女の子の嗜み
「おーい。シオンさーん、生きてますかー?」
「う、ぅぁ…も、もっとすってぇ……ハッ!」
「あ、だいじょ」
彼女は蕩けた顔から急に我に返ると僕に勢い良くしがみつく。
「いい?今のは聞かなかったことにしてお願いだから。」
「え、あ、はい。」
んー…僕なんか悪いことでもしました?
それともさっきの顔を見られるのが嫌だったのかな。
まぁいいや。僕は貰った血を魔力に変えて吸血鬼としての機能をゆっくり閉じていく。
イメージは天秤。右が龍の機能で左が吸血鬼。それが釣り合うように調節する。
「…ふぅ…落ち着きました。」
「そ、そう。それは良かったわ。」
そういやここどこなんだろう。
あんな派手なことをしたら王国の人たちに目を付けられそうなのに見つからないということは…
街の隅辺りの場所ですかね。
「そういえばここはどこなんです?」
「ここは王国の外れにある村よ。時計塔からは結構遠い場所にあるわ。」
「そうですか。」
予想的中。納得です。
ここからどうしよう…やることも決まってないし…
「…」
「ん?どうかしましにゃっ!?」
唐突に彼女に胸を揉まれる。女の子の可愛い声がまた漏れてしまう。
一体どうしたっていうんだろう…?
「…あなたもしかして下着つけてないの……?」
「あ、はい。持ってないもので。」
「ちょっと!あなた女の子としてどうなのよ!?あーもう!」
彼女は勢いよく部屋を出て……戻ってこない。
そんなに反応するものなのかなぁ…?
というか遅い。用でも足しているのだろうか。
「ふぅ…疲れたし寝ますかおやす」
「なに寝ようとしてるの!お買い物に行くわよ!」
「えぇ……」
彼女によって急いで着替えさせられ、僕たちは町の方へ向かった。
しばらくすると前に見た活気がとてもあるあの町に着いた。
そして案内された女性の服を売っている場所につれていかれた。
「さぁ!あなたに似合うものを探しましょ!」
「まさしくファンタジー…ですね。」
異世界であろうと女性はおしゃれなんですね。
「ラキ、自分の胸の大きさわかる?」
「んー、シオンさんより小さいです。というか気にしたこともありません。」
「それは嫌みかしら?……ちょっとこっちに来てくれる?」
カーテンで遮られた小さな小部屋に案内される、試着室かな?
そしてちょこんと小さい下着が目の前に現れる。
「着けれる?」
「えっと…分かんないです。」
「もう…仕方ないわね。一体どうやって生活してきたのよ…」
後ろに彼女が移動し、僕の胸に下着を着ける。
こういう少し飾りの多い女の子の服を着るたび、僕は女の子として第二の人生を与えられたのだなと思ってしまう。
体は女の子でも精神は前と変わらず男のままなので色々気になることはあるけど…
「はい、できたわよ。窮屈な感じとかない?」
「無いですね。ちょうどいい感じです。」
「そう。」
ふと彼女を見ると、嬉しそうな顔で自分の左手を見ていた。
…そっか、ここで今始めて治した腕を人のために使ったんですね。
この国のために捧げたと言うことは人のために戦ったのだろう。彼女の過去を僕は知らない。
けど人のために身を捧げるのがこの人の生き甲斐だったのだろう。
「…嬉しそうですね。」
「そりゃそうよ…絶対治らないと思ってた。けどこうやって右手と変わらず動いてる。感謝してもしきれないわ…」
「そう、ですか。」
お礼程度だったのにここまで感謝されるとは思わなかった。
けど他人のために行動を起こすのはやはり快い。
過去の人生もこんなものであったらよかったのに…
「まだまだ下着だけじゃないわ!服も今日中に揃えちゃいましょう!」
「お、おー」
こんなに明るい笑顔をいつまでも見れたらいいのに。
こうして僕は色々着せられたりしたりお食事に行ったりと今日という今日を充実に過ごした。その時に僕が逆調律を行ったことを細かく説明した。信じてもらえないと思っていたが彼女は素直に信じてくれた。
そして今は逆調律を行った時計塔の中にいる。
「…ありがとうね…何度も言っちゃうけど……」
「……僕は…紅血龍は何でもできるんですよ。」
「嘘よねそれ…けど、あながち間違ってないかもね。」
彼女の長い茶髪が吹き込んできた風に流れる。その横顔はとても嬉しそうで少し寂しそうだった。
多分、この人は人のために、この国のために戦ってきてそのためか人に助けられるということに慣れてないのだろう。
なんとなく過去の自分と重ね合わせてそう思う。
「そういえばあなた、行くあて先はあるの?」
「…ない、ですね。この国について調べたくて来ただけですから。」
「そう…なら。私のところに住まない?」
「シオンさんの家に…ですか?」
「そうよ。あなたのその魔法技術なら医者として働いたりすれば儲かるはずよ。」
「なるほど……」
元々はこの世界ではスローライフを送る予定だったし悪くない話ではない。
けれども、王国に目をつけられている可能性も否定は出来ない…どうしよう……
「……王国のことが気になるのかしら?」
「え。」
「顔に出てるわよ。大丈夫、来たら私が追い返してあげるから。」
「…悪くないですね、お言葉に甘えて住ませてもらってもいいですか?」
「えぇ、もちろん!」
こうして僕のスローライフは始まった……
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「……見つけた…あの少女だ!」




