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第15話 解放

 ガシャアアアアアアン!!!


 甲高い音がこの下水道の中に響き渡る。

 錠を壊し、牢の扉が開く。


「よし開いた!みんな逃げろ!」


 そこからは今まで囚われていたであろう六人の子供たちが解き放たれては次々とペタペタと素足で出て来る。


 だが同時にズウウウウウン!!というゴツい音が鳴る。


 俺は天井に張り付いていたボスの存在に気付くことが出来ずに攻撃をまともに受けることになった。

 その威力は亀裂が波及して辺りを罅だらけにする。


「(エマさああああん!!!)」


「ふふ、はははははは!殺してやったぜ小僧。本当は生け捕りにしてやりたかったが憂さ晴らしだ。ざまぁねぇってんだ!がはははははは!!」


 セラフィーと子供たちの目の前でボスの一撃をモロに受けた。

 あんな高威力の拳に当たっては俺の体はあらゆる箇所がバキバキに折れて一人で立つ事すら出来ない。

 そんな光景を目の前に、子供たちは絶句。

 恐怖、畏怖、恐れ、戦慄、様々な恐怖の感情が渦巻きながらその場を一歩も動くことが出来ないでいた。


 ボスは続けて言葉を発する。


「さぁ、この人間みたいになりたくなかったら・・・分かるよな。」


 総毛立つ低い声で子供たちに圧を掛ける。

 子供たちは素直に従い牢に戻る為に足を動かす。

 皆さっきまでの希望に満ち溢れた顔から絶望の顔に染まっている。

 また牢の中に入るのか、と子供たちの誰もが思った。

 落ち込んだ。

 希望の目が潰された。


 がその時、ボスの贅肉だらけの腹に魔法が当たる。

 風の魔法だ。


「なぬ!?ブアアアアアアアア!!」


 ボスは吹き飛ばされた。

 それも結構な距離を!


「(一体何が、)」


「危なかった!!死ぬかと思ったよさすがに、土魔法【ロックウォール】。いつでも防御出来るように準備してたんだよね。」


「(エマさん!!)」


 俺は予め設置魔法というこの世界ではあまり使われていないマイナーな魔法を巧みに使い【ロックウォール】を発動させていた。

 仕組みはいたってシンプル。

 対象が俺の設置した魔法の範囲内に入ったら即発動。これだけだ。

 数多あった魔導書の中から発掘した一冊に書いてあった魔法。


「このガキ生きてやがったのか【炎弾・高速連弾】」


 いきなりボスが魔法をぶっパしてきた。

 しかし、今度は確かな実力を持って【ロックウォール】を発動させて攻撃を防ぐ。


 お、覚えていおいて良かったぜ。

 だけど長く持たないかも、


 ボスの放った攻撃は掌から文字通り炎の弾を何発も何発も放って攻撃してくる。

 なので数発程度なら【ロックウォール】程度でも防げるのだが、さすがに回数重ねればそれも段々と厳しくなっていく。

 現に今俺の【ロックウォール】はボロボロに岩が崩れかけていき、罅も入っている始末だ。

 さすがにもうこれ以上は防ぎきれない。



 一方、子供たちはと言うと、



「にゃああああああああ!少年が生きてたにゃ!!良かったにゃ!!てそうじゃないにゃ。どうするにゃ!どうするにゃ!こっからどうするにゃ!逃げるにゃ!?」


「で、でも・・・・に、人間さんが戦っているので・・・・か、加勢するべきでは、ないですか?」


「うむ、私もそれがいい、だが、この拘束具をつけられたままではな。」


「オイラは断然戦うぞ!あの人間に借りを作っておくのも嫌なのでな。」


「(なら、決まりですね。私は鬼さんの拘束具を外しますので、その間にお願いします。)」」


「今回のウイちゃんは怒ってるんだよ!もう、激おこだよ!」プンプン


 それぞれ了解の言葉をその場で言い残し、位置に着く。

 若干このノリについていけない子供たちも居たのだが、そこは一旦スルーする。


「おい、そこの人間。オイラが加勢してやるぞ。」


「え、あ、どうも・・・てちっさ。」


「・・・今オイラの事ちっさって言ったか。・・・いいか、よく聞け!見た目で判断するんじゃねぇ!オイラはこの体の小ささでもちゃんと戦えるんだ。」


「ウイも手伝うよ!」


「おう、頼むぜ。」


 俺たち三人はボスを倒すため共闘、という形で戦う事となった。


「何人いたところで同じなんだよ。ガキはガキ。大人しく大人に従って捕まれやガキ共!!次いでにお前もな人間の小僧。」


 口から汚い唾を飛ばしながら怒鳴り散らかすその姿はどっちが子供なのか疑いたくなるほどに短気でうるさかった。

 口を開いて罵声の限りを言ってやりたい気持ちでいっぱいだが、そんな事をしている場合ではない。

 今は兎に角その汚い口を閉じさせなければならないのだ。


 ボスは一歩前へ出て魔法を放つ。

 だがその魔法をいとも容易く風のバリアで防ぐ。

 緑の翼を背中から生やしたアホ毛が目立つ女の子が防いだのだ。

 この風のバリアは俺の出した【ロックウォール】とは違い、ボスの出した炎の弾を簡単に弾く。


「くっ、ガキでもさすがは異種族と言ったところか。ならば、」


 今度は魔力を溜めて、ボスは俺たちとの直線距離を一気に詰めてきた。

 そして手から炎の魔法剣を作り出して蛇行しながら接近してくる。


 魔法に当たらないようにするための対策なのだろう。


 ヤバイな。この三人の中で近接に特化している奴なんて居そうにないぞ。

 距離詰められたら終わりだな。だったら!


 俺は【ロックハンド】を地面から出しつつ、遠距離で風の刃を生成してはボスを攻撃する。

 この戦法ならば【ロックハンド】に注意を向けている最中に風の刃が、逆に風の刃に注意していれば【ロックハンド】で足を掴まれ、こちら側が攻撃できる時間を稼げるという二段構えだ。


「そう簡単に近づけさせない!」


「そんなしょっぱい魔法なんかに当たるかよ!!」


 的確に【ロックハンド】と風の刃を躱して、壁を蹴っては更に距離を稼ぎに来るボス。

 完全に戦い慣れている玄人の動きであった。


 な、嘘でしょ。

 そんな簡単に!?


 俺の放った魔法は簡単に躱されてしまった。

 だが、それをカバーするかのようにちびっこが【ロッククレイン】を発動させ、鋭い岩の礫がボスに何発か当たる。


「くっ!さすがに複数相手には不利か。なら、」


 身体が徐々に削れて生き、血が飛び散る。


 絶え間なく続く魔法の打ち合い。

 俺も必死に応戦した。

 が、俺の左右に立っている二人はもう二度と捕まりたくないという必死な思いが魔法に出ている。

 特にちびっこの魔法は威力重視の魔法を連発しては壁や天井などが凸凹の穴あき状態になるまで無茶苦茶に放ち続ける。


 だが、逆にその行為が役立っているのか、ボスは近づけないでいる。


 なぜなら、肝心の地面は魔法により舗装されていないアスファルトみたいな道になり、それに加えて亀裂が入り、目に見える程の段差まで出来てしまったからだ。


 このままでは時間が掛かりそうだと踏んだボスは口を開く。


「おいガキ共。無駄な抵抗はやめろ!!既に部下たちに戻ってくる様に連絡したからな。もうお前らは終わりなんだよ!!」


「うるさい!!俺たちはここを出て元の場所へ帰るんだ!!!」


()()()が何を生意気な事を、」


 ん?()()()?はて、いったい何のことやら、

 ボスとちびっことの会話の中に不審なワードが聞こえてくる。


 しかし今はそんな事より、ボスのストレスがピークに達してしまったことの方が重要だ。

 どうやら自分の思い通りにならない奴はイラっとするタイプのボスは両手を前に突き出して下半身に体重をぐっと掛ける。

 魔力の反応からして大技が来ることは直ぐに俺にも分かった。

 そしてちょうどいいタイミングでセラフィーが角の生えた子の拘束を解き終わるや否や全員の脳内に直接指示を出す。


「(全員、最大魔力で防御魔法を展開してください!!!大きいのが来ます!!)」


 俺たちは指示に従い防御魔法を展開する。

 俺は【ロックウォール】を、

 セラフィーは【光の壁】を、

 ちびっこは俺と同じく【ロックウォール】を、

 翼の生えた子は【ウインドウォール】を、

 耳の尖っている子も同様の【ウインドウォール】を、

 獣の子は雷の盾、【雷陣の壁】を、

 そして最後に角の生えた子は【鋼鉄の盾】をそれぞれ発動して攻撃を防ぐ準備をした。


「おらあああああああああああ!食らえや!!!!!死ねえええええええ!!!」


【魔砲滅閃】!!!


 ボスの掌から放たれた煌々とした光は、暗い世界を一瞬で光輝の世界へと変え、一直線上に俺たちへと向かってくる。

 近づけば近づくほど真正面から見たその攻撃は徐々に徐々に大きくなっていき、俺達の展開した魔力最大簡易合体防御魔法へと衝突した。

 すると衝突した瞬間風圧と衝撃波が一気に襲ってきてはズリズリとちょっとずつ後退させられた!!

 反動が強すぎる!!

 それだけこの魔法の威力は強いという事なのだろう。


 一定方向にしか流れなかった汚水が激浪に変貌し、高波を上げては地面へと乗り上げたり壁が剥がれては吹き飛んだりと衝突時の反動は外部にまで被害をもたらした。


 くっ!!!なんて威力の高い魔法だ!!

 押される!!強い力で押される!!!!!


「(皆さん耐えてください!!此処を耐え抜けば魔力の感じからするにあいつはもう戦えません。)」


「にゃあああああああ!」


「うおおおおおおおおおおお!」


 ここで少しでも力を抜こうものなら壁が崩されて皆やられちまう。

 踏ん張れ俺!!!頑張りどころだ。

 子供たちはボスの攻撃に負けないないように声を出して自分自身を鼓舞していた。


「消えろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ボスは更に残りの魔力をこの一撃に込め、俺達を完全に消す勢いで威力を高めてくる。

 今のボスは、どうやら当初の考えだった生け捕りという目的は頭の中からすっかり無くなっており、とにかくムカつくから消す。

 ボスの考えていることは只それだけだった。


「まだまだあああああああああああ!」


「もっと力入れろおおおおおおおおおおおお前らあああああああ!」


「にゃあああああああああああああああああああああ!」


「はああああああああああああ!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 この激しい攻防は30秒程続いた。

 そして暫く攻撃を耐え抜いていると威力が徐々に弱まっていき、光が弱々しく消えて光の粒子が霧散していく。


 決着がつく頃合いだ。


 光が通ったであろう道からは、焦げ臭い(にお)いが立ち上り、下水道の臭いと合わさってもう最悪だ。

 そんな中ボスが喋る。


「魔力切れか、だが、奴らは消した。はははははははははは!!!」


 ボスは完全に今の攻撃で俺達を跡形もなく消滅させたと思っている。

 確かな自信があった。

「俺を前にして反抗したのが運の尽きだ。」と思っていた。


 だが、現実は・・・・・


「なっ!何故生きてるんだ・・・・・・・」


 ボスにとっては予想外の結果だったらしい。


「今だ!!!捕まえろ!」


 俺は声を大にして言った。

 そして、俺が声を出した瞬間に合わせて物凄い勢いで飛び出した子がいる。

 角の生えた背丈のデカい女の子だ。

 その子供はボスに向かって下水道を力強く走り抜ける。


 ドス!ドス!ドス!ドス!ドス!という響きが奴に恐怖を与える。


「や、やめろ!!来るんじゃね!」


 魔力が無くなり戦える力が無くなったボスは情けない言葉を吐く。

 往生着が悪い抵抗もし始めた。


「や、やめろおおおおおお!」


 案の定ボスは角の生えた子供に顎辺りを一発ぶん殴られては力づくで気絶値まで持っていかれてしまい、白目を向いてバタリと横に倒れたのだ。



 何あの子怖い!!!


 これにて決着である。





















 ~場所・???~


「ふむ、二度目の対人戦とはいえ、少々緊張している節がありましたね。本来の自分の力を発揮できていません。自分が直々に教えに行きたいですが、」ぶつぶつ


「あなたそんなに独り言言うタイプだったかしら~。」


「あっ!いえ、その・・・・・・・はい。申し訳ありません。ついつい拙い戦闘シーンを見ている指摘をしてしまうもので、」


「そういう所は昔と変わってないわね。ちょっと安心したわ。」


「自分も、あなたの何やかんや他人を大切に思ってくれている性格に安心しています。世の中に対して罵詈雑言を普段から吐きながらも陰ながら応援している〇〇〇様が他人を気遣ってくれているところに、」


「罵詈雑言?私いつ行ったのかしら。」(#^ω^)


「・・・・・・・・」(-_-;)


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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