にも迷い込んでしまった。
だけど奇跡的にケーラさんという心優しきエルフの御自宅で一時的に住むことになった。
そして、あれから5日ほど経った。
傷もすっかり完治して、魔力も元通りに、
体調は万全、全快。
痛みは一切なく、普段通り動ける所まで回復した
この事には感謝してもしきれない恩がある。
住処を与えてくれた事と傷を回復してくれたこと、
ホントに優しすぎ!
ついでにあのボロボロの服もエルフ仕様に衣替えして、全体的に自然感溢れる感じになった。
俺にとってはエルフじゃなくて天使だよ!!
ありがとう!!!
そして俺は今デカい樹木の枝に乗って、ある事に熱中している。
それは、あの時貰った【万物を刈り取る死神王】とか言われていた異能な力のことだ。
夢かもしれないという可能性はある。
しかし、夢ではないと断言できる。
何故か、
それは俺の右腕に黒い死神?みたいな紋様が浮かび上がっているからだ。
あの時は自分の命を守るために必死だったが故に気付きもしなかったが、朝起きていたらこの紋様が浮かび上がっていることに気付いたのだ。
だからこれは夢ではない。
なので俺は【万物を刈り取る死神王】という能力を試しに行使する事にしたのだ。
使い方は何となく分かる。
多分だが、魂に直接この能力が刻み込まれているからか、使い方が本能的に分かるのだ。
なので俺は早速能力を使ってみることにした。
「【万物を刈り取る死神王】」
覇気の無い声で能力を行使してみる。
すると俺の前にどこまでも漆黒な一本の大鎌が顕現した。
俺はその大鎌を持ってみる。
「軽っ!」
その大鎌自体に重さは無いからか、俺の細腕一本で振り回せる程に軽い。
「ほぉ、なんかかっこ良くね?ていうかホントに発動できた。偶々クリスが進めてくれた本の中で能力という概念を知った時から使ってみたいと思っていたが、まさかホントに使える日が来るなんてな!」
俺は試しに漆黒の大鎌を縦に軽く振ってみた。
すると、丁度ひらひらと天から舞い降りて来た綺麗で健康的な緑の色した緑葉が吸い寄せられるように瞬間移動してきた!!
「うわっ!どうして!?!?!?!?」
複数の緑葉が俺の顔面目掛けて突っ込んで来た。
その結果、緑の仮面モドキを被ることになった。
簡易型葉っぱ仮面の出来上がりである。(張り付いただけ)
俺の能力の事は確か・・・あの天の声が簡単に説明してくれてたよな。
魔力量によってはどんなものでも刈り取れる能力・・・だと。
つまり、その事から考えるに俺と緑葉との間にある空間自体を刈ったという事なのか?だから俺に吸い寄せられるように瞬間移動してきたのか。
なんだそれ強ぇ!!!
まさかこの能力は噂によるチート能力と言う奴なのでは!
それに、魔力を込める量を調節するだけでここまでの事やってくれるという事は、相当強力な類の能力に違いない。
「だけど、軽く振っただけで相当な魔力を持って行かれるな。使いどころを注意しないと自分の首を絞める結果になりそうだ。」
しかしそれを含めても能力が開花した自分自身にとても燥いでいた。
新しい力とはやはり心が躍るものだ。
なのでこの力をもっと試してみた。
例えば、空間を刈り取ったり、偶然通りかかった虫の命だけを刈り取ったり、普通に物体を切ったりとかだ。
色々と応用が効きそうで、この能力は役に立つと確信した。
それに今はケーラさんのお宅で厄介になっているが、いつまでもお世話になりっぱなしでは申し訳ないからな。
だから此処を出たら一旦孤児院へ帰ることを暫くの目標にして、その道中に敵が出てきたらこの能力を活かして切り抜けようと思う。
魔法より強力な力らしいからな。
俺は両腕を組み、満足そ~~うな顔で、うんうん、と頷いてはこれからの事を考えた。
そして暫く時間が経った頃、日が真上へと登り昼になった。
つまりは昼食の時間だ。
ケーラさんが昼食を作って待っているはずなので、ご飯を食べる為に能力を解除して家の中へと戻ろうとした。
がしかし!!!
「きゃあああああああああああああ!!!」
少女の声らしき悲鳴が樹海の中に木霊する。
声の質を聞くと結構な非常事態に合っているようだ。
「悲鳴?」
俺は声のした方へ首を脊髄反射で動かし、本能に従うままに飛び出した!
気付いたら体が勝手に動いていたのだ。
樹海世界の中を身体強化した身体で跳び回り、身軽な動きで軽快に進む。
「一体何が起きたんだ。誰かが何かに襲われているのか?だったら助けに行かないと。俺もただ他人に助けられてばかりの男じゃない。こんな悲鳴を聞いて助けに行かない訳には行かないでしょ。後でケーラさんに謝らないとな。」
ケーラさんに悪びれながらも足を枝から枝へと兎の様に跳躍して飛び移っては、声のした方へと急いで駆けつける。
そしてその先に巡り合わせたモノとは、
全長30m位の超巨大イノシシだ!!
口からは立派な二本の牙が上向きに生えており、尚且つ枝分かれしている形で下向きにもう二本の小さい牙が生えている。
そのイノシシは目を真っ赤にして悲鳴を上げたであろう子供のエルフへと樹海を薙ぎ倒しては猪突猛進してくる。
ドシン!!!ドシン!!!という地響きがこの区画全域を震えさせる。
「きゃあああああああああ!助けて!お父さん!!お母さん!!!」
喉が潰れるくらいの声量で空気を震わせ思いっきり叫んでは助けを呼ぶ。
その少女の必死な叫び声は既に周りに居た複数人のエルフの指揮を上げる。
「右翼隊、もっとだ!!もっと魔力を込めろ!!弓兵隊、矢に魔力を込めて奴の目を潰してしまえ!!それか脳天に直撃させろ!!彼女の命が懸かっているんだぞ!!もっと気合を入れろ!さっきの懇願と助けを呼ぶ声が聞こえただろ!!」
【天下の弓】!!!
【白疾風の突千矢】!!!
【千の弓風】!!!
「左翼隊の魔道隊よ!有りっ丈の魔力をぶつけろ!!上級魔法を使って何としても仕留めるのだ!」
【皇の白流し】!!!!
【巨炎真火】!!!!
【雷帝岐塊冠】!!!
【四大元素の一斉射撃】!!!
イノシシ一匹に対してこれほどの高位魔法を連発しては地形をめちゃくちゃにしていく。
だがそれだけ彼女を守ろうと必死に足掻いているのであろう。
どうしてイノシシが少女を襲うとしているのかは不明だが、同じエルフとして生をもってこの世に生まれたならば、助けるのが当たり前である。
散々俺の事を怪訝な目や嫌悪感を抱く視線で見てきたのにも関わらず、やはり皆の心の根っこは誰よりも優しいのだろうな。
指揮をしているエルフは額に汗かきながら指揮をし、自身も魔法を放って攻撃している。
しかし、あんなにも必死に一人の少女を助けようとしているのにダメージ自体は浅いようだ。
矢はプスッと軽く刺さるだけで抜け落ちて、魔法も威力が足りないのか効いていない。
全ては体毛と尋常じゃない程の肉の層の所為であろう。
肉厚すぎるのだ。
それは、まさに歩く盾!
突進と合わせれば攻防一体のイノシシである。
「くっ、何故だ!何故倒れない。こんなにも攻撃を当たているのに、何故!?」
皆が頭を抱えて唸りながら攻撃している時、一人の少年が30mあるイノシシに真正面から単身で突っ込んでいった。
目を疑うほどの思い切った行動だ!
「!?」
外的要因の影響で開けてしまった場所でその光景を誰もが見た。
一人の少年が無謀にも雄叫びを上げながら一人突っ込んで行くその勇敢なる突貫を!!
「うおおおおおおおおおおお!行くぞイノ公!!俺の能力の力を見ろ!刈り取れ!【万物を刈り取る死神王】!」
俺が叫ぶと、それに答えて能力が発動する!
漆黒の大鎌が顕現し、両の手でガッシリと力強く掴んではそのまま勢いよくイノシシに向けてフルスイングで振りかぶった!
「その命刈り取ってやる!!!」
深黒の大鎌はイノシシの心の蔵を俺とのすれ違いざまで横一閃された。
身体を透過してイノシシの心臓部分だけを刈り取ったのだ。
まさに命を刈り取る死神の様に、
ドシン!!と地を震わせ、白目を向いてその場に倒れる。
思わず飛び出しちまったが、これでいいんだよな。
これで勝ったんだよな。
少女の命は助かったわけだしな。
周りのエルフの誰もが唖然とした。
なぜなら、30名以上入るエルフの群でも歯が立たなかったのにも関わらず、薄汚い一人の人間である俺が単独でイノシシを倒したんだから、
「なっ、人間がどうしてここに・・・」
「何かエルフ共がざわざわしているようだな。でも俺には関係ないね。ちゃんと自分のすべきことが出来たんだから。」
俺は助けを求めていた小さな小さな少女の所へと静かに歩み寄っていた。
黒い大鎌は解除してある。
だから能力で怯えることはあるまい。
しかし、その少女の顔から怯えの表情が消えることは無かった。
小さい頃から人間は悪い生き物だと教えられていたからだろうか。
涙袋から塩水が段々と溢れてき出して瞳を潤わせる。
ぶるぶると俺が近づく度に震えが大きくなる。
だが俺は、優しい笑みで怯えている少女に近づき、頭にぽんぽんと優しく手を置いてはナデナデしながら俺は口を開く。
「大丈夫だった。怪我はない?痛い所はない?」
すると、涙を零すのを止めた。
少女は一言、「うん。」と小さく返答した。
ふぅ、イノシシに襲われていたからか、怯えた表情のままでは可愛い顔が台無しだからな。
俺がキチンと安心させてやったぜ☆ハハッ!
「おい貴様!」
上から先ほどのエルフが隊を成して降りてきた。
一体何事だろうか。
俺何もしてないよね悪いこと。
寧ろ少女の命を助けたんだからお礼の一つでも言われるのかな。
ふっ、まぁ礼なんていらないさ、
どんな種族でさえ命がある限り俺は何処へだって助けに行っちゃうぜ。
気持ち悪いウインクをしながら俺はエルフ達の顔を見て、礼の一つやお礼の言葉を貰えることを期待した。
だが、俺の考えていた行動とは180°違った態度で接してきた。
「貴様、何この子を泣かしてるんだ!怯えているこの子の顔が見えないのか、」
「え?」
「やはり人間は恐ろしい種だ。野蛮で狂暴な種だ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。俺はただ、」
「えぇい!黙れ!ここからはこの私が相手になるわ、この子には指一本触れさせない!!」
「いや、だ・か・ら・・・」
「〇ろす。」
おい、誰だ今〇すって言った奴!!出てこいや!!
俺があんなにも体張って行動したというのに、彼女の命救ってんだぜ。
どういうことだよ。お礼の一つでもして見せろや!!!
〇ック!!!!!
少女の命を助けただけの俺と完全に蛮族化しているエルフ達の睨み合いが始まり、剣呑な雰囲気にこの場が包まれていった。
戦闘態勢の一歩手前である。
しかしこの雰囲気を一気にぶち壊す事が起きる。
それは男の声だった。
「凱旋だ!!!!!」
は?????凱旋???
ここまで読んでくれてありがとうございます。
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これからも頑張っていきます。