初めての街
仇討ち転生4
バコンッ! ビューン!!
「ふわぁー、かったるい。」
バコンッ! ビューン!!
「街はまだ着かないのかなー?」
バコンッ! ビューン!!
えっ、何の音かって?
そりゃー、魔物が殴られて、空に飛んでいく音ですよ。
ステータス
HP 238756
MP 12
攻撃力 98263
防御力 86942
魔攻力 7
魔防力 7
素早さ 120935
知力 30
幸運 1
ご覧の通り、圧倒的なステータスを手に入れた俺は、怖いもの無しで川を下りながら街を探していた。途中襲いくる魔物は全てワンパン。まさにワン◯ンマンである。
ちゃらららっちゃら〜〜〜!
おお、キタコレ! レベルアップの音。
早速ワクワクしながらステータスを確認する。さてさて、今回のスキルは何かなーーー!?
名前 加藤蓮太郎
年齢14歳
職業 アヴェンジャー
レベル 3
HP 348625
MP 12
攻撃力 159635
防御力 128663
魔攻力 7
魔防力 7
素早さ 216352
知力 30
幸運 1
特性 神の加護Lv3
スキル 絶対回避(神の加護Lv1)
人類超越(神の加護Lv2)
魔術の叡智(神の加護Lv3)
「おお、ようやく魔法系ぽいのがきたな!」
これまで脳筋仕様だったので地味に嬉しい。もともと俺は魔術師タイプだと思うんだよね。だって、運動よりも勉強の方が得意だったし。
魔術の叡智(神の加護Lv3)
一部の超越魔術を除き、全ての魔術を習得する。
超越魔術ってのが引っかかるけど、これはかなり嬉しいぞ。メニュー一覧を見てみると、魔術の項目が追加されていたので開いてみる。
「……うわぁ、すげえ!」
◆魔術リスト
メテオ
メギド
テラフレア
テンペスト
ラグナロク
スーパーノヴァ
リザレクション
ビッグバン
……etc
ずらりと並ぶ魔法の一覧。
どれも凄そうなものばかり。正直種類が多すぎて、最後までスクロールするのがだるい。たぶんだけだど、上の方にあるのが強力な魔法だろうか。
メテオ
天空より灼熱の隕石を呼び寄せ、敵を殲滅する。
威力値 96,875,385 消費MP 786,355
メギド
地獄の業火で敵の魂まで消し炭にする。
威力値124,698,353 消費MP 963,543
うーん、詳細を見てみたけど、凄すぎてよくわからない。っていうか……。
「消費MPが足りてないんだけとおおおーーーー!」
必死に一番下までスクロールしたものの、最弱の魔法ですら消費MPが足りなかった。魔法を覚えているけど使えない魔法使い。これいかに……。
「グルルルルーーー!!」
バコンッ! ビューン!!
はぁ、結局振り出しか。
まあ、いずれMPとかの強化も入るだろうから、焦らず行くとするか。気がかりなのは幸運だよな。こっちは上がる気がしない……。
バコンッ! ビューン!!
「っと、あれに見えるはもしかして……!」
歩き続けて半日、ようやく街が見えた。
しかも、そこそこ大きそうな街だ。いくらかお腹も空いたから丁度いい頃合い。
バコンッ! ビューン!!
魔物の戦利品も結構溜まっている。
不思議なことに敵をかっ飛ばして倒しても、戦利品が手に入る。何故だか戦利品だけ手元に残るのだ。コレットが作ったゲーム的なシステムなのだろうけど、リアリティのある世界では些か不気味さを覚えるシステムだった。
バコンッ! ビューン!!
程なくすると、街にたどり着いた。
ぐるりと巨大な壁が街を取り囲んでおり、出入り口には厳重な門が存在していた。守衛的なもの……門番と言うのか、そんな感じの人間もいる。
「うーん、入りづらいな……。」
入ろうとすると、絶対に声をかけられそうだった。少し遠目にじーっと様子を伺っていると、門を行き来する人達が見える。彼らは気さくな感じで挨拶を交わして門を往来していた。
ならば……。
俺は胸を張り、肩で風を切って門へと向かう。至って自然な様子で歩く。
「ハ……ハロー、ニーハオ、コニチワー!!」
片手を上げて、にこやかに挨拶を交わす。
この世界で言葉が通じるか分からないけれど……。と言うか、緊張して訳のわからない挨拶を口走ってしまった。それでも敵意が無いことは示せたはず……
「怪しいやつ! 止まれえええーー!」
ダメだった!
あっという間に門番たちが集まってきて取り囲まれる。手にはしっかりと剣を持っている。
戦ったらたぶん勝てる。
俺は人類超越しているし、絶対回避もある。だが、ここで戦ってお尋ね者になってしまったら……。
結局、俺は別室に連れていかれた。
簡素な部屋で机を挟んで、いかつい門番と相対して座らされる。これはあれか、取り調べというやつか。はあ……カツ丼とかは出てこないんだろうなあ。
「どういうつもりかね?」
門番の男は、鋭い視線とともに質問をぶつけてくる。
「えっと、何がっすか?」
けれど、俺には質問の意図が分からない。
どういうつもりとは、どういうつもりだろう?
ドンッ!
俺の返事にイラついた男が机を叩く。驚いて俺の身体がビクッと震える。なんで俺はこんな怒られてるんだ?? もしかして、俺の言葉遣いに怒ったのだろうか、だとしても俺は敬語が苦手なんだけどな。
「そんな事も分からんのか!」
「はい……すみません。」
男は深いため息をついて、意味深にすぅーっと息を吸い込む。そして……陽気な笑顔を作り、片手を小粋にクイッと掲げる。
「ハ……ハロー、ニーハオ、コニチワー!!」
「うわああああああああーーーー!!!」
自分のテンパッた様子を真似されるのは、相当に恥ずかしい。顔から火が出る思いだった。
しかもその後、俺は人をバカにするなと、ひたすらに怒られたのであった。そうして長い時間を怒られた後に、普通に街の中で解放された。
何のことはない。
単なる俺の挙動不審から出た身のサビ。完全なる自業自得だった。
「はあ……、これ絶対幸運が1だからだよなあ。」
誰も俺のことを気に留めなくなった街中で、一人ぼやく。まあ、結果的に無事に街中に入れたことを喜ぶべきだろうか。
ここ、ミリスティリスという街はかなり賑わっていた。往来は人で溢れており、路上には様々な出店が立ち並ぶ。建物は日本の雑居ビルとは違って、西洋的なおしゃれな感じ。
異国情緒溢れる世界は俺のテンションを一気に引き上げた。海外旅行に行ったことはないけれど、きっとヨーロッパに行ったらこんな感じなのだろうか?
並んだお店の一つで足を止める。
雑多な品が置いてある道具屋といった様子の店。俺は道中で手に入れた戦利品を、売却できる店を探していた。
戦利品は道具一覧に収められていた。
システムメニューなわけだが、これがこの世界の常識なのか、俺だけに与えられたチート能力の一つなのかは分からなかった。もちろん、道具は任意に取り出すことが可能だ。
俺は道具一覧を開く。
犬の牙 7
犬の毛皮 1
ウサギの肉 2
ウサギの毛皮 1
積極的に魔物を倒していった訳ではないので、そんなに数量はない。それでも、まあ幾らかになれば有難い。最低限、今日の飯代と宿代くらいになれば、御の字だ。金は明日にでも本格的に魔物討伐して稼げばいいだろう。
「すんませーん、アイテム売りたいんですけどー。」
「おー良いぞ、見せてみろ。」
カウンター越しに髭面の男が接客をする。
俺はカウンターの上に、全ての戦利品をどさりと置いた。
「駆け出しって感じだな。」
店主はカウンターの品を見るなりそう言った。
大したことの無さそうな魔物だとは思ったけど、やっぱり駆け出しの新人が狩るような魔物だったらしい。これだと、あんまり買取価格も期待できそうにないな。
「まあ、こんなところだな。」
店主は小銭と紙幣を鷲掴みにして、カウンターの上に置いた。
「えっ、これって……。」
見まごう事は無い。と言うか見慣れた野口英世さん。有り体に言えば、日本の紙幣で間違いなかった。それが2枚と100円玉が2枚。2200円が売値のようだ。
なんというか、酷い。
ここは金貨とが銀貨とかファンタジー色溢れる貨幣が登場するシーンなんじゃないの? ちょっとがっかりだ、本当にあの女神は細かいところで設定を面倒臭がる節がある。
そもそも、この世界の住人は野口英世を知っているのかと問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。
俺はなんだか釈然としない気持ちで店を出た。
所持金は5320円。内訳は、元からの手持ちの3120円と戦利品を売った2200円た。
まあ、分かりやすいのは悪くない。
これが金貨や銀貨であれば、金貨で何が買えるのかとか、銀貨が何枚で金貨になるのかとか、常識的な部分の無知に悩む必要が出てくる。それはある種ファンタジーの醍醐味ではあるけれと、いささか煩わしい。
ふわりと良い匂いが香る。
香ばしい肉を焼く匂い。しかも炭火調理の匂いだ。
俺の複雑な心境は一瞬でどこかに流れ去り、匂いの元を探す。見れば美味しい匂いと煙を犯罪的に垂れ流す屋台が見えた。
手ぬぐいのようなものを頭に巻きつけた禿げた男が、豪快にパタパタと団扇で炭火を仰ぐ。すると炎が一気に激しくなり、肉の脂をそぎ落として、こんがりと美味そうな焼き目を作った。しかも、その余波がここまで届く。
「いやはや、これは辛抱たまらん!!」
俺は屋台に一直線に駆け出していく。
串焼き一本250円の垂れ幕が目に入る。安くもなく高くもない。何とも言えない妥当な金額設定。
何の肉を使っているのかさっぱりわからないが、美味そうなのは間違いない。そもそも、焼いて塩振って食うだけのものが不味いはずがない。
「親父ー、7本くれー!!」
「おう、ちょっと待ってな!」
親父は串焼きを7本包みにくるんで俺に渡す。俺は代金に2000円を渡して250円のお釣りを受け取った。やり取りも雰囲気も、まるっきり縁日の出店そのものだった。
俺は即座に包みを開いて串焼きを取り出す。
日本の焼き鳥なんかよりもずっと大きくワイルドな串焼きを口に含む。切り分けられているものの、それでも大きく一口にはとても収まりきらないので、その一塊に歯を立てて噛みちぎる。中からじゅわりと芳醇な肉汁が溢れて、舌の上に広がった。肉の旨みに添えられた香辛料がマッチして、舌鼓を打つ。
「んううーー、美味い!」
その声が聞こえたのか串焼き屋の店主は「あたりめーよ!」と大きな返事とガッツポーズを返してきた。
串焼きをほふほふと煽りながら、歩きはじめた。
串焼きを食べながら、幸せな気持ちで街を散策する。
やがて、太陽が傾き巨大な山の背後に隠れると、山から伸びる影で一気に辺りは暗くなっていく。串焼きの温もりも比例するように消えていく。
次第に空は暗くなり、星々の瞬きが目に入るようになる。街は太陽の明かりに変わって、人の明かりが広がった。
「流石に、そろそろ宿を探さないと……。」
俺はすっかり無くなった串焼きの袋をクシャクシャっと丸めると、本格的に宿探しに出るのであった。
お読みいただきありがとうございました。
よければブクマ等、お願いいたします。