お食事?湯浴?それともス・キ・ル♡
部屋に戻り20分程待機していると扉をノックする音が聞こえた。
先ほど頼んだお湯を持ってきてくれたのだろう。
扉を開けると従業員の女性と子供が2人で桶とバケツを運んできてくれた。
「お待たせしました。こちらが桶です。後こちらのバケツにはお湯が入ってますのでお使いください」
直径1メートル程の底が浅めな桶と、お湯の入ったバケツ2杯を持って来てくれた。湯船に浸かるというより体を拭きながら掛け湯する方式だ。
部屋の中に置いて2人は出て行った。
「何にせよ、お湯があるのはありがたい。井戸水で水浴びしろって言われたらどうしようかと思ったけど…」
バケツのお湯に指を入れてみる。
少し熱めだったが、火傷する程では無い。
早速着ていたスーツを脱ぎ裸になる。
木でできた桶の中に入り、胡座をかいて座る。桶の端にギリギリ膝が当たるが、さほど気にならない。
バケツを1つ手繰り寄せて、両手で持ち上げる。
勢いよく掛けたいところだが、流石に部屋が水浸しになるのも嫌なので、ゆっくり掛けた。
髪の毛から順にお湯が身体を流れていく。お湯は桶の中に溜まり簡素な湯船が出来上がった。初めてにしては上手いものだ。
「あぁ〜生き返るぅ〜」
至福の時だ。桶に溜まったお湯にタオルを浸す。
よく絞り、まずは顔を拭いてから上半身、下半身の順番で拭いていく。
全身を拭き終わった後で今度は立ち上がり、もう1杯のお湯を頭から掛けて湯浴みを終えた。
「あっ!変えの服がないんだ。せっかく洗ったのに同じ服は嫌だなぁ。とりあえず下着とシャツぐらい洗っておくか」
残り湯で下着とワイシャツだけ洗濯する事にした。洗剤はないのでただの水洗いだが、洗わないよりマシだと思った。よく絞り水気を切る。
叩いてシワを伸ばしてから、窓際に干しておく事にした。
「とりあえず今日は裸で寝るしかないな。エミリーの紹介でうまく仕事を貰えたら、まずは服だな」
身体も温まり、段々と眠くなってきた。
欠伸が止まらない。眠気を誤魔化すために目を擦る。
ベットルームはもう一つ奥の部屋にある。
先ほどベットを見つけた時はその大きさに度肝を抜かれた。キングサイズくらい大きく広い。
クッション性もよく確実に安眠出来る。
裸のまま勢いよくベットに飛び込む。
しっかりと衝撃を逃し、トランポリンのように軽く身体を撥ねさせる。
「ヤバい。これは気持ち良すぎる〜」
最初の農村で2日間泊まった家では納屋で藁を布団代わりにして眠った事を思い出した。
「あれは、チクチク刺さって全然初日は寝れなかったなぁ」
この世界に送られてきた時から今までの事を思い出す。これからの事、仕事の事、この世界に送られた理由。いろいろな事を考えていたが、気がつくと寝てしまった。
目が覚めると太陽の位置は頂点に来ていた。
時計というものはこの世界にないが、日の出と日の入りの時間は地球と同じだと感じていた。
なので12時ぐらいだとわかった。
14時間近く眠ってしまったようだ。
ベットから起き上がりラジオ体操のをするかのような動きでようにほぐす。
昨晩干した洗濯物を確認しにいく。
「おぉよかった!乾いてるよ!」
とりあえず下着だけ履いた。
テーブルの上を見ると、朝食が置いてある。どうやら眠っている間に運んできてくれたようだ。
軽く指で触ると冷めてしまっていたが仕方のない事だと諦め、早速食べる事にした。
パン2切れと目玉焼きにソーセージとベーコン。
どこの時代や世界を超えて愛される定番料理だなと思った。
牛乳らしき飲み物もあったので軽く舌を当てる。地球で飲んでいた牛乳よりも獣臭さはあったが、蜂蜜を混ぜてあるようで少し甘みを感じた。
残さず全てを食べきり、両手を合わせて“ご馳走様”と言うと、ふと自分の手の甲に違和感を感じた。
「あれ?昨日は数字が7になってたよな?何で今は“6”になってんだ??」
手の甲に浮き出た数字が変化していたのだ。
理由はわからない。町の散策をしてから夜にスキルの事を調べようと思っていたが、一抹の不安を感じて、すぐに調べる事にした。
「そういえば、スキルってどうやって発動するんだ?2回ともピンチの時に声が聞こえて使えたけど、命の危険が無いとダメなのかな?」
試しにスキル発動と心で念じてみた。
・・・スキルを使用しますか?
頭の中に声が聞こえる
(YESだ!)
・・・スキル購入一覧を表示します。
ゴブリンとの戦いで出てきた画面が目の前に現れる。
戦闘中は全く余裕がなかったので細かく見ていなかったが、画面左にはメニュー項目がある。今表示しているページは〔オススメ〕と書いてある。
「なるほど。だから1回目と2回目の戦闘で表示されてたスキルが違ったのか。他にはどんなメニューがあるんだ?」
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{メニュー項目}
・〔おすすめ☆〕
・〔火属性魔法〕
・〔水属性魔法〕
・〔土属性魔法〕
・〔風属性魔法〕
・〔光属性魔法〕
・〔闇属性魔法〕
・〔補助系魔法〕
・〔スキル〕
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以上の9項目がメニュー項目として存在しているようだ。
かなり細かく分かれて表示されている。
試しに〔火属性魔法〕のページを開いてみようと思い、頭の中でタップするイメージを持ってみた。
〔火属性魔法〕のページが開かれる。
指で触ったりしなくても頭の中で思うだけで操作ができるのはありがたい。
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{火属性魔法}リスト一覧
――火球
効果:火を球体にして放つ。熱量及び発射数は使用者のレベルによる
回数5回
金額2000リーン
――火の繭
効果;対象を火で包み内部を焼く。同時発動数は使用者のレベルによる
回数4回
金額15000リーン
ーー火の槍
効果:火をニードル状にした物で対象を貫き焼く。
回数5回
金額:2200リーン
ーー炎球
効果: 炎を球体にして放つ。火球の上位魔法
回数:3回
金額:5000リーン
ーー炎の檻
効果: 対象を炎で包み内部を焼く。火の繭の上位魔法
回数:3回
金額:28000リーン
ーー炎蛇
効果:炎の蛇が狙った対象を追いかけ噛みつき、焼き殺す。
回数:2回
金額:29800リーン
ーー炎鷹
効果:炎の鷹が上空より襲い掛かる。自動追尾。
回数:1回
金額28000リーン
ーー爆破・小
効果:小規模の爆発を指定した場所に起こせる。
回数1回
金額5600リーン
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まだまだ火属性魔法だけでも相当な数が表示されていたが暇な時に見ればいいと思った。
それよりも気掛かりなのは、手の甲に現れた数字だ。このスキルとの因果関係がわかっていない。
頭の中で試しに呼びかけてみた。
(このスキルの概要を見れる物を出して欲しい)
・・・スキル概要欄を表示しますか?
(おぉやっぱり答えてくれる。どうやらこのスキル用のナビゲーションみたいだな。もちろんYESだ!)
・・・スキル概要欄を表示します
目の前の画面が切り替わった。
☆現在の相馬情報☆
{残金500リーン}
{借金45500リーン}
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