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空想短編小説 青い沼

作者: たけじん

地球温暖化、異常気象により日本列島は熱帯化するというシナリオです。未来の人たちはどう対応したのか。それに対して地球はどうなったのかについて空想しました。

初めての投稿ですので舌足らずの描写があるかもしれませんが、ご容赦願います。

第一章 小山の四季

その山は、冬になると小さなスキー場になる。

裾野一帯はかなりの高台となっており、数軒の農家が転々とし、その周囲は雪に被われた段々畑が広がっている。

その畑の遠く、三キロほど先には海岸が見えている。

雪山のゲレンデではスキーやソリ遊びに講じている子供たちがいた。


 その雪山は、三か月後には雪は解け、青々しい草むらと若葉の木立に変わる。

またその数か月後には、山自体が唸っているような蝉の大合唱が繰り広げられる。

さらに三か月後、草むらはススキの穂に変わり、生い茂った樹木の葉は赤や黄に紅葉し、人を誘うようにざわめく。

 再び、その山に雪が散らつき、次第に根雪となり、子供たちにとって格好の遊び場と化す。

 その小山は、飽きもせず四つの季節を繰り返している。

人は、その繰り返しを永遠のものと思っている。


第二章 青い沼

 2019年8月午前中、私はこの小山を登り始めた。

 冬になるとスキー場と化す一体は、背の低い草が生い茂り、その周りは落葉樹の木立ちが立ち並ぶ林が広がっている。

 私は、林の横に沿い草の生い茂る当たりを踏みしめて登った。

かなりの傾斜があり、足首には相当の負担がかかった。

山の頂きがようやく見えてくるあたりまで辿り着き、水筒を出した。

ふと木立に眼をやると、遠くに青い水面(みなも)がちらちらと見えた。

もっとよく見ようと木立ちの中に分け入り、沼のほとりまで進んだ。

 そのみなもは、尋常な青ではなかった。

空の青よりも青く、まさにコバルトブルーだった。

私は、そのコバルトブルーに釘付けになり、立ちすくんだ。


 風のざわめきに我に返った。

辺りは、また静寂に包まれた。

みなもには、木々の緑が映っている。

みなものコバルトブルーと木々の緑のコントラストが微妙な怪しさを醸しだしている。

沼が「こちらへおいで」と私に声をかけているような気がした。

私はゾクッとした。

 声の主を探すように足をもう一歩進めた。

その瞬間、足がズルッと滑り体全体が沼に引き込まれた。

「やばい」、必死にもがき泳ごうとした。

しかし、両手・両脚とも水の感触は全くない。

体全体が宙に浮いたような感じがした。

しばらくすると体が急激に下の方へ引っ張られた。

数時間経ったような長い時間、奈落の底へ引っ張られるような感じがした。


第三章 別の世界

目が覚めた。

沼のほとりに突っ伏していた。

起き上がって辺りを見まわした。

そこは、先ほど辿り着いたコバルトブルーの沼のほとりであった。

しかし、その周囲は落葉樹の林はなく、熱帯植物園の温室で見かけるような植物に被われていた。

 そこは、熱帯地方のいろいろな種類のシダが生い茂り、人の身長の3倍ほどもある大きな葉っぱを広げたバナナのような植物、パラソルよりも大きな笠が覆いかぶさるような背の高いキノコなど今までに見た熱帯植物よりも巨大であった。

 その大きな植物の下には赤や青、黄色あるいは斑模様の大きな花を咲かせたランに似た植物やウツボカズラを思い起される植物が数限りなく生い茂っていた。

これら植物群の上からは奇妙な鳴き声や雄叫びが聞こえている。

行けども行けども熱帯植物の群を抜け出すことができなかった。

山を下りる感じでしばらく歩くと突然視界が開けた。

「やっと抜けたな」と安堵し、その先を見まわした。

小山の中伏には背の低い雑草が生い茂っているはずであったが、そこもやはり熱帯植物に覆われていた。

 山の裾野は畑と数軒の農家があるはずだったがそれもない。

三キロくらい離れていた海岸は高台のヘリまで来ており、波しぶきを上げている。

 そして裾野一帯は、高層建築物が立ち並ぶ景色に変わっていた。

よく見ると、その建物群はところどころ壁が剥がれ落ち、窓ガラスも割れ散乱していた。

 何度も大声で叫んだが、それに答える者はいない。

ある建物に近づき、その礎石板を見た。

 「2170年4月6日建立」と刻まれていた。


第四章 170年間の気象変動

 そこは、公共スペースのような建物であった。

誰もいない。

広いロビーの一角に情報スペースがあり、大きなモニターがあった。

情報スペースの隅にはデジタルカレンダーがあり、その日付けを見た。

「2190年9月20日」で止まっていた。

、およそ170年後の世界である。


 情報コーのモニターのボタンをあちこち触っていると突如モニターが動きだした。 

 モニターから「何をお知りになりたいですか」

「2020年から今までの気象の変化」と答えた。

モニターは「2020年から2190年9月までの気象の変化でよろしいでしょうか」

「それでOK」と私。

モニターから170年間に渡る地球や日本の気象の変化に関するデータやVTRが流れた。

その内容を要約すると次のとおりである。


〇 2020年以降も国連の地球温暖化に関する条約の進展は 遅々として進まず、ますます地球温暖化が顕著となった。

〇 この140年間、日本列島は毎年10個以上の超大型台風が上陸した。また、平均気温の上昇により極地の氷山や氷河は溶け出し、海水面は上昇し海に接していた世界各国の大都市は海面下に没した。

〇 地球温暖化によるこれら異常気象の影響により、2160年までの140 年間で平均気温は約7度上昇した。これは、今の東京が沖縄の気温になるということである。

 このようにして、日本列島は温帯気候から熱帯気候に変わり、気温も湿度も植生も熱帯地方のそれに変った。

〇 人々はこのような大規模災害や酷暑対策として、これまでの高台の高層ピル建築から地底深くに都市を造営する方針に変化するようになった。


第五章 異常気象の原因

 私はモニターを見ながら、これまでの人間の歴史を振り返った。


 これまでの人間の営みによる稲作の普及や森林伐採などにより二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスが地球の温暖化を促してきた。それに拍車をかけるように1800年代のイギリス産業革命以後、地球上のあらゆる国々で石炭・石油など化石燃料によるエネルギーの利用により、いろいろな物を次々と生産にしてきた。

 その結果、物は溢れ人々も快適な生活を送れるようになったものの、そのつけが地球温暖化に拍車をかけ、異常気象や海面上昇などを来すことになった。


 地球物理学者のミランコビッチの理論によると、地球は自転周期と地軸の変化、さらには太陽を回る公転周期の関係から暖かい時期と寒冷の時期を繰り返しているとされている。公転周期は太陽を中心に楕円形軌道と円形軌道を繰り返し、円形軌道になると地球は氷期になると言われており、この氷期は約10万年間続くとされている。

 2020年の現在、地球は1万1600年ほど続いた間氷期の終わりに差しかかっており、いずれ10万年間に及ぶ氷期に入るとされているが、人間による化石燃料の大量消費により二酸化炭素等の温室効果ガスの大量排出が間氷期を長引かせているらしい。


第六章 地底都市

 突然、情報コーナーの横にある半分開いていた扉から7〜8歳ぐらいの女の子が現れた。その女の子は、恐れることなく私の方へ寄ってきた。私に何かを伝えたいかのように「あっちへ」と私の手をとった。

 私は、その女の子の動作に驚きを感じるとともに、その人懐っこさに惹かれ、女の子に従うことにした。

 女の子は私の手を引いたまま、扉の向こう側に進んだ。そこは透明のチューブのようなものがあった。そのチューブの中は空気が動いていた。その前に立つとチューブの一部が開いた。

 女の子は、そのチューブ内に私を引き入れた。チューブ内にあったソファーに座ると開いていたチューブは閉じられ、私たちはスーと下に降りて行った。青い沼で感じたあの感覚であった。


 女の子は私に話しかけた。

「私はユキ、あなたは?」

「私はうらしま」

「うらしまさんは、青い沼から来たよね」

「どうして分かったの?」

「青い沼で足を滑らせたあなたをこの世界に連れて来たのは私たちなの」

ユキは、続けて話した。

 「あの青い沼のある小山の底深くに地底都市があり、私たちはそこに住んでいます。

 その地底都市に出入りできるのはこのチューブだけで、一つはここ、もう一つはうらしまさんが来た青い沼です」


 そうこうするうちにチューブは地底都市の入り口に到着した。

 チューブから出ると、大きなドームの中に大小様々な建築群が整然と立ち並んでいる都市が目の前に広がっていた。地底都市ではあるが、太陽の光がさんさんと降りそぞぎ、ここちよい風が吹いていた。太陽の光と大気を調整するシステムが作用しているらしい。

 また、その建築群の周囲は濃い緑色の苔のような植物に被われドームの端まで続いていた。


  ユキは私の手を引いてその建築群の真中に聳え立つ宮殿のような建物の前まで案内した。そこには、ここに住む人々が私達を出迎えていた。。

  その人々はユキと同じような光沢のある白の上下一帯のスーツを着ていた。ユキが一人の男に「パパ」と声をかけた。

  

 その男はユキの頭を撫でながら、私に会釈し語りかけた。

「私は、この地底都市の代表で青井といいます。うらしまさん、ようこそおいでくださいました。実を言うと、あなたをここにお連れしたのは私たちです」と前焼きした後、語り始めた。

「公共スペースの情報コーナーで、これまでの地球の異常気象のことなどについてはお分かりいただけたと思います。

 このように地球温暖化に起因する異常気象、海面上昇などにより、日本列島は温暖な気候から熱帯気候に変化しました。その結果、日本人のほとんどは日本列島に住むことをあきらめ温暖な気候のシベリア地方に移住しました。

 しかし、移住することを拒否して熱帯地方の日本列島に留まることを選択する一部の日本人は、熱帯の気候に順応することができませんでした。そこで残った人は、それぞれの地域で地下に潜り地下都市を築いたのです。 日本列島の地底都市はここ以外に数か所あり、それぞれに連絡を取り合っています。

 青い沼の地底都市には約1万人が居住しており、私たちは都市の維持に努めています」


 「青井さんが説明されたことはよく理解できました。しかし、私が何故この世界に来たのかが分りません」と私は問いかけた。

 「うらしまさんの疑問はもっともです」と青井は続けた。

「私たちは、過去の二酸化炭素やメタンガスなどの地球温暖化ガスを減少することができれば、この状況を避けられるのではないかと考えました。

 地球温暖化ガスの除去は、私たちが地底都市に移住する前の段階において、地上の植物が二酸化炭素を吸収し酸素を生成する光合成を強化する苔を作りだしました。この地底都市を覆っている苔がそれで、私たちはこの苔で生きていられるのです。

 その苔の胞子を地球温暖化が顕著となる西暦2019年に持っていき、胞子をばらまければ次第に二酸化炭素が減少し、地球温暖化が緩和され異常気象の発生が抑えられるはずです。この計画はほかの地底都市とも連携し、それぞれの地区を担当することになっておりました。

 その苔の胞子を過去に送る方法は、この地底都市に出入りできるチューブを利用することです。このチューブは、距離間移動を縮めるものですが、これに時間間の移動の機能を持たせます。私たちは、これまで青い沼のチューブを利用して実験を進めてきました。

 最終実験の段階において、チューブ操作管理室にある青い沼チューブの時間間移動の目盛りを

   現在 → 2019年8月10日 → 現在

   時間帯 11時00分〜11時02分

に合わせスタートボタンをオンにしました。チューブは、視界から忽然と消え2分後には、うらしまさんを乗せて再び元に戻りました。

 うらしまさんはちょうど青い沼に足を滑らせたところでした。チューブの性質上、人間がチューブの前に来るとチューブは自然と開きます。うらしまさんは、そのままチューブ内のソファーに落ちたのです。そして、現在の青い沼の畔に移動したのです」と、うらしまがこの世界に来た状況について説明した。


「私がこの世界に来たことは理解できましたが、私はこれからどうすればよろしいのでしょうか」と自分の気持ちを青井にぶつけた。


 青井は答えた。「私たちの計画は、このチューブを利用して地球温暖化が激化する2019年の地球の各地に苔の胞子をばらまくことにより地球温暖化の激化を緩和することです。この計画が成功した場合、地球温暖化が緩和され異常気象、海面上昇などの発生が低減され、日本列島の熱帯化も防げることになります。ですから、2019年から来られたうらしまさんには、この計画を手伝っていただきたいのです」


第七章 うらしまのその後

 うらしまは青井の説明を聞き、「私たちの世代の営みが将来の地球の姿を映し出しているのだ」と思いをいたし、「未来に来た者として、地球の将来が安定化する為の対策をお手伝いしたい」と決意を表明した。

 その後数か月に渡り、地底都市の人たちはうらしまとともに他の地底都市と連携を図り、計画どおりに苔の胞子を2019年10月の全地球の表土にばら蒔いた。

 この計画の実施に当たっては、その当時の人たちに知られないように配慮しながら実施したが、時には当時の人たちに「何をやっているんだ」と言い寄られる場面もあったが、「地球の美化のためにやっているんだよ」と説明して事なきを得たこともあった。

 計画が無事終了した後、うらしまは2019年の元の世界に戻り、これまでの経験を踏まえて地球温暖化を緩和する活動を生涯行った。


 過去の世界に戻る際にうらしまは、青井に対して次のように質問した。

「もしこの計画がが成功したのであれば、皆さんは現在の地底都市に暮らすことにはならないのではないですか?」


第八章 二つの世界

 未来の物質を過去の世界に持って行った場合、その時点から二つの世界、要するにパラレルワールドが発生すると言われている。

 すなわち、2019年に未来の苔の胞子を蒔いた世界と、蒔かれなかった世界の二つの世界が同時並行的に発生することになる。

 しかし、時間と空間(時空)の概念からすると、このようなパラレルワールドができたとしても、そのまま継続することはなく、いずれ一つに統合されることになる。

 その統合された世界とは、地球がこれまでに繰り返し繰り返し辿ってきた歴史の流れに戻ることである。

 すなわち、間氷期から氷期に再び戻っていくことである。

 2019年ごろ、地球は間氷期が1万1600年ほど続いており、いずれ氷期が訪れることは地球の歴史の流れの必然である。

 

 未来の苔の胞子が蒔かれなかった世界では、人間の営みによる地球温暖化は、氷期ヘの突入を遅らせた要因であるが、その温暖化がより一層激しくなり、異常気象などにより日本列島が熱帯化する。

 このような地球温暖化に伴う異常気象・大型台風の頻発などは、地球を本来あるべき姿に戻ろうとする自然の意志ではないかと思われる。

 そして、140年後の2160年、日本列島に残った人々は熱帯気候を避けるため地底都市を築き、地底での生活を余儀なくされることになった。

 その後の30年間、地球の公転周期がこれまでのように徐々に変化し、それに伴い地球の気温も徐々に下がり2190 年には熱帯地方であるにも拘わらず日本列島の気温は平均10度ほど下がり、一時氷点下10度になった地域もあった。


 一方、苔の胞子が蒔かれた世界では、地球上に苔が蔓延り、二酸化炭素などのガスが減少し地球温暖化が緩和され、異常気象や海面の上昇も抑えられた。

 温暖な気候が続く日本列島では、140年後の2160年においても、今までどおりの四季が訪れていた。

 この140年間、経済、文化、社会などすべての人間の生活において情報ネット化、AI化が図られ、人々が一定の都市に集中することはなくなり、地方に分散し、風光明媚な田舎に高層建築群が立ち並ぶことになった。

 青い沼のある小山の近辺も同様で、農家や段々畑は高層ビルが立ち並ぶ景色に変わっていた。依然として海岸は遠くにあったが、このころから気温が徐々に下がってきた。

 苔の胞子が蒔かれた世界においては、地球温暖化ガスなどが減少し異常気象は発生せず、温暖な気候が続くことになったが、異常気象が発生しなかったことから、地球の気象の歴史どおりに氷期に突入していくことになる。

 そのことを知っていた人間は、これからは地上には住めなくなることから、地底都市ホ築き、そこに住むようになった。それが2160年である。


第九章 二つの世界の終焉

 未来の物を過去に持っていったことで発生した二つの世界は、その後それぞれの世界でそれぞれの経過を辿り地球自体が持つ元に戻ろうとする力により、最終的には、いずれの世界も1万1700年ほど続いてきた間氷期を終わらせ、次の氷期に入ることを選択したのであった。

 これに翻弄されたのが、地球に住む人間であった。

 一方の世界では、地球温暖化に伴う異常気象による熱帯気候を避けるため地底都市を築いた。そして、それはいずれ訪れるであろう氷期の対策に受けづけられる。

 他方の世界では、地球温暖化は避けられたが、いずれ訪れるであろう氷期に向けて地底都市を築いた。


 いずれの世界においても人間は地球の営みに翻弄されながらも、それに応じた対応を模索し繁栄していくのであろう。

 完

 

結局、地球の自然の摂理により再び地球は氷期に突入することになりますが、人々はどのような状況にも果敢に対応出来るだろうと思っています。

読んでいただきありがとうごさいいました。


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