アーティファクト
「甘い香り…そろそろ頃合いですね。」
そう言って僕は釜を熱していた魔法を止める。
「さてと…これは成功ですかねぇ…?」
花のような甘い香りに、釜の中に並々と入った血のように赤い液体。
僕の回復魔法のかわりになる強度を持つ回復薬、《妖精の血》。
国の図書館の禁書が置いてある場所から借りてきた本を参考に作ったけど……
「これ本当に飲んでも大丈夫なものなんですよね?」
「ラキ?紅茶淹れたんだけど飲まな…甘い香り…何を調合したの?」
「妖精の血です。これだったら魔法のかわ」
「妖精の血!?アーティファクトレベルのポーションじゃない!」
「アーティ…それは知らないですけど簡単に作れましたよ?」
「この国の錬金術士がいくらかかっても作れないものを簡単って…どんなことにおいても出鱈目ね…」
魔力さえあればっていう言葉必要だったかな?
なぜこれが作れないのか僕なりの結論を言うと、この世界はどうやら重さや量にたいしての単位がない。
本を見たとき驚いた、一つまみとか適量という言葉しかなかったものだから。
量がめちゃくちゃだったらそりゃ精製できない。
なので水と重力魔法を使って1gを割り出し、そこから地道に精製したというわけだ。
そして、錬金はものを精製する際にある程度の魔力が勝手に使われるということが分かった。
だから僕が魔法を組むまでもなく作るだけでいいと、これは楽でいいですね。
「あ、紅茶が入ってるんでしたっけ。」
「ええ、休憩がてら飲まない?」
「お言葉に甘えて。」
甘い香りが漂う地下室から出ると、紅茶の良い香りが鼻に入ってくる。
今気づいたがこの体嗅覚が相当鋭い。これは吸血鬼ではなく龍の特性なのかな。
机に座ると彼女が紅茶を持ってきてくれた。
「ありがとうございます…あ、美味しい。」
「それはよかったわ。いい茶葉が手に入ったのよ。」
そういえばさっきアーティファクトと言っていたが一体何なのだろうか。
気になるし聞いてみよう。
「シオンさん、さっき言ってたアーティファクトって一体何なんです?」
「えっと、アーティファクトは遠い昔この世界が文明を失ったと言われる年を区切りに失った技術や道具、魔術などのことを言うのよ。」
「その文明を失った年とはいつなんです?」
「詳しいことは分からないわ。ただ一つ分かっているのが伝説の黒夜の吸血鬼と翡翠の龍が姿を消したときらしいわよ。」
「黒夜の吸血鬼と翡翠の龍が消えた時……」
となるとその時にクロン・スタッシュでも起こって巻き込まれたのだろうか…?
いや、調律の力があるから真っ先に防ぐし多分違うかな。
謎は深まるばかり、ますます元研究者の心が擽られる。スローライフを送りながらその研究をしたら楽しいだろうなぁ。
「ということは妖精の血はアーティファクト、失った技術なんですね。」
「そう、まさかあんなもの精製する何て流石に慣れたと思ったけど驚いたわよ?」
「あれ、精製するの簡単なんですってば。まぁ、大量に精製したので当分はゆっくりできそうです…ふぁ…では眠いので寝ますおやすみなさい。」
「え?まだ昼よ!?ちょっと?ねぇってば!」
そんな彼女の声を微睡む意識のなか聞きながら僕は疲れた体を休ませた。




