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冒険者最終しけん

フードの下から現れた顔に相馬は息を飲んだ。

銀髪とも灰色とも言えるようなシルバーグレイの髪。長い髪は編み込みされ、そこからツインテールになっていた。

肌は健康的な茶褐色で、虹彩は髪の色によく似合う銀色をしていた。


ドワーフは男女共に肉付きが良いイメージだったが、スラッとした長身で豊満な胸をしている。

先ほどまでのツンツンした印象からはもっと厳つい戦士をイメージしていたが、かなりの美女だと思った。思わず見惚れてしまう。


「どうした?何をそんなに固まって見ている?私の顔がおかしいのか?」


「あっごめん。綺麗だなと思ってつい」

思わず口に出てしまう。


ピピナは少し顔を赤らめながら怒った表情で相馬に暴言を吐いてきた。


「ふざけるな!下らない事言ってると叩き潰すぞ人間!!私は世辞が嫌いだ」


「お世辞じゃないけど。わかった。もう言わないよう気をつけるよ」


ピピナはブスっとした表情で干し肉をかみ切る。容姿端麗だがワイルドな一面も持ち合わせている。相馬はそんなピピナを眺めて疑問に思う。

なぜこんなに人間を嫌うのか。聞き出す事は難しいと分かっているが、ついつい聞いてしまう。


「ピピナは人間が嫌いなのか?」


「別に嫌いとかそういうわけではない」


「いや、ほら、なんか俺に冷たいしさ。”人間”とか言うから嫌いなのかなって」


「ふん。脆弱な生き物が嫌いなだけだ。エルフだろうが同族だろうが同じことだ。力こそ全てだ」


ピピナの考え方は弱肉強食。ある意味自然の摂理に沿ってはいるが、文明社会においてこの考え方は異端だろう。だが、ピピナの目には一切の曇りが無い。彼女をそういった考えに至らしめる要因があるのだろうが、そこまで深く踏み込める仲でもない。今はその答えで良しとして話題を変えることにした。


「ピピナは冒険者になって何をするの?」


「別にお前に話すような事でもない。我らは今だけの仲。この試験が終われば同じ獲物を狙う敵同士だろう。先程も言ったが慣れ合う気は毛頭ない。お前も私のご機嫌を伺っていないで次の試験に備えたらよかろう。いかなる状況にも対応する為準備する。それこそが冒険者だろう?分かったらもう黙れ」


ピピナは完全に心を閉じてしまった。だが彼女の言う事は間違ってはいない。

言い方は酷いがそれも優しさと捉え相馬も次の試験に備えることにした。

もちろん内容は分からないが、それでも様々なシチュエーションを想定する事は大切だ。


日も暮れて辺りは真っ暗になった。2人で枯れ木を集め焚火を始める。火を点けようと道具を出そうと思った時、ピピナは自分の道具を取り出した。

見た事ない道具だったが薪に近づけると一瞬で着火させた。


「うわっ、なにそれ!!?」


相馬は驚いて思わず質問した。ピピナは相馬をチラッと見て一言「火付け機だ」と言った。

それは見ればわかると言いたかったが、気難しいピピナを怒らせてもいけないのでそれで納得する事にした。沈黙の2人。焚火がパチパチと音を鳴らし火の粉が空へ登っていく。

いつもまにか2人とも眠ってしまったのだった。


翌朝、日の出とともに目を覚ましたソーマはもう一組戻ってきていたことに気付く。

どうやら、眠っている最中に宝珠を持ち帰ってきたようだ。


(あと1組か…意外に早く終わるかもしれないな…)


ピピナを見ると未だ眠りに付いていた。まだ起こす事もないのでそのまま寝かせておくことにした。相馬は立ち上がり木陰に向かう。生理現象には逆らえない。スッキリして戻ってくると、どうやら最後の一組が息も絶え絶えで戻ってきていた。

ピピナを起こす。


「ピピナ起きてくれ。おい!ピピナ!」


まだ寝ぼけている様で起きて目を擦りながらキョロキョロしている。

喋らなければピピナはかなり可愛い。するとシャルムが今いる全員に集まるように指示を出した。


相馬は焚火の残りを土に埋めて、荷物を入れたリュックを背負い準備を整える。

ピピナも相馬に少し遅れて支度を整えシャルムの下へ向かった。


シャルムが3組6名の冒険者に話を始める。

「お疲れさまでした。予定よりかなり早いですがこのまま最終試験会場に移動します」


相馬は小さく手を挙げてシャルムに問いかける。

「あの…他の受験者は?」


「生きている者はこれから他の者が迎えに行きます。心配無用です」


シャルムの発言では今回の試験でも死者が出たようだ。せめてもの救いはニックとマルクが最終試験に残った事だ。3人は目を合わせ互いの健闘を称えた。


シャルムが歩き出したので皆ついて行く。

10分程歩くと森の中に草原が現れた。そこに一つの祠の様な物が建っていた。


「これは転移魔法陣です。中に入って下さい。最終試験会場に移動できます」


相馬は始めての転移魔法陣に少しドキドキしていた。

全員が中に描かれた魔法陣の中に入るとシャルムが何かを唱えている。小声で聞き取れなかったが魔法陣が光を放つと、次の瞬間にはどこかの建物の中に移動していた。


「はっはっは!驚いただろう。そして最終選考まで残った冒険者諸君の検討を称えよう。この試験で終わりだ。全てをぶつけて勝ちをつかみ取れ!!」


聞き覚えのある声が聞こえ、皆一斉に振り返る。

視線の先にはギルド長・エルバランが仁王立ちでこちらを見ていた。

鋭い眼光で1人1人を品定めするように見てくる。


そしてニヤリと笑い再び声を発した。

「最終試験は至ってシンプル。戦え。最大3名を合格としよう。戦う相手はこちらで決めさせてもらう。勝った者が合格者だ」


エルバランが最大と言った理由はすぐに理解できた。死ぬ可能性もあるという事だ。

思わず固唾を飲んでしまう。

他の受験者も目つきが変わった。皆覚悟を決めたのだろう。


「それでは発表する組み合わせは…」


①ピピナ VS マーベリアス

②ソーマ VS マルク

③ニック VS シャシャオム


「…以上の組み合わせで戦ってもらう。初戦はピピナとマーベリアスだ。双方準備を始めろ」

エルバランはそう言うとマントを翻し大きな扉の前に進み両手で押し開けた。

中には闘技場の様なリングが設置されていた。


「ここには結界が張ってある。存分に戦え」


ピピナとマーベリアスがリングに向かう。相馬はピピナに声を掛けた。

「ピピナ頑張れよ!」


ピピナは相馬を一瞥するとサッと手を小さく上げ振った。心配するなと言わんばかりに自信に満ち溢れた雰囲気でリングの上に登って行った。


ついに最終試験が始まった…


☆現在の相馬情報☆

{残金46,421リーン}

{預金264,240リーン}


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