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第24話 能力の授与

第二章です。


 〔確認しました。汝は運命に選ばれた個体。今こそ能力を与えます。〕


 真っ暗な世界で誰かの声がする。

 誰だろうか?


 〔象徴するは死神、王なる者。刈り取る漆黒の大鎌を持つ者也。〕


 此処は何処だ。

 女の声?

 セラフィーみたいに魔力を使って俺の脳内に話しかけているのか?


 〔この力は魔法、武器、物など魔力量によってはをあらゆるものを刈り取ることが出来る能力。その力の名は【"万物を刈り取る死神王(ヴェッサル・リーパー)"】〕


 【"万物を刈り取る死神王(ヴェッサル・リーパー)"?】

 何言ってんの?

 というか今はそんなの今はどうでもいい、

 此処は何処なんだ。

 真っ暗で何も見えない。


 〔王の名を冠する能力。この力を汝に授ける。〕


 何だ?能力?

 今はそんな事よりセラフィーたちの方が心配だ。

 何処だ、捜さないと!


 〔運命に選ばれし子よ。汝はこの世界の真実を知るために世界を見て回れ。〕


 さっきから言っている意味がまるで理解できない。

 セラフィーたちは何処だ。

 お前がもし神様の類だというのなら、セラフィー達の居場所を教えてくれ。


 〔・・・・・・・・・・・〕


 天からの声が聞こえなくなった。

 一体なんだというのだ。

 一方的に話したい事だけを話して俺の意見は無視ってか。








 ー-------------------








 用事を済ませたからか神?からの声が本当に聞こえなくなった。

 だが、言葉が消失したと同時に真っ黒に染まった世界の奥側から眩く光る星の道標が現れた。

 俺はその星に導かれるようにして体を前へと動かす。


 すると、視界が漆黒の様な黒から純白なる白色へと変色していく。

 進めば進むほど純白の世界へと吞み込まれていき、現実の俺の意識が覚醒していく。

 本来あるべき正常な脳の機能と動きが活発に働きだしたのだ。


「」パチッ


 俺は目が覚めた。

 とても清々しい程に目が冴えている。

 そして顔の輪郭も含めて体中をまさぐる様にして生きてる事を確認する。


 結果としては・・・「俺生きてる。」


 安堵の息を吐いて落ち着く。

 だがしかし、目覚めた所は少々俺の知っている景色とは違うようだ。


「あれ?なんか妙に熱いな。ここは何処だ。」


 俺が目覚めた場所は焦熱の気候で空は灰色に曇って降灰している地帯。

 空を見上げると、得体の知れない影が伸び伸びと自由に空を泳いでいる。

 とんでもない数だ!!

 辺りをよく見渡せば真っ赤な銀朱が流れており、そのまま流れに逆らって上の方へ見上げていくと、そこからは大量の煙がもくもくと吹き出してる。


「・・・もしかして、ここって火山?え?」


 そう、俺が目覚めた場所は灼熱の山。


 火山だ!


 溶解熱が湧き出てる。

 山の中に溜まっているであろう莫大なエネルギーの塊が周りの温度を上げていく。

 火山ガスがそこら中から噴き出ていて毒炎を撒き散らす。

 所々で炎柱も噴き出す。


「何で火山なんかに俺がいて、それと空にデカい鳥が飛んでるんですけど何あれ!?鳥にしては結構デカい個体だな。やっぱり異世界だからか、」


 ガアアアアアアアアアアアアアア!!!


 あれ?よくよく見ると鳥って感じじゃないな。

 鳥の翼にしてはゴツイと言うか、なんか火吹いてるんだけど、

 おまけに火球まで吐いてるんだけど、


 これらの要素から俺はある一つの答えに辿り着く。

 もしかしてあの生物鳥じゃなくて・・・ワイバーンってやつ???

 竜の一種?


 ガアアアアアアアアアアアアアアア!!


「・・・マジかよ。」


 ちょっと待って!ちょっと待って!

 落ち着け俺。

 確かにあの個体は爪が通常より鋭利でデカい翼を持ち、鋭い眼光をしていて且つ太い尻尾をぶら下げているが、流石にワイバーンと決めつけるのは早計であろう。


 俺は現実を受け止めきれず視界を上から下へと向けて目を逸らす。

 そうすると今度は一匹のモンスターに出会う。


 そのモンスターは全身がマグマで構成された三等身の可愛らしいモンスターだ。


「何だこの〇ラクエに出てきそうな魔物は、可愛い個体じゃないか~~~。」


 その愛くるしい見た目に誘われて距離を縮めていく。

 だが相手はモンスターと言ってもマグマの身体を持っている魔物。

 迂闊に距離を縮めようとすれば、


「熱っつ!!!」


 当然肌が焼ける。

 それも超高温の温度で、

 俺は距離を取る。


「ったく、何してるんだ俺は、今はこんな奴に構っている時間ではない。まずは現状把握。俺の知らない土地であることは間違いないが、如何(いかん)せんいきなり火山というのは如何(いかが)なものか。どうせなら街とかにしろよ。ワイワイ賑わっている街に。じゃなくて、セラフィー達は何処だ。何で俺だけこんな火山なんかに、誰かいないのか?アート!ニャーヤ!角丸!ウイ!スン!セラフィー!・・・・・・っているわけないか。」


 一人虚しく喋っては体に熱が籠って行く。

 常に耳から聞こえて来るのはマグマの流れる音と飛んでいるワイバーンの遠い声。


 それでいて、ここは火山地帯である。

 危険な場所である。

 常に高温の温度で保たれており、肌が焼かれるようなヒリヒリとした痛みが襲う。

 長時間この地に居ようものなら脱水症状になること間違いなし、

 次第に汗も噴き出て眩暈も起こし、熱中症で倒れる可能性は十二分にある。


 そして何より魔物の存在。

 俺は目の前に居るモンスターにいきなり攻撃される。


 マグマの腕を思いっきり振っては自分の身体の一部を俺へと浴びせてきた。

 マグマの飛沫攻撃だ。


「うわっ!熱い!熱い!熱い!熱い!熱い!何するんだよ!!」


 僅かに掠った程度の攻撃だが、マグマが腕に触れたのだ。

 炎でも火でもない。

 マグマだ。

 今まで感じたことの無い温度が皮膚を伝って脳に伝達して来る。

 熱いってもんじゃない。

 死ぬ!!


 腕をぶんぶんと振っては熱を冷ましていく。

 そして腹が立った俺は、その腹いせに【水弾】をお見舞いしてやることに、


「死ね!!!」


 しかし、そんなちんけな攻撃などマグマで構成されているモンスターに当たった途端蒸発してしまった。


「マジかよ!」


 だがこれだけでは止まらない。

 更に恐ろしいのがそのマグマのモンスターが地面から生えるように出現してきたことだ。

 この火山地帯はエネルギーの塊。

 高密度なエネルギーが発生する場所であり、モンスターが頻繁に生まれる土地でもある。

 より強力な上級モンスターも発生する程の、


 だからこそ、俺は辛い状況に追い込まれつつあった。


 その無尽蔵とも言える数のマグマモンスターに襲われたのだ。

 その数は30体以上いるであろう。


 自分の体の一部を飛ばしてきて攻撃してくる。

 対する俺は逃げる。

 逃げて逃げて逃げまくる。


「うおおおおおおおおおおお!!逃げろおおおおおおお!!!」


 火山を下りに従い物凄いスピードで足を回して降りていく。

 その速さは身体強化した時の自分の足より速かった。


 走る度に体内を巡る酸素を消費していくのが分かる。

 息をするだけで肺が焼ける様に熱く、呼吸がしずらい。


 そんでもって行く手を遮るモノが一体、大きい音を地に響かせながらドスン!と現れた。


 巨大な業火の魔人だ。

 恐らく上級モンスターであることは一目で分かる。

 体中を纏う烈火の炎が獰猛に燃え盛り、悪魔の角が生えた骸の顔が地獄の炎鬼を連想させる見た目をしている。


「なんだこの凶器に晒されたかのような圧は、、、それに、」


 後ろからは数の暴力でマグマの子供たちが地を這うようにヌルヌルと移動して一斉に襲い掛かってくる。

 完全に袋小路の八方塞がり状態だ。


「くそ、倒すしかねぇのか。時間は掛けられない。」


 業火の魔人は巨大な腕を振り上げ、大振りな右拳を俺に向かって金槌の様に叩きつけて来た!!


 その拳は一発で地面を割る程の威力を秘めている一撃。

 だが俺には当たらない。

 軽い身のこなしで避ける。


「そんな鈍重な攻撃当たらないよ。それと今のままでは【水弾】を当てても意味なさそうだから、ここは最大火力の【水弾】をぶつけるしかな。炎には水。常識。」


 俺は魔力を集中させて巨大な【水弾】を作る。

 その大きさは俺の魔力の量に準じる。

 大体30m位の大きさはある。


「そのまま倒れろ!!!!」


 俺は目の前の業火の魔人に超巨大【水弾】をぶつける。が、あまりにも高温な炎を纏っている為、水蒸気を発生させて【水弾】が消滅する。

 後ろから迫っているマグマのモンスターになら通用したかもしれない。

 しかし、相手はその上級モンスター。

 生半可な攻撃は通用しない。


「ダメか、」


 既に前回の戦闘で疲労と結構な魔力を消耗している俺は段々と体の自由が効かなくなっていた。

 次第に視界もぼやけてく。


 このままでは不味い。


 すると、不意に業火の魔人が口から火球を吐いてくる。

 俺は霞が増してる視界でなんとか火球を捉えて覚束ない足取りで回避する。


「倒せないなら逃げる為にカロリーを使って生き延びる。【突風】」


 自分の足場に【突風】を発動させ、その威力と反動で業火の魔人の頭上を飛んでいく。

 そして更に空中で【突風】を行使して出力を出し、飛距離を稼いで距離を取る。


 そうやって知恵を巡らせて火山地帯から逃げるように去っていくと、今度は広葉樹林というにはあまりにもデカ過ぎる樹木が生えたエリアに到着する。

 そこでは木の化物や巨大な虫のモンスターなどが糸やら毒やらで襲ってきて俺に命の危機を悉く与えてくる。

 人食い植物や擬態するモンスターもいた。


 途中で木の根に足を引っ掛けて転んで泥だらけにもなった。

 しかし、泥を一回腕で拭っては再び生き抜くために草木をかき分け魔法を放っては必死に抵抗する。

 血反吐も吐きながら足が駄目になるくらい、筋繊維が千切れるくらい走って走って走り抜く。

 客観的に見たら痛々しい不憫な光景。

 視界も歪みが増してきた。

 平衡感覚が上手く保てない。

 魔力も底を付いてきた。

 身体中の穴から汗が吹き出し、擦り傷や打撲、沢山の怪我を携えながら生き抜く為に走る。

 だが、突如として一本の矢が俺の歩みを阻害する。

 その矢の軌道を見るに完全に俺を狙っていることが丸分かりな物であった。


 何事だ!?と思った俺は霞む目で周りを見渡して見る。

 すると、一人の耳の尖った長髪の金髪エルフが俺へと問いかけてきた。


「お前何者だ?」


 状況が全く理解できてないが、死ぬほど息切れを起こしながら問いに返した。


「えっと、エマです。向こうの火山地帯から来たのですが、モンスターに襲われちゃって。なので命からがら逃げてきた次第です。」はぁはぁはぁはぁはぁ、


 その金髪のエルフは目を細めて俺を見つめながらコクリと頷く。


「なるほど、そちらの言い分は理解した。だが、ここは”エルフの樹海”。人間が勝手に土足で踏み入ってはならぬ土地。ならば覚悟は出来ているであろうな。」


「え?」


 そのエルフは無言で矢の狙いを俺へと定める。

 よくよく見れば、他の巨樹の丸太の様な太い枝にも何名か俺へと的を絞っていた。

 少しでも変な動きを見せたら射貫くぞ、と言う威圧感が地肌でしっかりと伝わってくる。

 これが恐怖と言う奴なのだろうか?

 彼らの意思はどうやら本物のようだ。



 俺は困惑した。

 勿論、俺の命が狙われているという事実にも驚きを隠せない。

 しかし、俺はあのボロボロ倉庫の中でセラフィー達とやった自己紹介タイムの事を思い出す。


 確かスン・アレイヤの故郷もエルフの樹海だったような。

 という事はここはスンの生まれ故郷なのか!?


 二つの意味で驚いていた。


「さらばだ、人間の子共よ。どうか我々を恨まないでくれ。」


 金髪エルフが弓に矢を乗せ、弦を弾いて俺へと射ようと決心する。

 そして放つ!!


「問答無用かよ・・・」


 諦めの声で言葉を発しながら瞼を閉じた。

 だか、いつまで経っても矢が当たらない。


 ん?どうした。

 来ないぞ?


 俺は瞼を開ける。

 すると、先程まで向かって来ていた矢が俺の足元に突き刺さっていた。


「・・・助かったのか?」


 前を見ると周りのエルフ達は俺から視線を外し、横を向いていた。

 なので俺も釣られるように向く。

 すると、この剣呑な雰囲気の中駆け寄ってくる女性のエルフが一人いた。


 透き通るような眩しい金髪を靡かせながら俺の元へ駆けつけてくる。

 走る度に揺れる二つのメロンが俺の目線を釘付けにするが、欲望に負けずといった感じで意地でも目線を逸らした。


「大丈夫ですからね。」


 傍まで来てくれた彼女は俺の事を見つめては穏やかな表情で言葉を掛けてくれた。

 声色から分かる優しい声。


「あなた凄い傷らだけ、私にはこの位の事しか出来ないけど傷の回復をしてあげるわね。」


「あ、ありがとうございます。」


 名も知らぬ大人な女性は俺を心配してくれたのだろうか。

 なんと【回復魔法】を掛けてくれたのだ。

 完治とまではいかなかったが、痛みが和らいでいく。


 好き!!!!!!






 ~場所・???~



「どうやら上手く転移させれたみたいね。」


「ですが良かったのですか?あんな危険地帯に飛ばしてしまっても、」


「大丈夫よ。あの子には強くなってもらわないと困るもの。そ・れ・に、異種の子共(この子たち)の心は私たちの手の中にある。彼を動かす為の原動力、」


「そうですか。しかし生き残れますかね。彼は、」


「それはこれからの彼次第ね。せっかく"王"の名を冠する能力を手に入れることが出来たのですもの。それに、ここまで来てくれると信じているわ。」



 漆黒の空間の中、不敵な笑みを浮かべてにっこりと笑う二人の人物。

 静かに言葉のキャッチボールをしては、俺の活躍を引き続き見守る。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからも頑張っていきます。

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