キャンプとサバイバル
馭者の声で目を覚ます。
30分程で出発するとのことだ。
寝ぼけ眼で支度を整える。
リュックを背負い馬車まで戻ると、どうやら自分が最後だったようだ。相馬が馬車に乗ると馭者は乗客に声をかけて馬車を走らせた。
あと6時間も走れば港町ラクアに到着する。
新しい町に行けると思うと少し気分も高揚してしまう。
「お兄さん、随分と大荷物だねぇ」
後ろの席に座っていた男性が声をかけてきた。
「あーいや、初めての野営で気合い入れすぎちゃって。ちょっと後悔してますよ」
「ははは。成程。備えあればなんとやらっていうしね。まぁでも旅するなら軽装が1番だよ」
自分が持っている荷物をポンポンと叩いて相馬に見せる。
相馬が持つリュックに比べて半分くらいのサイズだ。
「それで足りるんですか?よければ何かアドバイスしてくれませんか」
男性は嬉しかったのか、満面の笑みでレクチャーを始めた。
「もちろんだとも。それじゃあ、野営で1番必要なものはなんだと思う?」
話を続け有益な情報が手に入った。
要約すると
①火を付ける、縛るなど何かと便利な麻縄
②水袋
③保温や虫除けを兼ねたフード付きローブ
④保存の効く食べ物
⑤ナイフ
この5点が有れば十分だと教えてくれた。
これだけの用意なら、確かに少ない荷物で動きが取れる。
ワーカーと違い世界中を旅するであろう冒険者を目指す者としては、知っておいて損は無い。
この男はタジーロと行って世界各地を周り珍しい品物を買い付けして販売する行商人だそうだ。
馬車の乗り心地の悪さをどう対処しているのかも聞いてみたが、慣れだと言われてしまった。
タジーロは笑いながら言っていたが何度も乗り続けた結果お尻の皮膚が硬くなったそうだ。
(冗談じゃ無さそうで怖いわ。俺は次回からクッションは絶対持ってこよ)
タジーロの域に達するにはまだまだ修行が足りないようだ。
その後もタジーロが世界中を回っている時の話などを聞けて時間が経つのを忘れることができた。
その時馬車が停まるはずのない場所で停まった。
相馬は馬の休憩かな?と思っていたがどうやら事態は深刻らしい。
馭者は馬車を離れ少しして戻ってきたが、慌てた様子で乗客に状況を報告してきた。
「お客さま。申し訳ありません。この先の橋が一部決壊したそうで現在通行止めになっております。今復旧作業をしているそうですが、通行が再開するまでこちらで待機させて頂きます。ご迷惑お掛けしますがご理解の程よろしくお願いします」
皆渋々了承し馬車を降りた。
幸いにも船の出航は明日だ。時間の余裕はあるのでのんびりと待つことにした。
橋の復旧を待つ間タジーロから様々なサバイバルテクニックを伝授してもらった。
冒険者試験に向かうと話したら快く指導してくれた。
中には試験で使う可能性のある技術や知識もあったので、この出会いと馬車が遅れたことでできた時間に感謝した。
だが馭者から伝えられた話には少し動揺を隠せなかった。
「申し訳ありません。復旧までまだしばらくかかるそうなので、日も落ちかけてきました関係で、一旦この場で野営準備をお願いいたします」
乗客も一同騒めきたったが、文句を言っても仕方のないことだと諦め、各々準備を始めた。
相馬もタジーロ式野営術を習ってすぐに実践することになってしまったが、これはこれで良いと思い楽しむことにした。
最悪ラクアの街まで馬車で1時間足らずの距離だ。この河川さえ越えてしまえば歩いても向かえる。
河川を越す場合は最悪スキルを使えばどうにかなると考えていたからだ。
結局一晩明かして朝早くに出発することになった。
ようやく町に着いたのは7時くらいだった。
出発は昼頃と聞いていたので5時間程余裕はある。
タジーロは暫く港町ラクアに滞在するというので、感謝を伝えて別れた。
相馬の持っていた大量の調理器具などはタジーロにプレゼントした。少し迷惑かとも思ったが、売り払ってお金に変えてもらって構わないと伝え、受け取ってもらった。
タジーロの持つリュックでは入り切らず手に抱えるようにして持って行った。
軽装になったおかげでリュックがデロンとやる気を失っていた。
「どこかでリュック買い直そうかな。まぁとりあえず乗船手続きしなきゃな」
すれ違った人に乗船場の場所を訪ねて教えてもらった。
向かいながら町を眺める。
「やっぱり港町だけあって海産物の店ばっかりだな」
新鮮な魚や貝がどの店でも所狭しと並んでいる。店はどれも見た目が海の家の屋台といった感じだ。
日本でも地球でも同じようなスタイルになるという事は何かしらのメリットがあるという事なのだろう。
元ゼネコン勤務として建築物を見るとついつい考察してしまう。
店や建物を眺めながら歩いて行くと、海の中に桟橋が続く大きな建物に着いた。
先ほど聞いた乗船場だが木造かと思いきやコンクリート造りだった。
「この世界にもコンクリートってあるのか!?」
近くまで行き外壁をよく見ると小さな砂利や砕かれた貝のような物が中に混入している。
「あー成程!三和土か!確かに海なら貝殻だって取り放題だしね!」
三和土は、赤土・砂利などに消石灰とにがりを混ぜて練り、塗って敲き固めた物で、この港町なら材料に困ることはない。風化しにくく強度もある為、日本でも古くから使われている。
魔法がある世界でも、こうした自然物の有効利用もしっかりされているこの世界の技術水準に脱帽した。
建物を眺めるのを一旦やめて受付に行く。
結構な人数が並んでいたのを見るとなかなか大きな船なのだろう。
順番が回ってくると客室のグレードを聞かれた。
ーー大部屋
ベットはなく雑魚寝
金額20,000リーン
ーー4人部屋
2段ベットが2つ。
金額50,000リーン/1名
ーー2人部屋
100,000リーン/1名
ーー1人部屋
250,000リーン
全部で4タイプあったので4人部屋を選択した。
一泊程度なら大部屋でも良いのだが、流石に7日ともなるとベットが欲しい。
50,000リーンを払い、乗船券を貰った。
本当はラクアで1泊して町を散策する予定だったのだが、馬車道中のトラブルが原因で大幅に到着が遅れたので無事に船に乗れるだけでもありがたい。
船は7日に一本。乗り遅れた時点で試験には間に合わなくなる。後は船を待つばかりとなったので少しだけ町を見て回ることにした。
そして港に船が到着した。町のどこにいても見える大きな船だ。相馬は船の下へ向かった...
☆現在の相馬情報☆
{残金68,501リーン}
{預金348,000リーン}




