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冒険者ギルド

加藤廉太郎です。

年齢は15歳、既に死亡しているので永遠の15歳です。前世での死因は交通事故。まあ、珍しくも無いありきたりな死に様。


ありきたりでは無い事と言えば、死後に女神を自称する存在に出会って、前世での仇討ちを強要されて異世界に飛ばされた事でしょうか。


しかも、女神は俺に強力なスキルを与えておきながら、俺が仇討ちを嫌がると、スキルを取り上げて殴りにくる始末。暴力で人を従わせようとするとか暴力団の方ですかね。それとも世紀末の方ですか? 暴力では何も解決しないと学校で教わらなかったのでしょうか。


しかもしかも、事もあろうに自称女神さんは、慌てて飛び出してきたので帰れないと言い出しました。慌てている人が、そんな入念にスキルを取り上げてから殴りにくるのかとツッコミの一つも入れたくなりますね。


結局、俺のスキルは使えなくなったまま。自称女神さんはすごい力を失って、言葉通りの自称女神さんへと成り下がり、俺に対して面倒を見ろ、仇討ちを果たせと詰め寄ってくるのです。


「……はあ、死にたい。」


「ちょっ、ちょっと、しっかりさなさいよ!」


俺はどうにかこうにか、ギルドの前までやってきた。再び崩れ落ちそうになったところを、コレットに引っ張られる。


「往来の前で、恥ずかしいんだから、もう。本当にやめてよね。」


言い返す気力もない。

最強のスキルを持って、ギルドに乗り込んで期待の新人登場みたいな感じで、人々の期待を一身に背負って出世するはずの未来が、今や不安でいっぱいの未来に変わってしまっている。


スキルがないと言うのは、将棋初心者に飛車角落ちどころか、王将丸裸で初陣を飾れと言っているようなもんだ。もはや凡人以下のステータス、こんな状態で俺はこの世界で生きる意味はあるんだろうか。


「おい、コレット。」


「なによ?」


「俺はこの世界で死ぬとどうなるんだ?」


「なっ、何言ってんの!? ダメよ、そんなの。レンが死んだらわたしは帰れなくなっちゃうじゃない。しかもこっちに来る時に魂繋いで降りてきたから、わたしまで死んじゃうじゃない! 絶対にダメ!」


そう、こいつは自分のことばっかりだ。

俺の質問への答えが一切ない。心配してくれもしない。感想を聞きたいわけじゃないんだよ。


「おい、おまえらギルドの入り口塞いで、何を不景気そうな顔してんだよ。他所でやれや。」


いかつい冒険者風の男が怒声を浴びせてくる。いかにもって感じの風体で、中年冒険者のモブキャラと言ったらこんな感じだろう。


「モブは良いな。能天気そうで……。」


「ちょっ、何言ってんのレン!?」


「ああっ? モブってなんだ。舐めてんのか、コラ!」


男が俺を片手で掴み上げて、怒りの形相で睨みつけてくる。コレットはあたふたしていて面白い。俺も普段だったらあたふたするんだろうけど、半ば自暴自棄でどうでも良いし、何だか現実感もない。


「あははは、行動が本当にモブっぽいや。」


「す、すいません、すいません、すいませんー。えっとお兄ちゃん、頭が少しおかしくなっちゃって、本当にごめんなさい!」


コレットが必死に謝る。俺をお兄ちゃんと呼んだのは、小芝居だろうか。頭がおかしいとか失礼なやつだ。


「なんだあ、おめえの兄ちゃんなのか?」


男は俺を殴ろうと掲げた拳を下げて怪訝な瞳をコレットに向ける。


「そ、そうなんです。お兄ちゃん、病気でおかしくなっちゃって。お父さんとお母さんが、治らないなら、お兄ちゃんを山に捨ててこいって言うから、えっと、その、えっと……。」


なんだ、そのクソ設定。

山に捨ててこいって、どう言う親だよ。しかもここは山どころか冒険者ギルドの前じゃないか。どこをどう見ても嘘丸出しの矛盾設定。しかも、俺とコレットの容姿は髪の色から何から何まで共通点がないのに兄弟設定は無理がありすぎる。さすがに自暴自棄でも突っ込みたくなる。


当然ながら、男の顔がみるみる赤くなっていく。

そりゃこんな丸わかりの嘘をつかれたんだからバカにされていると思って怒りたくもなるわな。


「気に入った!!」


「「は?」」


男はワシっとコレットの手を包むように握ると目頭を熱くさせて、感動の表情を見せた。コレットもさすがに苦しいと思っていたのだろう。驚きの声が俺とかぶった。


「つまり、あれだな。おめえは、兄が捨てられるんじゃ忍びないってんで、冒険者でもやらせようと頑張ってんだな。良い妹じゃねーか。」


なるほど、そういう解釈になるのか。すごく都合のいい解釈をするもんだ。頭の中はお花畑なのだろうか。


「そ、そうです! お兄ちゃんにできることは、もう、冒険者しかないですから!」


当然のっかるコレット。

男はうんうんと涙を流しながら、コレットの話を聞いている。もはや微塵も疑う様子はなく、コレットの話を全て肯定していく。コレットはじぶんのはなしがうけいれられたのが嬉しいのかどんどん饒舌になっていく。まるで教祖様と熱狂的な信者のごとくだ。


俺は気持ち悪さを感じて、そっと離れることにした。とりあえず、ギルドの中に入ってみる。


なかなか立派な建物だ。質実剛健とでも言うのか、飾りっ気は無いけれど、とても頑丈そうな作りをしている。荒々しい冒険者の溜まり場ってイメージにぴったりだ。


中は広々としており、依頼が張り出されている掲示板のようなものや、受付のカウンターらしきもの、休憩用の椅子やテーブルもあった。それらには無数の傷があり、冒険者たちの気性がうかがい知れる。そして、そんな荒くれ者たちの雑な扱いを物ともしない空間が、ここが冒険者ギルドなのだと物語る。


先程のいかついおっさんだらけかと思いきや、結構いろんな人がいる。俺と同じくらいの背格好の人から、女の子まで。なんだか人だけが違和感のある空間だな。


さて、依頼はどうやって受けたら良いんだろうか。なんとはなしに掲示板を覗き見る。色んな依頼が乱雑に貼られている。ゴブリン討伐やらスライム討伐なんかの魔物討伐系から、要人警護、見回り巡回、キャラバンの護衛などなど、内容も実に雑多だ。


うーん、護衛系はとてもじゃ無いけど自信が無い。見回りとか、魔物討伐ならいけるのだろうか。見回りはどれくらい危険な場所を見回るのか分からないから、手を出しづらいな。消去法で魔物討伐になるわけだが。


『スライム討伐

最低三匹から 報酬1200円

四匹目からは一匹につき400円。』


スライムくらいなら何とかなるか?

ゴブリンは一匹あたりで800円だから、スライムの方が弱そうだ。とりあえず、今日の宿代を、稼ごうとすると、俺とコレットで10000円くらい必要か。スライムを25匹倒せばちょっきり10,000円だ。


25匹って、結構多くないか……?

いや、何で俺がコレットの分も稼ぐ考えになっているんだ。あいつにも狩らせるべきだから、一人当たりのノルマは12匹ちょいか。うーん、ここで考えていても答えは出ないな。


そんな事をふと考えていると、掲示板の上に貼られた不思議な依頼を見つけた。そこだけは綺麗に依頼書が貼られている。額縁には『勇者求む』と書かれている。


『巨神 ティターニア討伐

報酬 270,000,000,000円

素材は別途買取につき応相談。』


『翼帝 バハムート討伐

報酬 7,390,000,000,000円

アルトリエ皇国 アスターラ地方領地の贈与

侯爵の爵位授与』


『海王リヴァイアサン討伐

報酬 9,800,000,000,000円

世界通商ギルド 特別名誉会員権

12ヶ国領地 贈与 詳細は別途記載。

7ヶ国 義務免責の上、爵位贈与』


他にも色々な依頼が貼られている。どれもあり得ないくらい高額の依頼だ。0を数えているだけで目が回る。ひーふーみー……奥の位を飛び越えて兆にまで達しちゃってるよ。億円とか、兆円とか漢数字を使わないのは何かしらの拘りなのだろうか。しかも、付属の領地やら爵位やらまで報酬が普通じゃない。


まさに求む勇者って感じで、何だか胸が熱くなってくる。俺のスキルが失われていなければワンチャンあったんじゃないのか。いや、しかし、このクラスはスキルがあっても相当怪しいな。巨神とか翼帝とか、肩書きからして凄いからなー。


『邪神コ◯ッ◯討伐

報酬 90,000,000,000,000,000円

その他、応相談。望むものを差し上げます。

勇者求む、誰か助けてください。』


なんだ、これ?

えっと、90兆、いや900兆?

あっ、違うわ、これ9京円だ!!

京って言う数字を教科書以外で初めて見たよ……まさか実在していたとは。

しかし、なんで半分は伏字なんだろう。


コ◯ッ◯……。

邪神コレットだったりして……はは、まさかな。

他の依頼をぶっちぎって高額なのが、恐ろしい。


依頼を眺めていると、ガシッと肩を掴まれた。

振り返ると、さっき絡んできたお花畑野郎が生温かい笑顔で親指をピッと立ててサムズアップをかましてきやがった。そして、そのまま何も言わずに去って行く。いや、言いたい事があんなら言えよな……。


「ふっ、単細胞を騙すのは簡単だったわ。あいつ、私のことを出来た妹だーって褒め称えたのよ。マジウケるんですけどー。」


……おまえも単細胞だろうが。同類同士仲良く出来ただけだろ。まあ、面倒臭いので口には出さないけど。


「これが依頼ね。ふんふん、中々面白いじゃない!」


「なあ、あそこの邪神コ◯ッ◯ってさ、もしかしておまえのことじゃないの? コレットってぴったり収まるし。」


俺はさっきの依頼を指差してコレットに言ってみる。だが、コレットはキョトンとした顔で、俺を見る。


「バカね、最初の一文字からして間違っているじゃない。私は邪神じゃなくて、女神なのだから。考えなくてもわかると思うんだけど。」


女神は自称であって、俺からすればこいつは疫病神だ。ついでに言えば邪神と言えなくもない。まあ、悪人かと言うと、バカなだけだから邪神と言うのは少し違う気がするか。


もし、コレットがお尋ね者ならふん縛って速攻突き出すところだ。厄介者を処分できる上に、一生遊んで暮らせるだけの金が手に入るとあれば言うことはない。まあ、そんな美味しい話があるわけもなかったけれど……。


「へー、そこの欄に貼ってある依頼も面白いわね。ふふん、私のティターニアが冒険者なんかに仕留められるかしらね。あ、よく見たらバハムートもいるじゃないの!」


「……私の??」


言葉の違和感が引っかかって、聞き返す。私のって何だよ。


「そうよ、何を隠そう私が直々に生み出した至高なる存在なのだから!」


「え、じゃあ何か。このティターニアとかバハムートとかをお前は知っているんだな。」


「当然! この世界では最強の存在なんだから。名付けて七星大魔王。又の名をセブンスターグレートデビルズ!」


あー、頭が痛くなってきた。名前が既に厨二病だし、七星って事は、こんな感じの魔物が世界に7体もいるのか。


「巨神ティターニアは最強の動く城塞よ。ただひたすらに世界を直進して歩いて行くわ。街があろうと城があろうと関係ない。彼が通った場所は何も残らない荒野と化すの!」


城塞でありながら、彼と表現するのはどうなんだ。そもそもただ真っ直ぐに進んでいくだけの破壊の化身って、何のために存在するのだろうか。


「翼帝バハムート。空の帝王ね。大空を自由に飛び回り、時々城を襲うわ。」


説明が雑すぎる。製作者がこんなちゃらんぽらんに作ったから、バハムートの存在も雑なんだろうか。


「なあ、何で城を襲うんだ? しかも時々って。」


「そんなのかっこいいからに決まっているじゃない。ドラゴン対城はロマンなのよ。それに毎日襲っていたら襲う城がなくなっちゃうじゃないの。」


おう、コレットが何を言っているのか分からない。いや、分からないわけではないが、ゲームみたいな考えで世界を玩具にするのはどうなんだ。


「海王リヴァイアサンは、海に住む怪物よ。龍のような蛇のような姿をしているわ。船を襲って宝を集めるの。」


なるほど、リヴァイアサンが高額なのは、海運の妨げになるからだろうか。集めている宝とやらも興味深い。


仮に倒して手に入れたら俺がもらっちゃっても良いのだろうか。何となくファンタジーぽくて少し興奮してしまう。俺も、あまりコレットの事をどうこうは言えないかもしれないな。


「後は闇王エクスデス、陸王セルケト、冥王ヘル、死神ギルガメッシュとかかしら。他にもいるけどね。」


すごいな、ラスボスのオンパレードみたいだ。ちょっとだけコレットの言うロマンてやつがわかってきたぞ。


「ちなみに、俺のスキルが消えてなかったら、そいつらに勝てたのか?」


「え、うーん、どうかしら。たぶん瞬殺されそうな気がするわ。」


「何でだよ! 絶対回避どこ言ったんだよ。」


「えー、だって辺り一面を焦土と化すような必殺技を絶対回避だけで何とかできると思う?

例えば、原爆がここにあって、5分後に爆発すると分かっても、5分で逃げ切れると思うのかしら?

セブンスターグレートデビルズは、この世界の神様なのよ、倒せる存在ではないの。」


くそう、異世界なのに夢がないな!

そもそも前提としたスキル二つだって、既に俺は持ってはいないけどさ。なんかもうちょっと生きる希望みたいなものが欲しいぞ。


と言うか、毎度思うけどこいつの例えは、本当に女神なのかと突っ込みたくなる。人間かぶれが凄い。


「はあ、まあいいや。なんか依頼受けようぜ。俺はこのスライム討伐がいいと思うんだけど。」


「どれどれって、やっす! 何これ下々の仕事じゃないの!」


何を勘違いしているのか、その下々の事とは俺たちの事なんだよ。スキルを無くした只のガキの俺と、女神の力を無くした只の幼女が、下々でなくてなんだと言うのか。


「ああ、そう。じゃあ、俺はこの依頼受けるから、コレットも頑張ってくれよ。ナイス自立!」


「ま、待ちなさいよ。べ、別に嫌とは言ってないじゃないの。」


まったく、どこのツンデレだよ。

俺はコレットに返事をするのも面倒くさがって、依頼票をペリッと剥がしてカウンターへ持っていく。その後ろをコレットがついて歩く。


「すみません、この依頼を受けたいのですが、どうしたらいいですか?」


「あら、ギルドは初めてかしら?」


カウンターで応対してくれたのは、優しげなお姉さんだ。柔らかな物腰と笑顔が安心感を与えてくれる。ちょうど良い美人さんと言うのだろうか。コレットの人形のように整い過ぎた容姿に比べて、このお姉さんは現実感があるレベルと言えばいいのか。


「はい、初めてです。」


「そうなんですね。

ええと、スライム討伐ですか。じゃあこれを持ってスライムを討伐して来てください。紛失すると報酬が手に入らないので注意してくださいね。」


お姉さんは俺に一枚の紙切れを渡してきた。

なんだこれ、カードサイズの小さな紙切れ。何か書いてあるな。


『スライム討伐数 0匹』


「もしかして、これってスライムを倒すとカウントされるんですか?」


「はい、その通りです。倒せば自動的にカウントされますから、ガンガン倒しちゃってくださいね。でも、無くしたらダメですよ。依頼を達成したら、正式にギルドカードを発行しますから、頑張ってください。」


どう言う仕組みかは知らないけど、便利なものもあったもんだ。こういうギルドとかのお約束みたいなので、討伐した魔物の体の一部を剥ぎ取って持ってくるとかを覚悟していたけれど、これなら楽だし、気持ち悪い作業をしなくて済みそうだ。


さあ、俺の冒険者稼業のはじまりだ!

お読みいただき、ありがとうございました!

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