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23・議論は踊る

 鬼が島には生活反応が無いことが分かったが、本当に何もいないかどうかは分からない。そして、あの鬼がどのように出てきたのかもイマイチよく分からなかった。


「一周回ってもどこからもは入れねぇ。本当に鬼はあそこから来たのか?」


 幼女の疑問はもっともだ。


「そうは言っても、境界の内側にも魚が居たという事は、どこかに抜け道があるんじゃないかと思う」


 与一の意見ももっともだろう。


 だが、それがどこなのかは分からない。


「少し潜ると繋がってるかもしれないです」


 チッパイさんが言う。確かにそうかもしれない。それなら船がない事にも納得だ。が、わざわざ海を潜って出入りする構造の砦ってどうかとも思った。


「潜水艦の小説にあったね。海中から出入りできる話が。もう随分前の仮想戦記物だけど」


 多分、21世紀に入ってからのラノベにもあったと思うぞ?


 いや、それにしたって出入りは海中だけじゃなく、海上、空中からも出来たはずだ。そうでなければわざわざ砦にする必要はない。擬装さえしておけば良いではないか。


「多分、出入りのために隠遁を解くんじゃないのか?常識的に考えて。隠遁を解くからその時の襲撃に備えてあの砦があるんだと思うんだが」


 俺は居たって常識的な話をした。わざわざ奇をてらう必要も無いだろう。それにだ。いくらエアガンとは言え海水に付けるのは嫌だ。電子機器の防水なんて雨ならともかく、水に浸かれば終わりだ。それに、バネやノズルで稼働させてるんだから塩が付着したらどうなるかわかったもんじゃない。通常分解だけなら問題ないが、塩に付けると専用工具が無いとバラせないようなところがダメになりかねん。海中から探索なんてごめんこうむりたい。


「んだよ、ありきたりな事言いやがって。呪文で開くとでもいうのか?」


 幼女が面白くなさそうにそう言ってくる。お前は真面目に論じたいのか茶化したのかどっちなんだよ、マジで。


「弓を海水に浸したいなら構わないが?」


 皆の顔色が変わった。


 そりゃあそうだろう。竹や木を張り合わせた弓に水は大敵だよな。歪んだり剥離したら困るもんな。与一の弓は金属製だ。当然だが、俺と同じ悩みがあるだろう。


「だったら、いっその事弓かその大砲であの術を砕くというのおありかもしれない」


 堅そうではなかったアレが砕けるのか分らんがな。あの柔らかな壁だと矢や砲弾は船の様に逸れるんではないのか?砕くには相手が硬い必要があるように思う。


「隠遁を見付けて矢を射掛けたなんて聞いたことねぇぞ。そもそも見つからないのが隠遁だ。それに、仮にあてずっぽうで矢を射掛けたところで船と同じことになるんじゃねぇのか?」


 幼女も呆れたように与一の意見を切る。チッパイさんも同意見らしい。


「いや、それは弓の性能だよ。矢の速度が速ければ刺さるかもしれない」


 与一がそう言う。


「だったら、本物並の威力がある俺の銃は?」


 そう言うと俺に期待の目が向いた。


「そう思うよな。だが、弾自体は目で追える。初速自体はエアガンと大差ないと思う。三人の弓と大差ないんじゃないのかな」


 そう付け加えると見るからに落胆する三人だった。


 弓の場合、和弓の一般的な初速が毎秒60m強らしい、三人はそれより明らかに速い。ちなみに、俺が持っている銃の初速は80~90程度だ。基準値超えをしている訳でないからそんなもんだ。下手をしたら与一の弓に負ける可能性があるのではと思うんだが。


「弾の速さでいえばほぼ同じ、重量ではより軽い。どういう仕組みか分からないから威力についてはよく分からない部分が多すぎるんだが、仮に、あの境界を貫けるとして、矢であっても俺の銃弾であっても、アレが割れるとは思えない。確かに穴は開くかもしれないが、侵入側に大きく開く事は無いのは、俺の銃弾やアイの矢が獣に貫通した時の状況から確かだろうな。まあ、こいつならどうなるか分からないが、爆発しなけりゃ意味が無い」


 俺はそう言ってM320を見せた。


「爆発しないってどうしてだ?当たったら爆発すんだろ?」


 幼女が事前に話した知識をもとにそう指摘してくる。確かに、命中したら爆発した。これまでは。


「たしかに、どんな作用か実物のてき弾みたいに爆発してくれてるんだが、それは信管が作動してるからだと仮定すると、例えば、この船が境界に接触した時には舳先が壊れないとおかしい。爆発を起こすのは衝撃によって信管が作動するからだ。あるいは極端な減速が起こるかだな。しかし、船は壊れず、境界で減速もせずに進んだ。矢や銃弾も同じように軌道を曲げられるんだとしたら、こいつは境界ではなく、海に落ちて初めて爆発するだろう」


 幼女がうなる。チッパイさんは落胆している。が、与一がある事に気が付いた。


「しかし、爆発はするんだな?なら、境界面で爆発させれば崩せるかもしれない」


 俺もそう考えた。しかしだ、爆発のエネルギーだって船と同じじゃないのか?境界に沿って周囲に広がすような気がしてならない。

 それを説明したら与一も諦めたらしい。


「まあ良い。とりあえず帰って飯だ!」


 幼女は結局、隠遁を破る議論より空腹に負けたらしい。

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