能力者
きっと僕は風属性だと思うんだ。ゲームやマンガでもよくあるよね。風の精霊さんや自然現象を起こせる力を持つ人。それが僕だと思う。
根拠は、僕が歩けば風が吹くからだ。ただの風じゃない。人肌のような、生暖かい風の塊。僕には強く感じる。気づいたのは中学二年生の頃だ。もうすぐで三年生になる。
思い切って、一番仲のいい友達に話してみよう!
「僕、何属性だと思う?」
「ん。どした?」
下校中。
パックジュースを飲みながら僕の顔を見る純君。穏和で聞き上手な純君なら大丈夫だと思っていた。けれど……。なんか、僕変なこと言ったかな。足を止めてジッと僕の顔を見つめてくる。もしかして、この発言がきっかけで距離を置かれたりして。
「いや、その。僕の属性……」
「仏」
「え?」
仏って。何の!?
「あ、あの純君。属性を聞いてるんだけど」
「俺には人のオーラが見えるんだよね。隆司は仏。違いない」
「えぇ……」
純君にも特殊能力が有ったのか‼‼
人のオーラが見える能力。もし本当だったとしたら、僕のオーラは仏。その仏の力が、風の属性を保有するに値する力があるということなのかな。よくわからないけれど、きっとそうに違いない。
「僕たちは、きっと世界を変える能力者なんだよ」
「仏はそんなこと言わない。ただあるがまま世界を見ているだけさ」
「そんなぁ」
「俺は、真の勇者のオーラの持ち主を探しているんだ。きっと日本だけじゃなく、アメリカやフランス、オーストラリア、中国……とにかく、いろんな国には様々なオーラの持ち主が居る。実は俺は世界中から神の洗礼を受けて、ウリュンブリテーゼから転生してきた斎藤純という日本人なんだ。ここだけの話。絶対に内緒だぞ」
「……」
あー……。
もしかして、これが噂の厨二病ってやつかな? ちょっと痛々しいよ純君……。ウリュンブリテーゼってどこだよ。ツッコミが追い付かない。僕はどうすればいいんだ。ノってあげればいいのか? それとも現実を教えてあげた方が良いのか?
「ま。全部嘘だけど」
「えぇ!?」
そう言うと、純君がパックジュースを、ゴミ箱に投げ入れる。夕日の空で、カラスがカァカァ鳴いた。少し寒い風が僕の体を包んだ。2月の鋭くとがった冷たい風だ。
「なぁ仏。今日の宿題教えてくれない? ちょっと難しくてさ」
「僕は仏じゃなくて、隆司ですー!」
「変な話題振る方が悪い」
「えー」
しばらく純君は、僕のことを「仏」と呼ぶようになった。嫌な気はしないけれど、この日から僕は、風属性を名乗るのを止めた。高校受験に専念する。ちょっと自分を客観視できた。ありがとう、ウリュンブリテーゼからやって来た、斎藤純君!




