表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/55

第14話 囚われの異種の子供達

 声のする方へ進んで行くと一人の男が壁に背を預けていた。

 その奥にはやっぱりと言うべきか、子供たちが牢屋の中に閉じ込められていた。

 しかし、よく見るとその子供たちは普通の子達ではなかった。


 身体の構造が部分的に人間のものではなかったのだ。


 ある子は獣のような耳や尻尾が生えていて、

 ある子は鳥の様な翼を持ち、

 ある子は肌の色が赤く、異様に背丈のデカい角が生えた子供がいたり、

 ある子はさっきの子とは対照的に極端に小さく、

 ある子は光り輝いている子供までいたり、

 ある子は耳が異様に長く尖っている子までいる。


 何あれ?異種パラダイスじゃん。

 ていうか一番肝心のアルフィーが居ないんだけど、どういうことだよ。

 でも偶然とはいえ助けた方が良いよなこれ。

 しかし、あの見張りの男はどうするんだ?

 多分あいつがボスだ。

 部下たちを動かしてたから間違いない。

 強いんだろうな~~、ルイと戦った時よりは成長して俺も強くなっているとはいえ、迂闊に動くのは得策じゃない。


 蒼然な下水道の中で、あれやこれやと思考が絡みついて中々結論が出せないでいる俺に対して、牢屋に捕まっている子供たちの内の一人が俺の存在に気付いた。


 彼女の身体は常に微弱な光を帯びており、暗い空間のせいで一際目立っていた。

 そんな彼女がいきなり俺の脳内に直接語り掛けてきた。


「(あのすみません。そこの人間さん、)」


「うわ!なんだ!」


 あ、やべ・・・・・・・・


 一瞬で青ざめた。

 全身に電流が走ったかのような速度で冷や汗をかき、悪寒が伝わる。

 何処からともなく聞こえてきた声に対して俺は、脊髄反射でつい大きいリアクションを取ってしまったのだ。

 周りを見ても誰もおらず、声からして女性だ。


「おい、そこに誰かいるのか!出てこい!」


 ですよね~~~~。


 先ほどの声で居場所がバレたのか、コツコツと足音を立てながらボスが近づいてくる。

 なので居場所を変えようと動きを見せる時、また何処からともなく声が聞こえてきた。


「(すみません、私のせいで。)」


「っ!・・・・」


 あっぶな!また思わず声を出すところだった。

 で、一体どこから声が・・・・・・。


 危なくまた声を出すところであったが、急いで両手を口元へ持って行き、強く押さえつける。

 俺は周りをキョロキョロしながら声の正体が何処に居るのかを探し出す。が、その正体は見つからず、一歩一歩近づいてくる不気味な足音が大きくなって行くだけである。


 仕方ない、一旦距離を取るか。


 俺は立ち上がり、足音を立てずにこっそりボスから距離を取る。

 だが、また声が聞こえる。


「(あの、)」


 ええい、いったい何処にいるんだよ!

 俺今忙しいの!


「(すみません!すみません!ですけど、話を聞いてもらえないでしょうか。今頼れるのはあなただけなんです。あと、私と喋る時は心の中で念じれば会話可能です。)」


 ・・・・・・・どゆこと?


「(まずは自己紹介を、私はセラフィーと言います。先ほどあなたは牢屋の中に入っている子供たちをご覧になったと思います。)」


 あぁ、そしてその子供たちを見張っている奴が今俺に近づいて来ようとしているんだよな。って、俺結構普通に喋ってるな。


「(その中に黄色い光を発している子供がいたと思うんですが、それが私で、今あなたの脳内に直接語り掛けています。)」


 え、何それ怖い。


「(それで単刀直入に言います。私たちをこの牢から救ってくれないでしょうか。)」


 まぁ、そうなるよな。

 でも俺は今思わぬハプニングで居場所がバレて逃げる途中なんだよ。

 ていうか、そもそも原因作ったのはお前だからな、


「(すみません、すみません。)」


 なんかやたら誤る子だな。

 だけど、こっちだって今見つかるわけには行かないんだ。


「とりあえず仕切り直して、」と心の中でセラフィーと名乗る子供に語り掛けていると、人の話を最後まで聞かずして話を捻じ込んできた。


「(大丈夫です!!私は精霊と人間との間に生まれた稀子、希少種(ルーン)です。つまり精霊とのハーフである私は魔力探知に優れて、例え壁越しであろうと何だろうと相手の魔力を探知して常に位置を把握できる力を持っています。ですので私があなたを牢まで安全に導くのでどうか、お願いします!)」


 無理やり会話を捻じ込んで、どうにか俺に助け出させようと案を持ち掛けて来る。

 必死な思いで俺に喋り掛ける。


 なので俺は葛藤した。


 一度体勢を整えた状態でまた来るか、それとも助けるべきか、を。

 当然助ける方にも何かのトラブルでボスに見つかるリスクはある。


 だが、俺は考えた。


 仕切り直すと言っても出口が分からない以上この下水道の何処かに留まる必要があるという事。


 こんな深くまで来たんだ。

 出口の場所なんてとっくに忘れちまったよ。


 逆に、いつ部下たちが戻って来るのかも分からない状況下で下手に動くのは危険であり、寧ろ子供達を助けた方がこのセラフィーとかいう少女の魔力探知で安全に出口まで行けるのではないのか?と。


 それに目の前で捕まっている子を放置するほど俺は腐っていないしな。

 という事で結果として、セラフィーの提案を承諾することにした。

 彼女があんな必死な思いで助けを懇願してきたら無下には出来ないというものよ。


 分かった。

 俺はどうすればいい?


 俺は彼女に返答する。


「(ありがとうございます!ではまずは、私の魔力(マナ)探知で敵の居場所を把握します。そしてえっと~~、そういえばあなたのお名前聞いてませんでしたね。ははは、)」


 そういえばそうだったな。

 俺はエマって言うんだ。

 よろしくね。


「(はい、エマさんですね。分かりました。)」


 それから話は続き、一つの作戦を立てた。

 その作戦とは魔力探知を使っての隠密行動。

 敵にバレずに子供たちを救出して上手く逃げる所までがミッションだ。


 もうバレたけど。


 セラフィーさんが言うには、魔力探知で敵の魔力を避ける形で俺を牢まで誘導して助けると言ったものだ。

 正直まだ魔法という概念を分かっていない節があるが、今は従おう。


「おおい!そこに誰かいるのか!」


 シーーーン


「・・・チ!いるなら早く出てこい、今出て来てやるなら半殺しで許してやる。」


 誰が出て来るかバーーーカ!!!

 セラフィーに誘導されながらボスが居るであろう方向に舌を出し、ベーとした。


 それにしてもこんな所早く出たい。

 臭くてたまらないよ。


「(エマさん、そこ右です。)」


 はい。


 俺はセラフィーさんの案内に素直に従い移動中だ。

 この下水道は知っての通り、地上で使った水をそのまま捨てる言わばゴミ箱みたいな所。

 地上の色んな個所から使われた水が一か所に収束してこの下水道に送られてくる。


 だからこそ、それだけルートが何本もあり、敵を撒きやすい構造をしている。

 なので、ボスがいる箇所を的確に避ける形で、且つ沢山あるルートを上手く使って着実に距離を稼ぐことが出来ている。

 今のところは順調だ。

 安全運転で遠回りになるルートや、近道になるルート、絶対に通っては行けないルートも脳内で直接伝えてくれて前進することができる。

 道を右や左やらに行きすぎて、もう俺視点からすればグネグネの訳の分からないルートを行っているのだが、脳内に直接響くセラフィーさんの声を聴いているとそうでもないらしい。


 そうして、セラフィーさんの安心安全カーナビゲーションでこのまま敵に見つからない様に進んで行く。かと思いきや、壁から噴火の様に炎が吹き出した!!


 ズドオオオオオオオオオオオオン!!!


「「!?」」


「・・・チッ!ハズレか、」


 ボスが魔法で攻撃してきたのだ!!


 び、吃驚(びっくり)した!!!!

 何だ今のは!?

 もしかして居場所がバレたのか!?


「(落ち着いてくださいエマさん!あれは当てずっぽうです。何処に居るか分からないからこそ適当に魔法を放っては徐々に恐怖を植えていく作戦でしょう。)」


 心臓に悪いよ・・・


「オラアアアアアアアアアアア!!!」


 それからもボスのビビらせ攻撃は続く。

 手当たり次第に攻撃しては振動を響かせ、俺の心臓にまでいらぬ恐怖を与えてくる。

 数十秒前まで俺が居たであろう場所には黒焦げになった窪みが出来ており、足の動きを止めていたなら・・・考えたくもない。


 ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!


 直撃こそしないものの、ちょっとした爆風による影響で飛んできたコンクリート等の破片飛沫で怪我を負う。

 脹脛(ふくらはぎ)や腕なんかに切り傷を負って流血する。


 ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!


 それでも俺は痛いのを我慢して突っ走る。


「(もう少しですよエマさん。最後にそこの道をもう一回右に行けば目的地到着です。)」


 ズドン!ズドン!ズドン!


 おう、


 ズドン!ズドン!ズドン!


 恐怖心を煽ってくる音と共に俺は、セラフィーさんの言葉誘導通りに右にルートを曲がる。

 最後の誘導だ。

 すると、そこには先程とは反対方向に出た。

 少し遠くの方を見ると背を向けたボスが物恐ろしい顔して破壊の限りを尽くしていた。


 幸いボスは間抜けな事にこちら側に気付いていないみたいだ。

 なのでこの隙に囚われている子供たちを救出する。


 ズドン!ズドン!ズドン!


 よし、辿り着いたぞ。


 ズドン!ズドン!ズドン!


「(流石です。)」


 いやいや、セラフィーさんの誘導あってのものですよ。


 作戦通りの結果に思わず頭の中で褒め合う二人。

 だが、まだ油断は出来ない。

 子供たちを牢から出して気付かれずに逃げる、そこまでがこの作戦の一連の流れ。

 慢心していたら最悪の場合、一瞬で命が散ることになるかもしれない。


 ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!


 ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!


 縁起でもない事を考えながら苦笑いする。

 そして、錠を前に狙いをつけて魔法を放つ準備をする。


 ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!


 ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!


 しかし、計画や作戦というものは最初から上手く行くという前提で行うものでは無い。

 あくまで流れや行動を決める為の計画書。

 そこに何らかの予想外のトラブルが入りでもしたら基盤から崩れて全て水の泡になる。


 ()()()()が・・・・である。


「にゃ?もしかして助けが来たのかにゃ!?」


「!?ウイを助けてくれるの?」


 今までは声を出さずしてセラフィーとだけを会話をしていたからこそ気付かれなかったが、牢には沢山の子供たちがいた。


 子供たちは各々俺の存在に気付いた途端に助けを求めてくる。

 牢の隙間から手を出し、顔を近づけて来ては必死に懇願してくる。

 助けの声はこの下水道の空間に反射して響き渡り、一定距離にまで起伏が激しい残響を残す。


 これはピンチだ!!


 俺とセラフィーは、あっ、と思わず心の中でこの後の展開を察してしまった。

 全身に要らぬ冷や汗をかき、今にも心臓が飛び出しそうなピンチと焦り!

 悪寒を敏感に感じながら徐々に後ろを振り向く・・・


 すると・・・


 あれ?ボスがいない。

 消えた・・・

 もしかして気付いてなかったのか?


 俺が振り向いた正面にはボスの姿は無かった。

 さっきまで騒音を鳴り響かせていた公害おじさんが居なくなっていたのだ。

 その事にちょっぴり安堵の息を漏らす。


 危ない危ない。

 どうやら奇跡的に気付かれていなかったみたいだな。

 なら引き続き錠を壊して囚われている子たちを自由にしてあげr、


「(エマさん上です!!!!!!!!!!!)」


「!?」


 突如として牢に入っているセラフィーが、前に居る子供たちを両手で押し退け、前へ出ては焦りの色を浮かべながら狼狽する!!

 そして脳内で必死に注意を促す!!!


「見つけた。」


 ボスは足に粘着性のある魔力で蝙蝠の様に天井に張り付いて目を光らせていた。

 拳には地面に罅を入れたであろう魔力を纏わせ、一息に飛び込んで来た!

 俺を殺す勢いだ!


 気付かれた俺は慌てて鍵穴に直接魔法をぶち込む。

 逃げることはしなかった。

 防御する事はしなかった。

 ただ俺がこの場面で取れる選択肢は回避云々より助けてあげる、この一点だけであった。

 見つかった以上もう、隠密だの音を立てずだの言っている場合ではない。

 一刻も早く子供たちを解放する、それが俺のすべきことだった。


 ガシャアアアアアン!!


 俺は施錠されている鍵を破壊することに成功した。

 だが、その対価としてボスの攻撃をまともに受けてしまう事態に!?!?


「あっ、死ぬ・・・」


 ズウウウウウウウウン!!!


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ