第21話 町中でのモンスター騒動①
遂に本格的にバトルが始まります!!!
自分的には結構いい文書が書けたと思っているのでどうぞお読みなって~~~^^
町の住民たちが慌てふためき蜘蛛の子散らすようにバラバラに逃げる。
そんな中俺たちは、正門まで迷わずダッシュで行く。
だが、
「(!!皆さん!止まってください!!)」
「どうした、何かあったのか。」
「(いえ、来ます!)」
・・・何が来るの?
俺はセラフィーの言っている意味が分からなかった。
それもそのはず、魔力探知が優れたセラフィーにしか感じ取る事が出来なかったのだから。
魔力の塊を、
そして、セラフィーの言葉は的中する。
俺達の前を遮るように、不意に建物をドカーン!と盛大な音と共に土煙を撒き散らす。
土煙の中からは黒いシルエットが2つ程見える。
一つ目は、姿勢が低くて丸っこい身体。
頭からは二本の太い耳?の様な物が生えていて、見た感じだとウサギに似ている姿。
二つ目は、シルエット越しでも分かる程のゴツい体格。
何かと硬そうな黒鉄の鱗がチラッと土煙の隙間から部分的に見える。
「あの異色の存在は、」
俺は固唾を飲み込みその存在を察する。
そう、モンスターの登場だ!!
「な、魔力の塊は一つじゃないのか!?」
「(一つです。いえ、厳密にいうと一つでした。)」
「でした?」
「(はい。今さっき魔力の反応が何処から現れたのか分かりませんが、急に二つ現れたのです!)」
「そんなバカなこと、」
「(それだけではありません。後ろにm、)」
ズドオオオオオオオオオオン!
セラフィーの言葉を遮り、俺たちの後ろで建物を壊したかのような爆発音が聞こえてくる。
その反動で家を構築していた壁や屋根等が吹っ飛び、ショットガンの様に散弾して周囲の建物や石畳に被害を与えていく。
そんな惨憺たる中から一匹のモンスターが紅くて不気味な月夜の世界にその姿を顕現させた!!
「嘘・・・・・」
前に二体、後ろに一体。
完全に俺たちは挟まれる形となり絶体絶命のピンチに陥ってしまったのだ。
「これは、やばいな。」
「にゃあああ!なんでにゃあああああ!!なんで増えるのにゃ!」
「ここでやるしかねぇってのか。」
「とにかくパニック状態になっていても仕方ない。今は前に倒さなければならぬ敵がいる、ただそれだけ分かれば私は構わない。」
おぉ、男前。
※角丸は女です。
しかし、確かに角丸の言う事も一理ある。
この状況では逃げるという選択肢は難しい。
一人でいる時ならば自分だけ助かる道なんてものは試行錯誤でどうとでもなったであろうが、この人数で全員無事助かる、なんて道を選ぶのは難易度が"ナイトメア"級に跳ね上がるからな。
俺達は身構える。
戦意がある無し関係なしに、死にたくなければ武器を取って戦え!!と言われているかのように強制的に戦場に立たされているのだ。
俺は震える足で大地に立ち、凶悪なモンスター達をその眼に映す。
画面の向こう側で見ていた景色では身体が震える、なんて感覚はなかった。
むしろワクワクしていた。
ただこれが現実ともなると話は変わってくる。
動けないのだ。
足がすくみ思うように動けない。
当然だ。今から命のやり取りをしようと言うのだから。
やらなければやられる。それだけだ。
だから俺は一回精神を安定させるため、深く息を吸い深呼吸をした。
そして、目の前に佇む巨大な敵に向けて戦意を剝き出しにする。
「どうするにゃ!敵は後ろと前の三体いるにゃ!どうやって勝てというんだにゃ!」
「ええい!五月蠅いぞ獣女!!覚悟を決めろ!」
「覚悟なんてそんな簡単に決められたら苦労しないにゃ!皆ここで死ぬんだにゃ!!」
「お、お、おち、おちついてください。こんなことをしている場合では、」
「大体お前はいつもいつもにゃーにゃー、にゃーにゃー五月蠅いんだよ!少しは口数減らしたらどうだ!この獣馬鹿女。アホアホ!」
「チビチビチビチビチビ!!!!」
言いたい事も言わせてもらえず二人の圧に完全に負けてしまうスン。
しかし、スンの為に代弁して鳥人間のウイが二人の熱を覚まさせるために一言「こんな時まで喧嘩している場合かー!」と声を大にして言ってくれた。
その言葉が正気を戻させたのか、二人は一旦お互いの顔を見るのを止めて口喧嘩も止める。
回れ右をしてアートは後ろの敵を、ニャーヤは前の敵を見る。
「あ、あのウイさん。ありがとうご、ございます。」
「いいの、いいの。喧嘩はダメ。絶対。なの!」
「は、はい。」
逆にスンとウイの二人はこの短期間で結構仲良くなったようだ。
あの二人も見習って欲しいね。
兎にも角にも敵が前に二体、後ろに一体居るという事実は変わらず馬鹿正直に戦ってもやられるだけ。であるからして、俺たちは各々担当するモンスターを決めて戦う事にした。
結果としては、
俺とアートとスンとウイが後ろのモンスター。
前の二体いるモンスターの内、左側に居るのがニャーヤとセラフィー、
右側のモンスターついては「あの程度私一人で十分だ。」と言い、角丸一人が担当する事になった。
因みに何故こっちだけ4人で倒すことになっているのかと言うと、セラフィー曰く後ろのモンスターの方が強いらしいからだ。
魔力の量や気配で決めたらしい。
俺たちは各々倒すモンスターを視界に入れて魔力を高める。
この戦いは俺の人生で初めてのモンスターとの戦闘になるのだ。
いきなり大型モンスターとかハードル高すぎない!?
「ρΜ¶Κг¶ωг」
モンスターは俺たちを凝視している。
口以外何も無いのっぺらぼうで奇抜な声を上げ、俺たちを見下して来るのだ。
ナメクジの様な姿をしている。
ギラギラと怪しく光る牙が露になる。
口の隙間からは涎をだらだらと垂れ流し、こちら側を襲う気満々だった。
そして俺達二人を見下した後は長い舌を使っての牙突をしてきた。
「!?」
「避けろアート!」
「わかってるよ。!」
その攻撃が戦闘開始の合図になり、生き残るための戦いが幕を開けた。
アートはその体小ささ故に攻撃を避けるのも難しい。
だが、そこはさすが巨小の山出身と言うべきか。
こういう攻撃は慣れていると言わんばかりに素早く華麗に避けて見せた。
一見デメリットしかないその小さな体。
しかし、アートはその小さな体を上手く駆使して敵の攻撃を躱して懐まで潜り込む様に動く。
モンスター側も負けずと舌を伸ばしては縮めてを繰り返して牙突を放ってくる。
「そんな薄っとろい攻撃なんざ目瞑ってても避けれちまうぞ。」
余裕そうな態度とアートの言葉にイラッと来たのか、もう一度舌による攻撃を仕掛けてくる。
今度はまるで鞭のようにしならせた攻撃だ。
「なに!?」
何回も避けれる攻撃を躱し続けた結果なのかアートは慢心した。
そしてその一瞬の隙を突かれた!
舌が蛇のように自由自在に曲がりくねってはアートの横っ腹を薙ぎ払おうと緩急をつけて攻撃してきた!!!
これはアートといえど躱せない!
「あっ、やっべ・・・」
【ロックウォール】!!
だがそこはちゃんと俺がカバーする。
岩の壁でアートをギリギリのところで守ったのだ。
戦い慣れていないとはいえアートよりは魔法が使えるからな。
こういう時にこそ活躍しなければ、
「間一髪だな。油断するなよ。今の当たってたらやられてたぞ。」
「すまん・・・・・」
「おう。」
「ウイちゃんも居ることもお忘れなく!」
「わ、私も・・・います。ですけど、私は・・」ぼそぼそ
今のところ威勢だけはいいウイとぼそぼそ声で喋っているスン。
大丈夫だろうか?と俺は心配するが、余計なお世話だったらしい。
だが、スンはまだ戦う意思がハッキリしていないのか、未だにオロオロしている。
しかし、時間は待ってはくれない。
その間にも俺たちは全力でモンスターを倒すために動き続ける。
「三人とも今度は私が行くんだよ!」
「大丈夫か?」
「ウイちゃんの実力を舐めちゃ駄目なんだよ!」
背中に生えた二枚の翼で夜の世界を羽ばたく。
ゆさゆさとアホ毛が揺れている。
ウイは空中からモンスターを見下ろす。
そこから見える光景は赤々と燃える炎の焼き景色。
周囲に炎の壁が出来ており、上から照らす銀朱の月が町とモンスターを怪しく照らし出す。
「他の町とは言えど、こんなひどい事をしてウイは怒ってるよ!猛烈に!!フルパワーて飛んでいけ!!【風斬り舞い】」
三発のデカい風の刃が鎌鼬の様に風を切っては飛んでいく。
しかしモンスターも負けてはいない。
【風斬り舞い】を狙い打つかのように、つぎはぎモンスターは口から毒の息吹を吐いて対抗して来る。
だが、威力的に見ても毒の息吹より【風斬り舞い】の方が強力だったらしく、軽くスパッ!と息吹を切っては直線距離に居たモンスターをそのまま切り裂く。
ウイの怒りが上乗せされた魔法が勝ったようだ。
ガアアアアアアアア!!!
悲痛な叫び声を天に轟かせて青い血飛沫を地面や建物などに撒き散らす。
「当たったよ!皆見てくれた!!」
ウイは攻撃がヒットして嬉しそうだ。
パタパタと空中に羽ばたいてはピースサインを送って来る。
「アイツやるな~。全く、俺も負けてられんな。」
ウイの活躍をその場で見た俺は感化された。
全身を奮い立たせて力を溜める。
後押しされるように一歩前へ出る。
孤児院の生活で溜めた知識はここで披露されるべき力であり、皆の身を守ることになる力でもある。
ここで出し惜しみして何になるというのか、
ここでやらねばいつやるというのか、
モンスター如きにビビる必要は最初からどこにもなかったのだ。
俺は心の何処かでビビっていた精神を叩き直し、強い眼差しでモンスターを見る。
そして、掌を翳して魔法を放つ。
「いつも通りにやるだけだ!【水弾】!!」
水の弾丸がモンスター目掛けて飛んでいく。
だが、そんな攻撃など防ぐに値しないのか体に当たっては弾かれてしまった。
【創生の騎士】と同じ現象だ。
「なに!?」
モンスターは口元をニヤリと吊り上げ、口から毒の弾を放ってきた。
綺麗に放物線を描いた曲射弾道だ。
「そんな遅い攻撃当たりはしないよ。」
「ρOOOOOOOOOOOOOOO!!」
あまりにも鈍足な攻撃故に余裕を持って回避する。
だが、モンスターは腹に力をこれでもか!と言うくらいに込めて、腹を凹ます。
そして一気に腹の中で溜めた力を解き放つかの如く、さっきまでの緩い攻撃とは一味違う攻撃を仕掛けてきた。
毒の曲射連弾だ。
火山の噴火を思わせるその驚異的な連射速度でモンスターは天へと向かって毒の弾を吐き続ける。
ターゲットは勿論この俺だ☆
おっと~?これはちょっとまずいかも。
走れえええええええええええ!
それは猛毒の雨であった。
pm2.5。
天から降り注ぐ酸性雨の超強化版である。
一滴でも当たったら骨まで抉り溶かされること間違いなし!!
だが俺は、絶え間なく降り注ぐ猛毒の雨を走りぬくことで見事に躱し切っている。
しかし、この攻撃の真髄はそこではなかった。
どうやら、毒の雨が落ちた所にはもれなく地面が溶けるおまけ付きであったようだ。
辺りを見渡すと毒の水溜まりが出来上がっていた。
毒々しい紫色をしている。
くっそおお、嬉しくねぇよそんなおまけ!
地面まで溶ける毒ってどんな強酸だよ!!
そんなものを口元緩めてニヤリながら躊躇なく撃ってくるあたり本当にモンスターだよ!
【サンダークレイン】!!
俺の頭上で雷が収束し、一本の槍の様な形状に変化する。
そして俺はここで一つのイメージをした。
槍を矢と置き換えて大弓で飛ばすイメージだ。
どこまでも鋭く貫く一本の槍。
「いっけえええええ!!」
俺がイメージした一本の雷槍はモンスターの心臓があるであろう左胸の方に飛んでいく。
だがモンスター側も無駄なダメージを貰って消耗したくないので抵抗する。
顎の関節が外れる位に口を大きく開けて【毒の咆哮】を行使してきたのだ。
モンスターの居る直線距離全てに【毒の咆哮】が穿たれた。
ズドドドドドドドドドドドド!!
すると、石畳と家が超強力な猛毒の破壊光線の影響で瞬間的に消えて行く。
口の中に入れた時の綿菓子の様に石畳が秒でジュワ~と溶かされていくのだ。
俺の魔法ごと、
「避けろおおおおお!!!!」
俺は間一髪のギリギリで避けることに成功した。
だが、後方をチラッてみて見ると直線距離に電車道の様な一本の長い【溶かされた一直線の道】が出来上がっていた。
その攻撃は町の外壁まで届いて無慈悲に溶かす。
「・・・・・・そう簡単に物事が機能しないところ見ると現実感を突きつけられるよ。いくらファンタジー世界でもな。」
唖然とし、言葉が出ない程の光景を目に焼き付けた俺は思考を変える。
単発が駄目なら手数で勝負。
今は敵の弱点を見つけて叩くよりダメージ自体を与えられることが最優先。
それにいつまでも過ぎたことに対して驚いてる場合じゃない。
此処は戦場だ。
気を引き締め直せ、
一瞬の気の緩みが命運を分ける。
そう考えて【風斬り舞い・乱れ切り】を放つ。
圧縮された無数の風の刃が敵に向かって飛んでいってはモンスターの身体を傷つけていく。
「ウイも攻撃するんだよ。【風塵突破・羽羅錐】!!」
螺旋状に周囲の風を収束させていく。
そして、勢いよくモンスターの腹を貫くかの如く風圧を周りに放ちながら一点突破していく。
つぎはぎモンスターも必死に抗う。
ドミノの様に岩の壁を複数枚出現させて防御する。
結果としては威力は殺されたものの攻撃自体は当てることに成功した。
一方俺はもう一度【風斬り舞い・乱れ切り】を放とうとしたが、モンスターは俺にその魔法を放たれることを嫌ったのか、槍を思わせる舌の突き攻撃で俺を襲ってきた。
その攻撃は石畳をズゴン!と割るくらいの威力があった。
一回でも当たったら体ごと貫かれること必然である。
「ひいいいいいい!」
そして、舌による攻撃を躱したと思ったら毒の弾を曲射で放ってくる。
「ダブルで危ない!」
でも何回か躱してるからちょっと目が慣れてくる。
それに毒による攻撃だってスピード自体がないわけだから避けるのなんて楽勝。
俺はそんな感じで逃げながらは攻撃、逃げながらは攻撃、又は防御といった感じに戦い方を繰り返す。
「おら食らえ!【フレイムボム】」
モンスターの顔面に俺の魔法が当たり小さな爆発を起こした。
しかし、さすがに効いていないらしく【風斬り舞い・乱れ切り】よりはダメージがない。
モンスターは再び攻撃を仕掛けてくる。
「まだまだ余力は十分そうだな。」
戦闘開始から数十分の時が流れた。
周りからは阿鼻叫喚の叫び声が絶えず木霊する。
突如として現れたモンスターに襲われているのだ。
周囲を見渡せば、火事や燃え盛る炎が死体を炭にしていく。
子供の泣く声が止むこともなく、大人たちの必死な大声も助けを求める声も聞こえてくる。
思わず耳を塞ぎたいと思うくらいに痛々しい声のサイレン。
止むことを知らず騒いている。
そんな地獄絵図の中、俺とウイは奮闘した。
そう、全ては攻撃を繋いでアートに止めを刺してもらうために、
なぜなら、このモンスターと戦う前に決まっていたことだからだ。
アートが倒してくれると。
そういう陽動作戦。
こうやって俺が考えている内にもアートはモンスターをも気付かせることなく魔力を高めて近づいていた。
そして、
【ロッククレイン】+肥大術【大きくなあれ】
「待たせたなエマ。」
「ホントだよ。ホントに待ったよ!」
「やっちゃえ!アート!」
「が、頑張って・・・・・・ください。」
そう言ってアートはモンスターに向かって肥大術とやらで大きくした【ロッククレイン】をモンスターにブチッ込んだ。
一発一発の礫が5m位はあるであろう弾丸だ。
大きい。
「ρOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
巨大になった岩の礫が腹を何発も貫通する。
大きな声を出しながら腹に大穴を開ける程の魔法がモンスターを襲い、その穴からは大量の青い血が噴き出してこの辺り一帯を青色一色で染め上げる。
最後には力尽きたかのような弱々しい声を上げながら案外呆気なく死んでしまった。
「よっしゃ!討伐!!」
「エマ!」
「おう、やったなアート。」
「何、お前がいたからだよ!」
「ふん、俺なんて全く何もやってないからな。ただ注意を引き付けただけだって。止めを刺したのはアートなんだからアートのお陰だよ。」
「へ、中々嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。」
「やったんだよ!」
「はい、凄いです・・・」
まさかホントにやってしまうなんてな。
いやいや、まさかまさか討伐してしまうとは。
協力プレイって良いものだね、
「ρπππππππ」ボソッ
シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!
ここまで読んでくれてありがとうございます。
面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。
これからもよろしくお願いします。