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冒険者講義

扉をノックする音で目が覚めた。

ギルドスタッフが朝食を運んできてくれたようだ。


「どうぞー入って! 」


相馬が声を掛けると扉が開きメイド服を来た可愛らしい女性が中に入って来た。

「ソーマ様、朝食をお持ちしました。テーブルに置かせていただきます」


「あぁすまない」


手慣れた手付きで朝食を並べる。

「それでは失礼いたします。後ほどお部屋のお掃除をかねてお皿はお下げしますのでそのまま置いておいてください」


深々と頭を下げ、静かに扉を閉めて退出した。ベットから起き上がり朝食を食べようと椅子へ移動する。高級ホテル顔負けの豪華な朝食に度肝を抜かれた。


焼きたてのパンから香ばしい良い匂いがする。ほんのり甘みを感じることが出来るのはバターのお陰だろう。

ベーコンにソーセージ、スクランブルエッグ、その他付け合わせが沢山ある。

味も申し分ない。自分でも気が付かないほどお腹が減っていたようで喉に詰まるほど詰め込み食べた。胸に詰まった食べ物をジャガイモの冷製スープで流し込む。


「あぁ~美味い!! こんなにうまい飯食えて幸せだぁ~」


数分足らずで食べ終えてしまった。パンパンに膨れた腹を擦り窓を見る。余りにも美しい景色に椅子を立ち上がり窓に寄る。窓を押し開くと爽やかな風が部屋の中に吹き込む。目の前を白い鳥が飛びぬけていった。

眼下に広がる建物が小さく見える。ギルドのかなり上の階にいる様だ。

街中を歩く人々がゴマ粒のように小さい。地平線まで街が続いているように思える程中央都市エルバは広大だった。


冒険者初日を祝うように太陽は光り輝きや風が躍り舞う。


「よっしゃ! それじゃ行くか! 」


部屋を出て左手に進むと突き当りに魔法陣が書かれた12畳くらいの部屋がある。魔法陣の中心には石でできた台座がありそこには数字が書かれた小さい魔石がいくつも埋められていた。

4と書かれた魔石を押して魔力を流す。


魔法陣が光り輝き一瞬で4階に移動する。

地球風に言うならエレベーターだ。昨晩シャルムに教えてもらった部屋に向かう。

中に入ると大学の講義室のように雛壇状に配置されたテーブルと教壇があった。


まだ誰も来ていないようだったので一番前の席に座り集まるのを待つ。

数分遅れでピピナが入って来た。


「おはようピピナ!」


「あ…あぁおはよう」


ピピナが恥ずかしそうに朝の挨拶を返してくれた。

些細な事だが昨日までの対応を考えると少し距離が縮まったような気がして嬉しかった。


「今日からお互い冒険者だな! 頑張ろうな!」


「あぁ…」


「そういえば気になったんだけどピピナってスキル持ってるの? あっでもごめん、スキルは聞いちゃいけないんだっけ? 」


ピピナは少し考え込んでいたがおもむろに口を開く。

「私は…いや、人に尋ねるならお前から話すべきだろ? 」


「あ…あぁそうだよね。俺は【縮地】っていうスキルだよ…」


「【縮地】とはどんなスキルだ?」


ピピナは珍しく興味を持ってくれた様だ。ピピナは強さを追及する性格だ。

先の戦いで相馬の実力を認めたのだろう。


「俺のスキルは簡単に言えば早く動けるんだよ」


「なるほど。確かに最終試験の動きは常軌を逸していた。お前…いやソーマの実力は認めよう」


「ありがとう。素直に嬉しいよ! ピピナだって凄い戦いだった! 勉強になったよ」


「ふん。まぁ素直に私も喜ぶとしよう。さて私のスキルだが、【怪力の極み】というものだ。身体能力が上昇するスキルの中で最も強力と言われている」


「なるほど。それでダンジョンの中でデコピンで壁を壊せたのか!」


「うん? デコピン? なんだそれは? 」


「あぁごめん! こっちの話! そんな凄いスキル羨ましいなぁ」


「羨ましいか…そうか。だが私はスキルなんて欲しくは無かった。この力のせいで幼少期は大勢を傷つけてしまった。制御できるようになるまで私は1人だった。いや…私を知る者は今でも私に近寄らない。今でも独りだな」


暗い表情を浮かべピピナは俯く。彼女にとってトラウマなのだろう。

今の発言で分かったが、彼女は他人が嫌いじゃない。むしろ好きなのだろう。

だが傷つけてしまうのが怖い。だから他人を自然に遠ざけるような発言をしてしまうのだろう。

ヤマアラシのジレンマというやつだ。


ピピナの心の中を知って相馬の中のピピナへの好感度は急上昇した。

「ピピナ、独りじゃないよ。俺らは一度でもパーティー組んだ中じゃないか! もう仲間だと思ってる! それにさ、そのスキルで傷つけるのが怖いって言うけど俺は強い! だろ?」


ウインクしてピピナに気持ちを伝えた。少しカッコつけすぎたと反省したが、でも気持ちに偽りはない。ピピナは少し頬を赤らめていたように感じたがそっぽ向いてしまったので確かめる事は出来ない。


「ふん。まぁソーマなら確かに死ぬことは無さそうだ。仲間か…悪くないな」

ピピナの発言から嬉しかったという事だけは理解できて安心した。

そんな会話をしているとエルバランが部屋の中に入って来た。


「待たせたな。それではこれから。 …ん? 」


ニックが部屋の中にいない事に気付いたエルバランは従者に呼んでくるように伝えた。


「初日から遅刻とは図太いのかアホなのか…しかたない、両者よ暫く待て」


5分程してニックは慌てて部屋に入って来た。髪がぐちゃぐちゃで寝癖が酷い。

焦って出てきたのが一目で分かった。


「サーセン! 寝坊じゃんね! 」


「まぁ昨日の今日だ。疲れているのも分かる。次から気を付ければよい。適当に座れ」


ニックは相馬とピピナの近くまで来ると2列目の中央付近に腰かけた。小声で二人に謝罪する。

エルバランは一つ咳ばらいをして机に両手を”ドン”と置いて3人に鋭い視線を送る。


「さて、今日から貴様ら3名は冒険者として生きていくわけだ。先に言っておく。死ぬな! それを心に刻め! 冒険者とはいついかなる時も死と隣り合わせだ。金を稼ぐために魔物を狩る。大いに結構。だが命あっての金だ。それを忘れるな。ではこれより冒険者の心得を伝える」


エルバランによる冒険者講義が始まった…


☆現在の相馬情報☆

{残金46,421リーン}

{預金36,420リーン}


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