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反乱の時

すいません!!

この間は寝ぼけて間違ったのを投稿してました。

これが正しいのです。

「不動!?」


不動が荒々しく朱龍の腹から大斧を引き抜くと、噴水の様に血が吹き出てくる。


「あっ?」


不動は得物を背負うと、鋭い目つきで二人を睨んだ。


「‥‥遅かったね」


「まさかこの程度の奴を七雄が二人がかりで倒せないなんて思いもしなかったからなぁ」


「二人?」


光希が疑問の声を上げる。光希が来た時には扇華は戦線離脱しており、二人が共闘する事はなかった。


「あそこに転がってんのは、扇華じゃねぇのかよ? 薄情な奴だなぁ、光希?」


不動は光希を煽る様に言うが、光希の意識は二十メートル程先に倒れている扇華に向いていた。


「扇華!!」


慌てて光希は走り出すが、翔はその場に残り不動と視線を交わせていた。


「さっきの電撃、てめぇがやったのか?」


(こいつ、前に戦った時に俺の力を知っているはずじゃ?)


力を使い果たし、立っているのも精一杯だった翔を不動が品定めする。翔は不動に対し睨む事で強さを誇示するが、強がりである事は明白だった。


「あぁ」


「あん時より、随分と成長したじゃねぇか」


不動は素直に翔を賞賛する。そして、用のない不動は王城へ向かう道へと歩き出す。


「惜しいな」


不動は翔とのすれ違い様に、そう呟いた。


(どういう意味だ?)


しばらくの間考えてみるが、一向に答えは出てこない。いつまでも惚けてるわけにもいかず、光希と扇華の元まで歩く。


「光希、扇華は大丈夫か?」


気絶している扇華を介抱している光希は安心の表情した表情だった。


「うん、安静にしていれば大丈夫だと思う」


(犠牲は最小限に、抑えられたよな)


翔はその場にへたり込み、その勢いで仰向けに寝っ転がる。光希もかなり疲労していたのか、翔の横に並ぶ様に横になった。


「結局、美味しいところ持ってかれたな」


あそこまで頑張った末に不動がラストを掻っさらう。どうにも腑に落ちない展開だった。


「僕は、朱龍を倒せたから別にいいんだけどなぁ」


「そうかよ」


いかにも光希らしい、と翔は思いながらくすりと笑う。


「それより、刀を突き刺してから放雷を使うなんていつ覚えたの?」


「あぁ、それは昨日の夜に扇華に教えてもらったんだよ。徹夜で練習したから寝不足だ」


翔の昨日の睡眠時間はたった二時間だった。長距離の移動の疲労もあり、光希は並大抵の気持ちでは出来ない事を察する。


(何か、安心したら眠くなってきたな‥‥このまま、寝るか)


翔がそんな事を本気で考え始めた頃、一人の兵士が翔と光希の元へ走って来る。汗だくになっているその姿を見た二人は非常時だと判断すると、すぐに起き上がった。


「どうしたの?」


「大変です!! 黒神帝国が‥‥攻めてきました!!」


「っ!!」


光希は言葉を失い、口をあんぐりした。翔はそんな光希とは対象的に、冷静に現状を分析する。


(タイミングが良すぎだ。これは幾ら何でもおかしい。朱龍が現れてからまだ一日、こんなに早く兵を出せるはずがない。やはり、今回の件は最初から仕組まれていたのか。それだけじゃない、侵略の上で邪魔となる朱龍が倒れた直後。でも、そんな知りようがないだろ‥‥いや、待てよ。もしかしたら──)


「──というわけで、緊急招集がかかっているんです」


思考に耽っていた翔は兵士の説明を全て聞き流してしまっていた。だが、


「うん、そういう──」


「光希、ちょっと付き合ってくれ」


翔は自分の考えを確かめに行くために王城へと足を向ける。その途中、兵士の肩を叩き、


「悪いが、扇華を頼む」


「へっ? は、はい。わかり、ました」


兵士は突然の頼みに戸惑ったのか、ぎこちない返事をする。


「ちょっと待ってよ、翔。一体、どういう事なの? 説明してよ」


「時間がない、黙ってついて来てくれ」


そう言って走り出す翔を光希は追いかける。





王城の正門前、本来なら見張りの兵士が目を光らせているはず。だが、今は見張りの死体と一人の男が立っているだけだった。そこに、翔と光希が駆けつける。


「くそ、間に合わなかったか」


翔はそう吐き捨てると刀を抜く。男は黙ってその場に立ち尽くしていた。


「えっ? どういう事?」


光希は状況が理解できず、混乱していた。


「簡単さ、こいつが裏切りスパイってだけの事だ。なぁ、不動?」


翔の目線の先にいた不動は大斧を持って笑っていた。


「えっ? 本当、なの?」


信じきれなかった光希は不動に訊く。


「あぁ、俺は黒神帝国の人間だ。朱龍を呼んだのも、鋼夜を殺したのも、見張りを殺したのも俺だよ」


「そうなんだ‥‥じゃあ、僕は戦わなきゃ、いけないね」


かつての友に刀を向ける事に抵抗があるのか、光希はゆっくり刀を抜く。不動も楽しそうに笑いながら大斧を振り上げる。光希が飛び出そうとした所で、翔が光希の前に手を出す。


「何するの、翔」


「チッ、つまんねぇな」


楽しみが奪われた不動は強い殺気を翔に向ける。だが翔は微動だにせず、立っていた。


「もう一つだけ、確認したい事がある」


「あっ?」


「慶次って人を殺したの‥‥お前だろ?」


翔がそう言った瞬間、その場が凍りついた様に静まり返る。少ししてから、不動の大きな笑い声が響き渡った。


「よくわかったなぁ。何の痕跡も残してねぇはずだぜ」


「あぁ、確かにあの場には手がかりになる様な物は何も残ってなかった。ただ、一つだけ妙な物があった。それが、これだ」


翔は自分の手にある刀をおもむろに前に出し、見せつける。


「そいつは、慶次の刀だろ? そいつがどうしたってんだよ?」


「神の加護の障壁、その持ち主の慶次の守備力は並外れてたらしいな。どんな魔物でも倒すまではいかなくても、逃げる事は絶対に出来るだろうし、まず不意打ちも受けない。‥‥それなのに、どうして落ちていた刀は鞘に収まったままだったんだ? 考えられるのは一つ。お前の加護、破壊による不意打ち。どうだ? 間違ってるか?」


不動は目を細め、口角を釣り上げる。


「クククッ、ご名答。そのままだ。ありゃあ楽な仕事だったぜ。手伝いに来た、っつったら余裕で騙せて後は背後から二撃で終わりさ。死ぬ直前のあの表情は傑作だったぜ」


翔は光希の刀を持つ手が震えている事に気づく。


(親友の仇が目の前にいるんだ、許せないだろうな)


「黙れよ」


光希の低く、重い声がその場に響く。


「あぁ?」


「僕はお前を許さない。だから‥‥殺す!!」


光希は翔がこの世界に来てから一番の殺気を撒き散らしながら、不動に向かって斬りかかる。大斧の持ち手と光希の刀がぶつかり合い、鍔迫り合いになる。


「いい殺気じゃねぇか。小僧もやれば出来るってか? おらっ」


「くっ‥‥」


不動は持つ手に力を入れ、光希を押し返した。光希は下がりながらすぐに態勢を立て直すと、脇構えを取る。それを見た不動は大斧を光希と同じ様に構えた。


「五行の構え、陽か? てめぇの技なんざ全部知ってんだよ」


刀と大斧、二つの間合いの差が光希を躊躇させていた。相対した二人は互いに睨み合い、静寂が続く。それを見て耐えかねた翔は一歩前に踏み出す。


「光希‥‥」


「翔、下がってて。これは‥‥僕の戦いだ」


光希は翔に一瞥もくれずに答える。だが、その背中からはその覚悟が伺えた。


(ここで、俺が手出しするのも野暮か)


「わかった」


多少なりとも光希の気持ちを理解した翔は手に持っていた刀を鞘に収め、傍観に徹する。


どれ程の間二人が相対してから経ったのか。翔がそんな事を考え始めた時、不動が動く。不動は構えていた大斧を投げ捨てる。


「こんなめんどくせぇのは止めだ。こっからは」


不動はバトルグローブを取り出し、手につける。バトルグローブとは、剣をも弾ける様に鉄を仕込まれたグローブで格闘家が剣士と戦う時などに用いられる。


「一方的な、拷問だ」


不動はそう言うと、光希の間合いに入り込む。


(不動の奴、どういうつもりだ?)


「 ”陽” 」


光希が横薙ぎを放つ直前、不動は刀の予測軌道に手を構える。


「なっ!?」


(そうか、刀を受け止めて破壊するつもりか)


何を感じたのか光希が攻撃を中断し、後ろに跳ぼうとするがすでに遅く、鳩尾を全力で殴られる。光希の体は数メートル飛び、背中から地面に落ちる。


「光希!!」


見ていられなくなった翔は光希の隣まで寄ると、抜刀して不動を威嚇する。


「おい、光希。しっかりしろ!!」


刀を持った手とは反対の手で乱暴気味に光希の体をさする。


「翔、心配しないで。僕は大丈夫だから」


光希はフラフラなのにも関わらず、刀を杖に無理矢理立ち上がる。慌てて止めようとする翔に黙って首を横に振ると、不動に向かって歩き出す。


「僕は‥‥負けらないから」


(‥‥止められねぇ)


改めて光希の覚悟の重さを知った翔はいつでも助けに行けるように刀を抜いたまま、光希の背中を見守る。


「光希、どうした? 俺を殺すんじゃなかったのか?」


光希は最高速度で不動の周りを旋回する。不動も光希の姿を捉えるのが限界だったのか、反撃する事はなかった。


(だが、それだと先にお前がバテちまうだろ)


「ケッ、ちょろちょろ逃げ回りやがって」


悪態を吐いた不動は一瞬、光希から目を離す。ほんの僅かな隙だった。だが、光希にはそれで十分だった。


「 ”水” 」


不動の体のど真ん中を狙った一撃。それが不動に届く寸前、光希は態勢を崩して地面に倒れ込む。光希は朱龍との戦いで限界まで力を使い果たしていた。


「マジか」


急に倒れた光希を助けようと翔が一歩を踏み出した瞬間、目の前に何者かが立ちはだかる。その風貌は美しい金髪に高身長、さらに腰には宝石などの装飾が施されたレイピアを差していた。服装などからも鑑みるに貴族であろう。


「何だ、お前」


貴族は想定外の展開に頭がついていかない翔の腹に力強いパンチを入れようとするが、翔の体に触れる寸前で避けられる。


「敵か」


翔は目の前の男を敵と判断すると、刀を正面に構える。不動が男の肩を掴むと翔に聞こえないように耳打ちをした。


「いいか。あいつは使えそうだ。ぜってえ殺すんじゃねぇぞ」


男はレイピアを抜くとその切っ先を翔に向ける。


「もちろんさ。優秀な駒をむざむざ捨てるほど、私は馬鹿じゃない」


「じゃあ、頑張れよ。俺はあいつを運んどくぜ」


不動は気絶している光希を肩に背負うと、そのまま王城に向かって歩き出す。


「おい、不動!! お前、光希に何するつもりだ!!」


翔は慌ててその後を追おうとするが、レイピアがその行先を阻む。男と目を合わせた翔は一度大きく後退し距離を取り、相手の間合いから出る。


「行かせると、思ったのか?」


男は翔と正門との間に立ち、道を完全に塞ぐ。


(チィ。こっちは満身創痍の上、こいつの加護について何一つわかってねぇ。なら、短期決戦だ!!)


「さぁ、まずはお互いに名乗ろうか」


「はっ? 何言ってんだ?」


男は露骨なため息と共に、首を横に振る。


「未来の部下の名前を知ろうとする事がそんなにおかしいか? まずは私からだな。私はカラスの部隊長の九条だ。九条隊長でいいぞ」


翔は自分を完全に部下扱いしている九条に腹を立て、斬りかかる。


(一度でも刀が触れ合えば、勝ちだ)


翔の刀を九条は避ける様子がなく、その場に悠々と佇んでいた。意味不明な相手の行動に戸惑うも、躊躇いなく刀を振り切る。が、刀を持つ手に手応えはなく、大きく空振った事に気づく。


(九条が、いない!? いつの間にいなくなった?)


翔は目線を走らせ九条を探すが見つからず、翔の中で恐怖心が生まれる。自分には見る事すら出来なかったスピード、それは光希の速さすらも上回っていた。


「随分とせっかちだな。君には特攻がいいか」


九条は翔の後ろに回り込んで、レイピアを弄って遊んでいた。


(加護か。ならリロード中の今なら‥‥)


「 ”集雷” 」


翔は左手に刀、右手に集雷を使い九条へ向かって走り出す。


「へぇー」


翔は九条が刀の届く範囲に入ると、すぐに首目掛けて刀を振るう。九条はそれを頭だけ下げる事で避ける。頭も下げる際に前に出た胴体、そこに向けて右手を突き出すが今度は胴体を下げられ躱される。


「 ”空舞” 」


九条は翔の連続攻撃をふわふわとした態勢で全て避け切ると、レイピアを翔の首に突きつける。首を取られた翔は抗う術がなく、刀を手放し両手を上に掲げた。


(こいつの加護は回避に関する何かだ。どうにか隙をつかねぇと‥‥)


九条は翔の降伏を信じたのかレイピアを鞘に収めた。今がまさにチャンスだ、そう思った翔は地面に両手を触れさせようとしゃがみ込む。


「 ”連舞” 」


九条がそう言ったと思った時にはその姿は消え、それと共に翔の体に無数の拳が打ち込まれる。

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