逆調律
僕は急いで時計塔に向かった。
そしてもう少しで着くだろうと思った瞬間、見えない壁にぶち当たった。
「あいたぁ!」
派手に大砲が直撃したような音をならし人間が走れる速度を遥かに越えた勢いで壁にぶつかる。
めちゃくちゃ痛い、けど悶絶している暇はない。
「痛いなぁもう……精霊よ、傷を癒して。」
思い付いた言葉を呪文にし、体を回復させ痛みを減らす。
この壁は一体何なんだろうか。あの衝撃で壊れないということは強力な魔力で構築された壁なのだろうか。
この壁があっては時計塔に入って己に流れる吸血鬼の力を使って逆調律を行うことができない…
「…少し無茶になるかもしれませんがこの方法を使わざるを得ませんか……」
核に逆調律ができないのであれば時計塔ごと行い地脈を止める。
幸いこの体は魔力量が出鱈目レベルに保有している、魔法を使うのも疲労が溜まるものだが今ここで死ぬわけにはいかない。
吸血鬼としての本能を限界まで引き絞り、僕がここに来る前に体が覚えている呪文を唱える。
まるでそれが使命だったと体が思い出したように。
「我、黒夜の吸血鬼の血を継ぎし者。今この血を持って対極の調律を唱えん。」
呪文を唱えた瞬間時計塔を中心に巨大な魔方陣でいくつも展開される。
そして僕の意識は黒い空間へ引きずり込まれた。
朦朧とした意識のなかで目を開けるとそこは神秘的で、同時に畏怖を覚える景色が飛び込んだ。
緑色の巨大な光の筋を飲み込まんと赤い糸がいくつも展開し緑色の光を飲み込んでいく。
「…これが恐らく地脈の流れですね。」
恐らくこれを切れば、地脈の流れは止まる。
右手を確認する。表示されているタイマーの針は五分と思われる場所で待つ暇もなく進んでいた。
「時間がないですね……一気に魔法で片付けますか。」
恐らく魔力は持つはず、そのあとどうなるかは知らないが。
風、火、光と属性を想像し、そして一本の万物を断ち切らんとする刃を構築する。
「精霊…いや、あなたにも名前があったんですね。」
魔力を練り、唱えようとしたとき。頭に言葉が流れてくる。
僕はその言葉を区切りながら力を込めながら紡ぐ、
「カドルトロフさん、地脈を…止めてください。」
そして、精霊の名を持った一本の巨大な剣がこの空間を断ち切った。
激しい風を引き起こしながら地脈の流れを斬ってゆく。
全てが切れた瞬間、彼女の意識は戻った。
目の前がぼやけていたがゆっくりと景色がはっきりしてゆく。
赤い光は消え、周りは静寂を取り戻していた。
「恐らく成功ですかね。思ってた以上に簡単…」
急に体から力が抜ける。あれ…これってまずいのでは…?
寒い、目の前が暗くなっていく、意識が…微睡んでいく……
そう…いえば……吸血鬼って血が魔力でしたね……
あぁ…このまま溶けて消えるのかな……そう思いながら僕はそのまま眠った。
ハルセキライカです。
ようやく少しですが物語が進行しましたね……
PCの調子が悪く携帯で投稿する形になってしまったので恐らく後で改稿するかもしれません。
これからもこの物語を楽しんでいただけるよう精一杯努力させてもらいます。