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17/40

腹が減っては狩猟はできぬ

「さま…ソー…さま!!ソーマ様!!」


激しく体を揺さぶられ目が覚める。


「う…うん?」


目を開くと女将さんが心配そうな表情で俺を見ていた。

どうやら床に倒れたまま気を失っていた様だ。

身体を起こそうとするが空腹と熱のせいか力が入らない。

女将さんに肩を借りてベットまで移動する。


「ソーマ様大丈夫ですか?酷い熱ですよ?清掃に伺ったら部屋の中で倒れているもんだから心配しましたよ!!」


「あっ、、、あぁ。すいませ…」


突如お腹が鳴る。


「ソーマ様、ご飯は?」


「いや、恥ずかしながらお金が無くて…」


「それじゃ体力戻りません!!ちょっと待っててください」


女将さんはそのまま部屋を出て行ってしまった。

視界がぼやける。40度近く熱があるみたいだ。

ふと手の数字が気になり手を持ち上げて確認した。


手の数字は3→2になっていた。

結局なんの収穫も無いまま負債額は77,909リーンになってしまった。

かなりの時間気を失っていたようで、時間の感覚がない。窓を見てみると太陽の位置は頂点を迎えていなかった。つまり数時間で2→1に変化してしまう。24時間近く気を失っていた様だ。

性格には途中何度も起きていたのだが力が入らず身動き取れなかったのだ。


(自分的には瞬きした位の時間感覚だったのだが…これは、最悪死ぬかもしれない…)


病気が治らなければ狩にいけない。2日後の昼には相馬は死ぬ。

スキルに対価として命を支払わされるからだ。

たった一度の油断が、相馬を崖っぷちに立たせた。

死神の鎌が首にかけられた。


(とにかく、狩りに行かなきゃ…病気で死ぬかタイムリミットで死ぬかだ。だったら可能性のある方に賭ける。あのクソジジイに殺されてたまるか!!)


だが意思に反して体が動かない。根性論は現実には通用しないのだ。

奮闘虚しく天井を見つめる事しか出来ない現状に絶望していると、女将が再び部屋に入って来た。

寝室に広がるいい香り。どうやら食事を持って来てくれたようだ。


「簡単な物しかないですけどこれ食べてくださいね!」


「い…や、あの、お金が…」


「お金より命ですよ!ちゃんと元気になってしっかり働いて!まずはそれからです!!」


優しさに感謝して素直に受け入れることにした。もうなりふり構っている時間はない。

女将の介助で体を起こし、ヘッドボードに寄りかかり足の上に食事を置いた。


黄金色をした御粥だ。卵が入っている。スプーンで掬って口元まで運ぶ。

唇に熱気が伝わってくる。フーフーと息を吹きかけ冷ます。息が吹きかけられた時に御粥のいい匂いがする。火傷しないように気を付けながら慎重に口の中へ入れる。


見た目は素朴だが、鶏ガラで出汁を取っている様でしっかり味がついている。

出汁を吸った米が口の中で溶け出す。久しぶりの食事に薄味のはずだが、とても濃い。それを卵のまろやかさで中和してくれる。食道を通り胃に落ちるまでに体いっぱいに栄養が染みわたっていく感覚になった。


「うまい…うまいです…」


相馬は口の中を軽く火傷してしまう位次々に御粥を口の中へ運んだ。

土鍋いっぱいに入っていたお粥もあっという間に完食してしまった。

最後にコップ一杯の水を飲み干しお粥で熱くなった内臓を一気に冷ます。


お腹も膨れ、再び眠くなり、瞼が重くなる。その様子を見ていた女将さんが声を出して微笑む。


「ソーマ様。今はゆっくり寝てください。また夕ご飯の時にお粥をお持ちしますからね。ちゃんと今日は安静にするようにね!」


女将さんは食器を下げるとそのまま部屋を後にした。

相馬も睡魔に抗えず眠りに付いた。

夜にまた女将さんがお粥を持って来てくれた。その際、タオルも持って来てくれたので、食事後に汗を拭いた。

再び眠りに付く。そして翌朝…


「熱も下がった!!よしこれで猟にでれる!!」


相馬は女将さんのお陰で無事体調を取り戻すことが出来た。手の数字は2→1になり負債額は101281リーンになっていた。

残された時間は明日の昼。今日の昼には0になってしまう。残り30時間で約140000リーンを稼がなくてはいけないのだ。


窓の外を見ると日が昇り始めていて、うっすらと東の空が明るくなってきていた。

急いで準備を整え宿を出る。フロントに女将さんが丁度居たので声を掛けた。


「おかげ様で元気になりました!本当はもう少し休んでなきゃいけないんでしょうが時間が無いのでこれから猟に行ってきます。本当にありがとうございました!」


「元気になってよかったです!あまり無理しちゃだめですよ!病み上がりってことを忘れずにね!」


女将さんに見送られて宿を出る。そのまま西門から山を目指した。街の外に出た頃には日はすっかり顔を出していたので寝屋(ねや)に動物たちは戻っているはずだと考えたのだ。

山の中腹位まで登ったところでスキルを発動した。


「ナビ子さん。【探知】を頼む」


・・・スキル【探知】を購入並びに即使用しますか?


(YES!)


・・・スキル【探知】を発動します。制限時間は5分です。


意識を集中して辺りを探る。しかし今いる場所から半径500メートル以内には大型獣はいなかった。駆け足で場所を移動して再び探る。またヒットしない。

同じように再び移動して探る。残り時間は60秒を切っている。

今回は無事大型獣を捉える事が出来た。


今回は失敗する事が出来ない。スキルを追加で使う事にする。


(ナビ子さん。【無音】も追加で頼む)


・・・スキル【無音】を購入並びに即使用しますか?


(YES!)


・・・スキル【無音】を発動します。制限時間は60分です。


【無音】スキルの効果で音を気にしないで済む。全力で【探知】にかかった獣の方へ走る。

距離は360メートル程。

寝ていたので動かれる心配は限りなく少ない。


(この裏だな…)


竹藪の中にある少し開けたスペースに寝屋(ねや)はあった。

竹藪のせいで日が当たらない為か姿を隠せる草むらが無い。

竹は細すぎて自分自身を隠す事が出来ない。。


匍匐前進(ほふくぜんしん)でジリジリと近寄る。

クロスボウを構えていつでも撃てる準備をしておく。

黒くて丸っこい生き物がいた。


(猪か!?確か結構高額だったはず。絶対仕留める!!!)


だが、猪は突然こちらを向いて起き上がった。

音は出ていない。そういえば猪は犬の嗅覚と同等と聞いたことがある。

風下から近寄ってしまった為匂いで気付かれてしまったのだ。


慌てて狙いを定める。猪は相馬がいる方と逆に走り出した。

考えてる暇はない。イチかバチかで引き金を引く。

猪の左臀部に矢は刺さり、猪は勢いよく転がり斜面を滑り落ちていった。


急いで立ち上がり二の矢を装填する。

後ろ足を撃ち抜かれた為すぐに走り出すことが出来ないようだ。

山の上から斜面を滑り落ちていった猪に狙いを定める。

そして引き金を引いた。矢は左胴体の前脚の付け根付近に刺さり、猪は”ピギィー”と声を上げで動かなくなった…


運よく致命傷を与えることが出来たようだ。

急いで駆け寄り『エルバトラム』を腰から抜き取り、猪の動脈を切り裂いさき血抜きを行う。

鹿、猪、熊の血抜き方法は既に商会ギルドで教わっていたので知識として知っていた。

無事血抜きを行えたので、5分程待ってから内臓を取り出す作業に移った。


適当に落ちてる木の枝を拾って肛門に突き刺し固定する。

肛門回りを少し大きめに切り込みを入れる。直腸を傷つけてしまうと糞尿が肉について臭みの原因となるから先に処理しろと教わっていたのだ。そしてお腹に肛門を起点に切り込みを入れる。

内臓を傷つけないように切先を人差し指でカバーしながら刃を上に向ける。


豆腐を切る感覚に近いくらい抵抗が無い。『エルバトラム』の凄さが切れ味で理解できる。

全てを切り裂くと内臓があらわになった。独特な臭いに嗚咽してしまう。

グッと堪えて言われた通りに気道を切り落とし横隔膜を持って一気に肛門側の向けて引っ張り出すす。


始めて一連の作業を行ったが、無事やりきる事が出来た。

取り出した内臓は置いておけばスカベンジャーによって翌日には無くなるとの事だったので放置して、内臓を抜かれた猪の脚を全て太めの枝に括り付け、担いで下山を始めた。


こういった知識を聞いているのと聞いていないのでは雲泥の差だ。

前回気合で引きずった時は地獄だったが、今回はスイスイ下山する事が出来た。

そのまま商会ギルドに持ち込み査定をお願いした。


「ソーマさん~お待たせしました~これが査定になります~」


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


――猪

1頭:50000リーン

合計:50000リーン


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「今回はちゃんと処理されてたのでばっちりでしたよ~。これで大丈夫だったら買取完了のサインを下さいね~」


「ありがとう!もう一回今日は山に戻るつもりだから運が良ければまた来るよ!」


「すごいですねぇ!気を付けて行ってきてくださいね!最近は山に獣の数が減ってきてるって他のワーカーさん達も言ってたので、少し離れた山に行った方が効率良いかもしれませんよぉ~」


コレットさんは相変わらず、のほほんとしている。

だがくれる情報はかなり有益な物が多い。そしてやはり可愛い。

彼女の笑顔で疲れも吹き飛んだところで、早速猟に向かう。

今日は徹夜も覚悟で行く。後数時間で数字は0に変わり、24時間の猶予になってしまう。


買取完了のサインをして、対価を受け取った。

商会ギルドを急いで山に戻る。本当は食べ物と飲み物も持って行きたかったがお金は全部返済に回すつもりだ。


気合を入れて街から少し離れた山へ入った。

太陽の位置を確認すると頂点に昇りかけていた。


「ナビ子さん。返済を頼む」


・・・返済用魔法陣を展開します。魔法陣の中に返済予定額を置いてください。


50000リーン全てを置く


・・・貨幣を回収致します。返済額50000リーンを確認。現在のお借入額105061リーンは55061リーンになりました。以上返済モードを終了いたします。


「よし。これで背水の陣だな。必ず生き残ってやる!!見てろクソジジイ!!」


自らを鼓舞して山を昇る。

本当の戦いが始まる。





☆現在の相馬情報☆

{残金0リーン}

{借金55061リーン}


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