表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

メイドのマリー

異世界金融の主人公カースの兄オディロンとマリーの恋物語です。

5、6話ぐらいで終わる見込みです。

私の名はマルガレータバルバラ。ローランド王国で最も辺境に位置する街、クタナツで、とある騎士一家に仕えるメイドだ。


とある事情から奴隷狩りに捕まり、売りに出され、しかも売れ残った。外見は人間の年齢で言えば三十歳前後。それなりに自分の容姿に自信はあったが、まさか両耳がない程度で売れ残るとは。

そんな私を買った奇特な男アラン。値段はたったの金貨三枚。平民からすれば大金だが……

彼の家に連れて行かれて驚いたのはこの男に妻子がいたこと。そしてその妻の美貌と魔力だ。


妻の名はイザベル。人間ではない私を上回る恐るべき魔力 、そして血の匂い……

気づけば私は彼女を『奥様』と自然に呼んでいた。この私が人間風情に自然と腰を折ってしまう。なぜこのような女傑が……顔がいいだけの男の妻などに……




時は流れ、騎士アランのマーティン家には三人の男の子、一人の女の子が生まれていた。その頃には私も当主アラン、旦那様のお手付きとなり、奥様からも可愛がっていただける身分となった。


そんな私を悩ませるのは……二男のオディロンだ。


まだ三歳になったばかりだろうに私の仕事を手伝おうとする。邪魔で仕方がない。えらく私に懐いており、奥様より私と過ごす時間の方が多いぐらいだ。最近生まれた三男カースの面倒を見てあげればいいのに。




そんなオディロン坊ちゃんも五歳になった。驚くことに掃除洗濯皿洗いの腕が私と変わらなくなってしまった……

どうやら私に楽をして欲しいと思っているようで、私ができることを全てできるようになりたいらしい。




やがてオディロン坊ちゃんも十一歳。そろそろ学校を卒業する頃だ。先日旦那様から聞かされた話がある。奴隷である私の所有権を金貨百枚でオディロン坊ちゃんに売るということだ……

悔しいが現在の私は旦那様をお慕い申し上げている。しかしオディロン坊ちゃんの好意も重々に分かっている。旦那様からは私の好きに判断していいとは言われている。そもそも故郷が恋しくなったら休暇を与えるもよし、奴隷から解放するもよしと言われているのだ。


私は……どうすればいいのだ……




そしてオディロン坊ちゃんはクタナツ学校を卒業した。進路は……冒険者になることだった……血と泥に塗れて働く下級職。騎士の子供が……

坊ちゃんの成績ならもっと上の学校に行くこともできただろうに……


十代の若者にとって金貨百枚貯めることは並大抵のことではない。旦那様は私を金貨百枚では安いと評してくださったが……それだけのお金を貯めても私がオディロン坊ちゃんのものになる保証などないのに……




そんなある日、オディロン坊ちゃんが大怪我をして治療院に運びこまれた。右腕が切断されており意識もない……しかも右腕も回収できておらず、坊ちゃんの仲間も瀕死だ。


結局三男カース坊ちゃんの活躍により右腕は見つかりオディロン坊ちゃんは一命をとりとめた。オディロン坊ちゃんはそこまでして私などのために……それなのに私は、私の体は旦那様なしでは……




「マリーはいつもきれいだね。」

「マリーの料理は美味しいね。」

「僕はマリーが大好きだよ。」


オディロン坊ちゃんの何気ない一言が私の心を揺さぶる。私の返事はいつも「左様ですか」のみなのに……



さらに二年。オディロン坊ちゃんはたくましく成長した。生まれてから十三年……私の横で家事をしたがった日々は昨日のように思い出せる。

いつのまにか私より背が高くなり、背中に頼り甲斐も生まれた。そんな少年の未来を私が奪ってしまってもよいのだろうか……

私はエルフ、人間ではない。年齢だって二百歳は軽く超えている。私は……どうすれば……




そんなある日。


「マリー、悪いんだけど助けてもらえないかな? マリーの力を貸して欲しいんだ。」


珍しくオディロン坊ちゃんが助けを求めている。何事だろうか。


「事情によります。」


「明日なんだけど、西の山に行くんだ。あそこってゴーレムが多いよね。ゴーレムの倒し方の見本を見せて欲しいんだよ。」


「かしこまりました。旦那様にお伺いしてからお返事いたします。」


「ありがとう。頼むね。」


旦那様は必ず了解してくださるだろう。それにしても坊ちゃん達のパーティーはゴーレムを仕止めるには向いてないはずだが。何か深い事情でもあるのだろうか。




そして翌日。旦那様は快く許可してくださったので、私は坊ちゃんに連れられてクタナツを出発するべく北側の城門へと向かった。


そこに待っていたのは坊ちゃん達のパーティー『リトルウィング』のメンバーだった。


「オディロン待ってたわ! 今日も頑張ろうね!」


そう言って坊ちゃんに抱き着いて私に不敵な笑みを見せたのは、リーダーのベレンガリア様。上級貴族ダキテーヌ家を勘当された阿婆擦れだ。

魔力も高く、見目麗しい。そして何より若い。坊ちゃんにはこのような女性が相応しいのではないだろうか? 例え性悪でも……


「おはようベレンちゃん。今日はどうしたの? 抱き着いてきたりして。」


ホッ、いつものことではないのか。

いやいや、私は一体何を……


「別にぃー。あ、マリーさん今日はお願いしますね! オディロンが頼りにする腕前、期待してますねぇ!」


「かしこまりました。」


そして私達は馬車で西の山、オウエスト山に向かう。御者は私、他の四人は車内。ベレンガリア様は坊ちゃんの隣に座った……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ