使命
「ぁ…あう…」
三日ぶりにベッドで横になった夜。
僕の体はひどく熱くなった。病気とはまた違う、主に左目がひどく痛い。
「なに…これぇ…」
頭も割れるかと思う程痛い。だめだ意識が遠のきそう…
自分に思い当たることが無いのだけれども…
「こ、これはまずいです…えと……ベ○マ…」
某有名なゲームの言葉を呪文のトリガーにして自身に治療魔法を当てる。
多少は軽くなったものの何が原因なのかはっきりしないとまた再発するかもしれない。
自分の体を確認してみよう。まず、自分は恐らく吸血鬼と龍のハーフ…
「ん?吸血鬼?」
吸血鬼、この世界の本での情報だが
まず、日光に当たると体が溶けてしまう。
これは吸血鬼の体の殆どが闇魔法の術式で構成されているからだ。
日光は光魔法の象徴と言えるもの。そんなものを直撃で食らったらそりゃ溶ける。
2つめに約5日間隔で人間の血液が無いと死に至る。これは《ブラッドマジック》と言われる闇魔法と固有属性魔法…えとこれは種族やアカシックレコードを持つものが使うことができる魔力を合わせて使い自分の生命源としているからだ。
3つ目は満月の時、魔力が際限なく使える。
これ結構エグいものだと思うけどデメリット無いのだろうか。
まぁ、際限なくといっても血を使って魔力の回復が速くなるだけなのだけれども。
「ああ、なるほど…今日は満月でしたか。」
多分体の吸血鬼としての割合が増えたのだろう。右手によくわからない文様が入ってるし。
吸血鬼といえば一個、象徴するものがある。
「あーやっぱり、八重歯が出てますね。」
そう、血を吸う際、対象を傷つけるものだ。
満月、そしてこの体の変化。恐らく吸血鬼としての性質上血を欲しているのだろうか。
そして、予期せぬことが起こった。
「きゃっ!」
唐突な地震。それもかなり大きい。
「な、何!?」
「お客さん!早く外へ逃げて!」
僕は迷わず部屋の窓を蹴破って外に出た。
その瞬間この地震によって宿が半壊した。もう少し遅れていたら潰されていただろう。
道に投げ出され盛大に腰を打ち、悶絶する前にそれを見た。
「なん…ですか、これ……」
そこで目にした景色は思わず自分の目がおかしくなったと思える光景だった。
時計塔を中心に大量の紅い魔力が回りこの世の終わりを彷彿とさせるまばゆい赤い光。
途端、右手に付いていた文様が焼けるように熱くなった。
「熱っ!」
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫です。…これは…魔法陣で描かれた時計……?」
文様に金色に光り輝く歯車状の魔法陣、中にはアナログ式の文字盤が書かれていないタイマーが刻々と針を進めている。
「逃げろ!《クロン・スタッシュ》が起きるぞ!!」
「バカ!どこに逃げるってんだ!」
「ここから南の方向に結界が張られた教会がある!そこへ逃げるんだ!」
あちこちから怒号と悲鳴、子供の泣き叫ぶ声、もうここはあの豊かで活気的なあの街ではない。
ただの地獄絵図と化していた。
クロン・スタッシュ、地脈が暴走し周囲の地脈を扱うための宝石を核としてあらゆるものから寿命を消し去る大爆発現象のことだ。
抑えるには逆調律を宝石に対して行い、地脈にその魔力を当てる…
「…ここで死ぬのは二度の人生を与えてくれた神様に失礼ですね。」
「ちょ、ちょっと!お客さんどこへ行くの!」
「お客さんはやめてください。私には…」
「ラキという名前があるのですから」
この身体能力ならあの時計塔まで走って2秒もかからないだろう。
「僕はゆったりだらだらとした生活を送りたいんです。さっさと収めて寝ます。」