『エルバトラム』
依頼掲示板を見ると様々な依頼が貼られていた。
例えば今回は鹿狩りをして1頭当たりが25000リーンだったが、掲示板の内容だともっと割が良い内容になっていた。
[討伐クエスト]
題名:農作物を荒らす害獣を駆除して欲しい
内容:猪が夜な夜な畑を荒らして困っている。3頭いるのは確認している。
達成条件:猪3頭以上の討伐で達成
成功報酬:50000リーン
追加報酬:猪1頭に付き50000リーン
[討伐クエスト]
題名:最近村の近くに現れる熊を討伐して欲しい
内容:村の近くにある街道沿いに熊が現れて行きかう人々を襲っている。早急に駆除して欲しい
達成条件:熊1頭以上の討伐
成功報酬:150,000リーン
追加報酬:100,000リーン
[採取クエスト]
題名:薬草を採取して欲しい
内容:ヨギモという止血効果の高い薬草を5枚採取して欲しい。
生息地:王都ヒューエンス近辺の森や山
成功報酬:18,000リーン
[採取クエスト]
題名:幻のキノコを採取して欲しい
内容:幻のキノコ 金色香茸というキノコを採取して欲しい。
生息地:不明
成功報酬:130,000リーン(1本)
どれも破格の値段が付いていた。ヨギモの薬草だって1枚
の買取価格は1000円程度だったはず。
因みに相馬が最初の村で買った薬草はその辺にも生えている雑草レベルの薬草だった。
幻のキノコの値段が非常に気になる。一応情報だけ聞いてみようと思い、コレットの下へ向かう。
「コレットさん。ちょっと質問あるんだけど良い?」
「は~い」
「依頼の中にあった金色香茸ってどんなキノコなの?」
「あーあれはですねぇ~金色のいい匂いがするキノコですよぉ~」
コレットに悪気が無いのは分かっている。聞きたい内容の斜め上の返答をしてくるコレットのやり取りは慣れてきた。
「できれば、もっと具体的な形とか色とか知りたいんだけど何か参考になる資料とかないのかな?」
「あぁ~それなら魔写機で念写しますねぇ~」
「あっうん…魔写機?うんそれで頼む」
「1枚350リーンかかりますよぉ~」
コレットさんに中銅貨3枚と小銅貨を5枚渡して念写?をお願いした。
一旦裏に消えていったコレットは一冊の本と不思議な模様と中央に目の模様が描かれた箱の様な物を持って戻ってきた。
ペラペラとページを捲ると、1ページを箱の様な物に押し当てた。一瞬光が放たれ、箱の側面から1枚の紙がでてきた。
そこには金色香茸の写真と詳細が書かれてあった。
この箱はどうやら魔法アイテムらしく、簡単に言うとコピー機の様だ。
受け取り、折りたたんでポッケにしまう。
コレットにお礼を言って、商会ギルドを後にした。
依頼内容は全て魅力的だったが王都から他の村に移動する必要がある為、往復でも数日かかってしまう。今は獲物を狩り取って確実に返済するしかない。
(返済が終わったら依頼を受けてみよう)
今後の事も考えつつ、クロスボウを購入した武器屋に向かう。
内臓を抜き取る為にナイフが必要だったからだ。
今持ってるのは長剣。さすがに解体には向かない。
店の中に入ると今回は鍛冶を行っている音は聞こえなかった。
あの熱された金属が奏でる音色は好きだったので少し残念だ。
店主が気づいて声を掛けてきた。
「おう!どうじゃった?なんか獲れたんか?」
「おかげ様でウサギ3羽と雌鹿1頭獲りましたよ!!」
思い出して少し興奮気味に猟果を伝える。店主も凄く驚いていた。
「まさか、お前さん、昨日の今日で獲ったのか!?やるじゃねーか!」
初めての猟、経験した事、感じた事。1時間近く話し込んでしまった。
その間、店主は話を遮ることなく話を聞き続けてくれた。
この時初めて知ったのだが、店主の名前はボルク。ボルク爺さんと呼ぶことにした。
話を全て聞き終えたボルク爺さんが口を開く。
「お前さんが感じた全ての事がお前さんを成長させる糧になるんじゃ。動物は凄いじゃよ。狩りで命の掛けて心を成長させてくれる。獲った肉は食って体を成長させる。もちろん人間の勝手かもしんねーが、わしゃそう思う事にしてるんじゃ。それにな、寒冷期になると山の草花は枯れ果てる。そうすると鹿は木の皮を食うんじゃ。そうすると木は寒さに耐えれず枯れる。5年もすれば山は裸になっちまう。鳥や小動物のように木に隠れ住んでる奴らの住処も無くなるんじゃ。ワーカーは何と呼ばれてるか知っとるか?」
「いや、知らないです…」
「森の番人じゃよ。命を狩る事で多くの命を救う役目もあるんじゃ。だからな、大事なのは心なんじゃよ。それについてもゆっくり学べばいいんじゃ。まだまだ若いんじゃ。すぐ答えなんて出さんでもえぇんじゃ」
ワーカーの有り方をボルク爺さんから聞いて、心に絡みついていた懺悔の念が解けていった。
少し涙が溢れてきたが、男の意地がある。グッと堪えて感謝の意を伝えた。
そして、当初の目的であるナイフを購入したいと伝えた。
ボルク爺さんはナイフが置いてあるコーナーを指さし場所を教えてくれた。
「ソーマよ。ちょっと見て待っとれ」
「分かりました!ちょっと拝見します」
ナイフにも色々な種類がある、刃の厚み一本とっても用途が違うようだ。
狩猟用、キャンプ用、採取用などだ。
狩猟用、血抜き用のナイフは少し長めで側面に溝が彫られている。
キャンプ用は木を削ったり割ったり出来るように刃の厚みがある。木に刃を当てて、その刃の背面部分を別の木で叩けばバトンと言って木を斧のように割る事が出来る様だ。
採取用のナイフは刃の形状自体がスコップのように丸みを帯びていて、両刃で片方には鋸の様なギザギザがついている。
用途による違いが刃で見て取れる。逆に言えばそういう事を考えながら作れる職人の凄さだ。
多分、自分でもワーカーをやっているからこそ、痒いところに手が届く作品を作れるのだろう。
(俺は日本にいた時もそれなりに大手のゼネコン勤務をしていた。だが情熱なんて物は無かった。
言われるがままに仕事をするだけだった。それで、カッコつけて部下を庇って上司を殴って。そんな事したらその後部下はどんな仕打ちを受けるかとか考えてなかったなぁ。結局傲慢なだけで何にも俺には無かったんだ)
この世界に来て心を揺さぶられる事が多い。自分でも成長したと実感できる。
そんな事を考えているとボルク爺さんが戻ってきた。手には一本のナイフが握られていた。
「お待たせしたねぇ。こいつを見てごらんよ」
ボルク爺さんは持ってきたナイフを相馬に渡す。
見た目より軽い。そして刀身は光に当たると少し青い光を反射させる。
明らかに店内にあったどのナイフとも違う。間違いなく業物と呼ばれる作品だ。
「ボルク爺さん!この業物は!?」
「業物かぁ。そいつは嬉しい言葉だねぇ。そりゃワシが最後に打ったナイフじゃよ」
「素人目に見ても分かるよ!流石ボルク爺さん!名工だったんじゃん!!」
「ほっほっほ。名工はおだて過ぎじゃよ。それでな、お前さんにそいつをやるわい」
ボルク爺さんの突然の申し出に困惑を隠せない。
これは値段を付けたら3桁はいくナイフだと率直に感じた。
流石に貰うなんて気が引けてしまう。まだ会って数日の関係なのに。
「ぼ、ボルク爺さん、さすがに貰えないよ!!俺なんかが持ってて良い代物じゃないよ」
「わしはお前さんの話を聞いてコイツを任せても良いと感じたんじゃ。どのワーカー連中もお前さんみたいな考え方になるには何年もかかるじゃろう。お前さんには光る何かがある。ワーカーを超える…そう、冒険者になれる資質をワシはお前さんに見たのじゃ。それにな、ナイフだって使ってやらにゃ可哀そうじゃろ?お前さんが肌身離さずそいつと冒険してくれりゃ喜ぶってもんじゃ」
ボルク爺さんの思いが心の底から嬉しかった。それと同時に期待が肩にのしかかる。
過度な期待だと思い押しつぶされそうだったが、この世界で生き抜いていく覚悟を決めるいいチャンスだとも思えた。
「ボルク爺さん。俺は、この世界で立派に生き抜いて見せる。今は金が無いけどいつか必ずこのナイフに見合う報酬を持って店に来るからさ!貸にしてくれ!その方がやる気が出る!」
「ほっ。若造が良くいうわい。だがそれでこそワシが見込んだ男じゃ。いいだろう。いつか金を持ってこい!その時に土産話も楽しみにしとるでな!」
堪え切れずに涙を流してしまった。そして、ボルク爺さんと握手を交わす。
しかし、このままでは帰れないと思いせっかくだからとリュックとロープが無いか尋ねてみた。
残念なことにその商品は別の店だと聞いたので仕方なくナイフだけを貰う形になってしまった。
「ほら、明日も早いんじゃろ?ワーカーには朝が早いからの。帰って寝るんじゃ。あと今日はきちんと体を流すんじゃぞ!血の匂いで気付かれちまうからな」
「ありがとう!宿に戻ったらすぐに湯浴みするよ!」
ボルク爺さんに頂いたナイフをベルトの左部分に装備した。
「あっ、ボルク爺さん!このナイフ名前は!?」
「あぁ名前か!そいつは【エルバトラム】じゃ」
「分かった!絶対大事にするから!」
そして、店を後にした。
宿に戻ると丁度受付に女性従業員がいたので湯浴みをしたいと伝え部屋に入った。
20分程貰ったナイフを眺めていると、部屋に前回同様の湯浴みセットを運んできてくれた。
すぐに体に付いた泥と血を落とす。気を使ってくれたのか今回はお湯の入ったバケツが3個だった。
こういうさりげない気遣いが嬉しい。
「本当に、良い街だな~異世界に来てよかったよ。まぁスキルに命狙われてるけどね」
独り言を言うと相馬は面白くなって笑ってしまった。
ボルク爺さんの言葉が命の取り立てに対する恐怖心を消し去ってくれた。
「明日も稼ぐぞ!」
湯浴みを終えてベッドに入る。枕元にナイフを置いてすぐさま眠りに落ちた…
☆現在の相馬情報☆
{残金41643リーン}
{借金85163リーン}




