同室者
船に乗る為、乗船桟橋へと向かう。近くまで来て改めてその大きさに驚いた。
帆柱は6本あり、それだけでもこの船がどれだけ早く進めるかが分かる。
船首には何かの”鳥”をモチーフにしているのだろうか、木でできたシンボルが威風堂々と添えられている。
船に乗り込み、マストを見上げる。天にまで突き刺さりそうなほど高く聳え立っている。
思わず口が開いたままになってしまう。
興味は尽きないが、船内を散策する前に指定された部屋に向かう事にした。
船内の通路は人が二人すれ違うのにお互い横向きになる必要があるくらい狭い。
大量の荷物を抱えていたら大変だったと思う。タジーロに引き取ってもらえて(強引に押し付けて?)本当に良かった。
部屋に入ると既に先客が3人いた。
同室のメンバーは全員これで揃ったようだ。
7日とはいえ仲良くしておくに越したことは無い。
「こんにちは! 自分はソーマと言います。7日間よろしくお願いいたしますね!」
男の一人が愛想よく返事をしてくれた。身なりから察するに冒険者、もしくは冒険者受験者といったところだろう。革の鎧に部分的に金属が使われている装備。動きやすさを重視しているのだろう。
「よろしくな!俺っちはニックだ」
ニックは相馬に握手を求め手を差し出してきた。
手を握るだけで力強さがしっかりと伝わってきた。
「私はグリンチと申します。中央大陸で商店を営んでおります」
グリンチは商人という事もあり、身なりのいい服を着ていた。恰幅も良くそれなりに年齢もいってそうだったが、感じの良さそうな男だ。
「僕はねマルクっていうんだ!!よろしくねソーマさん!」
マルクは15~6歳くらいのまだ子供だったが、この世界では15歳で成人を迎えると聞いたので子ども扱いしては失礼だろう。相馬の半分の年齢で成人と言うのだから恐れ入る。
各々の自己紹介を終えると身の上話などして時間を潰していった。
ニックとマルクは冒険者試験に挑むという事で、親近感が湧いた。
「でもさでもさ!、冒険者試験て今回はどんなことやるんだろうね?毎回違うらしいから対策出来ないしドキドキするよね!」
屈託ない笑顔でマルクは話す。
「まぁどんな試験でも俺っちには関係ないね!俺っちのスキルはスゲーからよ!」
相馬は気になりスキルを聞いてみた。
「ニックはどんなスキルもってるんだ?」
「おっ!?気になっちゃうか?そりゃそうだよな!よしよし、それじゃ特別だ!同室のよしみでおしえちゃうぜぃ!俺っちのスキルは『爆砕』ってやつよ!」
「えぇ!ニックさん教えちゃっていいんですか?それってそれって凄くリスクなんじゃ?」
マルクは驚いた表情でニックに苦言を呈する。
「マルクちゃんよ!真に強ければスキルがバレたって関係ないってもんよ!」
(なるほど。スキルっていうのは通常明かさない物なのか…覚えておこう)
「マルクちゃんはスキル持ってんのかい?その若さで冒険者目指そうってんだ。持ってて当然だよな?」
マルクは少し考えて隠し通す雰囲気では無いと察して渋々スキルを伝える。
「僕のは…『狂人』っていうスキルです…」
「マジか!?それはかなりレアスキルじゃん!!」
ニックは目を輝かせマルクに詰め寄る。
「まぁまぁかな。大した事ないよ」
マルクは満更でもないようだった。
「それで、ソーマさんもスキル持ってんだよね?俺っち達も教えたし当然…」
相馬を見つめてニカッと笑顔を見せる。
相馬も言わないでやり過ごせる雰囲気ではないので伝えようと思ったが、その前に一つ疑念があったので聞いてみることにした。
「俺のスキル言う前に1個聞きたいんだけど、他にもスキルは持ってないの?」
3人はお互い目を合わせ相馬の方を向き大笑いを始めた。
そしてニックが耐えられず相馬に話しかける。
「ちょ、ソーマさん。笑わせるの上手すぎ。スキル複数所持なんて、彼の英雄以外いないよ。スキルを1個でも持ってるだけでも凄いのに」
相馬はこの世界でのスキルの有り方を理解できてよかったと思うと共に、一抹の不安が生まれた。
試験中複数のスキルを使うのは危険すぎると考えたからだ。
あと、この場をどう切り抜けるか。今はそれを考えていた。
(ナビ子さん。なにかいい誤魔化し方無い?)
・・・現在その機能はアンロックされている為返答不可能です。
(うん?アンロック?どういうことだ?そういえば前にもアンロックって書かれたスキルがお勧めに出てたような…)
・・・ガイドを終了します。
スキルのアンロックという余計な情報だけが増えてしまいなんの解決にもならなかった。
3人の視線が痛い。
とりあえずスキルの中で使い勝手がいい戦闘系のスキルを伝えてその場をやり過ごす事にした。
「あぁ、俺のスキルは『縮地』だよ」
ニックは先程マルクに送った視線を相馬にも送る。
「ソーマさんも凄いスキルじゃんね!」
グリンチは驚天動地の出来事だと言わんばかりの表情を浮かべ口を開いた。
「いや~まさか、同室の方々が全員スキル持ちだという事に驚きを隠せませんよ。やはり冒険者試験直前だとこういう事が起こるんですなぁ。皆さまが冒険者になったら是非私の店を贔屓にして頂きたいですね」
「だなぁ~俺っちも3人がスキル持ちだって事にビックリしちまったよ。でもなグリンチさんよ。そんなスキル持ちが大勢集まっても年に数人しか受からないのが冒険者試験なんだぜ。それに最近は新人冒険者が行方不明になる事も多いって聞くしな。結局冒険者として生計を立てれるなんて本当に一握りなんだよなぁ。それでも、だからこそ夢があるってもんだ」
「それね!本当に冒険者になれちゃったら凄いよね!僕も冒険者になって世界中を旅するんだ!冒険者しか入れない場所も世界には多く存在してるもんね!」
「俺もワーカーやってたんだけどやっぱり冒険者に魅力を感じるよね。まぁ俺はある人に勧められて受けてみるってだけだから、みんなに比べて大した動機なんて無いんだよ」
三者三様に動機を持ち冒険者試験へと挑む。同室のメンバーのお陰で船旅も充実しそうだと内心嬉しかった。
そして、特に変化もないまま4日経った。
昼食も終り各々部屋に戻りくつろいで話していると、甲板の方が妙に騒がしくなった。ただ事ではないと思い見に行くことにした。
「魔物だ!!魔物が出たぞ!」
船員が魔物の出現を叫び知らせて回っていた。
顔は魚だが人型の魔物だ。体色は青く、身体中が鱗で覆われている。マーマンという魔物だ。
船員が武器を持ち攻撃を加えるが、硬い鱗にはじかれて傷一つ負わすことが出来ない。
魔物が手に持っている槍を一振りすると、船員一人の上半身と下半身が分かれる。一撃で絶命してしまった。
乗客は突然の魔物の襲来と船員の死という心胆を寒からしめる状況に、阿鼻叫喚の状況になっていた。
船には通常魔物避けの魔法が付与されている為、殆どの魔物が近寄ることが出来ないと聞いた。
つまりその魔法すら無視する魔物の実力も、推して図る事が出来る。
皆その状況を眺める事しか出来ないでいたのだった…
☆現在の相馬情報☆
{残金68501リーン}
{預金348000リーン}




