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15・アレの次はこうなるのはお約束だよね

「あれ?もう起きてたんだ」


 ハナが俺とチッパイさんが居るテントを覗いてそう言ってくる。


 その声を聞いてスッと俺から離れてハナに駆け寄るチッパイさん。


「ハナ、行こう」


 そう言ってハナを引っ張っていこうとするが、ハナはニヤニヤチッパイさんを見る。


「せっかく気を利かせたのに」


 それだけ言って俺を見る。何がだよ。


「ヨシフルだから仕方ないか。アイ、行こうか」


 ハナの隣で俺を睨むチッパイさんを連れて行ってくれた。


 チッパイさんが居てくれてよかったが、二人ともただただ恐怖と言うかなんというか、ただ怖くて動けなかった。


 その後、食事の準備ができたとハナが呼びに来るまで俺は無心に銃の整備を行っていた。出来るだけ昨日の事は考えないように。


 朝食の後片づけを終えた俺たちは未だ焦げ臭いムラを後にしてさらに進む。


 沢を下り続けていると昼頃には新たな集落らしきものが見えてきた。


「ヨシフル」


 タカに呼ばれて俺は前回同様にL96で集落を観察してみた。


 しかし、そこには動く姿を見付けることは出来なかった。


「何も居ないようだ」


 俺がそう伝えると、タカもどこか安心したようだ。


「そうか。行くぞ」


 獣や小鬼が潜んでいる可能性も考慮して警戒しながら進む。大抵は犬の鼻に掛かればわかるのだが、鬼の襲撃による犠牲者の遺体がそのままらしく、紛れ込まれていたら分からないとハナやコロたちが言うので仕方がない。


 集落の直前になると俺にも分かるほどの腐敗臭がしている。これではわからないだろうな。


 集落はあちこちが破壊され、昨日のムラとはまるで様相が異なっていた。まともに建っている建物の方が少ない。


「どうやらここは徹底的に抵抗したらしいな」


 猟師の一人が建物を見ながらそう言う。それから手分けして集落を見て回ったが、多くの遺体は食い散らかされていた。まともに人や犬猫と判別できる状態にはない。


「これは昨日と違った意味でくるな」


 俺は隣に居るハナにそう言う。


「うん、これは酷いね」


 なんだか、見慣れた様子に見えたのだが、実際その通りだったらしい。


 先日の様な獣の襲撃は過去にも起きたことがあるらしく、俺やチッパイさんの居なかった時の襲撃ではかなりの被害が出ていたらしい。

 先日も猿が村の中を荒らしていたが、以前は猪も侵入してかなり酷いことになったという。


 猟の途中に襲われることもしばしばあるらしく、ハナや村人にとっては耐性が出来ている光景だというから恐ろしい世界だ。


 チッパイさん?彼女は街の出身だから、そんな苛酷な経験はないらしい。猟や街での応戦経験はあるらしく、多少の事は慣れているが、さすがに昨日や今日の状況は衝撃的だったようだ。いまもオロオロしている。


「俺たちを襲ってきた猪はここで餌を得て、更なるえさを求めてムラへ攻め寄せたんだろうな。だが、ムラは既に小鬼と化していたから跳ね返され、彷徨っていたところを俺たちに出会ったんだろう。何とも皮肉なもんだ」


 集落内の確認を終えた後、タカからそう聞かされた。


 あの大量の猪がこの状況を作った犯人か・・・


 猪たちは鬼から逃げ、その後、死体が転がる集落へやってきて貪ったのだろう。そして、新たな餌を求め・・・


 想像しただけで吐き気がする。


「さて、連日で気も滅入るが、彼らの埋葬をするぞ」


 タカがそう言い、今日も埋葬作業を行う。本当に、なぜこんなことばかりやってるんだろうな。異世界の冒険ってもっとキレイなもんじゃなかったのか?


 いや、アレは物語からスルーしているだけでこれが冒険とやらの現実かも知れない・・・・・・


 

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