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アルファ国王と勇者トルテ

 アルファ国にはいくつもの街道があり、それらがたくさんの国々へとつながっている。大陸を行く旅人は目的地に向かう前にアルファ国で準備するのが常だ。そのためかこの国は“はじまりの国”と呼ばれている。

 はじまりの国には他の国と同じく王制がある。この国の王はやり手で交通の良い地の利を利用し多大な利益を得ていた。そして、この王も他の王と同様、勇者を認定し自らの利益のため魔族と戦わせているのであった。


「勇者トルテ、西の塔攻略は進んでいるのか。」


 王座に座り、体重を肘掛にあずけながらアルファ国王は眼前に触れ伏す青年に向かい、まるで責めるかのように話しかけた。白髪の混じったヒゲを伸ばし、痩せた老人の目をちばらせた出で立ちはどこか狂人の様な雰囲気さえ漂わせている。


「申し訳ございません。まだ途中までです。」


 トルテといわれた青年は頭を下げたまま微動だにせずアルファ国王の問いかけに答えた。この青年もアルファ国王が勇者として魔族と戦わせるために雇っている数あるものの一人だ。


「ちょっと早くしないと他の国の勇者に手柄とられちゃうよ。魔王を倒した王としてわしの名前をのこしたいんだからさー。」

「はっ!その代わりと言ってはなんですがジュエルムジナが巣食うほこらをみつけました。」

「おおお!おっととゴホン。そうかごくろうじゃ勇者。おぬしに、そこのほこらの魔物まで退治させるのはしのびない。わしの近衛兵をかわりによこそう。」


 ジュエルムジナとは魔物の一種ではあるが非常に貧弱な害の低いものだ。しかしその牙は宝飾品の素材として重宝され、高値で取引される。数の少ないジュエルムジナの加工品は王族ですら中々手に入らない貴重なものである。この有益な情報を得た王は途端に機嫌を直し、にやりと笑った。


「はっ」


 青年にとって王の反応は想定内であったのであろう。驚きもせず返事を重ねた。


「そうそう、おぬしに仲間をひとり見つけておいたぞ。しかも後衛じゃ感謝せよ。」

「はは!ありがとうございます。」

「書記官!いまの事を記録しておくように!」


 王は隣で侍る書記官に今までのやり取りを書きとめるように促した。


「はっ!○年×月 王様、勇者をねぎらい、その背中を守る仲間を見つけ出された。また世界の平和のため自ら魔物の退治を行うと宣言されました!」

「うむ。」


 書記官が期待通りの記録をとると王はにんまりと満足そうにうなづいた。


(俗物が。)


 勇者トルテは頭を下げながらも口の中でつぶやいたのであった


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