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【冒険者】のススメ

負傷した兵士の手当も無事終わり、一行は一息付く間も無く出発した。休憩が必要な事は皆分かっている。しかし、また魔物に襲われては本末転倒だ。疲れが溜まっているだろうが根を上げる者はいなかった。日頃訓練を受けている兵士だからこそ出来る事だと理解できる。それからも魔物には幾度となく遭遇したが、少数での出現が多く、何とか兵士達だけで戦い凌ぐ事が出来ていた。


その間、俺は兵士の好意で馬車の中で休ませてもらっていた。エミリーが先程の動きについて再び質問してきたので、その件について話すことにした。だが、正直に全てを話すのも怖いのでそれとなく話しを誤魔化す事にした。


自分は遠い島国から来た旅人で、世界を見て周っていると伝え、先程の動きはそこで覚えた技であると。魔法は少し使えるが威力は弱い。


こんな感じの設定でエミリーに伝えた。

少し訝しげな顔をしていたが、どうにか納得してもらった。


逆にエミリーから世界の事を色々聞くことが出来た。この世界は5つの大きな大陸があり、それぞれの大陸に王国があるそうだ。


今いる大陸はヒューエンス王国が統治しているそうで、主主体となる種族は人間らしい。他にも世界にはドワーフやエルフ、獣人なども世界にはいるそうだ。ちなみに、この馬車の目的地はヒューエンス王国の王都だそうだ。


それと最近、魔物が多く現れるようになったらしく、各国はソレの対応で頭を抱えてるそうだ。魔物が多くなった原因は分からないが50年程前から各地に現れた"ダンジョン"が関係していると考えられている。その為、冒険者の存在が世界の平和を維持するために必須で、冒険者ギルドの重要度が高まり、中央大陸にある共和国評議会の議長をギルド長が兼任しているそうだ。


(冒険者か。なんかファンタジーって感じだな)


エミリーは俺に冒険者登録を勧めてくれた。

冒険者になれば様々な恩恵が受けられるそうだ。


①各国入国税の免除

②各アイテムや素材の買取時、手数料減額

③ダンジョン内部への立ち入り許可

④船、馬車などの無償化


他にもあるが、大きな利点はこんな感じだ。


だが、登録制ではなく資格制だそうで、ギルド加盟は試験を受ける必要がある。それも超難関で100人に1〜2人程度の合格率だそうだ。

冒険者に憧れ試験を何度も受けて、結局資格を取れなかった者は、諦めて兵士やワーカーになるらしい。つまりこの世界では冒険者の方が兵士よりも格上に位置しているのだ。

王都に着いたら冒険者ギルドの支部があるそうなので、1度立ち寄ってみてはどうかと提案された。


エミリーとの会話も弾み時間の流れを忘れる。気がついた時には洞窟を抜け、王都の入口まで到着していた。


「えぇー、もう着いたの? エミリーとの会話に夢中であっという間だったよ。」


エミリーは“ふふふ”と笑った。


「私もですわ。こんなに楽しい時間は久しくありませんでしたわ。ソーマ様と偶然に出会えなければ、私達もこうして無事でいられたかどうか...本当に今回はありがとう御座いました。もし良ければ、我が家でお礼を兼ねて、おもてなしさせて頂きたいのですが?ご都合は如何でしょうか?」


エミリーの誘いも魅力的だったが、この世界に来て初の王都だし、色々見て回りたいとも思っていた。それに自分のスキルをもう少し知る必要がある。スキルを使った時から手の甲に現れた数字の7。

そういった事を1人でゆっくり調べたかった。


「せっかくのお誘いだがお礼が欲しくて助けたわけじゃない。助けたいから助けただけだし、気持ちだけ頂いておくよ!」


「そんな。それでは私の気持ちが収まりませんわ!せめてなにかお礼をさせて下さい」


「それなら1つお願いがあるんだけど」


「はい!何でも言ってくださいね! 私の出来ることで有れば」


「何か当面の稼ぎ口が欲しいんだ」


「そんな事で宜しいのですか?!」


「いやいや、重要だよ!お金がなかったら生きていけないもん。今俺は500リーンしか持ってないんだ。このままだと王都に着いても路頭に迷うことが決定してるんだよ。だから稼ぎ口があると非常に助かるんだ」


エミリーは笑いながら約束は必ず守りますと言って握手してくれた。相馬は街中に入り適当な場所で下ろして欲しいと馭者(ぎょしゃ)に声をかけた。


「かしこまりました。ソーマ様は本日の宿泊先はお決まりでしょうか?」


「いや、正直お金が無いから適当に野宿でもしますよ」


笑いながら馭者に伝える。


エミリーが立ち上がり馭者に何やら耳打ちをする。

馭者は頷き、馬の手綱を引いて馬を走らせる。

大きな通りに面した宿屋の前で馬車を停めた。


「ソーマ様しばらくお待ちください」


馭者は馬車から降りると宿屋の中に入って行った。

しばらくすると戻ってきて馬車の扉を開け1本の鍵を渡してきた。親切にもその馭者は宿屋に入り宿泊手続きまでしてくれたのだ。


「ソーマ様。7日分の宿泊は当家が負担させて頂きました。もしご不便御座いましたら何なりとお申し付けください」


「うん?当家?どういう事ですか?」


馭者の名前はクレハドールという。

クレハドールは狐に摘まれたような顔をした。


「はて?エミリー様、何もお伝えしていらっしゃらないのですか?」


エミリーは無言のまま頷く。


「失礼しました。今のお話はお忘れください。」


そう言うと胸に手を当て一礼し、その場から下がった。話の流れが分からずエミリーに質問する。


「エミリー。当家って?貴族か大商人の娘か何かなの?」


エミリーは困った顔をした。


「あの...」


「いや、やっぱりいい!もし言いたくなった時に言ってくれ」


エミリーは少しホッとしたような顔をして、また後日こちらの宿に来ますわ。お約束した件についてはお任せ下さいねと言った。


相馬は馬車から降り扉を閉めた。クレハドールに改めてお礼をいうと馬車は走り出した。馬車が見えなくなるまで見送り宿屋に入った。


店主に声をかけると、対応が何故かぎこちなく、まるで腫れ物を触るかの様だった。決して悪気があるわけではなさそうだ。丁寧に接しすぎてそれが不自然に見えているだけなのはわかった。


(この態度見る限り、エミリーは相当な有力者の娘に違いないんだな)


店主の態度がエミリーの立場をある程度わからせてくれた。


(何にせよエミリーには感謝だな。野宿しないで済んだ上に、仕事まで紹介してもらえるなら、助けた分以上の価値があるよ)


部屋は2階にあるそうなので、階段を登り部屋に向かう。木でできた階段は一歩進む度にギシギシと音を立てる。鍵に彫られた数字を頼りに部屋を探すと、1番奥の扉に辿り着いた。



☆現在の相馬情報☆

{残金500リーン}

{借金35000リーン}



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