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異世界転移に「幸せ」という文字は無かった。  作者: かきp
孤独な少年は世界を見ずに
3/8

お前だけなんだ

目が覚めたら、そこは異世界だった!…なんてアニメみたいな事を言うつもりは無かった。


でも、この現状をそれ以外の言葉で、どう表せばいいのであろう。


ーーつまりこれはアレだ。そのー、、、まあ、、、異世界…転移というやつだ、、、。


なるほどなるほど…。


ふーん。


お?うおおおおおおおおおおおお!!!


ーーーー20分前ーー


心地の悪い朝。いやそれ以上。


これほどまでに気持ちが悪い日は久しぶりだ。

気持ちが悪い…というより、極度にダルい、といったほうが正確かもしれない。こう…なんというか、学校休むほどのものではないけど、行く気が失せる、って感じか。


ーー夜遅くまで起きすぎたかもな。


昨日はうっかり夜中の4時まで起きてしまった。やはり夜に小説を読むのは良くない。続きが読みたくなってしまう。その証拠に昨日は小説を9冊も読んでしまった。


はぁ、とため息をつき、立ち上がる。いつも以上に重たい体が、重力に逆らおうとして、抵抗する。結果、僕のハムストリングスは耐えきれず、悲鳴をあげた。


ーー気持ちだけじゃない、体全体が疲れてる


そう思った。なにせ、小説を夜遅くまで読むことによって、足が痛くなるなど聞いたことない。あったらそれは別の行動も関係してるのだろう。


ーーただ、動き出さなければ、『今日』は始まらない。


俺はハムストリングスをたたき起こして、パソコンを開きに行った。パソコンは机の上。ここから約2m近くあるだろうか。たった2m。たったのそれだけなのに、今日の俺にはその1000倍、2km近くあるように感じた。


「ふう、着いた」


少しの時間を費やして、パソコンの元にたどり着いた。距離と比例しない疲れが、体全体に押し寄せる。でも、それ以上に、パソコンの所へたどり着けた達成感が強く、そんな感情は脳裏すら通らず消えた。


「おはようございます。『KAI』様。今日は何をなさいますか。」


パソコンを立ち上げた瞬間唐突に響く声。いくら自分のものだろうと、流石に買って3日しか立たない物が喋ると、少し驚く。


「この近くのコンビニ教えてくれ。」


最新型人工知能の問に答える。この機械は自分の言葉を拾ってくれる事でも有名だ。


「はい、分かりました。それでは位置情報サービスをオンにしてください。」


ああ、そうか。

いつも食事は親が勝手に持ってきてくれるので、外に出ようとしたことはほとんど無い。今日は体の重さのために、何らかの元気を出す飲み物が欲しかったが、流石にそれを母に言うと「引きこもりだからそうなるのよ」だとか「病院いって精神関係も見てもらいなさい」だとか言われるだけである。ここは、1人で買いに行くのが懸命だ。


「オンにして」

「位置情報サービスをオンにしました。」


いちいち同じこと言わなくていい、と思ったが、まあ仕方ない。手でクリックしてやるよりは全然簡単だ。


「現在地更新中、現在地更新中。」



やけに時間がかかるな。どうした、最新型コンピュータ。

WiFiもしっかり繋がってるし、大丈夫なはずだが…


「現在地が更新出来ませんでした。位置情報サービスをオフにします。」


へ?おいおい…

お前って最強のパソコンじゃねーのかよ。。。

機械に任せた割に酷いことを言ったことに反省して、策を考える。


「仕方ねえ。外歩いて探すか。」


こうなれば最終手段。ならべくこの秘密兵器は使いたくなかったが、今回ばかりは仕方ない。自分の勘と体を信用するとしよう。

そう思って立ち上がった。


ん?


体が楽だ…。異常なほど楽である。さっきまでのアレは何だったのだろう。俺のハムストちゃんも全然機能するし、疲れも全く感じない。


なんだよ…。マジで…


それはそうであろうと、とる行動は変わらない。なんの前振りもなく体がだるくなるのなら、いつ疲れが来てもおかしくない。元気である今のうちにどっかで薬でも買ってきて、貯めておけばいいだろう。


ーードアはここか。


超久しぶりな外出に、少し緊張が走る。これを開けば、スグそこは外。未知の世界。


ーー仕方ない。行くぞ!


俺の手に押されて扉は音をならしながらゆっくりと開いた。その瞬間、扇風機とは明らかに違う風とエアコンとはちがう冷気が家の中に押し寄せた。

光は長年パソコンで鍛えられた目をものともせず、視神経に刺激を与えた。


ーーーーーそして俺は1歩を踏み出した!!!



「は?」


「へ?」


「…」


「ここは何処だ…?」


家の外。そう言うしかない。

ただ、俺の家の外は明らかに現実とは違かった。

簡単に言うと非現実。

複雑に言うと非現実。


「どでかい…ドッキリだな。」


ははは。と棒読みで笑う。この状況でどんな反応をすれば良いのだろう。


「さて…俺が外に出ない間、こんなに世界は進歩していたのか…?」


冗談の奥に焦りがこみ上げる。そして、頬をつねる。

1回

2回

3回

やはり景色は変わらない。


ーーだから俺がここにいるのは事実で…


ーーこの景色も事実だから


ーーつまりこれは…その…


身体中を駆け巡る、自分の視界をコピーしたような情報と、一気に流れ出た汗の冷たさが、横隔膜を持ち上げ、大量の息を声として口から出した。


「まさか異世界転移かっ!!!!!!!????」


その瞬間、一斉に周りにいた何人もが振り向く。

いや、「何匹も」と言った方が正確だった。


さっきの大きな声とは正反対となる静けさが、自分の心拍数を加速させ、また汗を分泌させる。


少したって…それでも状況は把握出来ず…


俺は空を見上げ、一言言う。


「お前だけが変わってない」と。


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