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第9話 ガムト狩りじゃあああああ!

 1カ月が経った。


 俺はとある春の早朝、刺激的な方法で起こされた。

 その方法とはベットで寝ている俺に【水弾】をぶち当てること。


 ふざけんな!!素敵に目が覚めた、てか?

 こちとら寝てんのにそんなことされたら心臓が飛び出すぞ!

 枕とかベットがビチャビチャなんだけど、

 おまけに上着も、


 野蛮な起こされ方をして超絶不快状態なのであるが、なぜか孤児院組の一部のメンバーだけは早起きして外で何やら騒々しい事態になっているようだ。 

 そんなこんなで俺の自室に来て早々【水弾】をかましたアルフィーに説明を受け、今に至る。





 ~孤児院・庭~


「結構キツイな。沢山居すぎでしょ。一体倒すのに一苦労だ。以外に足が速いし危機感知能力が半端じゃない。あれが野生の勘ってやつなのか。」


 俺は早朝からこの地に草原の様に生えている芝生をむしゃむしゃと食べに来る羊みたいなやつを討伐している。


 名はガムト。


 春になったら毎年このガムトたちが此処に訪れては芝生を食べに来る。

 俺たち孤児院組はそれらを討伐して保存食にしたり、その肉や素材を売ってお金にするそうだ。


 だから資金を作るチャンスであり、逃してはいけないイベントである。

 貧乏孤児院出身の我々は特にだ。


「しかし、こうも数が多いとさすがに疲れるな。」


「エマ、そんな事言うな。このガムト達を討伐したらそれはそれは美味しい肉が俺たちを待っているんだ!そして資金も当分潤うというものよ。だから、此処でやらねばいつ殺るというのかあああああ!!」


 情熱的・・・なんかスゴイ燥いでいるけど、そんなに美味しいのか?

 そのガムト?の肉と言うのは、

 そもそも見た目が羊の亜種とか近縁種みたいな姿形をしている時点で味にはちょっと不安を持つけど大丈夫なのかな?


 身体がめっさ赤いけど、

 まぁ、羊と言う点では味は多分ラム肉みたいな感じなんだろうけど・・・どうなんだろうな。


 あと補足だが、何でも此処に生えている芝生は"緑風(りょくふ)芝生"と言って、草食動物たちには高級食材らしい。

 ガムトとは草食動物の一種であり、とある図書館の生物図鑑にこう書かれてある。




 =========================

 《名称、ガムト》


 《生息地、主に草原や林に生息する。たまに人里の近くで見かける。》


 《生態、ガムトは大人しい性格をしておるが、一度怒らせると手の付けようがない状態になるのであまり刺激しないことが必要。ガムトは木の実や草原に生えてある雑草を食べて体を作る。群れでの行動を基本としており、外敵からの攻撃を受けた場合は頭の上にある二本の立派な角で敵を突く。》


 《注意事項、その角に刺されたらガムトの体内にある電気器官から発生する電流によりビリビリにされて真っ黒こげにされるので角には要注意が必要。》

 =========================




「それにしてもあのガムトとか言う羊は電気による攻撃手段を持っているから迂闊に近づけないな。」


「そうだね~。」


「おっ!アルフィー。いつの間に。」


「ふふん!エマがガムトちゃん達を一匹倒した時からずっといたよ?気付かなかったの?」


「あ~最近夜眠れなくてさー。本当に疲れてるんだよ。」


「なら、私が眠らせてあげよう。」ふっふん~!


「あらホント?でも今はいいや。とりあえず遠距離からガムトたちを倒していけば角に刺されて真っ黒こげなんて事態にはならないだろ。」


「そうだね。」


「うんうん。」


「でもねエマ。」


「ん?何だいアルフィー。」


「ガムトちゃんの群れの内一体をさっきエマが倒しちゃったからこっちにいっぱい向かって来てるよ。」


「え?」


 メ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛


 嘘でしょ!!!


「アルフィー逃げって、もういないし!!!」


「エマ―!頑張って!」


 おう、おっ?て、応援してくれるだけですか!?


 アルフィーは、ガムト達が襲い掛かってくる事を察知していたのか、もう既に遠くへ退避しており、安全な所から俺を応援していた。


「エマ~~ファイト!!!!」


 金髪幼女からのお有難い応援が聞こえて来る。

 その姿はとても可愛らしい。


 メ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛


 向かってくるガムトは数十の数を超えている。

 一匹でも怒らせたらヤバイ性格のガムトをこんなに沢山刺激したのだから、角に当たればひとたまりもないだろうことは確定していた。


 あれ絶対当たったら俺の第二の人生終了のお知らせじゃないですか!?

 ヤバイ、とにかく魔法で対処しながら数を減らす。


【炎弾】


 メ゛ェ゛ェ゛ェ゛!?


 数を減らし、尚且つ逃げながらガムトを狩る俺はこの一か月間更に魔導書を読み込み魔法をいくつか会得した。

 上級魔法もちゃっかりと三個くらい覚えてる。

 ルイに負けない為だ。

 今の俺の実力は上昇傾向にある。

 初期の時と比べたら著しい成長と言えるだろう。


 そして、魔法を無意識に放てるように練習もした。

 今放っている【炎弾】とか言うのもその内の一つ。

【火弾】よりも断然こっちの方が使い勝手がいい。

 速度も出るし、攻撃力もそこそこある。


 なので俺は新しく覚えた【炎弾】でガムトを一体一体確実に狩っていく。


 バタバタと地へ倒れ伏していくガムトは俺の【炎弾】と言う魔法によりいい感じに真っ黒こげになっていた。

 しかし、仲間のガムトが倒れているのにもかかわらず俺に向かって迷いなく角を向けて突っ込んでくる。


 メ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛


 さすがにこのままでは追いつかれてしまうな。

 何とか時間があればこの魔法で全滅させることが出来るんだけど、その隙を与えてくれそうにないんだよね!


 こんな時こそクリスの出番なんじゃないの!

 何で孤児院の中で一番魔法に長けている人がこの場にいないのさ!!

 シークは何か赤ちゃんの世話してるって言うし、シスターは一人で呑気にお茶してるのよ!?有り得ないよ!こんなこと!


 ただ、そんな俺にも幸運な事が一つある。

 俺の前方にルイ()がいることだ。

 必死に俺の前を走ってガムトから逃げている途中のルイ()が居ることが今の幸運な事である。

 そこで俺は一つ思いついた。


 俺の考えはこうだ。


 前方にいるルイ()を囮にガムトの注意を全てルイ()に向けさせる。

 そうすれば後は俺が魔法で討伐していくだけの簡単な作業よ。


 よし、さっそく実行に移そう!


 ニヤリと邪悪な魔王みたいな笑みを浮かべて、逃げ先をルイと同じ方向へと設定する。

 今の俺はルイについて行くために赤い糸で結ばれている運命の関係。

 どちらかが犠牲となり、どちらかが生き残るというデスゲーム。


 当然俺は生き残る方だけど、


 心の中でゲスな笑いをしたところで俺はルイへと向かって走り出し、一言声を掛けた。


「ルイ!」


「やめろやめろこっちに来るんじゃない!お前がこっちに来ると俺も必然的に追われる立場になるんだよ!だからこっちへ来るな!反対側へ行け!」


「そうしたい事はやまやまなんだけど反対側には今アルフィーが居てだね。だから悪いんだけど年上のルイについて行くのが最善だと俺の第六感が囁いている。」


「嘘つけ!だったら別の方行けよ!」


「それは出来ない。」


「は?なんでだよ?」


「俺の足がお前に向かって勝手に走り出しているからさ。」


「無茶苦茶な理由だな!?」


「だから、」


「?」


「だから大人しく囮になってくれ!!」


「断る!!!!!」


 両者ともに走りながら猛追してくるガムトから逃げる。

 猛牛の様に鼻息を荒くしたガムトがどんどんと距離を詰めており、もはや二人には会話を呑気にしている暇なんてものはなかった。


 だから俺は強硬手段に出た。


 こうなったら無理やりにでも敵意(ヘイト)を向けさせてやる。

 そして俺が倒せば晴れて万々歳。

 まぁ、そもそもの話、ルイが召喚魔法で召喚すれば済む話なのに何で召喚しないのだ?

 そしたらこんな追走劇しなくて済むのに。


 まぁいいさ。

 兎に角、やらせてもらうよ。


 そうと決まった時の俺の行動は早い。

 まずは身体強化で体を強化し、そこから後方のガムト達に向けて水蒸気を発生させ視界を曇らせる。

 この魔法は俺が考えた魔法で、火と水を合わせたなんちゃって魔法。

 決して攻撃には向かないが、こういった目くらましには有効だ。


 しかし、(標的)の姿を見失っても尚ガムト達は止まる事を知らずにそのまま走り続けた。

 特に怒ったガムト達にとっては止まる要因ではないのだろう。


 それからしばらく走り続けていると視界が晴れ、ガムト達は水蒸気の外へと出た。

 視界がクリアになった途端、(獲物)を探すために周りをキョロキョロと見渡すが、見当たらない。

 だが、代わりにルイ()の後ろ姿を発見した。

 今もガムト達から距離を取るために全力で腕を振って走っている。

 ガムト達は目を一斉に光らせてルイを追う。


「何で俺なんだよおおおおお!」


「よし、後は俺の魔法で、」


 とその時!


 この庭全体が眩く光を放った。

 五芒星が描かれた超広範囲魔法陣が芝生にデカデカと展開したのだ。


 俺はいきなりの展開すぎて頭が混乱していたが、ルイだけは「来てくれたのか」と和で安らぎすら覚える様な精神で小さく呟いて足を止めた。


「何だ・・・いったい何が起きてるんだ!?それに、この肌がピリピリするようなこの魔力は・・・ヤバイな。ん?あれは、」


 俺は視界の端に映る一人の人物を確認した。

 魔力の流れを辿っていく限り、この魔法陣を展開した本人で間違いないだろう。

 この距離からは上手く見えないが、その人物は黒いマントを着けていた。


「あれってもしかして、」


 俺はその人物を察する。


「拘束。【植物拘束手縄(グリーンテレンティア)】」


 すると、芝生がいきなり伸び出して一瞬で全てのガムト達の胴体を手足ごとグルグル巻きに拘束してしまった。

 完全に身動きが取れない状態だ。


 メ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛!?


 そして、縛ったガムト達を一塊にして術者は俺へと視線を向けてくる。

 丁度俺も彼女に目線を配っていたので、不思議と何が言いたいのか分かった。


「なるほどね!!」


 これで決めてやる。

 全員綺麗にまとめて倒す魔法。行くぞ!!


【風斬り舞い・乱れ切り(シュバルツ)


 メ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛!!


 シュパシュパ!!と体に纏っている赤い綿と共に本体にもダメージを与える。

 この魔法は鋭い風の刃を生成し、広範囲に飛ばす魔法である。

 威力と数を加えた代わりに正確な位置で飛ばすことが難しい魔法なのではあるが、この立ち位置とタイミングならそれが出来る。


 だからこそ俺は遠慮なく魔法をブチかます。


 ドサドサドサと次々に倒れて行くガムト達は目を白目にして地に身を落とす。

 これにてガムト討伐及び資金源ゲットである。


 後一応ラム肉?も・・・


 こんな朝早くにやるもんじゃないよこれ。

 疲れた・・・。


















 ~場所・???~


「あの羊美味しそうね。」ジュルリ


「汚いですよ〇〇〇様。」


「いいじゃない。ずっと同じ世界に居るんですし、こう言うものを見ると私の中の好奇心や探究心が心燻るわ。」


「お戯れも程々に、ですよ。」


ここまで読んでくれてありがとうございます!!!

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をしてくれると助かります。


これからもよろしくお願いします。

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