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森での死闘の時

藤堂らの連携攻撃に苦戦する光希は消耗戦に持ち込まれ、少しづつ体力を削られていた。藤堂らは数の利を活かした戦法を使い、無傷で確実に光希を弱らせる。


「 ”土爆” 」


「はぁ‥‥はぁ‥‥ふぅー、 ”水” !!」


逃げ道を塞がれていた光希は否応もなく土の球体を突きで破壊すると、球体が一気に弾け飛び、その勢いが光希を樹に叩きつける。


光希は背中を強打し、痛みのあまり全身から力が抜け、刀が手から滑り落ちる。


ここで死ぬのかな? 、光希の疲弊しきった心は悪い事ばかりを考えさせ、光希の戦う気力を奪う。


「貴方は随分と頑張りました。こんな無駄な事は止めにましょう」


「それって、僕に死ねって事かな?」


「そうです。ああ、答えなくていいですよ。貴方に拒否権はありません」


藤堂はナイフを取り出すと、一歩、二歩と光希に歩み寄る。光希は命の危機に瀕しているにも関わらず、まるで他人事かのように感じていた。


藤堂は光希の目の前まで行くと、ナイフを振り上げる。もういいか、と諦めた光希はゆっくりと目を閉じた。藤堂が突然、バックステップをすると直前までいた位置をナイフが回転しながら通り過ぎる。


「‥‥今度は貴方ですか」


藤堂は深いため息と共にナイフをしまうと、翔に向けて走り出す。


「面倒なので、一気に決めます」


翔は向かって来る藤堂には目もくれず、樹に寄りかかって朦朧としている光希を見た。


「おい、光希。お前こんな所で死ぬ気かよ‥‥てめぇの恩返しはこんな所で終わるのかって訊いてんだよ!!」


翔は光希へ激昂を飛ばす。翔の声で意識を取り戻した光希はすぐに刀を拾い立ち上がる。その様を見ていた翔は嬉しそうに笑う。


「敵から目を離すとは言語道断、死になさい」


(こいつの加護は拒絶。触れられるのはマズそうだ)


翔の目の前まで迫っていた藤堂は右手で翔に掌底をしようとするも、完全に見切られ軽く避けられる。翔は一度後ろに下がると、二人の山賊に目線を送る。


「光希、そっちの二人は任せた。速攻で終わらせて援護に来いよ」


翔からの命令に光希も嬉しそうに笑うと刀を構え、歩き出す。光希を仕留めようと手甲の着けた赤髪と土を操る加護所有者の二人も攻撃に転じる。


「貴方一人で、本気で殺り合うつもりですか?」


切れ気味の藤堂は目つきを鋭くして問う。


「まぁ、人手不足だからな。俺が相手をするしかないんだよ」


(最悪、光希が来るまで耐えれば勝ちだ。だが、光希も傷だらけだしな。決めれたら決めるか)


「そうですか。命は大切にするものですよ」


藤堂は何もない空気中で手を前に出し、何かを押すような動作をする。その動作が始まるより速く、翔はサイドステップを入れ藤堂の手の延長線上から外れると、隙だらけの藤堂との距離を詰める。


(今なら、イケる!!)


「 ”集雷”っ!!」


翔は即座に集雷を発動させると、藤堂の首元に狙いをつける。翔の攻撃を察知した藤堂は首を守るように右手で首を覆い尽くす。


「無駄だ」


翔は右手を突き破る勢いで指突を放つ。


「 ”絶雷” 」


翔の指が藤堂に触れるよりも速く、藤堂が技を使う。雷を纏った指が藤堂の手の平に触れると、一瞬で電気が霧散する。


「はっ?」


翔は殺し合いに似つかわしくない惚けた声を出す。それを見て薄ら笑みを浮かべる藤堂は翔の指を折る勢いで握りしめる。


(こいつ、今‥‥電気を拒絶しやがった。これじゃあ、俺の加護が役にたたねぇ)


クッと歯を食いしばった翔はすぐに切り替えると、藤堂の脇腹に横から強烈な蹴りを入れる。藤堂は注意のしていなかった攻撃に想像以上のダメージを受け、翔の指を掴む力を緩めてしまう。翔はすぐに藤堂の手を振り解くと、今度は正面から胸に蹴りをし、その反動で転がりながら後退する。


「切り替えが早いですね。それに蹴りの威力も高い、少しは楽しめそうです」


(チッ、蹴りも効いてなさそうだな。残る攻撃手段つったら)


翔は再び藤堂に迫ると腰の刀に手を伸ばす。藤堂が翔の狙いに気づいた時には、すでに刃が藤堂の目の前にあった。


「 ”拒物” 」


翔の刀は手をすり抜け、明後日の方向へと飛んでいく。突如、刀のなくなった手は大きく空振り、翔の隙を生む。


「惜しかったですね。もうす──」


「計算通りだよ!! ”集雷” 」


翔は刀を持っていた手に電気を集中させると、先程と同じ軌道で指突をする。


(これはさっきとは違う。今、奴はリロード中で技が使えない。俺の、勝ちだ)


目を見開く藤堂の首に翔の指が触れ、電流が一気に流れ込む。藤堂は体を大きく痙攣させ、目の焦点が合わなくなる。やった、と翔は完全に確信したが、電撃を喰らった藤堂はふらふらと後ろに数歩下がると、目に力が戻り、力強い目線を翔に送る。


「まじ‥‥か」


(直撃はしたはず‥‥って事は電撃を耐えたって事かよ。人間技じゃねぇな)


「今のは、頭にきましたよ」


藤堂の怒気に押された翔が二の足を踏んでいると、今度は藤堂から翔に近づいて来る。


(ヤバい。本当に打つ手なしだ)


あくまで藤堂の加護のみに注意を払っていた翔は藤堂の蹴りへの反応が遅れるも、左手を盾代わりにして体を守る。


「クッ‥‥」


翔は腕に走る激痛に堪えながら、藤堂と一度距離を取った。藤堂程の実力者が簡単に逃してくれるはずもなく、右ストレートをもろに受ける。よろめく翔はどうにか態勢を取り戻すと両手を前に出し、少しでも藤堂から離れた。


そこからは激しい肉弾戦が始まり‥‥と言っても翔がただ受け続けるだけの殴り合いだった。翔は拳を紙一重で避け続ける中で何度か殴られ怪我をしていた。


翔は藤堂の鋭い回し蹴りを体を低く落として躱すと、すぐに立ち上がり一回転した藤堂の裏拳を両手を交差させて受け止めると、藤堂は手を返して翔の手首を掴む。


(息をつく暇も与えないつもりか)


翔は藤堂を力強く睨みつけるが、そのせいで裏拳をした腕の影からの攻撃に反応出来なかった。藤堂は手の平を翔の腹に添えると、加護を発動させた。


強い衝撃波に翔の体は宙を舞い、背中から勢いよく地面に叩きつけられる。藤堂はウジ虫の様に這いつくばる翔を見下ろし、声を出しながら満足そうに笑い出す。


「少しは自分の身の丈を理解しましたか?」


藤堂の加護をまともに受けた翔はかなりの重症で、先程の様な藤堂の連撃を防ぐ余裕は残っていなかった。


(あれを使うか‥‥いや、今使っても意味がねぇ。今は少しでも時間を稼がないと)


「なぁ、お前さ」


翔はふらふらとよろめきながら、何とか立ち上がると、両手を下ろし、戦闘体勢を解く。


「今度は時間稼ぎですか? 下らないですね。貴方の仲間は来──」


「お前‥‥本当は、山賊じゃないだろ?」


藤堂は時間が止まったかの様に全く動かなくなる。翔は予想外の結果にかなり戸惑ったが、この隙を逃すわけもなく飛ばされた刀を拾いに行く。翔が刀を構えると、藤堂もゆっくりと動き始める。


「なぜ、そう思ったのですか?」


(意外と食いついてきたな。それにかなり動揺してたし、どういう事なんだ?)


「そもそもお前は言葉遣いが山賊らしくなかった。お前の喋り方は貴族とか王族とかのに近い、そんな口調を、普通の山賊が使うと思うか?」


藤堂は口を真一文字に結んだまま、翔の話を聞く。


「後は強さ、かな。それだけの強さがあればどこでも軍のそれなりの職に就けるはず。これだけじゃあ断定は出来なかったがな。そして最後の決め手となったのが、爪だ」


翔の口から出た普通すぎる言葉、それがこの場では違和感を感じさせた。


「爪ですか?」


藤堂は自身の爪を眺めながら呟く。


「裏毛の後に俺の手を掴んだ時、チラッとだがお前の爪が目に入ったんだ。随分と手入れの行き届いた爪だよな」


藤堂は手を額に当てて一息つくと、全力で殺気を飛ばす。翔は圧倒的な藤堂の殺気に体が強張る。


「まさか、そんな事からバレてしまうなんて。わざわざ説明してくれた事は感謝しますよ。ただ、ここからは全力で殺しに行きます」


藤堂は地面を蹴り飛ばし加速すると、その勢いのまま翔の体を蹴る。


「速っ!!」


強張る体を無理矢理動かし、後ろに跳び藤堂の蹴りの威力を軽減させると、宙で一回転してきれいに着地する。


(危なかった。光希に近いくらいの速さか)


藤堂は今度は両手を前に出す。


「なかなか、強かったですよ。 ”絶──」


「 ”陽” 」


藤堂が言霊を言い切るより速く、光希の薙ぎ払いが放たれる。藤堂は止むを得ず技を中断し、体を曲げて光希の刀を避けると、光希から三歩程離れた。


「翔、待たせたね」


「ったく、遅すぎだ」


藤堂を二人で挟む形を取ると、じわじわと距離を詰める。


(光希と俺で二体一だ。これならどうにか──)


「勝てる、とでも思いですか?」


藤堂は余裕のある表情を崩さない。


「うん、僕と翔ならいけると思うよ」


光希は飛天を、翔は麒麟を構え二方向から攻める。藤堂は横に逃げる事で二人を同時に視界に捉え、右手を前に出し光希へと照準を合わせる。


光希は藤堂の右手に力が込められるのを視認すると横に跳び、それを避ける。その間に、翔は藤堂の間合いに入ると片手に持った刀で胸元へと突きを繰り出す。藤堂の振り下ろした拳が刀の軌道を大きくずらし、突きは大きく空振りをする。


(チッ、峰を殴って刀を逸らしやがった)


翔は光希が刀を構えているのを見ると、刀を持った手で死角になっている場所で、集雷を用意する。


「 ”陰” 」


光希の乱れ斬りを藤堂は完全に見切り、紙一重の差で避け切る。藤堂は技を放ち終わった光希の腹を蹴り飛ばす。


「今だ!!」


光希が表情を歪めながら、翔へと合図を送る。翔はすぐさま藤堂の脇へと指を動かす。


その指が藤堂の脇に触れる事はなく、背中を通した右手で防がれる。翔は指から電気が消えた事に気がつくと、その場から即座に飛び退く。


(最初の衝撃波からそんなに時間は経っていない。‥‥って事は、最初のは演技か)


「今度は硬直しませんでしたね」


「あぁ、流石に二回目だからな」


どうしようか、と翔が考えていると光希が翔の横に並んで来る。


「三つ目の技を使おう」


光希は藤堂に聞こえないよう翔の耳元で小声で囁く。


「あれか。確かに、決まれば勝てそうだ」


(やはりあれか。幾度となくその考えには至ったけど、失敗すれば後がない。だが、このままじゃジリ貧だ。なら‥‥)


「今頃作戦会議とは」


呆れ顔でため息をつく藤堂。覚悟を決めた翔は光希と目を合わせ小さく頷くと光希は藤堂へ向かって走り出す。翔はその場に立ち尽くしたままタイミングを待つ。


「ただの特攻ですか? つまらないですね」


光希は藤堂とあと二メートルと言った所で大きく跳躍すると、光希は優に藤堂より上まで跳び、言霊を叫ぶ。


「 ”天” っ!!」


藤堂は両手を光希に向け、つまらなそうな顔をする。


「空中では逃げれませんよ。 拒──」


「お前がな!! ”極雷” 」


後ろで見守っていた翔は両手を地面に力強く置くと、地面に全力で電気を流し込む。一瞬で地面を伝った電気が藤堂へと届き、体の自由を奪う。


「なっ、に!?」


体が麻痺して動けなくなった藤堂に光希の刀が振り下ろされる。ゴリッ、と骨が断ち切れる鈍い音が響くと、藤堂の左腕が宙を舞う。左肩の切り口からは噴水の様に血が噴き出で土を赤く染めた。


藤堂が次の行動に移ろうとした時には、目の前に光希の刀が突きつけられていた。敗北を悟った藤堂はその場に仰向けに倒れ、全身から力を抜く。


「ここまで、ですか」


藤堂の表情は決して安らかなものではなく、苦痛に顔を歪めていた。翔は藤堂を見下ろす光希の隣まで歩く。


「最後に、聞かせろ。お前が何者なのかを」


「翔、こいつは山賊じゃないの?」


「あぁ」


藤堂は顔だけ動かし、翔を見る。


「いいですよ。死ぬ前に黒神帝国への復讐としましょうか」


藤堂は遠い目つきで空を見上げる。


「わたしは、カラスのトップでした。光希、貴方達が裏切るまではですが」


「青葉王国国王暗殺任務の事かな?」


光希と慶次が青葉王国に亡命するきっかけとなった任務。


「えぇ。あの時、最年少部隊長として陽動隊の指揮を執っていたわたしは、陽動隊の全隊員と共に七雄の四人に囲まれました。その場にいた隊員ではとても対処出来ず、たちまち数が減っていきましたよ。最後まで立っていたのは、わたし一人と、七雄の二人でした」


「残っていた力を振り絞り、その場は逃げ切りましたが、部隊は全滅。作戦も失敗。確かに七雄を二人殺しましたが烏の大半の隊員を犠牲にした、圧倒的損失です。処分として軍からの脱退を命じられ、その後は非黒神帝国の人間として山賊のふりをして密かに与えられる仕事をこなしていました。そして、三日前、光希、扇華の両名の抹殺を命じられました」


(どこかから情報が漏れてる?)


血を流しすぎたのか藤堂の顔色が次第に青白くなる。


「なぜ、なの? それだけの実力があれば逃げる事だってできたんじゃないの!?」


藤堂は力なく笑うと、目から涙を流す。


「無理ですよ。逃げたら、両親が殺されますから」


その言葉を聞いた翔の中で怒りが生まれる。


(やり方が、汚ねぇ。光希の話と言い、黒神帝国ってのはとことん腐ってんな)


「さぁ、トドメを刺してください。もう‥‥疲れました」


光希は歯切りをして怒りを露わにすると、ゆっくりと刀を持ち上げる。


「何か、言い残す事はあるかな?」


「いいえ、ありません」


「そう、か」


光希は静かに刀を振り下ろす。


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