事故女神
新連載スタートです。
頑張りますのでよろしくお願い致します。
交通事故だった。
俺は夜の会社帰りに、車に跳ねられて死亡。
最後の記憶は、運転手と目が合ったところまで。相手の慌てている様子が鮮明に思い出せる。きっとハンドルをきって、ブレーキを必死にかけていたに違いない。痛みは無い、恨みもさして無いかな。ぶっちゃけ、明日から学校に行かなくても良いのかーなどと楽観視してもいる。
さて、俺が死んだと言うのならば、ここはどこだろうか?
天国か、地獄か、はたまたそこに至る前の三途の川みたいなものだろうか。視界は真っ白だ。世界が白いのか、はたまた視力を失っているのかも分からない。手足の感覚も無い。意識を向けると、まるで顔を動かしたように視界が移動する。けれども、何かが見える事も無かった。
ふいに、白い世界の一点がぼやけていく。渦のようなものが見える。それは見る見るうちに形を変えて収束し、やがては人の形になった。10歳くらいの少女だろうか。幼さと美しさを併せ持つ少女。その外国人のような日本人離れした容姿は、女神のようにも思えた。
「やっほー!」
神々しい登場が台無しになる明るい第一声。拍子抜けもいいところ。女神だと思ったのは、気のせいだったようだ。
「むむむ、失礼な。わたしは本物の神様なんだけど!」
「あ、えーっと、それは失礼……って、あれ?」
心の中で思った事に反応してきたのか。だとすると、本当に神様かなにかなのか。
「だから、そうだってば。」
頰を膨らませて怒る女神は年相応で、そこらの子供にしか見えなかった。しかし、この可愛らしい少女が神様だと言うのなら、いったいどんな要件で今ここにいるのだろうか。俺が死んだので、あの世的な場所へ連れて行こうとでも言うのだろうか。
「そこらの子供って、失礼すぎるから! まあ、可愛らしいって感じているなら許してあげる。」
ころころと忙しく表情を変える女神が言葉を区切り、ぴっと人差し指を立てる。
「それで、もちろん、あなたに用事があるのよ。なかなか察しが良くて助かるわ。」
なんだろうか、嫌な予感がする……。
「嫌な予感だなんて、とんでもない! あなたにチャンスをあげようって話よ。」
えっ、それは生き返ったりとか、そう言う……!?
「敵討ちのチャンスよ!」
「はい!?!?」
ドヤ顔の神さまは、最高のドヤ顔でそう言った。