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8・弾が無いのが偶にきずってか

 なんだかんだで翌朝である。

ん?


 すまないがノクターンに書くような話は一切ない。いや、ほら・・・


 まあ、その話はいい。実はここで大きな問題があることに気が付いた。


「ガスも弾ももう残りわずかだ・・・」


 そう、何だかんだで昨日はずいぶん消費している。ガスガンというのは打ち出すBB弾以外にガスが必要になる。世界の趨勢はCO2だが日本はいまだに代替フロンだ。確かに、未だに代替フロンの大気解放とか一見ヤヴァい話に見えるのだがそれにはいろいろ訳がある。


 海外でCO2、いわゆるグリーンガスが主流になっているのは威力にも原因がある。グリーンガスを使っている国というのは日本よりも遊戯銃の規制が緩い。そのため、高圧のCO2ボンベが無理なく使用可能というのが大きいだろう。日本では過去の違法改造の話が尾を引いていて高圧ガスの使用に二の足を踏んでいるというのが大きい。本来であれば環境負荷を考えて早々に移行すべきなのだが、なかなかそのような動きは出てきていない。


 既に一社、CO2に挑戦しているメーカーもあるが、未だに日本では唯一の例といってよい。

CO2には代替フロンにはない恩恵がある。代替フロンは真夏でも連射によるガスタンクの冷えや銃本体が冷えてしまってガス圧が弱まるという欠点がある。ハンドガンなら全く気にならないが、ライフルとなるとせっかくの連射能力をスポイルしてしまうのでその分セールスにはダメージとなる。


 ただ、サバゲで使う場合、そもそも連射など余ほどの事がないと使わないが。


 そもそも、今のガスガンはマガジンにガス室を設けているのでいわゆるリアルカウントと呼ばれる実銃準拠の弾数しか装填できていない。映画みたいにバカスカ撃てるのはノーマルで実銃の二倍から三倍、ぜんまい式の多連マガジンなら数百発という電動ガンの話だ。ガスガンは実銃同様に残弾の心配をしながら一発づつ撃つのが基本である。


 まあ、それでだ。日本では違法改造への忌避感から多くのメーカーがCO2には冷淡で、有料のサバゲフィールドにも使用禁止という場所がある。まあ、国内メーカーについては徐々に使用可とするフィールドが増えているから使う分には安心できる環境が整いつつあるが・・・


 そして、事もあろうにとうとう遊戯銃の大メーカーさんはお役所のCO2忌避からフロンに代わる新たなガスまで開発してしまった。

これで日本のガスガンにCO2という道は途絶えてしまうのかもしれんね。


 そんな訳で、当然ながら俺の銃も代替フロンガス。ガスコンロ用と外見がほぼ同じガスボンベを使う。残りはあと一本のみ。弾については昨日撃ちまくったので残り五百発ボトル一本。

俺の持つリュックはなんでも入るのだが、異世界ラノベ物みたいな消耗品の補充は出来ないらしい。


「困った。弾もガスも残りわずかだ」


 そう言って悩む俺を見る呆れたような視線。視線の方を見るとチッパイさんが居た。


「本当にバカじゃない?魔砲師でしょ?」


 蔑むような顔と声である。


「いやいや、俺のコレは魔法を込めて飛ばすわけじゃなく、この弾とこの缶に詰められたガスを使うんだ」


「だったら補充すればいいじゃない」


 なんですと?魔法で補充できる?どうやるんだよそれ。


「私が知るわけないでしょ。魔砲師なんだからそのくらいできるんじゃない?」


 いやいや、訳が分からんことを言われても困るんだが。弾が増やせるなら、ガスが充てんできるなら、そのまま手から火か水出した方が有効なんじゃね?あ、そうか、直接が無理なら杖とか剣とか。


「ハァ?バカ?杖や剣でそんな事できるわけ無いでしょうが。弓や筒を使うのが普通なんだけど?本当に魔砲師なの?信じらんない」


 チッパイさんはそう呆れたように仰り、家を出ていく。


 やはりよく分からん。魔法といえば杖とか剣を使うんじゃないのか?魔力を増幅する宝石付けたヤツ。

そうは思いながらもチッパイさんが言うように弾を出せるんじゃないかと空のボトルをもって念じてみた。


「出でよ、BB弾」


 出なかった。おいおい、出るんじゃないのかよ・・・


「出でよ、ガス」


 ボンベもダメだった。空のボンベが重くなりはしなかった。


 どうすりゃいいんだよコレ・・・

ボトルの弾と今あるボンベを使い果たしたら俺の持ってるエアガンはすべて無用の長物じゃないか、そして俺も普通の人間になってしまう。どうすりゃいいんだよ・・・


 そうは言っても現実が何か変っちゃくれない。今日は少し遠出して昨日のような獣の群れが他にいないか捜索することになっている。



 残り少ないボトルとガスをもって今日も出かけることになった。M320用にローダーも忘れてないぞ?


「よし、今日は少し山に入ることにする。猪よりも大きな獣が居るかもしれんので気を付けるように」


 タカがそう言って集めた狩人の班分けや捜索範囲の指示を出す。


「ヨシフルは俺と一緒に来い」


 俺たちは最奥の捜索に向かうらしい。場合によっては鬼と出くわすかもしれんというのでM320を背負ってタカの後を追う。


 街で巨人、ここらで言う鬼を一撃で仕留めた威力があるこいつなら、一撃で仕留められるはずだ。89式みたいにBB弾を浪費する必要もないしな。


 村を出て何時間になるだろうか、すでに昼を回っている。獣道なのでそう遠くに来たわけではないが、すでに森の様子はいつもと異なっていた。一言でいえば、山深いというやつだな。

ボケっとそんなことを考えている時だった。


「鬼だ。左の沢筋にいる」


 先行する狩人からの手信号を見たタカが周囲に小声でそう注意を促した。

俺はM320を構えて鬼が居るという沢筋を見た。

運の悪いことに鬼があたりを見回したときに目が合ってしまった。


 クソデカイ、まるでロボットか巨人だろ、あれは。鬼ってあんなんじゃないだろ。街のときとはきっと距離感の違いもあるんだろうが。

 そんなことを思いながら引き金を引いた。木が邪魔で届かない。木を数本なぎ倒しただけに終わった。


「ヨシフル!無暗に攻撃するな!!」


 そういう声が聞こえたが撃ってしまった以上もう後には引けない。俺はリリースボタンを押してバレルを開放し、中からカートリッジを抜いてローダーで新たに弾を装填し、バレルへと戻す。


 鬼がこちらへと登ってこようとしている。猶予はない。


 撃ち下ろしになるのでほとんど角度を付けずに直射で狙って撃つ。


 当たった!


 ドォンと顔面で爆発が起こり、顔を吹き飛ばされた鬼が谷へと崩れ落ちていく。


 それを見送りならがら、再度、カートリッジを取り出して弾を装填した。


 そしてトドメに一発お見舞いする。


 ん?


 俺はローダーを覗き込んだ。


 そう言えば、残りすくなかったローダーには弾が入っている。しかも、減った気配がない。ってことは・・・・・・


 無駄に弾を捨ててみたが、ローダーから弾が減る事は無かった。


「こいつに魔法がかかってんのかよ」


 試しに89式のマガジンを取り出して弾を装填してみた。


 さらに、もしかしてとマガジンにあるガスバルブを押し続けてみたが、いつまでたっても空にならない。


 なるほど!


 なぜか最近ガスの充てんしなくても快調に動いていた理由はこれだったか!



「ヨシフル!」


 周りを忘れてガスが切れないことに喜んでいた俺はその声で我に返った。

声のした方を見るとタカたちが鬼の死体を解体しているところだった。


「これも食うのか?」


 そういうと呆れたような顔をされた。


「さすがに無理だろ。毒はなかった筈だが、まずくて食えないって話だ」


 なるほどと返事が返ってきた。


 改めて鬼を見る。デカイ。多分8mくらいあると思う。そして、さっきも思ったがこれと言って鎧のようなものは着けていない。そうそう、何とかの巨人は筋肉骨格標本よろしくアレやナニは分からないが、こいつにはちゃんとナニが付いている。つまりオス。腰に巻いてるだけだもんな・・・



「よし、埋めたら一度村へ帰るぞ」


 俺がつらつらそんなことを考えていられたのも、警戒班だったからだ。

暫くすると撤収の号令がかかって撤収した。


「街でも鬼が出たからこれで2騎目か。鬼は4騎から8騎の群で居るそうだから、まだこの辺りに居るかもしれん」


 村に帰って早速お婆への報告が行われ、そんな話になった。


「まだ居そうなのか?」


「あの沢自体が海へ向かう川の支流に当たる、村や街とは別の流れになる。街に出た鬼がたまたま違う沢へ降りたんだとしたら、残りの鬼が向かったのが浜の一帯という事になるな。とすれば、知らせが来るのは早くても10日は掛かる。が、この間の獣共が鬼に追われて出てきたのだとすると、この辺りに他の鬼どもが居ると考えるべきだろうな」


 どちらにしても情報がない。10日も待っていて、この辺りに4騎だ6騎だと大量の鬼が現れては一大事だ。俺が倒した鬼が街で倒された鬼を探していただけなのか、それとも、群の見回り役だったりするのかで話が違ってくるようだ。どっちなんだろう。


「とにかく、何もわからないところで話し合っていても仕方がない。ヨシフルの魔砲で倒せることは分かっているから、ヨシフルとハナ、魔弓を使えるアイであの沢を遡ってもらおう。それから、タカはコロと狩人数人を連れて街の山沿いあたりを探ってもらいたい」


 たしかに、あの弓なら十分鬼とも戦えるだろう。


「ちょっと待って。何で私がコイツと一緒に山に入らないといけないの?私がどうなっても良いの?」


 俺を見るなりチッパイさんはそんなことを言い出す。


「夫婦なのだから問題なかろう。すでに一つ屋根で過ごしているではないか」


 お婆はシレっとそういう。チッパイさん、何も言えずに俺を睨む。

皆がそんな俺たちに生暖かい視線を向けてくる。いや、だからね・・・


 そんなわけで、俺たちが沢の上流、タカチームが街周辺、まあ、ここから旧街道沿いだな。残りは村の警備という配置になった。


 これ、鬼退治なのに犬しかいないのは良いんだろうか?猿はまあ、アレは無理だ。まさか鬼のツガイをアレがヒイヒイハァハァ言って煽ってるナニを俺たちは見たい訳ではない。


 雉は・・・、居るのか?ハーピー族みたいなのって。聞いたチッパイさんが呆れた目で見てくるのを見ると、居ないんだな。きっと・・・


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