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第11話 隣町・ドラウンへ!

 ルイとシークのやり取りから約30分後。

 俺達は隣町が見える所まで辿り着いた。


 メンバー編成はこんな感じだ。

 俺、ルイ、シーク、アルフィー、クリス。


 何故俺まで行かなきゃならんのか、クリスとかアルフィーも付いて行く必要ないんじゃないの?

 ルイとシークだけで十分でしょ、と最初のうちは考えてたけど、俺の考えは外に出た途端急変した!

 何故なら、道中に俺の見たことのない動物が生命力を滾らせて春風吹く中動いていたからだ。

 前に突き出ている四本角の一つ目鳥に、大きな体を持っていながら異様に手足が短い動物たち、やたらフワフワとマシュマロみたいに白くて可愛いペンギンなどだ。


 これだけのものを見せつけられたら流石に俺も興奮するというものよ。


 目新しいものしかないこの世界の中で俺は本格的に心の底から()()に出てみたいと、この時初めて思った。


 だってこんな見たことのない生物たちがいるんだよ。

 冒険しないと損じゃないの!!

 孤児院から隣町へと移動する道中だけでこんなにも新しいものに出会えるとは、俺は今とても感動している。

 一切合切、色んな土地に行ったらどんなものが見られるのか?

 そしてその先にあるものとは、く~~~~!妄想が止まりませんな~~~!


 隣町ドラウン。


 その町は、東京ドーム一個分の大きさを持つ町。

 外的要因から守るためか、町の周りには高さ30mの外壁がある。

 そのお陰で魔物などの侵入を防ぐ役割があり、この町の平和と安全を守っているのだ。


 駆けだし冒険者などは大助かりであろうな。


 その光景は感動すら覚えるものである。

 そんな町に俺たちはガムトを買い取って貰うために行く。


「ほぁああああああ!エマ見て見て!町だよ!」


「あぁ、町だな。」


「そっか、お前たちはまだドラウンを見たことがなかったな。だったら町に入ってから存分に見て回れ。やることやったらな。」


「「はい!」」


 勢いよく返事をしてルイの言葉をアルフィーと一緒に返す。


 荷車を頑張って引いているシークは疲れたのか、移動ペースが下がってきている。

 だがシークも久々の外だからか、ちょっとルンルン気分が顔から漏れ出ている。

 楽しみなのだろう。


 クリスは読書をしながら「ふふふふ。」と気持ち悪く一人で笑っている。

 魔導書って何か笑える要素あったっけ?

 俺と二人っきりではないからか、無言で魔導書と睨めっこして視線を外さない。

 怖いんだけど、


 だが、そんなクリスもチラッと町を時々一瞥している。

 やはり外の世界はクリスにとって、魔導書と同じくらいに興味を齎す要素なのだろうか?


「わああああああああああああ!」


 アルフィーは今日も元気いっぱいだ。

 俺と同じで初めて町を見るのだから興奮が抑えきれないのだろう。

 分かる、分かるぞアルフィー。


「おっと、もうこんなに込んでいるのか。」


 俺たちは今、隣町・ドラウンへ入るために正門を目指していた。

 だが、その正門の前は人がずらりと並んでおり行列状態にある。

 右や左にグネリながら蛇行して並んでいる。


 皆、この町へ入るために早朝辺りから待っていたのであろうか?


 いや否!!!

 断じて否である!


 この行列は全てガムトを換金してお金を貰おうとしている冒険者や腕に自信がある者。

 ガムトを使った屋台やら料理やら防具や素材、その他諸々の理由などからお金にしてやろうと集まる自信家達だらけだ。


 完全にビジネス目的である。


 俺達が町へ入るためにはこの行列へと足を踏み入れなくてはならない。

 だけど真に恐ろしいのはこれでもまだ空いているというルイからのあっさりとしたセリフであった。


 え、これで空いているだと!?

 こんな蛇みたいな列が出来ているこの状態を空いているとお前は言うのか!?!?

 蛇を通り越してアナコンダ位のレベルと言ってもいい程だ。

 異世界の住人共の感覚は分からんな。


 町へ入るためにはこの行列に並んで待つしかない。

 なので俺たちは仕方なく「きっと長くなるんだろうな~」と思いながら長い長い時間の間、並んで待つことにした。

 気長にな、




 それから待つこと約1時間。




「まだか!!」


「長いわよね~~。ていうかエマ~、見てよあのガムト。でっかいわね~~~。」


 シークが俺の肩をつんつん、と突いてから遥か前方に居るデカいガムトを指さして俺に伝えてくる。

 俺達の討伐したガムトより立派なガムトだ。

 ふっくらとした丸い身体が明確に分かるよう赤い綿を全て剃り丸裸になっている。

 それが3匹ほど。


 しかし、今の俺には素直に感動できる状況ではない。


 両腕を組み、地団太を踏みながら眉間に皺を寄せていつ来るかもわからない順番に腹をイラ立たせていた。

 想像以上に長い待ち時間だ。

 歯ぎしりをしながら四苦八苦している俺はギャーギャーと文句を言っていた。


 そんなこと言ってる場合か!

 いいんだよそんな事!

 こちとらほぼ棒立ち状態で待っとるんじゃい!

 もういいかな。

 魔法で前の奴等全員力づくで退かしちゃってもいいかな?

 良いよね!!!

 吹き飛ばしても文句言われないよね。

 ていうか言わせないけど、


 我慢の限界を迎えた俺の心境はすごい荒れていた。

 それはもう水面が津波に進化するレベルで、

 だけどさすがに面倒ごとは避けたいという俺の優しい心が悪い心を抑制する。

 早く番回ってきてよ~~~。



 それからさらに数十分後・・・



 さて、とうとう俺たち御一行の順番がもうすぐ傍まで迫ってきているようだ。

 長かった。

 ホントに長かったよ。

 早朝からガムトを狩って、それから隣町へ行こうと決められ、挙句の果てには一時間以上かかる時の中で棒立ち。

 辛くて辛くて体中の筋肉が怠さを主張し合っている。

 腓腹筋(ひふくきん)が震えている。

 がしかし、もうすぐその運命という名の頸木(くびき)から解き放たれるところまでようやく来た。

 早くしろ!!!


「よし、もう少しだな。」


「ルイ。」


「なんだエマ。」


「銅貨2枚とは言うけどそれは一人分が払う金額でしょ。」


「あぁ、そうだが。」


「えっと、つまり今此処に五人いるから銅貨十枚払わなければならいという事だよ。貧乏人なのになんかもったいないよ。」


「や、やめろよ。考えないようにしていたのに。と普段なら言うところだが、今回ばかりは違う。」


「え?」


「忘れたか、このガムト達を売ってお金にするんだぜ。銅貨十枚程度直ぐ元が取れる。おつりも大量にくることだしな。」


「あ、そっか・・・長いこと放心状態で突っ立っていたから忘れてたよ。」


「ふ、まぁ人生の先輩から言わせてもらうとだな、もっと視野を広く、周りをよく見て物事を考えることが大事なのだよエマ君。」


 ぐっ、ルイに言われるとちょっとイラッてくるが、仕方ない。

 今回はこっちが失念していたからしょうがいない。

 がしかし、中身は俺の方が年上だ!


 ・・・あれ、それって大人として更に駄目じゃね?


「次の者、前へ!」


「はい。」


 おっと遂に俺たちの番か。


 前に立っている警備兵的な人たちが俺達に話しかける。

 二人いる。

 その警備兵は艶々してる全身鎧に白い兜を被っており、長い槍を携えて俺達の行く手を交差させることにより阻んでいる。

 不審者を入門させないようにするためだろう。

 手には籠手(こて)を着け、光沢がキラリと輝く全身銀のメタリック装備だ。

 そんな中世感漂う格好をしている。


 本や学校の教科書なんかで見かける事が(たま)にあるアレだ。

 俺も実際見かけたことがある。

 そんな警備兵が身分証の為、プレートか銅貨の支払いを要求してくる。


「すみません身分証持ってなくて銅貨でお願いします。」


「分かった。一人分が銅貨2枚で連れが五人いるから合計で十枚だ。」


「はい、これでいいですか。」チャリン!


「よし、通れ!」


「さぁ行くぞお前ら。」


 硬貨を人数分キチンと支払い、交差させていた長槍が開けた。

 そして石で出来た門を潜り、いざ町へ!




 現在地:~隣町・ドラウン~


 ここはドラウン内部。

 綺麗に舗装された石畳の床に、色鮮やかでお洒落な町並み。

 その姿は異世界感を十二分に醸し出す。

 小さい町ながらも十分に活気づいており賑やかで、人々の声が絶えず流れている。

 町を歩いているそこら辺の人達も楽しそうだ。

 そんなイタリア間のある町。

 それでいて、俺がアニメで見て来たファンタジーと同じ光景だ。


「おぉ!アルフィー見て見て!屋台があんなに並んで、お店もズラリと並んで孤児院の周りの風景と比べたら段違いだな。人も四方八方にいるし、」


「すごい!すごい!」


「おいお前らあんまり遠く行くな。用事が先だ。」


「「はい・・・」」シュンッ


 ルイの一言によりテンションUP↑からのテンションDOWN↓

 俺たちは町に入門するや否や早速と言わんばかりに所々を津々(しんしん)と見渡す。

 そして、見たことの無い新奇要素が俺の脳内コンピュータ許容上限を軽く超えて来る情報の多さに驚きと感動を与えて来る。

 完全に目的を忘れる程に、

 だからこの場面とタイミングで行動を制限されるような事を言われるとさすがにテンションも下がるというものよ。


 しかし、こんなにざわついた所に来るのは超絶久々だな。

 異世界に転生してからというもの全くと言っていいほど面白くもない所にいたからか、人が沢山いる所の空気をすっかり懐かしんでしまった。


 後でアルフィーと一緒に色々回ろうかな。


 町を見渡しながらルイ達と一緒に行動する。

 早くガムトをお金に変える為に、


 ざわざわざわ


 ん?何だ?

 なんか言われているな。

 なんだろう?


 町に入ってからはガムト達を傷つけないように、人混みの中をスローペースで進んでいる。

 特に寄り道をしないで一直線コースでだ。


 しかし、周りにいるギャラリー達が何やら騒がしい。

 視線をこっちへと向けて関心の目を向けて来る。


 何か噂でもされているのかな?


 頭に疑問符を浮かべながらも周りの声を気にせず進んで行く。

 そして暫く経つと、俺たちの荷車を囲むようにいつの間にか人だかりが出来ていた。

 もっと言えば、この町に入った時点で俺たちを見た途端、興味深そうにコソコソ話を周りの人達と話し始めながら徐々に距離を詰めてきたのだ。


 一体何事か、と思って俺は魔法で聴覚を研ぎ澄ませる。

耳強化(ヒアーアップ)】という魔法を使う。


「あら、立派なガムトだこと。」


「おおぉ!ガムトだ。そう言えばもうその季節だったか。」


「そうだな、この季節はガムトの肉が最高に美味い季節であり肉厚がすごいことに。」ジュルリ


「おいおい汚いな。」


「すまんすまん、想像したら(よだれ)が、」ジュルリ


「あのガムト分けてくれないものか。」


「今回はすごい個体ばかりね。上物だは、」


 どうやら、荷車に沢山積まれたガムトの山に注目していたようだ。

 人々の視線を釘づけにしている。

 それくらい遠くから眺めていても目立っているのだ。

 赤いから余計に、

 その視覚情報は俺が思っているより効果抜群で、だからこそ遠くから住民を呼んでは人が増えて来て荷車の進行方向を塞がれる。

 左右前後を囲まれているのだ。


 抜け道がねぇ、

 招き猫でも置いてあるのか?


「おいおい、これじゃ通れないな。」


「そうね~、どいてくれないかしら~。」


「仕方ない。すみません!ちょっと退いてください!」


 ルイが前方の人たちに言うと、「あ、すみません。」と言い素直に退いてくれた。

 ざわざわ、と騒ぎながらも素直に退いてくれる人たちの目はそれでも完全にガムトに目が集中していた。


 この辺ではあまり取れないという事もないが、討伐ってなるとそれなりの強い攻撃魔法が必要だから一般人には討伐できないのだ。

 それに角に当たったら最悪死ぬケースもある。

 危ないのだ。


 ホントにこの時期のガムトって人気なんだな。

 シスターの言っていた通り祭りの雰囲気だ。

 賑やかしいこった。


 シークが重い荷車を引っ張って移動すること約35分。

 ようやく目的地に辿り着いた。

 短いようで長いような。


 そこは、『素材換金店・イロヨリ』と看板に大きく書いてある店だ。

 文字通り素材限定で換金してくれる施設だ。

 魔石や魔鉱石、モンスターの部位、薬草から希少価値のあるものまで素材であるならば幅広い範囲で買い取ってくれる。


「ここだな。」


「やっとついたー。」


「エマ~疲れたよー。」


「そうだな、俺たちは奥の方で休憩しておくか。」


「・・・うん。」


 一時間以上並んだ上に町中まで短い距離ではあるが、見て回ったのだ。


 俺達若者の足はとうに限界を超えていた。

 歩く度に微かな痛みが足の裏から伝わってくる。

 であるからして、俺とアルフィーはルイ達から遠く離れない程度の所で休憩出来る所を探すため、『素材換金店・イロヨリ』から距離を取る。


 出来ることならベンチとか座れる所が好ましいが、それっぽい所は今のところ見当たらない。

 お店の中には座れる様なオブジェが無く、代わりに色んな魔物やら動物やらの素材がそこら中に飾られている。


 その間ルイは、『素材換金点・イロヨリ』の店主に十六体のガムトを見せて換金している。

 換金するだけと言っても中々時間が掛かりそうなのでシークやクリスも町の各方面に向かって単独行動し始めた。


 久々に来た町を見て回りたいのだろう。


「本屋は・・・・・・あっち。」


「掃除道具や便利な道具が売っている店はあっちだったかしら~」


 クリスは『素材換金点・イロヨリ』を正面から見て左へ、シークは右へと歩いて行き、完全に『素材換金点・イロヨリ』の中にはルイ一人となってしまった。

 これが世間一般で言う()()()と言う奴なのだろう。


 その頃俺は、というと、

 丁度ベンチ的なオブジェがあったので二人で座って休憩していた。


「それにしてもこの町はいいな~。俺も将来はこんな町に住みたい。色んな人が通って屋台まであって明るい町だ。孤児院とは雲泥の差だ。はぁ、換金は結構時間が掛かりそうな感じがしたし、暇だな~。ね、アルフィー。」


 俺はアルフィーの名前を呼びながら横を向く。


 すると、


「あれ?いない!」


 俺の視界からアルフィーが姿を消していた。

 この瞬間、一番焦ったのは言うまでもなく俺だ。


 や、ヤベェー!アルフィーが居なくなった!

 何処に行ったんだ!?

 迷子にならないようにシスターに散々口酸っぱくして言われたのに早速この様か!

 とにかくアルフィーを探さなきゃ。


 突然いなくなったアルフィーを探す為に俺は、急遽(きゅうきょ)『素材換金点・イロヨリ』から遠ざかってしまう結果になる。

 アルフィーの事を捜す為だ。


「しまった!完全にやってしまった。このまま一生見つからなかったら俺殺される!アルフィー!!!」


 ただ探し回るのでは時間が掛かりすぎて見つからないので俺は、デカい声でアルフィーの名を叫びながら走り回る。

 初めての町をじっくり見て堪能したいという欲望を抑えて、横にズラリと並ぶ屋台を見る。


「あれ美味しそうだな~、お肉が恋しいよ。味の薄いスープにカッチカチのパン。食べて見ればお腹が膨れた感覚が無く、一日が終わる。」はぁ、


 重い溜息を吐きながら物悲しい感想を小さく呟きながら走る。

 体をふらつかせて屋台の芳ばしい匂いの誘惑に誘導されながらも己が欲望と対峙して格闘する。

 それでも負けじとアルフィーを見つける為に前を進む。



 何処行ったんだよ!!!!



 数時間後・・・



 ~ルイ視点~


「はい、これで全部換金できました。これが換金した金額です。どうぞお確かめを、」


「どうも、・・・・・よし、大丈夫です。金額通りです。」


「まいど!」


「ふー何とか無事換金出たぞお前らー!」



 シーーーーーーーーーーーン



「あれ?エマ、アルフィー、シーク、クリス、あれ?皆は一体どこへ・・・。」


「あーお客さん。」


「あ、店主さん。何でしょうか。」


「あなたのお連れさん方、換金している時にどっかへ行ってしまわれましたよ。」


「は?」


「何処かに行ってしまわれましたよ。単独で各々。」


「あ、あんの野郎どもおおおおおおおおおおおおおお!」



 ルイ、怒りの頂点発動!!!



















 ~場所・???~


「人の気も知らないで自由であるという所は〇〇〇様に似ていますね。」


「あら何よ。この前は私の事を蔑んだ目で見て来たのに次は説教なの!?」


「いえ、蔑んだ目はしていません。通常です。」


「まったく、あなたも大概よ。」


「申し訳ありません。ですが、」


「なによ?」


「あまりご自分の我儘で周りを振り回さない様に極力お願い申し上げます。」


「〇ック!!!!!!!!」



~この世界におけるお金の見方~

銅貨=100円

小銀貨=500円

銀貨=1,000円

大銀貨=5,000円

金貨=10,000円

大金貨=100,000円

白金貨=1,000,000円

星大白金貨=100,000,000円


ここまで読んでくれてありがとうございます!!!

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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