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冒険者最終試験Ⅲ

ニックとシャシャオムはリングの上で睨み合っている。

エルバランの号令に意識を集中して待っているのだ。

シャシャオムはドワーフだ。巨大なハンマーを構えている。

筋骨隆々で身長は180センチくらいある。それに対しニックは細身で175センチ位だ。

傍から見てもニックの方が分が悪いと思う。しかしニックはスキル【爆砕】の持ち主だ。

まだ見た事が無いが名前からして強そうだ。


シャシャオムはスキル持ちかは不明だが、最終選考まで残っているのだから実力者であることに間違いはない。

エルバランが右手を空高く掲げ、最終選考の開始を宣言した。

「これより最終試験第3試合を執り行う。双方悔いの無きよう戦え。はじめぇぇぇ!」


先に仕掛けたのはシャシャオムだ。持っている巨大なハンマーを振りかぶりニックめがけて叩きつけた。

ニックはひらりと躱すがハンマーが地面に当った瞬間周りから石の槍が大量に生えて避けたニックを襲う。予想外の攻撃にニックも完全に避け切れず、わき腹を抉られた。

溢れ出る血の量が、深刻さを物語っている。


さらにシャシャオムは地面にハンマーを叩きつける。同じように石の槍が前方向に発生しニックを襲う。

どうやらシャシャオムの武器は地面を叩く度に石の槍を発生させる付与魔法付き武器の様だ。


シャシャオムは人差し指と中指を立てて顔の前に構え呪文を唱え始めた。


「ノームやノーム踊れや歌え。母なる大地を称えよ崇めよ。仇敵包んで隠せや隠せ【ドーム】」


ニックを囲うようにいくつもの魔法陣が現れ、石のドームがニックを捕らえる。

シャシャオムは武器を振りかぶり捕らえたニックの下へ走り出す。そして力いっぱい【ドーム】の手前で振り下ろす。発生した石の槍が【ドーム】もろとも貫き吹き飛ばす。


土煙が立ってニックの安否は確認できないが、その場にいた誰もがシャシャオムの勝利を確信した。だがニックは先程受けたわき腹の傷を治療し終わって悠然と立っていた。

【ドーム】の中で治療したようだ。


「あんたの攻撃半端ないじゃんね!俺っちさすがに焦ったわ」


「焦ったという割に余裕の表情とはさすがに堪えるぞニック殿」


「へいへい!シャシャっち!俺っちのスキル【爆砕】を披露しちゃうじゃんよ!」


「【爆砕】とな?ニック殿はスキル持ちだったのか。だが、それを今言う必要があったのか?」


「フェアーじゃないじゃん!俺っちはシャシャっちの攻撃方法知ってるじゃんね?」


「なるほど。そうであったか。ニック殿の心意気しかと受け取ったぞ。ならばワシも1つ言わねばならん。ワシもスキル持ちじゃ。そしてまだ使っておらん。では参る!」


再びシャシャオムは武器を振り下ろす今までよりもはるかに強い力を込めて。石の槍は津波の如くニックに襲い掛かった。

だがニックは余裕の笑みを浮かべて手を前に突き出し石の槍に触れる。その瞬間全ての石の槍は砕け散って消えた。


【爆砕】のスキルはどんなものなのか気になる。相馬はナビ子に【爆砕】スキルが購入リストにないか尋ねた。


・・・スキル【爆砕】を表示します。


――爆砕

効果:触れたものを爆弾に変化させる。変化させた爆弾の威力は大きさによる。なお変化させた際任意の大きさに対象物を砕くことが出来る。

回数:1回

金額:1,380,000リーン


(マジか!?砕くスキルだと思ってたが全然違う。てことは今あの大量の石の槍は爆弾に変化しているのか?)


シャシャオムは再び武器を振り上げ今度はニックに向かって走り出す。

そして先程ニックが砕いた石の槍を踏んだ瞬間爆発が起きた。それを起爆剤にして辺りに落ちていた全ての意志が連鎖爆発を起こし、リング全てが爆発で吹き飛んでしまった。

結界が無ければ相馬達も確実に巻き込まれていた。


5分程土煙で中は見ることが出来なかった。両者の生存すら危ぶまれる状況だがただ見守るしかできなかった。

すると土煙の中から人影が見えた。こちらに歩いてくるようだ。ニックだった。ニックがシャシャオムをおんぶしてこちらに歩いて来ていた。


「エルバっち。シャシャっちの治療をしちゃってよ」


エルバランは「試合終了!勝者ニック!」と宣言しバリアーを解除した。中に留まっていた土煙が観戦していた相馬達にも襲い掛かる。


「隣の部屋へ移動だ!急げ!」


エルバランは皆に移動するよう促した。急いで部屋を後にして扉を閉めた。

シャシャオムは医療班に引き渡された。姿を見ると両足が無くなっていた。

むしろあの爆心地にいて両足だけで済んだ事に驚きを隠せない。


「ソーマっち!どうよ!俺っちの試合ド派手だったっしょ?」


「いや、ド派手過ぎだから。【爆砕】のスキルやばいね。シャシャオムが生きてたのが不思議だよ」


「シャシャっちは初撃受けた瞬間に助けちゃった!流石に殺したくないじゃんね!」


「えぇ!?ニックが助けたの?」


「そりゃ自分のスキルじゃんね!それなりに対処方も理解してるじゃんね!」


お調子者のニックの底知れぬ実力に鳥肌が立った。日本にいた頃見ていたアニメでもそうだ。

大体お調子者は強い。そんなテンプレを体現するニックが一層好きになった。


「でも、これで人間が2人も合格しちゃったな!」


「えっそうなん?あの女戦士人間なの?」


「いや、ニックと俺だよ」


「あっ言って無かったっけ?俺っちエルフなんよ」


「はーーー?そうなの?でも黒髪じゃんか!」


「あーコレ魔法で色変えてるじゃんね!なんとなくよ!な・ん・と・な・くじゃんね!」


驚愕の事実を知って口を開けて呆けているとピピナが話しかけてきた。

「おい。エルバラン殿が呼んでるぞ。アホ面してないでとっととこい」


相変わらずピピナは毒舌だ。ニックと相馬はお互い顔を見合わせ肩を竦めた。

エルバランが仁王立ちで待機していたので急いで向かう。


「よし、揃ったな。まずはおめでとう。3名が今回合格した。年に数人合格すればいい中この人数は驚くべき数だ。誇っていい。貴様ら3人は強い。世界の為に活躍する事を願う。まずは今日はゆっくり休め。ギルド内に宿泊部屋を用意してある。明日は冒険者の心得などを覚えてもらうのでそのつもりで。つまり座学だな。だが大事な事だ。真摯に取り組むように。ではシャルム、あとは頼んだぞ」


シャルムは深々とお辞儀をすると祝辞を述べ早々に部屋に案内してくれた。

ギルドの部屋は最初にエミリーの好意で泊まった部屋と同じ位の広さがあった。

驚いたのは風呂まで完備されていたのだ。


湯浴みもしばらく出来ていなかったので早速風呂に入った。

浴槽から溢れ出る水が風呂の中に反響して心地いい。湯気で部屋が白くなる。

浴槽は木で出来ていてとても香りが良い。ヒノキではなさそうだが疲れが一気に溶けていく。


「あーーーーー」


思わず声が出る。部屋の中に反響する。異世界に来て1ヶ月間本当に怒涛の日々だった。

風呂は命の洗濯というが本当だと思った。そして明日から始まる冒険者生活に期待と希望を抱き思わず「よっしゃー」と叫んでしまった。


立ち上がり全身をフカフカのタオルで拭く。

全てが高水準の部屋。当然ながらベットも最高級だ。感触を楽しんでいる間に、いつの間にか相馬は眠りに付いてしまったのだった…


☆現在の相馬情報☆

{残金46,421リーン}

{預金36,420リーン}

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