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第16話 脱出!!

「か、勝ったの?」


「気絶はさせた、当分は目を覚ますまい。」


「(でも、まだ油断はできません。拘束しちゃいましょう。)」


 セラフィーがそう提案すると、さっきまでは角の生えた子の腕に着けられていた鉄製?の拘束具を獣の子が悪い表情をしながらボスにガチャリ、と装着させる。


「にゃはははははは、この人間のデブ。これからどうしてやろうかにゃ。」


「ウイは許さないんだよ!」


「あ、あの・・・・こう、拘束しただけでは・・・・部下たちに戻ってくる様に伝えた、と言っていたので、あ、あまり意味ないのでは、と思います。」


「ふむ、確かにな。拘束具を外す為の鍵は向こうが持っている可能性は十分にある。」


「なら、いい方法があるにゃ!」


 さっきまで悪い表情をしていた獣の子が、一段と悪い顔になる。

 悪知恵を働かせた時の様な卑劣な笑みを浮かべてニヤリ、と口元を吊り上げたのだ。

 完全にロクでもない事だ。

 だが、俺がどうこう出来るわけじゃないのでここは任せることにした。


「これで苦しむがいいにゃ!」


 猫耳をピクピクさせて、獣の子はみんなの視線を一斉に集めながら思いついた事を行動に移す。

 左足を上げ、拘束されているボスの背中に向けて思いっきり蹴りをお見舞いしたのだ。

 それはまるで、サッカーボールをゴールへとシュートするストライカーの如く、強さと勢いを兼ね備えている強烈な蹴りだ。


 だが、俺達はそれよりもエグイ仕打ちを見た。

 非人道的で無慈悲な瞬間を、

 この世で一番汚い所へ蹴り飛ばした瞬間を!


 下水道に蹴り飛ばした光景をっ!!


 これにはさすがの一同もドン引きの驚愕である。

 まさに外道、その言葉が一番似合うであろう一瞬の出来事であった。


 容赦ねぇ、


 下水道は地上からのあらゆる所で使われた水が流れつく場所。

 それは例え、お風呂に使った水であろうと掃除で使った水であろうとトイレ・・・であろうと、

 そんなこの世で一番汚い場所に蹴り飛ばして入水させたのだからドン引きするのは当たり前と言えよう。

 かくいう俺も、そのあまりにも惨たらしい行動に呆然状態である。


 だが、頭だけは動いていた。


 やりやがった!あの獣人!!

 あんな世界中の汚水という汚水を集めた場所にダイブさせるなんて、あの子笑っているけど完全に周りの子達引いているじゃないか!!

 殴って無理やり気絶値まで持って行った角の生えた子と同じくらい思想がクレイジーだぜ。


 だが、こんな唖然とした空気を作ってはいるが、本来の目的を忘れてはならない。

 セラフィーはこの間にも魔力(マナ)探知で此処にいる者以外の魔力(マナ)を探知していた。


 セラフィーから一つの通話が頭の中に聞こえてくる。


「(皆さん、移動しましょう。敵の魔力を感知しました。あの男が呼んだ仲間たちでしょう。こちらに向かって来ています。気付かれてはないでしょうが、)」


 その言葉により一気に気を引き締められる一同。

 まだ終わってい事に気付かされたのだ。


「そ、そうだった。まだ終わってないんだったな。でも、どうするんだ。俺の来た道は多分だが、あいつの部下たちが居る可能性が高いよ。」


「(えぇ、ですのでエマさん。だからまたあの作戦で行きましょう。)」


「ん?作戦?・・・あ!あれね、OK。それで行こうか。」


 一瞬あの作戦と言うのが分からなかったが、今までの事を思い返すとピン!と来た。

 多分だが、子供たちを助けるために実行した隠密作戦行動の事だ。


 そうと決まれば行動は迅速。

 時は金なり、


 急いでこの場を離れて出口へ向かうべく大きな音を立てないように突き進む。

 ここは下水道、音響の起伏が激しい所。

 なので小さな音がよく反響する。

 つまり向こうの居場所が分かると同時にこちらの居場所も音の反響を聞けば分かるようになっている。

 なのでなるべく早く出口へ向かいたい、と言うのが本音である。

 しかし、そう簡単にはいかない。


「(っ!魔力を感知しました。その数6!迂回しましょう。)」


 突然のセラフィーからの脳内通信が来る。


 ビックリした!

 この感覚はやっぱり今でも反応しちまうな。

 というか、敵見つけたのか。

 凄いな魔力探知ってのは、


 足音が響かない様に来た道をUターンして、別の道へと入る。

 そして走っては曲がり、走っては曲がりを繰り返し、出口との距離を確実に稼いでいく。


 しかし、ここでもまた通信が、


「(感知しました。その数16!右のルートに4人。このまま真正面に10人。そして後方に2人です。)」


 どれだけいるんだよ!あいつの部下は、

 完全にこちら側を包囲して捕まえる気満々だな。

 やる気は十分だって?

 上等じゃ!こっちだって上手く逃げ延びてやるよ!

 こっちにはセラフィーさんが居るんだからな!!


 さぁ、導いてくださいセラフィーさん!!!


「(え?は、はぁ、もちろんです。)」


 俺の態度の変わりように戸惑うセラフィーだが、今はそんな事どうでもいい。

 兎に角セラフィーは敵の間を掻い潜って出口への最短距離コースを進むべく、俺達を先導して出口を目指す!!




 ~敵視点~


「おい、居たか?」


「いや、見つかんない。子供たちが脱走したって情報を聞いたから駆けつけて見れば全然見当たんないじゃないか。」


「あぁ、気配の一つもない。」


「大丈夫だ。ここは俺の探知魔法で辺り10m程度の距離だが探知してやる。お前らの魔力まで感知してしまう事になるが、そこは無視する。あいつらは異種族だ。人間より沢山の魔力を持ってる。だから見分けは方は簡単。お前ら、俺が発見したら囲むように動くんだぞ。」


「探知魔法。そう言えば、そんな魔法あったな。」


「いいから動けよ。」


「任せな!」


「頼むぜ、居場所を晒せガキ共。」





 ~俺視点~


 音の反響を利用して確かに聞こえた魔力探知という単語。

 それは俺達を焦らせる要因に他ならない。


 マジかよ。

 向こう側も使えるのか、これじゃ何処に逃げ隠れしても見つかっちまう。

 範囲外に逃げればワンチャンあるが、声の大きさから距離は近い。

 無理だ、逃げきれない!


「どうするにゃ少年。」ぼそぼそ


「探知外に逃げるのが一番良い方法だけど時間がない。見つかるかも・・・」ぼそぼそ


「そ、そんなのってないnもがっ!」


「シー、大きな声出すと一発でバレるぞ。ここはもう覚悟を決めて全員倒すしか、」ぼそぼそ


「脳筋にゃ、」ぼそぼそ


「ウイはどっちでもいいんだよ。」ぼそぼそ


「」あわあわ


 突き付けられる非情な現実に頭を悩ませ、打開策を考える。

 魔力探知を使われたら即バレするのは必然的。

 俺達は今崖っぷちに立たされている。


 逃げるか、隠れるか、それとも戦うか。

 俺達に残された選択肢はこの三つ。

 一番現実的なのは前の二つだが、バレる前提で動くとするならば後者を選ぶのが妥当な所である。


 だが結論は出せない。

 子供の考えられる事はいつだって浅はかなものなのだから、

 しかし、此処で俺が一つの案を持ちかける。

 閃いたのだ。


「(聞きましょう。)」


「魔力探知ってのを深く知ってるわけじゃないけど、範囲内に入った魔力のある個所を特定する魔法ならば、あえて大きい魔力を放って注意を向けさせるのはどうだろうか。これなら敵はより魔力の大きい方へ釣られるように向かって行くと思うんだけど、」ぼそぼそ


「なるほdもがっ!」


「だから大きな声は禁句だ。」ぼそぼそ


「(あえてデカい魔力を放出して囮にするって作戦ですね。可能です。早速やってみましょう。)」


 セラフィー以外も皆は快く承諾してくれた。

 互いにピンチである場面だからこそ、協力して乗り切る。

 追い込まれた時であるからこそ、物事を整理して冷静に行動する奴ほど生き残る確率は上がるんだ。


「よし行くぜ。さてさてガキ共は何処に隠れているのかな?」


 敵側は魔力探知を使った。

 波紋の様に周りを伝わって行く。

 どんなに僅かな魔力の反応も逃さない波の魔が、俺達を探知してこようと迫って来る。


 俺はその波が伝わってくる前に高い魔力を使って魔法陣を描く。

 出来るだけ魔力がそこに集中するように、

 感知しやすいように、


 そして、俺の企みは見事にヒットした。

 敏感に感じ取るために目を瞑ってまで集中している敵術者は全く隠す気の無い高魔力を感知して「居場所を突き止めた!」という。

 それが囮だとも知らずに、


「北側に居るな、それも結構な魔力の塊だ。そこに行け!」


 男は、してやったり、という顔を浮かべて得意げな表情をする。

 遂に追い詰めて捕まえたのだ。


 部下たちは走る。

 感知した場所を取り囲むように向かって動く。

 だが、そこにあったものは子供達ではなくデカい魔法陣だ。


「なっ!魔法陣だと?もしかして、」


「掴まされた!!」


「図られたっ、罠ですよこれ、」


「小癪な真似を、何としても捕まえろ!ボスに怒られるぞ。」


 大きな声を出して下水道の中で騒ぐ部下一同。

 その隙に俺達はタイミングを見計らい、スッと包囲の陣を抜ける。


 そしてあの場所に敵が集中していたのか、敵の魔力を遠くの方でしか感じないと言うセラフィー。

 これは嬉しい誤算である。

 敵が近くに居ないというなら後は楽だ。

 特にトラブルも無く、戦闘も無しに走り続けるだけなのだから、

 だがしかし、俺達はまだ油断してない。

 何故なら、捕まることを頭の片隅で考えてるからだ。


「ねぇアレって!!」


 いきなり鳥の子が前方に指を向けながら明るい声で喋った。

 彼女の目は希望に満ちたように晴れ晴れとしていた。

 俺達は彼女が指し示す前方を見ると、暗闇の中に一筋の光柱が差し込み、神々しく下水道の中身を照らし出している場所がポツンとあった。

 梯子もある。

 それは即ち出口だ。

 俺たちはとうとう地上への脱出口を見つけたのだ!!


「や、やったにゃー!出口だにゃあああ!」


「えぇい、うるさいぞ!獣女!」


「は?お前こそうるさいにゃ!チビ!!」


 おいおい、喧嘩か。

 もうすぐで出口だという時に喧嘩なんて、もしその騒ぎで俺たちの居る場所がバレたら一大事だ。

 ここは無理にでも止めなければ、


 仲が良いのか悪いのか俺には分からないが、ちびっこと獣の子が喧嘩をし出した。

 なので俺が無理にでもその喧嘩を止めようとした時、角の生えた子が二人の襟の部分を掴み上げ、「喧嘩は止せ、その騒ぎで追手が気付いたらどうするつもりだ。」と注意の言葉を促す。


「「すみません」」(にゃ)


 素直に反省する二人。

 もう喧嘩なんてやめて欲しいところだ。


 心の中でため息を吐きながら俺たちはセラフィーを先頭として梯子を上り、地上に出た。

 念願の地上だ。

 肺の中がパンパンになるくらいまで地上の綺麗な酸素を吸い込み、思いっきり口から二酸化炭素を吐く。

 そして、また吸い込み吐く。


 満足です!!!


 今までは下水道のくっさい酸素しか吸えなかったからな。

 地上の空気最高!!

 肺の中が浄化されて行くみたいだ。

 空気ってこんなに美味しいものだったんだね!!


 両手を広げて一人で深呼吸をする。

 若干翼の生えた子が今の俺の様子を見て「この人何しているんだろ?」と言うシンプルな疑問を持った純粋な目を向けてきたが、俺は特に気にしない。


 兎に角地上に出れたことを喜ばしく思うだけよ。


「(やりましたね。皆さん!)」


「おおおおお、ウイは何か久しぶりに地上の景色を見た感じなんだよ!」


「にゃあああああ、私もにゃ!」


「オイラもだな。」


 久々に地上に出れた感覚があるのか、天を見上げながら楽しそうに感想を述べる。

 すると角の生えた子が疑問をぶつけてくる。


「ここは下水道の近くだからあまり長居するのは止めた方が良いのではないか?この地上にも追手が来る可能性は全然あると思うのだが、」


 その言葉に一同、ハッ!という反応をした。

 盲点だったのだ。


「確かに可能性はある。下水道の中は勿論として、地上にも部下を割いて俺達を絶対に逃がさないように力を入れていると仮定すれば危険かもしれないな。」


「(確かにエマさんの言う通りですね。なら、ここからは出来るだけ人目に付かずに移動して、周囲にもこれまで以上の注意を払いましょう。魔力探知で今度は魔力の反応が薄い所を見つけ出して安全な無人の場所を私が探しますので、そこで諸々話し合いましょう。)」


 俺と皆は静かに頷く。

 魔力探知範囲を全開にしたセラフィーは、魔力反応が薄い個所を捜索し出す。


 この町全体を覆える程の規模だ。


 そこから数分後、現在地から地味に離れている所ではあるが、セラフィーはお目当ての場所を見つけ出した。幸運な事である。


「(見つけました。では先程と同じように私が誘導するので皆さんは周囲の警戒をお願いします。我々は人外です。なるべく人目の集まる場所で移動したくありませんので、陰から移動しましょう。)」


 あれ、この場合は俺はどうするんだ。

 俺は別に人外でも何でもないのだが、


「あの、セラフィーさん?俺の場合はどうすれば・・・・」


「(そうですね。エマさんは私たちとは違い人間です。ですが、奴らに狙われてしまった以上私たちと行動を共にするのが賢明でしょう。それにこんな事件に無関係の人まで巻き込んでしまった責任があります。主に私が、ですので何があってもエマさんだけは守り抜きます。」


「そうですか・・・・・」


 余り納得のいかない終わり方をして、しこりを残したまま俺はみんなと行動を共にした。























 ~場所・???~


「やったわね!こうなったらワクワクして応援しちゃうわ!」


「完全に観客目線ですね。〇〇〇様。」


「そうね。でも運命の時まで残りわずか。そろそろ闇の人間が動き出す頃合い。さて、あなたたちはどう足掻くのかしら。といってもあなたたちの辿る運命はもう決まっている。」





 ()()()


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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