第12話 迷子の迷子のアルフィー探し
『素材換金点・イロヨリ』からガムトを換金し終えた後、何故かルイ以外の皆が姿を消していた。
ルイは怒っていた。
突然みんなの姿が消えて、尚且つ自分一人置いて行くなんて何事だ、と。
なのでルイは直ぐに『素材換金点・イロヨリ』から急いで外へ飛び出して皆を捜す事になった。
「くそ、あん畜生ども!何勝手に俺を置いてっているんだよ。行くなら行くって一言掛けてくれてもいいものを、ピクニックにし来たわけじゃないんだぜ。とにかくあいつらが行きそうな所を手当たり次第に探し回るしかないか。」
そう言ってルイは町中を探索し始める。
その頃、こちらも突然いなくなったアルフィーを捜す為、町中を探索し始めている俺はと言うと、ベンチに腰を下ろして現在休憩中だ。
「これだけ捜しても居ないなんて・・全く・・・どこ行ったんだ?アルフィーの奴。」ハァハァ
息切れしながらもしっかりと目線だけは前を向いて、アルフィーの姿を見失わない様に気を張る。
今の俺は町に来てから早々観光気分じゃなくなっていた。
アルフィーが見つからず焦っているからだ。
このまま見つからなかったら俺は後からルイ達に何言われるかわかったもんじゃない。
「考えただけでも恐ろしい・・・怒鳴られるんだろうな。公衆の面前で怒られるんだろうな・・・・いやいや、そうならないために捜しているんでしょうが。出来るぞ、俺なら出来る。そうと決まればアルフィー探し続行だ。」
気持ちを一旦リセットし、ベンチから重い腰を上げて人混みの中へと再び入る。
汗をかきながら俺は真剣な眼差しで右を向いて見たり、左を向いて見たり、正面から歩いてくる人を器用に躱しながら捜す。
それから数時間後。
「いねぇ、全くいねぇ。見つかる気がしない。」
どれだけ捜しても全く見つからない。
それどころか金髪の人が一人も居ないし、情報を集めようにも俺コミュ障だから赤の他人に気軽に話し掛けれるほど上手に喋れない。
学校でも俺は教室の角の方でずっとラノベばっか読んでいたタイプだし、たまに同じクラスの子とかに話しかけられた日にはもうテンパって動揺してた。
言葉なんて出なかったよ。
今思えば情けない過去の事よ、
その所為か友達なんて一人も・・・・・
過ぎた過去の事を思っても悲しくなるだけなのに・・・・
あれ?気のせいかな?涙が、
思い返したくもない過去に触れながら、両手を両膝に置いて重くなった腰を落として前屈みになる。
地面と睨めっこしているからか、額の汗が石畳に向かって雨の如くぽつぽつと降り注ぐ。
結構な量だ。
「このまま続けていても一向に見つかる気配がしないな。ここは当たって砕けろの精神でいっちょ他人に話しかけてみるしか、」
勇気だぞ俺。
前へ一歩踏み出す勇気を、
大丈夫、話しかけてアルフィーの目撃情報を集めるだけ、
何も特別な事をしようとしているわけじゃない。
「すみません」から入って「ありがとうございます」で立ち去ればいいんだ。
この世界の人達はみんな優しい人だと信じているからきっと親切な対応をしてくれるはず。
俺はありったけの勇気を振り絞り、一人目の通行人に話しかけた。
緊張しすぎて顔が強張ってるのが傷だが、
これでも俺頑張ってるんだよ!!
一生懸命なんだよ!!!
「あのすみません。」
「なんだい坊や。何か用かい?」
最初に話しかけたのは如何にも主婦って感じの女の人だ。
太めの体型に、くるくるテンパの白いエプロンを付けたおばさん。
そんなおばさんは、まだ小さい俺にやさしく言葉を返してくれた。
どうやら話を聞いてくれるようだ。
「えっと、迷子になった子を捜してるんですけど・・・金髪で背丈が俺と同じ位の女の子見ませんでしたか?」
「金髪の女の子ねー・・ん~~~見てないね。」
そうだよな、一発目で情報が出るわけないよな。
でも赤の他人に話しかけられたのはちょっと嬉しい。
ちょっとだけ嬉々とした感情を抱きながら俺は一言誤りを入れて、他の人に情報を貰うために此処を立ち去る。
「そうですか。すみません急に話しかけちゃって。では俺はこのくらいで。」
それから一人目の通行人から、見ていない、と言う情報だけを携えながらコツコツと道なりに歩く。
そして暫く経った頃、俺は再び勇気を振り絞って人に尋ねる。
「すみません。ちょっといいですか。」
「ん?僕のこと。」
次に話しかけたのは青年だ。
高身長と言う男性としてのアドバンテージを持っており、体つきは服越しから見える程に鍛えていると一目でわかる体躯。
明るい茶髪に白い肌をしており、目がまん丸で一見優しそうな二十歳前後の人。
「はい。えっとそれでですね。ちょっと人捜しをしているんですけど、金髪で背丈が俺と同じくらいの可愛らしい女の子見ませんでしたか?」
「ふむ、金髪の子は此処に来るまでに何度か見たけど、背丈が君と同じ位と言うなら子供だよね。それなら視界の端にチラッと見えたんだけど、確か・・・もうちょっとこの道を進んだ所で見たね。」
「ホントですか!!」
「え、うん」
「情報提供感謝します。では俺はこの辺りで、時間使わせてすみませんでした!」
よし、アルフィーの目撃情報ゲット!
まさか二回目で目撃情報らしき情報が手に入るとは、ラッキー!
なんか犯人の証拠見つける探偵みたいな事になってきたな。
ちょっと気分乗ってきたぞ。
よぉ~~し、このまま調子に乗って聞き込みだ!
さぁ、次は誰に話しかけようかな?
完全に探偵業をしている気分になり、やる気は徐々にウナギ登りに!
最初の時と比べたら大分慣れてきた模様だ。
やはり人間は慣れが必要なのだ。
俺はそれからも聞き込みを続けた。
中年の太った人や、美しい女性、子供や老人など様々だ。
結果的にアルフィーに関する情報を持っている者はいなかったが、やる気だけは十二分に獲得することが出来た。
そして、聞き込みを続けて16人目くらいで遂に!!!
その情報を持っている人を見つけた!
その人物は俺と同じくらいの少年だ。
まだ純粋無垢な瞳をしており、社会の闇を知らない可愛らしい少年。
特に舐めた態度を取らず、懇切丁寧に情報を提供してくれた。
何と優しい者なのだろうか。
世界がこんな子で溢れたらいいのに、
だが、その情報を聞く限りだと、少しばかり面倒くさい内容なのだ。
完全に厄介ごとに首を突っ込む情報。
その内容とは、
「そのアルフィー?ていう子か分からないけど、そこの路地裏に金髪の子が怖いおじさんたちに連れて行かれた所を見たけど、その子かな?」
「え、おじさんって・・・それ大丈夫なの?」
まさか、エロ目的で裏路地に連れ込んで他人に言えない行為をしたりしなかったり・・・・・なぁあああああああああ!考えただけでも破廉恥だ!!!
「わからないけど、助けに行くなら止めておいた方がいいと・・・・僕は思う。」
「ど、どうしてだい。」
「だって、大人が複数人いるんだよ!それに物騒な雰囲気だったし、絶対まともじゃないよ。多分だけど闇の世界に生きる人達なんじゃないかな?」
「闇の世界?」
「うん、裏で取引している悪い奴等。生き物、道具、情報など、決して表世界では取引できない様なものを売買している世界だよ。
そこの世界の住人は特に情報の伝達に関してはエキスパートだからあまり関わらない方が賢い選択だってお母さんが言ってた。
一度目を付けられた人が過去に何人も居て、逃げられたケースが数える位しか無いんだから。
奴らの情報網は半端じゃないよ。」
裏の世界で生きている人たちと言うのは俺も何となくだが分かる。
奴隷とか違法な事とかを平気でやる云わば極悪非道の悪人たちの世界。
まさかこんな序盤の町で聞くとは思わなかった単語だが、それでもアルフィーである可能性がある子があの裏路地の中に連れていかれたという情報は見過ごせない。
この少年の言う事ももっともである。
言いたい事は分かるが、もし、もしその金髪ちゃんがアルフィーだったならどうしても助けに行かなくてはならない。
行ってみるか?
助け出せそうなら俺の魔法でブッ飛ばして逃げればいいだけの話だし、
それから俺は悩んだ末、少年の話を聞いて助けたい気持ちが優先してしまい思わず少年に「ありがとう」とだけ言い残し、例の路地裏に俺一人で入って行った。
俺が路地裏に入って行く所を後ろから見守っていた少年の顔は、俺を止めるかどうかで危惧の念を抱いた。
しかし、出来るだけこういう世界には関わらない方が良いというお母さんからのアドバイスが脳裏を過って足を止めた。
段々と離れて消えゆく俺の小さな背中を見つめて、
~場所・???~
「闇の世界。私たちが今いる所と同じね。」
「そうですね。悲しいことを思い出します。」
「それは私もよ。だけどもうすぐ、もうすぐ運命の歯車が回るポイントに辿り着くわ。楽しみね。今度は失敗しない様に気を付けないとね。」
「肯定。」
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