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第22話 町中でのモンスター騒動②

 俺とアートが後方の敵を相手にしている同時刻。


 別サイド。


 前方に居る二体の魔物の内の一体を相手にしているニャーヤとセラフィーは足の速いモンスターと戦っていた。


 そして苦戦していた。


「にゃー---!」


 ニャーヤは爪による攻撃を仕掛ける。

 しかし、対するモンスターは俊敏な動きをする兎と飛蝗(バッタ)の様なつぎはぎモンスターで、中々動きを把握できない上にニャーヤの攻撃を軽々と避けた。


「何で当たらないにゃー!当たるのにゃ-!」


【雷の爪】


 大振りな雷を纏った爪による引っかき攻撃。

 そのあまりにも拙く隙の大きい攻撃を繰り出したニャーヤは攻撃を当てるどころか逆に振りかざすことなく敵のカウンターを貰い受ける。


【雷の爪】はこの戦闘が始まった直後に既に何度も出しているが一度も当たっていない。

 というか今のニャーヤの実力を見るに攻撃を当てられる兆しが一向に見えないのだ。


「なら次は、中距離攻撃ならどうにゃ!」


【サンダークレイン】


 近接攻撃が駄目なら中距離の速度重視の攻撃魔法をぶっ放す。

 しかし、そう簡単に当てられるわけもなく、またまた軽く躱された。


「きー-!なんで当たらないにゃ!!」


「(ニャーヤさん落ち着いてください。今のままでは攻撃を与えることは出来ません。ここは私がサポートで動きを止めますのでその隙をついて攻撃してください。)」


「おおおおおお!わかったにゃ!さすがセラフィーにゃ。出来る女にゃ。」


「(前方来ますよ!)」


「にゃにゅ!」


 ニャーヤは猫人間(キャットマン)ならではの、その発達した脚力で空高く跳んでモンスターの突進を華麗に躱す。

 4m位は跳んだだろうか。


「にゃっはー-!当たらないのにゃ!」


「(拘束するなら今!)」


 セラフィーは突進をニャーヤに躱された後の僅かな減速を見逃さず、即魔法を発動させて動きを止めに入る。


【光の壁】


 モンスターの前方に突如として暗闇の世界に光る一枚の壁を魔力で作り出し、モンスターの前方を塞ぐ。

 すると案の定モンスターは顔面を強打して動きを止めた。

 その隙にニャーヤは空中からの落下を活かしてモンスターの背中を【雷の爪】で引き裂いた。


「ガアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 ここに来て初めてのダメージだ。


 悲痛な声を上げるモンスター。

 しかしそれは束の間。

 向きを反転させ、すかさずニャーヤに向けて口から火球を三発ほど放ってくる。


「にゃっはっはっはっはー!」


 軽快な後方ステップで火球を軽々躱して見せるニャーヤ。

 動きを止めて後方支援をするセラフィーと何も考えずにとりあえず突っ込むニャーヤの戦術は意外にも有用なものであった。


「最初は怖かったけど、慣れてくるとモンスターも可愛く見えて来るもんなのにゃ~、ほら、こっちに来て見るのにゃ!」


「(ニャーヤさん煽らないでください。)」


「大丈夫にゃ、所詮は足が速いだけの低能な魔物にゃ。大したことないのにゃ。」


 にゃっはっはっーと高笑いを戦闘中にかましてどんどん調子に乗っていくニャーヤ。

 心に余裕が出来て恐怖という感情が今は無いからか、分かりやすく煽る。


 しかし、セラフィーはそれを許さない。


「(ニャーヤさん、劣勢ではないとはいえ、その余裕は身の破滅を呼びますよ。)」


「ふん、ならこんな魔物さっさと片付ければいいだけの話なのにゃ、」


 そう言ってニャーヤはモンスターに向かって走り出した。

 心も体も軽くなり、今なら何でも出来そうだと前向きな考えで敵に突っ込む。


【サンダークレイン】!!


「(仕方ないですね。)」


 やれやれ、と言った感じでニャーヤの攻撃に合わせて後方から支援する。

魔法強化(マジックエンチャント)】だ。


「これで攻撃力は倍にゃ、」


 だがここでつぎはぎモンスターは思いもよらぬ行動に出る。

 姿勢を低く構え、足に力を込め始めたのだ。

 その結果、太もも辺りの筋肉が大きく膨れ上がり肥大化している。


 すると、その異常な脚力でモンスターの足場になっている石畳がピキピキと音を出し始め、ニャーヤに向かって【サンダークレイン】ごとバネの様に瞬間的に跳んでいく。

 まさにロケット!!


 その速さは尋常ではない!

 速すぎるのだ!!


 これには思わずビックリして動揺してしまう二人。


【サンダークレイン】の攻撃を防ぐか避けるの二択ならまだわかる。

 しかし、正面から堂々と【サンダークレイン】ごとニャーヤを攻撃してくるなんて誰が予想しただろうか。


「にゃ!?」


 ニャーヤはモンスターに向かって走り出していたので急に止まることが出来ず、回避が遅れた。


「(ニャーヤさん!!)」


 完全に自損覚悟のロケットタックル。

 モンスターの目はニャーヤをロックオン。

 狙いは外さないという気合を感じる。


「(このままだとニャーヤさんがモロにその攻撃を食らってしまうコース。しかし、魔法を発動させたとしても今のタイミングで介入できる程の魔法を私は持ち合わせていないし、むしろここで魔法を行使したらニャーヤさんの回避の邪魔をしてしまうかもしれない。・・・ここはニャーヤさんの身体能力に願って躱してくれることを願うしか、)」


 セラフィーがあれやこれやと考えている隙にモンスターが【サンダークレイン】に突っ込んで行った。

 モンスター側もダメージを負う。


 これにはニャーヤとセラフィーにとっては幸運な事である。

 しかし、その勢いは衰えない。

 未だニャーヤを倒そうと勢いに乗っている最中だ。


「にゃ--!!避けるにゃ---!!!」


 距離が素早く縮まる。

 こんな奇行とも言える行動を取るとは誰も予想できまい。


「う、動くのにゃ!私の足ー--!」


 頭では分かっていた事だが体が動かない。

 精神と肉体が追い付いていないのだ。

 (かかと)を浮かせる事ぐらいしか時間的に考えてもできない。

 あと一歩の所なのだ。


 【サンダークレイン】を突き破り、ニャーヤの眼前に頭を突き出してロケット頭突きを食らう寸前まで迫る。


 ニャーヤはもう駄目だと諦めていた。

 だってそうだろ?

 予想外の動きに対応しきれず、自分が大ダメージを貰うような攻撃をモロに受けようとしているのだ。

 躱せないタイミングで、


 だが、


 此処で思わぬ事が起きる!!!


 初めから使えた技なのか、偶然の賜物のなのか、ニャーヤの視界では敵の動きがスローになったのだ。

 時間魔法的なものを無意識に行使したのかは分からないが、スローになった。


 何故このような現象が起きているのかはニャーヤ自身も分からない。


「にゃ?襲ってこない、いや、違うのにゃ。これは・・・・・」


 自身でも分からない力ではあるが、それは二度目の幸運な事にモンスターの攻撃を避けることだけは出来る力を持っていた。


 そして、セラフィーは見た。


 ニャーヤの目にはギザギザの稲妻のような紋様が瞳に刻まれていることを一瞬、ほんの一瞬の僅かな時間の中で確認した。


 そして、


「あっっっっっっぶないにゃ!!!!」


 真っ直ぐツッコんでくるコースを自慢の脚力でピョン!と身軽なジャンプで6m位跳んで躱した。


「(な、)」


 驚くセラフィー。

 それは当然のこと。

 あのタイミングでの攻撃は決して戦い慣れている者でも躱せるタイミングではなく、完全に直撃コースのラインだったからだ。


「にゃっはっは、今のはマジでヤバかったにゃ・・・」


「(ニャーヤさん・・・これでわかったでしょう。舐めてかかると身の破滅を呼びますよ。)」


「分かったからやめるにゃ。もう油断なんてしないのにゃ。」


 やっぱりか、と言いたくなる程に余裕をかました後にしっかりとセラフィーに怒られるニャーヤ。

 可哀そうなんて思いはしない。

 何故なら叱られて当然の結果なのだから。


「(しかしニャーヤさんチャンスですよ。)」


「お、おうにゃ。」


 モンスターは盛大にドカーン!と建物に頭を突っ込んで脳震盪(のうしんとう)を起している最中だ。

 家の中はもうめちゃくちゃな状態であろう。


「覚悟するにゃ!!!」


 ニャーヤはモンスターを追って建物の中に入り飛び掛かる。

 モンスターは今動けない。

 絶好の攻撃できるチャンス!

 ニャーヤは【雷の爪】で乱れひっかきを行う。


「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!!!!!」


 モンスターの身体がニャーヤの攻撃で見る見る傷だらけになっていき、天井や家具などに出血した血が飛び散る。


 モンスターは脳が震えている状態だから上手く平衡感覚が掴めないでいるが、何もただ攻撃を食らわせてあげる程優しくはない。

 出鱈目に暴れまわったのだ。

 何処に敵がいるかなんて関係なく、とりあえず抵抗でもするか、と言った具合で手足をバタつかせながら口から火球のブレスを何発も放ちながら暴れまわっている。


「にゃ!大人しくするのにゃ!!!」


 大人しくしろ!と言われて大人しくするモンスターはいない。

 その暴れっぷりは次第に周りの建物にも被害を及ぼしていく。

 窓ガラスを割り、火球で両サイドの建物が攻撃されて火事になり、モンスターの後足による攻撃で壁なんて物は容易く割られてしまい散々な状況だ。


 しかし、それでも尚ニャーヤは諦めず【雷の爪】でガムシャラに攻撃をする。

 だが、さすがに時間を掛け過ぎたのかモンスターの脳震盪が治り正気を取り戻した。


 狙いを定める。

 咆哮を一発上げ、ギザギザの歯に魔力を溜めて炎を纏わせ、燃える歯でニャーヤの肩辺りに噛みついて来ようとした。


「にゃあああああああ!何にゃその技は!!ちょっとかっこいいにゃ・・・」


 呑気な感想を言いながらも再びピンチに陥るニャーヤ。

 しかし、ここで今度はしっかりとセラフィーが守る。


【光の盾】


 モンスターの攻撃は突如として出現した金色に光る黄金の盾で甲高い音を響かせながら防がれる。

 するとモンスターが外へ飛び出る。

 だが、既にモンスターに逃げ場はなく完全に包囲されていた。


 ん?何に包囲されているかって?

 それは、沢山の光り輝く盾だよ。


 大きい魔力に恵まれた一種族故なのか、派手な戦い方をする。

【光の盾】という防御魔法の檻に閉じ込めたのだ。

 まさに光る牢獄。

 その数は6個や10個なんてものでは無い。

 60個くらいはいっている様子だった。


「(ニャーヤさん、そのまま建物の中に居てください!私がニャーヤさんにもう一度攻撃のチャンスを作るのでその隙に、)」


「わかったのにゃ。」


「(いきます!!!)」


【光の盾】+【光の跳弾】


 すると、セラフィーが光の盾とモンスターに向けて粒子の様な小さい光弾を一斉発射した。

 この魔法は無数の光の粒を飛ばし、跳ね返る性質と生物に対しては貫通するという二つの性質を併せ持つ魔法。


「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 これには溜まらずモンスターも悲痛の叫び声を上げられずにはいられない。

 出血したモンスターの身体を無数の【光の跳弾】が貫通する。

 地面や建物は貫通せず、むしろ【光の盾】と同じように光の弾丸が跳ね返りモンスターだけを重点的に狙う。


「え、エグイ魔法にゃ・・・セラフィーヤバイやつなのにゃ・・・・・・」


 絶句するニャーヤ。

 その光景はあまりにも痛々しい光景で見ていられない。


「(これで倒されて欲しいですが、)」


 モンスターも我慢の限界なのか上空へと跳び上がる。

 今のモンスターは満身創痍。

 傷だらけだ。

 だが、この場において最善の選択と言えよう。


 何故なら、


 この魔法のデメリットとしては建物や障害物などがない場所ならば攻撃の手が届かないからだ。

 この魔法は先も言った通り主に跳ね返りという性質と生物だけに通用する貫通という二つの性質を上手く使って攻撃するオーバーキル戦法。

 しかし、上に退避したのは偶然なのかモンスターは回避することに成功した。


 だがこれは同時に悪手でもある。


 セラフィーは魔法を解除してニャーヤに出番を回す。

 建物の中から出てきたニャーヤは今モンスターの丁度真下に位置している。


 そう、攻撃を躱せても跳び上がった今のモンスターは完全に無防備であるのだ。


「にゃっはー、これで終わりにゃ!!!」


 ニャーヤは右手と左手に雷を纏わせた。


【双雷爪】!!


 落ちてくるモンスター。

 構えるニャーヤ。

 そして時は来る!


「(ニャーヤさん今です!!!!!)」


「任せろにゃ!あの状態でなら大振りな攻撃でも楽々当たるにゃ!」


 ニャーヤは力いっぱいに両腕をクロスさせながら思いっきりひっかく!!


「これで終わりにゃ!【双雷爪】にゃ!」


 ニャーヤの放った渾身の爪攻撃。

 それは弱ったモンスターを倒すのに十分な威力を秘めていた。

 肉どころか骨まで爪は達し、合計10本の爪で右下と左下から上の方向へと振り上げてスパッ!と容易く引き裂いたのだ。


「見たかにゃ、このニャーヤちゃんの力を!」ふん!


 特に育ってもいない胸を張りながら得意げな表情でふんすっ!と鼻息を一回吐く。

 ここぞという場面で決められて嬉しかったようだ。


「(やりましたね。ニャーヤさん!)」


「当然にゃ。」


「(しかしニャーヤさん、まだ戦いは終わっていません。まずは角丸さんの方から加勢をっ、)」





 ドスウウウウウウウウウウウウウウン!!!!!




「「ビクッ!!!」」


 勝利の余韻に浸っているニャーヤにまだ戦いは続いている、と言い掛け緊張感を取り戻させようとした時、突然大きな音が横から響いてきた。

 何事か!と思い行ってみるとそこには頭を潰された可哀そうな姿のつぎはぎモンスターの姿がそこにはあった。


「え、何が起きたのにゃ?」( ゜Д゜)



ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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