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第17話 親睦を深めよう!自己紹介!!

 表では目立ってしまう見た目をしているセラフィー達は人の目の届かない所へと向かった末に、ボロボロの倉庫に到着した。

 どうやらここがセラフィーの言っていた目的地らしい。


 見た目は鉄が酸化した影響で錆び付いており、窓ガラスは割れて、倉庫を形成するコンクリートや木の板なんかは崩れかけている。

 虫も湧いている始末だ。

 屋根なんかも剥がれ落ちそうな程のガバガバな取り付け、倉庫の前はもう使われなくなったであろうガラクタが散乱している。


 汚っ!てかボロ!!!

 俺ってなんかボロボロの何かに縁があるなー。

 孤児院に荷車、そして倉庫。


 呆れた目をしながらセラフィーたちの後を着けて倉庫の中に入る。


 中身は人が使っていないので手入れが行き届いておらず、予想していた通りに埃だらけのゴミだらけ。

 蜘蛛の巣があちらこちらに張り巡らされており、木箱や使われていない道具などは真っ白になるまで埃を被っていた。

 とてもじゃないが素手では触りたくない。


 更に孤児院と一緒で隙間風が入って埃が宙を舞う。

 その影響で俺たちは咳込む羽目になった。

 しかし、だからと言って「別の場所がいい」と言おうものなら我慢している皆に失礼と言うものである。


 結果として今は忍耐の二文字が試される時である。


 そして今現在、俺たちは何をしようとしているのかと言うと、ここまで来るのにお互いの名前も知らずに呼び合う、というのはさすがに不便なので軽く自己紹介をして親睦を深めようという時間である。

 相手の名前を呼びたい時に必要だからな。


 そんな、ひょんなことから始まった長い自己紹介が幕を開けた。


 まず一人目は、綺麗でしなやかな金髪に果物の様な甘美な甘い香りが仄かに香る、光り輝く少女だ。


「(えっと、セラフィーと言います。種族は希少種(ルーン)。得意な事は魔力の使い方と探知で、出身は"サイレーンの世界樹"です。あまり戦闘は得意ではないですが、サポートなら力になれると思いますので、どうぞよろしくお願いします。)」


 言葉の終わりに丁寧に軽く会釈をして、自己紹介を終えた。

 セラフィーは自分の口で直接話したくないのか未だに脳内で話す。


 こんな時までわざわざ魔力使ってまで喋らなくていいのに、

 もしかして自分の口では喋れない秘密があるとか、人に言えない様な何かがあるのかな?考えて見れば見る程不思議な人だな。


 人じゃないんだっけか。


 次に自己紹介をするのはこの中で一番の背丈と一角を持つ子供。

 肌の色が全身赤色で、その姿はとてもじゃないが子供とは思えない見た目とオーラを発している。

 彼女曰くまだ13歳だ。


「次は私だな。単刀直入に言うが、私に名前など無い。理由はまだ戦士として認めてもらってないからだな。得意な事は勿論近接戦闘。

 接近戦なら負けはせぬ。どんな敵をも軽く葬ってくれよう。この鬼の力でな!出身は"荒霧天王山の無限地帯"だ。常に濃霧が発生していて視界が見えない状態の所だが、私はそこで生まれた。あと修行にはうってつけだ。」


 ずっと気になっていた事だけど背丈がデカいのは種族が鬼だからか。

 それに、名前が無かったとは驚きだな。

 ん?なら今までなんて呼ばれていたんだろ??


「(あの、鬼さん)」


「ん?どうした。確かセラフィー・・・だったか。」


「(はい、合ってます。その質問したいんですけど、鬼さんって戦士じゃないから名は貰っていないと仰っていましたけど、それなら今までなんて呼ばれていたんですか?)」


 すると丁度いいタイミングで俺が疑問に思っていた事をなんと!偶然にもセラフィーが代弁して聞いてくれた。


 何と有難き運命の導き!


「いや、特に決まった呼び名はない。ただ適当に()()とか()とか()とかしか呼ばれていないな。」


 何と適当な呼び名。

 でも、確かに名前が無いなら見た目とかで判断して呼ぶしかないのは事実。

 戦士になるのに名無しで頑張ってきたと思うと目頭が熱くなるよ。


 俺達は名前が無い鬼さんの事を不憫に思い、心の真ん中で同情という感情を抱く。

 本人からしてみれば、余計なお世話、という奴である。


 そこで!

 名無しの権兵衛である鬼さんに、セラフィーさんの口からある提案が飛んだ。


「(ですけど・・・名前も無いのにあなたの事を呼ぶ時は不便に感じてしまうので、そこで私から提案です。皆さんで呼び名を決めてあげませんか?)」


 急な案件だな・・・

 でも面白そうだな。俺も参加する!!


「あ、良いね。」


「おおおお!面白そうにゃ!」


「ウイもやるんだよ!!」


「あ、私も・・・や、ややや、やります。」


 こうして俺たちはこのボロボロの倉庫の中で数時間に(わた)って呼び名を考えた。

 始めの趣旨から大分ずれた事をしているが、鬼ちゃんの為だ。

 ここは気合を入れて名前を考えてやろうじゃないか!!


 1時間後・・・ブレーンストーミング法で全ての名前を出し切った。


 結果的に、今まで出て来た呼び名はこんな感じだ。


 ==================================

 たっぱさん、カイリキー、


 鬼丸さん、角丸さん、鬼さん


 剛腕二頭筋、ジェノサイド赤鬼DX、


 筋肉、力持ち、


 勇敢なる赤鬼(フォルティスラルウァ)全てを破壊する(ジェノサイド)殺戮鬼の権化(ディスラクション)


 姉御、姉さん、

 ==================================

 こんな具合だ。


 候補として可笑しなものも多々あるが、気にするな!!


「さぁ、どれがいいか選んでくれ。」


「え、えぇええええええ~~~と」


 いきなり呼び名を選んでくれと言われて戸惑う鬼。


 分かるぞ鬼さん。一つもまともな名前なんて無いよな。

 そりゃそういう反応するは、


 鬼の子は、誰が見ても一目瞭然と言った感じでおろおろして頭が参っている。

 どうしたらいいのか分からない様だ。

 だが、それはごく短時間の事。


「ん~~~~~~~~~~~~~~~」


 彼女は視線を真っ直ぐに向ける。


 彼女の視線の先には俺が書いた名前一覧がある。

空に描く文字(エアリエ・ワード)】という空中に文字が書ける魔法を用いたので、文字通り紙なんか必要としない便利魔法の一つ。


 魔導書を読んでいる時に丁度面白そうな魔法があったから会得してみたんだ。


 角丸は文字を見つめながら小さく唸ってる。

 どうやら、どんな名前がいいのか決めようとしている最中だ。


 多分・・・・


 因みに辺りが暗いので分かりやすいようにライトイエローで書いてみたよ。

 暗い空間に明るい色を使った方が見やすいからな。

 そのあたりはちゃんと配慮してるよ。


「オイラはこの【勇敢なる赤鬼(フォルティスラルウァ)】と【全てを破壊する(ジェノサイド)殺戮鬼の権化(ディスラクション)】が良いと思うな。何よりかっこいい。」


 いや、それお前が考えたやつ。

 なんだよその中二病丸出しのネーミングセンスは、もっと普通でいいのよ。

 そう俺みたいに【たっぱさん】や【カイリキー】みたいなやつとか、


「そこのチビの決めた名前より私の考えた【剛腕二頭筋】と【ジェノサイド赤鬼DX】の方が絶対いいにゃ!!!」


「何だとこの獣女!」


「ふふーん、絶対こっちの方が良いにゃ、あんなダッサいダサダサな名前よりはこっちの方がユーモアとかっこよさも兼ね備えていて人の前に出て名乗っても問題ないにゃ。」


 いやいやいや、お前そんな名前を人の前で名乗った時には人生に残る恥ずかしいエピソードとして一生残るからな。

 人前に出て自分は【剛腕二頭筋】ですとか、【ジェノサイド赤鬼DX】ですとかいうのは只の恥だぜ。

 そんな名前を名乗るんなら俺の【たっぱさん】や【カイリキー】の方が絶対良い。


「あ、あの、そっちの名前よりも私の【鬼さん】とか【鬼丸さん】や【角丸さん】の方が良いと思いますけど・・・・」


「いや、ここはウイの決めた【姉さん】や【姉御】の方が更に鬼の人を強く見せることが出来るよ。ウイの決めた名前の方が良い!」


「ええい、そんな安直な名前に何の意味があるにゃ!私の【剛腕二頭筋】と【ジェノサイド赤鬼DX】の方がかっこいい!!」


「いーや、オイラの【勇敢なる赤鬼(フォルティスラルウァ)】と【全てを破壊する(ジェノサイド)殺戮鬼の権化(ディスラクション)】の方がかっこいい。こっちで決まりだ!!」


「(いえ、そんな暑苦しい名前より【筋肉】さんや【力持ち】さんの方が可愛いかと、)」


「【筋肉】のどこが可愛いにゃ!キモイにゃ!」


 ひ、酷い言われようだなセラフィーさん。

 全力で否定されてんじゃん。

 だからここは大人しく俺の考えた名前の方が良いって言ってるじゃん。

 よし、ここはいっちょ大人な俺がガツン、と言ってやりますよ。

 なに、元サラリーマンで培った交渉力と実力を見せてやるよ!!


「おいおい君たち、そんな奇天烈(きてれつ)な名前より俺の【たっぱさん】や【カイリキー】の方がいいよ。」


「「」」ギロリ!


「あ、何でもないです。」キリッ


 こうして更に時間を重ねること数時間。

 民主主義で選ばれたのは、耳の尖った金髪のエルフの子の名前だ。


 名は【()()】これに決定。


 誰が何を言おうがこれで決定である。


「ふむ、戦士になるまではこの名を名乗れ、ということであるな。了解だ。角丸・・・ふん、良い名だな。ありがとう皆。」


 満面の笑みをにぱっ!と皆に見せつける角丸。

 その笑顔はたかが名前を決めるだけで喧嘩を勃発させた醜い争いの雰囲気が嘘みたい浄化された。


 後、ふざけた名前しかないのは単純にここに集まってる子たちのネーミングセンスが絶望的に無いからだ。



 俺も真剣に考えた結果があれなんです~~。

 だから俺を責めないでね?


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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