表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/29

13・小鬼という奴に出会ったらしい

 猪の死体は置き去りにしてそのまま進む。川が赤いのはまあ、しばらくそのままだろうか。仕方がない。


 川の水が使えないのでその日の野営の食事は味気ないものだったが仕方がない。そんな日もあるとあきらめてしまった。


 次の日、とうとうムラのあるあたりに到着したのだが、様子がおかしかった。


「みんな、止まれ」


 河原から少し森に入ってムラの様子をうかがうことになったが、当初予想していたような状況ではない。


 ムラはまるで戦に備える砦の様に、簡易の櫓が立ち、周囲に柵がめぐらされている。


「ムラが生き残っていたのか?」


 俺がそう言葉を発して安堵していると、タカが寄ってきた。


「ヨシフル、お前の魔砲はこの距離から相手の顔が見えるよな?」


 確かにL96のスコープならば、400m先の人くらいは分かるだろう。


「見えると思う」


 俺はL96を取り出すと、ムラの様子を覗いてみた。


 何やらムラ人の様子がおかしい。目立った外見の変化はないが、顔に表情と呼べるものはなく。その歩き方も違和感を越えて明らかにおかしい。あれでは誰かに操られているようだ。ただ彷徨っているようにも見える。


 そうかと思うと、柵を修繕する人は必要以上に使命感に燃えている感じで見ていて怖いくらいだ。


「タカ、ちょっと見てくれ」


 俺はタカにL96を渡して覗いてもらう。


「あ?ん?よく見えないぞ」


 スコープと顔の距離がうまく合わないのだろう。なかなか覗けていない。


 少しスコープと顔の距離を変えると見えるようになったらしいが、今度は少しぼやけているという。


 そうか、俺と彼では随分と視力が違うという事だな。


 スコープをズームさせてみると、ようやく焦点があったらしい。


「おお!よく見える!」


 そう感嘆の声をあげてたが、顔はどんどん険しくなっていく。


 後ろからハナが興味津々で覗いて来るんだが、ハナさんや、ちょっと、いや、あからさまに当たってますよ?何がとは言わないが。


 チッパイさんが蔑んだ目で見て来るのは何時もの事です。ハイ。



「彼らが死んでくれていたらどれだけ良かったか・・・」


 しばらく見ていたタカがそう言って、悲しそうな顔をしながらL96を俺に還してきた。


「みんな、悲しい知らせだ。あのムラは鬼にのみ込まれてやがる。ムラ人は小鬼になってるみたいだな」


 そういえば、事前にそんな話もあったかもしれん。小鬼と言えばゴブリンあたりを想像してしまうが、現実はそんな事は無かった。普通に人の姿をしている。いや、そのまま生きた人間が鬼に洗脳された状態と言えば良いのだろうか。


「見た目は人だが、ムラには人はいない。そう考えてくれ。連中を皆殺しにしなきゃ先へは進めない」


 タカはそう宣言した。腹をくくるしかないらしい。


 鬼というのは敵対するものは襲い掛かって滅ぼすが、降伏してくるものにはどんな魔術か魔法か、洗脳してしまうそうだ。そして、その洗脳、もとい呪いは祈祷師にすら払えないものだという。放っておけば人を襲い殺してしまうので、殺す以外に手は無いそうだ。

 しかも、薬物中毒よろしく痛みを感じないらしく、傷を負っても、手足を失っても向かってくるのだという。どんなゾンビだよ・・・


「ヨシフル、悪いが、見えている連中をまずは魔砲で始末してくれ」


 タカがそう言ってきた。仕方がない話だ。相手の数がよく分からないから、まずは遠距離でどうにかするしかない。


「分かった」


 俺はL96を構え、スコープを覗く。


 ガチャコと初弾を装填する。パスッ


 エアコッキングガンらしい発射音と共に弾が発射されるが、スコープを覗く先、400mまで届いているのだから本当によく分からん。


 初弾は大きく外れた。中心線ではなく、下方の照準線に合わせるのは村での猪狙撃のときと同じらしい。


 2射目を装填して、修正した狙撃点で狙いを付けて撃つ。


 パスッという軽い音の後、狙った人物に命中したのが分かった。胴体に当たったらしいが、こちらからは倒れる姿しか分からない。


 続けて二人目を狙う。


 パスッという音と共に弾が目標へと向かうが、少し風で流されたんだろうか、狙った胴を外れ、腕を引きちぎった。

 どうやら相手は何が起きたのかわかっていないらしい。あたりを見回している。話には聞いたが、本当に痛みを感じないのか?


 腕を失っても痛みに悶えることなく、原因を探るために動き回っている。そして、そこへ人が集まりだした。


 二人目は動きが激しくなったので目標を変える。


 三人目は集まってきた群衆だ。


 パスッ


 その中の一人に照準を合わせて撃ったのだが、他の人物が射線に入り込み、どうやら頭部に命中したらしい。

 狙っていた人物に頭の内容物をぶちまけ、貫通した弾丸が命中したらしい。


 使っている銃は7.62mmモデルだが、外装カスタムで338ラプアマグナム仕様にしてある。いや、どちらにしても6mmBB弾のはずだが。

 しかし、威力はどうやら338ラプアマグナムなんだろうな。これは・・・


 スコープ越しで、どこかゲーム感覚だが、頭が半分吹き飛んでしまったのはさすがに気持ち悪い。すこしスコープを覗くのを止めてしまった。


「よし、行くぞ!!みんな、腹をくくれ!女子供も容赦すんじゃねぇぞ!!」


 どうやらそれを合図と思ったの、タカがそう言って突撃を命じる。


 みんな、顔から表情が消えている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ