人を愛すると言う事
人々の様々な恋愛の形が有りますが、人間として、
こうありたい、と、思う一人の人間模様を描いてみました。
人は誰でも人を好きになります。
人それぞれに、愛し方が違います。
でも、必ず相手がいるし、相手にも感情があるのです。それを無視することは出来ません。
この小説が、一つの愛の形として
受け止めて頂けたらと思います。
第1章 中学時代
勝には、好きな人がいます。
中学3年間、同じクラスで、隣の席の晶が、気のなって仕方ありませんでした。
美人で可愛いが、多少気が強く、おとなしい勝には、憧れでもありました。
常に妄想を膨らませて、将来は、友達から、親友、
恋人、そして結婚、また2人の子供、夢は限りない。でも、何も進まない。
隣同志での、何気ない会話が唯一の楽しみでした。
また、年に一度だけ、年賀状を書いて、その返事の年賀状を、机に飾って眺めているのが楽しみでした。年賀状も3枚になりましたが、何も進展しないまま、卒業が間近に迫っていました。でも、
おとなしい勝には、告白など出来るはずなどありませんでした。何も出来ないまま、晶は名門女子校へ行ってしまいました。
第2章高校時代1
もう、会えない悲しみが、勝のイライラが頂点に達した時、勝にも信じられない過激な手紙を書いていました。その内容の一部が
『君の為なら、死ねる』それくらい晶を愛していた。手紙を出してから、一週間後に返事がきた。
手紙の中身は、『これからも、よい友達でいましょう』的な内容でした。また、『一度、家へ遊びに来ませんか』とも書いてありました。
晶の本意など解らず、次の日曜日に晶の家へ出かけた。
家のブザーを押すと、晶が笑顔で『いらっしゃい、どうぞ』と、言ったが、家には晶しかいないらしく、為らったが、次はないと思い、『失礼します』と、言って上がった。
彼女は笑顔で迎えてくれたが、晶の顔を見たら何も話せなくなってしまった。沈黙の時間だけが過ぎて行く。しかし、勝には、一緒にいるだけで幸せだった。彼女も気を使って、慣れない手つきでリンゴを剥いてくれた。晶には、勝の知らない一面があることを知った。
電話は、父の会社の直通の電話だけ?
テレビは、NHKの『ひょこりひょうたん島』がかかっていた。NHKしか見ない家族?
勝には、全然違う生活習慣に驚いた。
そんな事を考えているうちに、母親が買い物から帰ってきた。母親も笑顔で『いらっしゃい』と、優しく言ってくれた。
どうやら、手紙の事は知っているらしい。と、直感した。恥ずかしくなって、挨拶だけ済ませて帰った。帰ってから、彼女が誰もいない所へ上げて叱られなかったか、心配になった。
でも、一緒にいられた幸せが、他の事は気にしなくなってしまった。
その事が、勝をどん底へ引きずり込もうとは、知るよしもなかった。
第3章高校時代2
晶の本意などお構い無しに、勝は、名門女子高の
文化祭に出かけて行った。
晶が、書道部に在籍しているのを聞いていたので、
探していると、勝に気がついて笑顔で接してくれた。また、学校内を案内してくれた。その一部屋で
映画を上映していた。中に入れると少し混んでいた。薄暗く回りはカップルばかりだった。
女子高だからか、ロミオとジュリエットを上映していた。混んでいたせいか、晶の腕が勝の腕に触れ合って、凄く興奮してしまった。映画どころではなかった。
一瞬、手を握りたい願望が頭を過った。
『握りたい、握りたい』『今だ、頑張れ』
もう一人の自分がハッパをかけてきて、頭に血が上ってしまった。
『よし、やるぞ』と、思った瞬間、教室が明るいなった。映画が終わってしまったのだ。顔が赤くなっているのがわかったので恥ずかしかった。
でも、一緒にいられただけで幸せでした、
あの言葉を、言われるまでは!
夕方になり、帰ろうとした別れ際に一言、
『もう、いいでしょう』
と、勝は一瞬、何がどういう事なのか解らなかった。でも、晶が勝に好意を持っていなかった事だけは理解出来た。ショックだった。
勝がしてきた事は、一つ間違えば
ストーカーではなかったかと!でも、勝は学んだ、人を愛することの難しさを。
好きになっても相手が好きになってくれるとは限らない。晶がとった行動は、親友として最高のもてなしをしてくれた、大人の対応ではなかったかと!
勝は、今でも、いや一生好きな気持ちは変わらないでしょう。でも、一つだけ変わった。
晶に、つきまとわない事が、晶の幸せであり、
晶の幸せが、勝の幸せである事を。
遠くから見守る事が、勝の幸せである事を感じた。
でも、分かっていても、失恋を受け入れるには、
時間をかかった。
第4章社会人
あれから8年が過ぎた。勝も、それなりに恋愛をしてきた。
年上に憧れて付き合ってみたり、綺麗な人を見ると、ときめいたり、お見合いもしてみた。
何となく気が合う女性と結婚し、子供も2人 授かった。それなりに幸せでした。そんな時、中学生の卒業名簿が届いた。
みんな何をしているのかなあ、と、興味本位で申し込みをしたのを忘れていた。
何気なく見ていると、晶の名前に目を止まった。
結婚していた。住所も北海道になっていた。何故か、また、晶の事が気になりだした。
勝は、家の家業を継いで、小売店を経営しているため、自由な時間をがあまりとれないが、バブル時代のせいか、金には不自由しなかったので、興信所に頼んで調べてもらった。
父親は大木優、母親は晶、子供は晶子、父親は銀行員でした。バブル時代は銀行員はな生活で、かなり遊んでいるようですが、幸せに生活をしているようなので、安心した。
今では、晶の幸せが、勝の幸せに感じられるようになりかけていたから。
第4章社会人(出合い)
それから、また、18年が過ぎた。
バブル時代も終わり、世の中が不景気になっていた。
しかし、勝はおとなしかったせいか、投資などせず、バブルの乗り遅れたせいか、逆に借金などなく、今では、5店の大手コンビニエンスストアーを経営するオ―ナ―になっていた。
そんなある日、店を回っていると、一人の女子大生が面接に来ていました。茶髪、厚化粧、爪にはネイル、ちょっと不良っぼい、派手な身なりをしていました。店長から『どうしますか?』と、相談を受けた時、何となく晶に似ていたため、『試用期間で採用してみたら』と、言ってしまった。あれほど厳格に採用するように言っていたのに。
仕方なく、時間を見ては彼女の指導を始めた。
名字も、大木と同じだったせいかもしれないが、
『晶は北海道だし!』と、あまり気にしなかった。
最初は、不良っぼく取っつきにくかったが、客に対しての接客は、丁寧だった。次第に打ち解けるようになると、家庭の事を打ち明けだした。
父親の仕事が上手くいかず、何か
と母親に当たるため、耐えられず、大学の寮へ逃げてしまった。家には帰りたくないので、大学を卒業したら、就職して、一人住まいをする予定だそうです。でも、
母親とは連絡を取っているようです。
勝も今では、2人の子供の父親ですから、
彼女の父親が、心配でたまらない事、彼女を小さな頃から、大事に育ててくれたから、今の君がいる事、などを話しているうちに、少しではあるが、父親への考えが変わったように思えた。
そんなある時、店長から、彼女が無断欠勤を、していると、連絡してきた。電話しても連絡がとれないとのことでした。勝が電話してもなかなかでなかったが、何とか連絡が取れ会う事が出来た。
彼女には憧れの先輩がいるけれど、先輩には、好きな人がいて、付き合い始めたらしい事が分かり
落ち込んでいた事が分かった。勝には、まともなアドレスなど出来ないが、
『今の気持ちを素直に、告白してみたら?』
『そして、辛い結果になるかもしれないが、ケジメをつけた方が、いいと思うけど!』
勝も昔、失恋した時の事を話し始めた。
立ち直るまでに、何年もかかった事。
でも、彼女の幸せが、勝の幸せであり、
彼女の笑顔が、勝の幸せであり、
彼女の不幸が、勝の不幸であり、
彼女の嫌がる事、勝には耐えらない。
数十年経った今でも愛しているが、心の奥に閉じ込めて、彼女の幸せを願っていることを。
君には、今は理解できないと思うけど、君はまだ若い、これから新しい恋の訪れが、沢山あるのだから。
第6章再会
少し経ってから、店長から連絡 があって、また、
真面目にバイトに来るようになったらしい。
勢いで昔の事を話してしまったため、照れくさくなって、店へは行かなくなった。
それから、彼女が卒業してバイトも辞めて、一週間が経った頃、店長からオ―ナ―にお客様が来ていると、連絡があり、店へ行って見ると、
中年のスタイルの良い、綺麗な女性が待っていました。何となく懐かしさを感じた。
晶だ!何故、晶が目の前に。
呆然として、言葉のでない勝に、晶から、
『久しぶり、娘がお世話になりました。』
その言葉で理解出来た。バイトの彼女は、晶の娘だったのだ。名字しか知らず、履歴書を見なかった勝は彼女に昔の事を話してしまった。
彼女は、母親の晶に、『バイト先のオ―ナ―にアドバイスしてもらったから、お礼して。』と、言われたらしい。
彼女から、恋愛の話を聞いて『もしや、勝では、』
と、思ったそうだ。
父親は、バブルが弾けて、銀行員には辛い締め付けがあって、何かと晶に当たっていたらしい。でも、
今では反省しているとの事。また、娘も父親との
わだかまりもとけ、自宅から、会社へ通っているとの事。そして、最後まで晶から、
『ありがとう、これからも親友ダヨ』と、言ってくれた。
これが、何年も探し求めていた、
勝の最高の幸せの瞬間でした。
人、それぞれに愛の形はあるが、
必ず、相手にも感情があります。
それを無視するのは、本当の愛ではないと思う。
好きになった人が幸せに成る事が、本当に、自分が本気で好きになった証ではないでしょうか。
私達は日本人です。相手を思いやる気持
忘れないで欲しい。