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なんで僕がこんなところに!?  作者: 対子落とし
【第 1章】目覚めた先
13/22

1 ― 11 食事の後で

本当にお母様はなんでも出来るようで、僕は驚いている。


「あれ? 『お母様はなんでそんなに出来るの』って顔をしてるわね?」


 あはは。バレていましたか。さすがお母様。


「そうねぇ。この話をすることになると、まず私の生い立ちを話さなければいけないわね」


「え? と、言いますと?」


「ズバリ! 私はね、ごくごく普通の平民だったのよ?」


「……え? えぇー!?」


 えっ!? なんで!? どういうこと!?


 僕は心底驚いていた。驚愕の事実。


「ちょっと長くなるから、覚悟してね?」


「はい、お母様」




   ☆ ✭ ☆ ✭ ☆ ✭




「そうねぇ。あれはまだ私が小さい頃だったかしら。両親と当時の皇后陛下と仲が良くてね、王族と平民という枠を超えた繋がりを持っていたのよ」


「素晴らしいじゃないですか……」


「えぇ、とても素晴らしくて、今後ともこの繋がりを絶やしてはいけないと思っているわ。その時はサキの出番だけどね?」


「はい。その時が来たらまたお伝え下さい」


「その意気やよし」


 お母様から頭を撫でられる。気持ちいい……。


 って、そうじゃなくて。


「それでね、当時可愛がられていた私に、皇后陛下から『うちの養女にならないか』とお誘いがあったのよ。その話を両親は快諾してね。そこから私の生活は一変したの。それが私がまだ6つのころだった話ね」


「随分と幼い頃に養女に入られたんですね」


「えぇ。それでも遅い方だったけどね」


「遅い方?」


「過去の記録によると、それこそ産まれたばかりに、という例もあるみたいよ」


「なるほど……」




 この世界には何か事情がありそうだ、とこの時僕はそう思った。




「養女として王族へ引き取られた私は、それこそ厳しくても楽しい日々を過ごしたわ。そりゃあ私だって子どもだもの。しょっちゅうケガをしたり、物を壊したり、食器を割ったり、すごい顔で叱られたり。習い事をしたり。礼儀作法を教わったり。いろいろなことがあったわ」


「いい方だったんですね……。今は会うことが出来るんですか?」


 僕のこの問いに対して、お母様は首を横に振った。


「いいえ。もう会えないわ。今から3年前に亡くなったわ」


「……。……ごめんなさい。嫌なことを聞いてしまいました」


「そんな、いいのよ。いつかはやってくることなのだから」


 何かを懐かしむ表情をしながら、お母様は窓越しに遠くを見ていた気がした。


「今となってはどれもこれもいい思い出よ」


 お母様は、スッキリとした顔で僕を励まそうと明るく振る舞っていた。


「ささっ、湿っぽい話はもう終わり! これから忙しくなるわよー! サキ、頑張ってね!」


 何かをまくし立てるように部屋から出ていった。部屋を出る際に、お母様から発せられたかすかな声を、僕は聞き逃さなかった。


「おじさま。おばさま。もう1度会いたいよ……」と。


【初版】 2016/08/02 21:08

 帰りの電車内で書き上げた物です。何かおかしい箇所があればご連絡下さい。と言っても、おかしいところだらけっぽいですが……。


【追記】 2018/06/18 01:34

 emダッシュ記号(―)で書いていたつもりが長音符(ー)となっていた為に、emダッシュ記号(―)に差し替えました。

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