翡翠の目の少女
「助けてもらってすみません。」
「いえいえ、偶然会ってしまったものですから。」
盗賊を少女が退け、そして今はその子と旅人の馬車の中だ。
「服と食べ物もいただけるとは思いませんでした。ありがとうございます。」
「いえいえこちらもお礼できることは精一杯しますよ!」
というかそんな綺麗な体を裸で晒されると僕の目のやりどころがなくなってしまう。
今までいろいろな女性を見てきたがここまで完璧なのは見たことがなかった。
僕は旅人であり、採集したものを売って生活する...まぁ、要するに旅商人だ。
貴重なアイテムや需要がある素材等を集めて売る。その金で女を買ったこともある。
「そう言えばここ周辺での話をする約束でしたね。今からでも出来ますがどうしますか?」
「あーこの食べ物食べてからでいいですか?結構おなか減ってたもので...」
「どうぞどうぞ」
にしてもよく食べる、何日間か食事を摂っていなかったのだろうか。
この間に彼女のことを改めてよく見る。
顔はやはり美しい、どこか幼さを感じるがそれでも美しさが勝っている。
そして陽の光で翡翠色に輝く目はよく見ると右片方がうっすら青みがあって瞳孔の形が違う。
話し方はかなり丁寧で中性的な感じ。
体は……今は渡した服があるが…綺麗だったなぁ
やばい、ロリコンと呼ばれてもいいぐらいいつまでも見られるなこの子…
「ふぅ、食べました…お話を伺っても?」
「あ、は、はい!」
いけない、顔を見ながら話していたのがバレてしまうところだった。
「では、話しますね。」
「まずここら辺の地域は今も絶対平和を保っている大国、《レイヴンガルド》が治めています。レイヴンガルドはまぁ、一人の聖騎士の伝説のような成果から魔物が一切近づかないんです。また、町がとても豊かで大抵欲しいものはそこで全部見つかっちゃいます。」
「そこに格安の宿はありますか?」
「もちろんあります。そしてそこがこの馬車の目的地です。あと、これは言っておかないと…」
「最近、地脈と言われる世界を巡る魔力が乱れ気味で魔物が活発化してるんです。なので」
僕は袋に入れていたお金の4分の3程度を渡す。助けて貰ったのだしこれぐらい出しても良いだろう。
「え…いいですかこんなにも?」
「助けて貰ったんだしいいですよ。それにそのお金を使って装備とか整えてほしいです。いつ魔物に襲われるか分からないので。」
「で、ではありがたく。」
「と、僕の目的地である場所とここ周辺のことについては大雑把ですが話しましたが、詳しく教えてほしいこととかありますか?」
「あ、いや、今はそれだけあれば十分です。そして僕もそこまで乗せてもらって構いませんか?」
「いいですよ。あ、そういえば名乗ることを忘れてましたね。僕は《ユキ・ハクウラ》、ここら辺りで旅商人をしてます。」
「あ…名前…」
「ん?」
名前を言えないのだろうか、それとも無いのか…?
なんにせよ言えないのであるなら無理に言わせないようにしなければ
「あ、言えないのであれば…」
「《ラキ・レミナ・アルヴァン》」
「え?」
「ラキ・レミナ・アルヴァン、好きな呼び方で呼んでください。」
「あ、じゃぁラキさんでお願いします。」
このあたりでは聞かない名前だ…恐らく真名ではないだろう。
まぁ、助けてもらったので無理に聞くまい。
「馬車の方、あとどれぐらいで着きます?」
「明日の朝には到着するかと。」
「今日はここで寝てもいいですか?」
「どうぞどうぞ。」
こんな少女と少しの間だけど一緒にいられるなんて幸せすぎる。
そして僕はこの子とともにレイヴンガルドに向かうのであった。