1 ― 16 不思議な出来事
なぜかお爺様と契約(?)を交わした僕は、どうすればいいか分からずにあたふたしていた。そこに、お爺様から声が掛かる。
「……ん。主よ、儂はそろそろ帰らねばならないようだ」
「時間ですか?」
「そうじゃ」
頷くお爺様。確かに、予定より長い時間召喚している。そろそろ僕のマナが尽きかけている。あれだけあったのに、どれだけ使ったんだろう。
……って、僕自身のマナがどれだけあるか把握していないというのがある。
一番最初に僕がこの世界に来て、何も分からないときにお母様が僕の正体を見破るときに使った【探知】の魔法を使ったのがきっかけで、この世界に魔法があることが分かった。それ以降は何も知識が無い状態で過ごしていた。
それでも、なぜかさっき使った、いや、使えた魔法。それが【冥府から続く扉】だった。
この前、もしかしてと思ってやってみた【ステータス】だけど、あの時は150もなかったのに、なんで今こんなに使えてるんだろう?
不思議に思って、呟いてみる。
「【ステータス】」
《ステータス一覧》
・名前 : サキ・アメリア・アテナ・オリヴィア
・種族 : ハーフエルフ
・性別 : 女性
・職業 : 神の子
・レベル: 8
・年齢 : 6歳
・HP : 146 (+49) / 146 (+49)
・MP : 169 (+39) / 169 (+39)
・ATK : 24
・DFE : 45
・STR : 39
・DEX : 35
・INT : 68
・LUK : 45
→ 詳細ステータスを表示
何もしていないのに、ただこれからどうなるのだろうかと絶望していただけなのに、ステータスが上がっていた。
「あれ……。なんでステータスが上がってるんだろう?」
ついつい、呟いていた。
『それは、あなたが前へ向かおうとする意志によって導かれます。神の子、サキ・アメリア・アテナ・オリヴィア』
この場の全員に聞こえるような、暖かくて、優しさを持つ、高くて綺麗な女性の声が、ふとしたときに聞こえた。まるで天空から声が降り注ぐような、そんな感じに。
「「「……!」」」
はっとしたかのように、お母様、お爺様、シーラさんが天に向けて敬礼をする。
「?????」
そんな中、僕は一人立ち竦む。
「なぜその名を……」
『ほっほっほ。なぜか? それは私が、お主のことを識っているからよ』
「識っている?」
すると、今僕たちが居るところから少し離れた場所に魔法陣が下から現れて、純白の輝きを放ち始める。人が一人通れるような高さまで伸びて、一つのドアが現れる。このドアの色は白く、一般的な顔の高さにワンポイントの模様のような物がある。何か見覚えがあるような……。
ドアが開かれる。ドアから出てきた人が一歩を踏み出すと、そこには女性が居た。青い髪の毛に青と白の星印の髪飾り、白を基調とした服にところどころ青の刺繍が施されている。
「「「貴女様は……!」」」
僕を除いた皆さんが跪いている。え? これは僕も跪いた方がいいのかな?
「あなたは立ったままでいいのですよ、サキ・アメリア・アテナ・オリヴィア」
まるで思考を読んだかのような反応をする。
「長いから省略するね。サキにはこの姿を見せるのは初めてか。こっちの姿の方が見覚えがあるはずだから、ちょっと待っててね」
そういうと彼女全体が白い光に包まれる。すると、僕から見てなじみのある姿が見えた。
「あれ……!?」
その姿とは、僕が前の世界で、踏切で立ち往生していたあのおばあさんだった。
「ほっほっほ。元気にしとったかのう?」
「えぇ、まぁ、はい」
元気にしていたと聞かれれば、元気にしていたとは言えないけど、元気にしていた、のかな? ただ、その期間が長かっただけで、今は踏ん切りが付いたというか、今を大事にしようとしているけど。
「何やら苦労があったようじゃの」
「えぇ、まぁ、はい」
そう言って僕は頷く。自分の身体の変化についていけなくて、呆然としていたから……。
「ほっほっほ。ならそれは良かったわい」
おばあさんの身体全体が白い光に包まれる。あ、さっきの女性の姿に戻った。どうやら不思議な力を持っている、らしい。
「じゃああなたが、あの空間で言っていたクラリス・ガーネットさん?」
「えぇ、そうよ」
僕がそう訊いて、彼女が頷く。
「あの世界はすごいわね。ここの世界とは大違い。まさか、魔法がない世界だとは思わなかったけど。カガクだっけ? あの世界の人間は、魔法にも劣らない素晴らしい力を持っているなんて。羨ましいわ」
「そ、そんなことは……」
これは、褒められているのかな? なんだか恥ずかしい。
「あの時助けてくれて本当によかったわ。あの世界の中で死んだら、文字通り死ぬのよ。もうあの世界には行けなくなるからね。その代わり、あなたを巻き込んでしまった。ごめんなさい」
そう言うとクラリスさんは頭を下げる。
「「「……っ!」」」
お母様、シーラさん、お爺様がハッとするのが分かる。
「い、いえ。そんな、頭を上げてください! ただ、僕は困ってる人を放っておけなくて。それだけのことです」
「ありがとう。そう言ってくれるなら助かるわ」
クラリスさんは元の姿勢に戻る。そして手を握られる。
「意外と小さい手ね」
「はい。僕自身もそう思っています」
今まで持ててた物が持てなくなった事が多かったから。えんぴつとか。
「では、これからのことを考えて、この世界でやって行けるように加護を与えます」
「えっ?」
何やら貰っちゃっていいのか不安になってくる言葉を聞いたような気がする。それってつまり、神の加護を授与するということ?
あたふたしていると、握られている手から、僕の身体の周りに緑・赤・茶・黄・青・黒・白の色をした小さい球が回り始めた。球のサイズは、野球ボールくらいの大きさくらいあるかな。
「それぞれ、この世界に於いて重要な属性を顕しています」
「今僕を中心として、回っている物がそうなんですか?」
「えぇ、そうよ。それぞれに特徴があるから、各々に訊いてね」
「教えて頂けないのですか?」
「その子たちは、話せるからね」
「え?」
クラリスさんは一歩下がる。それが合図だったのか、僕の周りを回っていた7個の球が僕の目線の先に集まる。すると、それぞれが光だした。そこには、小さな妖精みたいなものが姿を現していた。
『緑を司るリンです』
『赤を司るカレンです』
『茶を司るラウンと申します』
『黄を司るイロだよ』
『青を司るルフだ』
『黒を司るローラだよ』
『白を司るロートですぅ』
『『『よろしくお願いします!』』』
「伝説の存在が、こうもあっさり揃うなんて……」
お母様が何か呟いていたけど、あまりにも衝撃的過ぎて聞き取れなかった。
「ふふっ。これなら大丈夫そうね〜」
「もう何が何ならわからなくなってきました」
「わからないことはその子たちに訊いてね」
こうも、非現実的な光景が繰り広げられると、放心状態になるものなのね。そういう僕は、もう何もわからずに、ただただ呆然としていた。
さらにそこに追い討ちがかかるかのように、クラリスさんが何か思い付いたのように声を上げる。
「あっ、そういえば。これを渡しておくね〜。サキの世界では馴染みのある物よ〜。ちょっと待っててね」
「馴染みのある物?」
馴染みのある物って、なんだろう。いろいろありすぎて余計わからなくなった。
クラリスさんは、もったいぶったように言うと、手を前に伸ばして手をかざして手のひらを返す。そこには、確かに前世で馴染みのある物が現れた。
「スマートフォン……」
なぜこの世界に前世の科学の結晶が……。
「クラリス様。こちらの物は一体何なのでしょうか?」
興味に駆られたのか、お母様が尋ねる。
「これはね。サキが居た世界の便利グッズよ」
「便利グッズ、ですか?」
「なんでスマートフォンがあるんですか。しかもこれ……」
「あ、気付いた?」
クラリスさん、なんだかすごいワクワクしている、ように見えるのは、気のせいだと思いたい。
「これ、僕が使っていたものじゃないですか。なんでこれ持ってるんですか。しかもデータそのままですし。古い機種だったはずなのに機種新しくなってる。いつの間に」
「助けてくれたお礼よ」
「いろいろ言いたいことはありますが、そう言われてしまうと何も言い返せないですね……」
ジト目でクラリスさんを見る僕。
「というかこれ使えるんですか? ここって電気も無ければ電波飛んでないですよね」
「そこはもちろん大丈夫よ。この世界でも使えるように調整してあるし」
なぜそこまでして……。
「正直に言うと、あの世界は居心地がいいからね。特に、サキには返しきれない恩をもらっているからね。サキには優遇したくなるものよ」
「まるで海外の人みたいな反応ですね」
「文字通り、住む世界が違うからね」
「あはは」
ツッコめない!
──スッ
シーラさんからお茶を差し出された。ありがとう、シーラさん。シーラさんは僕の救世主です
【初版】 2017/12/01 08:03
なんだか色々と混ざっているような気がします。ナンテコッタイ
【追記】 2018/06/18 01:34
emダッシュ記号(―)で書いていたつもりが長音符(ー)となっていた為に、emダッシュ記号(―)に差し替えました。