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強制仇討ちで異世界へ

3話からは1日1話更新の予定で頑張ります。

一応ストックは10話まであるので、追い付かれないようにですね。(笑

「仇討ちのチャンスよ!」


いきなり訳のわからない事を言われた。

聞き間違いじゃなければ、相当に物騒な事を言っている。この幼女は頭がおかしいのだろうか?


「ムキィーーー、何ですってー!」


……怒り方が古い。

可愛らしくはあるんだが、今時ムキィーーーって酷いだろ。どこぞの悪役お嬢様キャラみたいだ。


「……じゃあ、どんな怒り方がナウいって言うのよ?」


ナウいって、これまた酷いな。

……まあ、そうだな。怒り方っていうなら『もおー、激おこプンプン丸だぞー!!』とかがナウいぞ?


「よし……もうーー! 激おこプンプン丸だぞおーーー!!」


「ブフゥーッ!」


やばい、思わず吹き出してしまった。

これは痛過ぎる。恥ずかしくて直視できないな。


「なっ……なんですってえええー!」


「てかさ、俺の心を読んで会話するのやめろよな。世間的に見たら、おまえが一人で自爆しているようにしか見えないぞ。」


「ここは人間の世界じゃないんだから、世間なんてものは存在しないわ。あるとするならば、私が全てだから私が世間なのよ。あと、それから女神である私を『おまえ』って呼ばないで。地獄に落とすわよ?」


あーこいつ、頭悪いだけじゃなくて、性格も悪そうだなー。俺がせっかくナウい怒り方を教えてやったと言うのに、お礼も言わないなんて敬うに値しない神だな。


「……う、あ……ありがと。」


「おう!」


ちょろいな、やっぱ頭わりーや。


「激おこプンプン丸うううぅーーーーー!!」


「ブフゥーッ!」



そんなくだらないやり取りをしばらく続けた後、俺は話を本題に戻した。自称女神の幼女はコレットと名乗った。コレットの要領を得ない話にイライラしながらも全容を確認する俺。


つまるところ、俺は交通事故で死んだが、実は俺を跳ね飛ばしたドライバーもハンドルを切って事故を避けようとしたためにコンクリの壁に激突して死んだらしい。……何というか申し訳なくてご愁傷様と言った感じだ。


そこで、コレットはドライバーに仇討ちと言う名の罰を与えるのだと言う。与えると言いつつ、実行するのは俺っておかしくないかと突っ込んだがスルーしやがった。


ドライバーは殺人の上、自殺という二つの罪を犯したのだとか。歩きスマホで車に轢かれた俺にも結構非があるとは思うのだけど、神様的に言うとそうでも無いらしい。


そう言うわけで、俺とドライバーは異世界に飛ばされて、そこで仇討ちを行うと言うのが話の趣旨だった。


「まあ、事情はだいたい分かった。」


「そうよ、あんたは自分の手で仇を打てるのよ。やられたら倍返しは基本よね。ううん、倍なんて生温いわ、10倍……いえ10億倍にしてやり返すべきよ! ありとあらゆる苦痛を与え続けた後、髪の毛1本たりともこの世に残さず葬り去ってやりたいわよね!」


「だが、断る!」


この女神様は間違いなくサイコパスだ。どっかの北の偉い人の親戚に違いない。発言がやばすぎる。10億倍ってどうやるんだよ……。恐ろしすぎで、そんな怖い話に誰が乗れるものか。俺はノーと言える日本人なのだ!


「でしょう。だから、その機会を与えてあげようって……え、今なんて??」


「そんな拷問みたいな真似、怖くて出来ねーよ!」


コレットは信じられないと言った顔で俺を見る。信じられないのはこちらの方だ。今の日本では仇討ちは認められていないし、殺人なんて以ての外だ。


「何言ってんの、今の日本とか関係ないじゃない。あなたの世界の言葉を使うなら、私は超法規的な存在である神様なのよ。そして、ここは日本どころか地球でもないわ。あなたの仇討ちを咎める者はいないの。なら、やるしかないじゃない! 」


「だから、人の思考を勝手に読んで返事するなっての。そもそも、歩きスマホで歩いてた俺にも非はあるんだ。生前にそんなに未練もないし、復讐しようなんて気はさらさらないんだ。言うなれば、仇討ちしろってのは、コレットのお節介でしかないぞ。」


「……ここまで強情とは思わなかったわ。でも、これを見てもまだそんな事が言えるかしら?」


なんだ?

コレットが手をかざすと何もない空中に映像が浮かび上がる。そこに映されているのは似たような空間だ。だが、その中央には一人の見慣れない男が座っていた。


「これはね、あんたを殺した男。憎い憎い倒すべき仇なのよ。」


はっきり言って見覚えがない。

事故当時、一瞬目があったと言っても、それだけで男の顔をはっきりと覚えているはずがない。画面に映っている男はただの他人としか思えなかった。


年齢は年上で20歳を少し超えたくらいだろうか。人の事は言えないが冴えない感じの男だな。メガネをかけた暗そうな奴、インテリキャラって言うのか。その男が画面の中で口を開く。


『最初に言っておく事があります。今回の事故は100%僕は悪くありませんよ。暗がりの道をノコノコと歩いていた彼が悪いのです。』


なんだこいつ!

謝罪の言葉でも口にするのかと思ったら、いきなり自己正当化を始めやがった。


「ねっ、ムカつくでしょ! 私も話した時ムカついたのよ、こいつ。」


いや、こいつもムカつくけど、ドヤ顔のおまえもムカつくよ?


メガネ野郎は、さらに言葉を続ける。どうやら録画された映像のようで、こちらの反応を求める感じはなかった。


『だいたいですね。歩道のない交差点を赤信号で渡るって常識無いのですかね。どうせ歩道橋を渡るのを面倒臭がってガードレールを飛び越えたんしょう。本当にどうしようもない。極め付けは歩きスマホですよ。そんな状況でフラフラとスマホ見ながら歩くって自殺志願者でしょ。せめて、こそこそと足早に横断しろと言いたいですね!』


やべえ、ムカつくけど言い返せねえ。


『しかも、それでなんで僕まで死なないといけないんでしょうか。本当に良い迷惑です。社会のゴミは、人に迷惑をかけずにこっそり死んでくださいよ。……で、あなた、神様でしたっけ、なら分かるでしょ? 僕は被害者なんです。当然、天国行きですよね。』


ん……なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。


『え、何ふざけたこと言っているんですか。どうしてボクが地獄に落ちなきゃいけないんですか。あなたの目は節穴ですか。幼いなりをしているとは思いましたが、頭の中まで幼いんですか? それとも無能ですか。良いですか、無能は罪ですよ。人に迷惑がかかると言う意味でゴミと同ーーーーー』


画面が砂嵐になった。


「ぶっ殺す!!!!!」


コレットが幼女にあるまじき凄まじい形相で叫んだ。


「いやいやいやいや……」


分かった、理解した。

コレットが仇討ちとか言い出したのは絶対私怨だ。


「ムカつくでしょ! あんたもバカにされてんのよ!」


「いや、まあ……たしかにムカつくけどさ。俺に非がある事も確かだからなー。」


「わたしには無いわ!」


知らんがな……。


「だいたいなー、仇討ちって言ったって、俺は言っちゃなんだが腕力に自信なんかないぞ。あっちは年上みたいだし、仇討ちしようとしても返り討ちにされるのが関の山だろう。」


「その辺りは抜かりはないわ。あなたにはチート能力つけてあげるから。」


「へえ、それはちょっとゲームみたいで面白いな。」


最近流行りのアニメみたいで、ちょっと興味をそそられる。


「でしょー。私もねゲームとか好きでさ。人間の娯楽をちょちょっと嗜んでいるのよ。んで好きが高じてゲームっぽい世界を作ったの。」


随分と俗世にかぶれた神様だな。


「まあ、最初は箱庭的な感じで、世界を作って楽しんでいたんだけど、だんだん飽きてきちゃったのよね。分かるかなゲームって作ったらさ、誰かに遊んで欲しくなるじゃない? だから、プレイヤーを放り込んでみたくなったの。」


……ん?

こいつ、今プレイヤーって言ったぞ!


「……あ、いやいや、じゃなくて、仇討ちの為の異世界を作ったのよ。」


「いやいやいやいやいや!!!」


完全に俺もさっきの人も駒じゃないか。コレットの玩具だ。何が悲しくて、そんな掌で踊らされるようなことをせにゃならんのか。しかもプレイヤーって言うよりテスターだよ、それ。


「……よく考えなさい。あなた、このままだと転生できないのよ。仇討ちを果たして、新しい輪廻転生を成し遂げたいと思わないの?」


「良いよ、別に。生きるのって楽しくないし。俺はこのままでも、全然おっけーだね。」


「バカね、貴方このままだと消滅して地獄に落ちるわよ?」


……へ?


「魂の状態では長く存在していられないの。地獄に行くとつらーいつらーい日々が待ってるわよー?」


う……うぜえ。

幽霊のモノマネなのか、両手を胸の前で幽霊ぽくぶらりとさせて脅してくる。くそう。


「……なあ、仇討ちは権利なんだよな?」


「え、ええ……まあ、そうね。」


「権利って事は、拒否できるよな。俺は神様的には悪い事は何もしていないんだから、そのまま輪廻転生って手もあるんじゃないのか?」


「……。」


コレットが黙った、これはもしかしてーー?


「なあ、おい、なんとか言えよ。」


「神様の力を持って、異世界でヒャッハーできるのよ! なんでそれを選ばないのよ。あなたおかしいんじゃないの!!」


「頭おかしいのはおまえだろ! 人殺す為に異世界なんか行きたくないんだよ。そんな暗殺者みたいな来世はお断りだ! だいたいヒャッハーってなんだよ、いちいち言葉のチョイスが古いんだよ、このロリババア!!」


コレットの白い肌がみるみる真っ赤に染まっていく。怒りたいのはこっちの方だ。


「うるさい、うるさい、うるさーーーい!」


「なんだよ、逆ギレかよ!」


「あんたなんて、不敬罪よ。神様に対する不敬罪で仇討ちするまで許さないんだからーーー!!」


「なんだ、そりゃ! 勝手にいろいろ都合よくでっち上げるんじゃねえ。俺は絶対に仇討ちなんってーーおいいいいいいいいーーー!」


俺は喋っている途中で、世界が暗転していくのを見た。強制的に送りやがったな、クソ女神が!

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