第19話 動き出す影
~敵側サイド~
それは、数時間前のとある下水道で起きた出来事。
「えぇい、何処だガキ共!出てこい!」
「逃げても無駄だぞ、俺たちを舐めんじゃねぇ、」
俺たちが見事地上への生還を無事に果たした後の下水道では、帰って来た敵の部下たちが跋扈していた。
ほぼ全ての逃げ道を的確に人員を配置して逃げ場を無くしている状態。
もし、今も尚この下水道の中に俺たちがいたならば戦闘になっていたであろうことは明白。
寧ろ再び捕まっていた可能性が高い。
「おい、見つけたか?」
「いや、こっちは見てない。」
「・・・・・まぁ、でもどっちみち逃げ場を無くした今ならばガキ共も逃げることなんて不可能だろ。この辺りの出口は全て俺らが事前に調査済み。地上にも一般人の振りして紛れ込んでいる俺たちの仲間がいるし、万が一にも外に出たら報告するように言ってある。だから大丈夫。」
「だな!」
はははははは、とお互い笑い合い、自分たちの見張り位置で常に子供たちを探している。だが、そんな呑気な二人の元にぷかぷかと臭い汚水の中から流れてくる一人の人間を発見した。
「おい、あそこ見ろよ。」
「なんだ?」
「人だ。人が流れて来るぞ。ガキどもの一人か?」
「おっ、ならガキを引き上げた俺たちの手柄ってことで出世コースか?」
卑劣な笑みを見せ合いながら、キツイ刺激臭がする汚水に足を突っ込み、流れてくる人を両の腕で受け止める。
そして、もう一人の団員が地面へと引き上げ仰向けに寝かす。
「ふぅ、なんとか引き上げれたな。くそ、汚ねぇな。これは暫く臭いが染みついて取れねぇぞ。」
「そうだな。しかも・・・・・・」
二人は引き上げた人間の事を逃げたガキどもの一人かと勝手に思い込んで地面へと寝かせた。しかし、それは全くの見当違い。
でかい図体に腹が出ている40代みたいな体型。
腕には鉄製の拘束具をつけ、黒い髭を生やした男。
そう、その正体はガキ共ではなく気絶状態のボスであった。
「ぼ、ボスううううううううううううううう!」
「な、まさかやられたのか!あんなガキどもに。しかし、どうするよこの状況。引き上げたはいいが、」
「とりあえず、腕の拘束具をお前の持ってるカギで開けろ。」
「お、そうだったな。」
カチャリ、という音ともに拘束具が鈍い音を出してゴン、と地面へと落ちた。
「とりあえず、報告だな。」
「そうだな。」
何故か汚水に流されていたボスを発見し、腰に着けてあるポーチの様なものから通信魔道具を取り出し、皆に報告する。
その報告は光の速さで通達され近くにいるものは直ちに集合した。
そして、ちょうどいいタイミングでボスも目が覚めて一時的な報告会みたいな感じになった。
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「あのガキ共、よくもこの俺にくさい臭いを染みつかせやがって。クソッ!おい、そこのお前、」
「は、はい。」
「持ち場についている団員と地上にいる団員に通達しろ。もうガキどもは外へ逃げた。だから地上にいるものは続けて捜索。下水道にいるものは直ちに地上へ出て捜索に力を注げ、とな。」
「了解です。」
目が覚めた途端団員に命令を下してどっしりと腰を据える。
絶対に逃がさないと見た目で表現しているかのようだ。
強者の風格とでもいうのだろうか。
何としてもガキどもを捕まえたいボスは此処にいる団員以外の地上班にガキどもの捜索命令を出した。
そしてボスは静かに万が一見つけることの出来なかった時の事を考える。
「あの、ガキ共・・・・・・いや、今はそれどころではない。奴らに報告される前に何としても見つけねば。最悪の手段もあるが、これはなるべく使いたくない。」
「どういうことですかいボス。」
「あ?あぁ、もちろん騒ぎを起こさないに越したことはない。だが、この町は無駄に広れぇんだ。もしもの時はこいつを使う必要がる。情報を表に出さないようにするためにな。特に聖騎士共には、」
そういって、ボスはべちゃべちゃに濡れたズボンの横ポケットの中からひし形の形をした宝石の様な物を取り出した。
アメジストのように濃い紫色である。
「お前らにも上から支給されているだろ。この改造魔物が入った宝玉【魔昆石】を、」
部下たちはポーチから各々二つの魔昆石を取り出した。
「これをですか、」
「あぁ、そうだ。もしもの時はこれを地上に放ってガキどもを殺し、奴らに情報が行きわたるのを阻止するんだ。じゃないと俺たちが上に殺されちまう。騒ぎを起こしてでもやらなきゃいけない絶対的な最優先事項だ。」
「了解ですボス。」
「よし、分かったらまずは全力であのガキどもを見つけ出し、見つけ次第捉えろ!絶対に逃がすな。」
「了解ですボス!!!!!!」
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《魔昆石≫
詳細:中には改造魔物とやらが圧縮されて入っているぞ。
そして、魔昆石は地上の新鮮な魔力に反応するよう作られているので外に出した途端、一気に魔力が激流の如く中へ行き渡り、改造魔物が外へ飛び出る仕組み。
この魔昆石は特殊な魔鉱石で作られており、ガラスの様な薄い透明なケースで守られている。それと同時に付加価値で外の魔力を一切遮断するフィルムの役割を果たしている。
中に入っている魔物を出す為には思いっきり地面へと投げつければ簡単に割れて飛び出るぞ。
〇ンスターボールのような感じだ。
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