目指せ中央大陸
「あーーー行くか…うっ...おぇ」
頭痛と吐き気で気分は最悪だ。
昨晩の火酒が身体から抜けていない。
酷い二日酔いだ。
気合を入れてリュックを背負うが、かなりの重量に思わずよろける。
なんとか態勢を整えるが支える足に力が入らない。
異世界に来て初めての野営をしなくてはならない事を知り、思わず大量に野営用品を買い込んでしまった。かなり充実したソロキャンプに行けるレベルの装備になってしまった。
そこに二日酔いが合わさり絶望的な状況に陥ってしまったのだ。
「うっ。気持ち悪い…これダメだ。動けない。うっ。仕方ない。ナビ子さん二日酔いどうにかできない?」
・・・オススメスキル一覧を表示します。
――状態異常回復(弱)
効果:微毒、弱麻痺、軽い眠気などの症状が軽い状態異常を回復
回数:1回
金額:5,000リーン
――状態異常回復(中)
効果:状態異常を体から一つ取り除ける。但し呪いや封印などの状態異常には無効
回数:1回
金額:50,000リーン
――状態異常回復(上)
効果:状態異常を完全に取り除ける。但し強力な呪いの解除は不可の場合あり
回数:1
金額:200,000リーン
――状態異常回復(極)
効果:強力な呪いを含む全ての状態異常を完全に取り除け、さらに発動後10分間は状態異常を受け付けない
回数:1
金額:1,500,000リーン
「ナビ子さん。うっぷ...二日酔い...治せるやつで...うっ」
・・・状態異常(中)で完全に体内に残るアルコールを完全に除去できます。
「うーん50,000リーンか…背に腹は代えられない!ナビ子さん使ってく。うっ…」
・・・スキル『異常状態回復(中)』を購入並びに使用します。ふっ…
「えっ今なんか馬鹿にされた気がするんだけど!?」
ナビ子さんの返答は無く、身体が光り輝きアルコールが抜けていくのが分かった。
頭痛は消え去り、吐き気も完全に取り除かれた。
・・・預り金は残り350,000リーンです。
今回2週間で稼いで色々な物を買い込んだ結果手元に536,501リーン残った。
そのうちの400,000リーンをスキル内に預け入れしたのだ。
そうする事で、借金を背負わず安全にスキルを使用できる。
もちろん預け入れ金がマイナスになれば再び借金地獄が始まるのだが、そこさえ注意しておけば、かなり万能なスキルだという事は理解できた。
これから冒険者を生業とするなら必ずスキルは必要になる。冒険者はワーカーと違い換金率も高く効率よくお金を稼げる。
その為にはスキルを出し惜しみしてはいられないのだ。
スキルのお陰で体調も回復し、背負ったリュックの重さも問題無くなった。
宿屋の主人に世話になった礼を伝え、宿屋を後にする。
街からは馬車を使っての移動だ。目的地は港町ラクア。漁業の発展した町だと聞いている。
そこから定期的に中央大陸に向けて船が出ているのだ。
馬車が出る時刻まで少し余裕があるので、商会ギルドに行ってコレットに挨拶しようと思った。
(あの可愛い顔が見れなくなるのは少し寂しいけど、永遠に会えなくなるわけでもないしね)
商会ギルドに入ると、受付に居たコレットがこちらに気付き手を振ってきた。
「ソーマさん!これからご出立ですか~?」
「うん。最後にコレットさんの顔見ておきたくてね」
「そんなこといっても何もでませんよぉ~」
少し照れた顔も可愛いと相馬は心から思った。
「いや本当にコレットさんにはお世話になったよ。今日までありがとうね」
「そう言ってもらえて嬉しいですぅ~!ソーマさん、冒険者試験頑張ってくださいね~」
「ありがとう!絶対合格するよ!」
「ソーマさんなら一発合格余裕ですよぉ~ 合格したら必ず会いに来てくださいねぇ~」
「もちろん!必ず会いに来るよ!その時はご飯でもどう?」
相馬は勢いでコレットを誘ってしまった。
「え~。どうしようかなぁ~」
…相馬はこの街に思い残すことは無くなった。そしてもう2度と戻らないと心に誓った。
「なんちゃって~♡嘘ですぅ~絶対にお食事誘ってくださいねぇ~忘れたら怒っちゃいますよ~」
コレットは軽く舌を出しておどけて見せた。
…相馬はこの街に必ず戻ってこようと心に誓った。
生を受けて30歳。初めてのナンパに成功できた。異世界最高!!と心の中で踊り狂った。
しかし、それを顔に出すのは紳士として間違っている。クールな大人の男を演じてコレットにお礼を伝えた。
相馬は”社交辞令”という言葉を忘れていた。
「もちろんさ。必ず冒険者になってこの街に戻ってくる。再開を約束しよう」
流石に喋り方まで変貌した事にコレットも苦笑いしたが、最後はいつものように満面の笑みで送ってくれた。
「それじゃ行ってくるね!」
「はい~無茶はしちゃダメですからねぇ~」
振り向くことなく商会ギルドを後にした。
正門の前に馬車が列を無して停車している。
馭者が大きな声で行き先を叫んでいた。
「ラクア行き~ラクア行きの馬車をご希望の方!ラクア行き~ラクア行きの馬車はこちらです」
相馬は馭者の近くに歩み寄り声を掛ける。
「ラクアまで頼みたい」
「へい、ありがとうございます!運賃は8,000リーンでございます」
馭者に8,000リーンを渡して馬車に乗り込む。
かなり大型の馬車で、20人近く乗れそうな大きさだった。
荷物を隣の席に置いて出発の時刻を待つ。
そして5分程して馭者は馬車の操縦席に座り、乗客に声を掛けた。
「それでは、ラクア行き出発します!!ハイヨー」
手綱をしっかりと握り、長い棒の先端に鞭が着いた道具で”ピシャリ”と馬を打つ。
馬はゆっくりと走りだし馬車は動き出した。
日本で普通自動車免許を持っていた俺だからこそ感じるこの乗り心地の悪さ。
地面はボコボコ。車輪は木。衝撃を吸収する物など無い。座っている椅子も木でできた長椅子だ。
ものの数分でお尻が痛くなってきたのは言うまでもない。これを後1日以上乗り続けなくてはいけないと考えると正直地獄だ。もし日本での知識を商品化出来たら、それで財を成せるかもしれないと相馬は考えた。
この世界にはドワーフもいると聞いた。いつかドワーフの国に行ったら商品開発を試みてみようかと思った。何か考えていないとお尻が崩壊する。必死に何かを考えて気を紛らわそうとした。
ふとエミリーの事を思い出す。最後にエミリーと会ったのは2日前の事だ…
――――2日前
{ソーマ様、後数日でご出発なされるのですね。自分で勧めておいてなんですが、少し寂しいですわね」
「そう言ってもらえると、なんだか嬉しいよ!絶対合格してまたこの街に戻ってくるよ!」
「はい♪お会いできるの楽しみにしておりますわね!今は私の身分は明かせませんの。申し訳ありません。ですが…ソーマ様が冒険者に成られましたら必ず再開できますわ」
「わかった。事情がありそうだし、敢て聞くことはしない。必ず再開できるって言葉を信じるよ」
「はい♪ありがとうございます。ソーマ様のご健勝、離れた場所からお祈りさせて頂きますわね!」
―――今に戻る
(エミリーって本当に何者なんだろう。話し方も高貴な感じだし、この国の貴族かな?)
この世界に来てエミリーと出会い全ては始まった。
冒険者の試験は毎年変わるそうで対策を取る事が出来ないと教えてくれた。
だが、こんな俺に対してあれだけ良くしてくれて、そして信じてくれたエミリーやボルク爺さん、それにコレットさんに報いる為にも必ず”合格”すると改めて決意を固める。
そして相馬はお尻の心配をしながら馬車に揺られ、早くラクアについてくれと祈るのだった…
☆現在の相馬情報☆
{残金118,501リーン}
{預金350,000リーン}




