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値切りから始まるワーカー登録

王都全体の形を例えると野球盤の様な形だ。

城が一番高台にあり街を一望できる形になっている。

そしてぐるりと街を囲うように石でできた高い壁が侵略者を阻む。


個人的には城の後ろ側からなら攻めやすそうと思ってはいるが、何かしらの対策を講じているのだろう。街の中を歩いていると沢山の飲食店を見かける。

お金に余裕が出来たら是非食べ歩きもしてみたいと思っている。


エミリーから聞いた商会ギルドを目指す途中、冒険者ギルドの場所を教えてくれた洋服を売っている露店の前を通った。

お金に少し余裕もできたので約束を果たす為にも服を買おうと思い立ち寄った。


「こんにちは!先程はありがとうございました!」


「あぁお兄さんかい。どうだった?すぐわかったかい?」


「おかげ様でばっちりです。それで、この服は目立つので是非上下で似合いそうなもの見繕ってほ欲しいんだけど」 


「そりゃ~嬉しいね! ばっちり選んであげるからまかせときなね」


「これからワーカー登録するので、動きやすいのが良いんだけど」


「おぉ、お兄さんはワーカー志望かい?なら、この服とかどうかな?」


中年女性の出してきた服は、上着は老緑色でフードがついている。ボタンは無く上から被るパーカーだ。それに、獣の革で出来た茶色いベスト。ボタンではなく革ひもで軽く留めれる仕様だ。

それに少し太めの革ベルト。パンツは黒色で七分丈で結構細身だ。シューズは黒色の革製ブーツで脛くらいまでをカバーしている。


いかにも狩人といったスタイルだが、嫌いじゃない。


「これでいくらになる…?」


恐る恐る聞いてみた。中年女性の店員は顎に手を当てて熟慮する。


「…全部で19000リーンでどうだい!?」


多分これでも安いのだろう。日本でこの装備を買ったら(買う事も無いけど…)25000円はするだろう。下手したら50000円だってあり得る。


(いや、ここはあえて値段交渉だ!!)


「13000リーン…13000リーンではだめですか!?」


「そらお兄さん安すぎよ。手間賃も残らないわよ~18000リーン」


「15000リーン!どうでしょうか!!」


「16500リーン!これ以上はもうだめよ」


「………15800リーン……」


中年女性は手を挙げて呆れた顔をした。

だがすぐ笑顔に戻り手を差し出して握手を求めてきた。


「負けたよ!15800リーンでいいよ!持っていきな!これも勉強だ!でも次服買う時は絶対うちに来るんだよ!約束ね!」


差し出された手を取り握手をした。値下げのお礼と再び買いに来る誓いを込めて。


貰った洋服を着替えたかったので、どこか着替える場所は無いか店主に尋ねた。

親切に店の裏を使っていいという事だったので、ご厚意に甘えることにして着替えを始めた。


スーツと違って動きやすい。これなら猟もやりやすそうだと、買って満足だった。

リュックの中に来ていたスーツを入れて店の前に戻った。

感謝の言葉を述べて店を後にする。

商会ギルドの詳細な場所も聞けたので好都合だった。


着替えた服で町を歩くと今まで感じていた視線を感じなくなった。やはりスーツは好奇の目で見られていたのだろう。

街を歩きながら行きかう人々を観察してみた。


男性の服装は大体が上着の丈は股下くらいまである。靴はブーツ。たまにマントを身に付けていたり、ベストを着用している者もいた。

女性の服装はドレスといった感じだが、色は茶色や黒などで、施された装飾もフリルが良いとこでやはり地味だ。たまにローブを着ている者や、給仕服の者もいる。

統一されている訳ではないが、地球でよく見た≪THE・中世ヨーロッパ≫という感じだ。


人間観察をしていると時間はあっという間に過ぎるもので、気が付けば王都の正門まで来ていた。

近くにあるという商会ギルドを探す。

大きな看板が目に付く。正門から数件のところに商会ギルドはあった。


冒険者ギルドを先に見ていたから同じ雰囲気の建物をイメージしていたが、木造2階建ての王都では一般的な建物で少し驚いた。

よく見ればところどころ木の壁が割れていて、建築年数を感じさせる。

入り口もスイングドアで一見すると酒場なのかと見間違う。


中に入るとスイングドアが行ったり来たりしながらキィキィと音を立てる。

入って右側にはテーブルや椅子が置いてあり、数人が酒を飲みながら大声で話していた。

入って左側を見ると大きな掲示板が壁にかかっていて、多数の紙が貼られていた。依頼書と書いてある。

冒険者ギルドと比べてかなり品が悪いと感じた。


正面には受付嬢が居たが、服装もメイドというよりはもっと庶民的なお手伝いさんの着るようなエプロン風の服装だった。冒険者とワーカーの立場が天地の差という事が一瞬で理解できた。

受付の前まで行って話しかける。


「すいません。ワーカーの登録をしたいんだけど」


「は~い。そしたら、これに必要事項書いちゃってください~」


――ワーカー申請書

名前 : ソーマ

年齢 : 30歳

住所 : 宿屋コンタール

身元引受人: 無し


――――――――――――


最低限必要な情報だけが求められる簡素な書面。

名前は本名は書かず、エミリーが≪ソーマ≫と呼ぶので、この世界での呼び名は≪ソーマ≫にすることにした。苗字は王族のみが名乗るとも聞いたので名だけを書き込み書面を提出した。

受付嬢は軽く目を通すと”バンッ”と丸い大きな判を押す。

赤いインクで”受諾”と申請書に押された。


「ちょっと待っててください~」


受付嬢は申請書を持って別室に行ってしまった。

3分程すると戻ってきて、革ひもが通された木札を渡してきた。


「えっと~それがワーカーという事を証明する物です~。無くしたらまた作りますから言ってくださいね!」


「コレもってると何か受けられる恩恵はあるのかな?」


「う~ん…ないですね♪」


屈託ない笑顔で言われるともう何も言い返せなかった。


「何を買い取ってもらえるか教えて欲しいんだけど?」


「魔物以外なら、なんでも買い取りますよ~」


「何でもって?」


「何でもですよ~」


「もうちょっと細かく教えて欲しいな」


「獣や、野草、鉱物、生活用品なんでもですよぉ~ 売れそうだと思ったら持って来てくれれば買い取りますぅ。後は、農業被害とかの害獣はクエストや、野草の指定採取のクエストは掲示板に貼ってあって、達成すると達成ボーナスもあるのでお得ですよぉ~」


「ありがとう。それを聞きたかったんだよ。獣はどこで取れる?」


「うーん。街の外に出たら森や山いっぱいあるから結構探せばいますよぉ~」


「ありがとう。じゃあ行ってくる」


「いってらっしゃ~い」


受付嬢は笑顔で手を振り見送りだしてくれた。

流石に狩を剣では出来ないだろうと思い武器を買いに行くことにした。

まだこの時ソーマは狩猟の難しさを理解していなかった…



☆現在の相馬情報☆

{残金88233リーン}

{借金45500リーン}

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