プロローグ
筆者がSS作品としてある掲示板に載せた物語です。小説として書き直していますが元々SSのために作られたものであり足りない部分があると思います。元のSSを読んだ方もいるかもしれませんが、小説版は小説版として読んでくだされば幸いです。
長い回廊を抜けた先にある玉座の間では今まさに勇者と魔王の決着がつかんとしていた。
「ふふっここまでだな、魔王よ。」
「ぬぅう、たかが人間にここまで追い詰められるとは…。油断したわ…。」
形勢は明らかに勇者に傾いていた。魔王の腕からは血がしたたり落ち深紅の絨毯を青く染め上げていた。
「最後にお前の泣き言が聞けてうれしいよ。じゃあな。」
勇者エクスは魔王にとどめを刺さんとゆっくりと歩み寄り、大きな動作で剣を振り上げた。
「しかし勇者エクスよ、こんな呪文もある。」
勇者がとどめの剣を振り落そうとする瞬間であった。そういうと魔王は小さな呪文を唱えた。
ピカーーーーー!!
魔王の手から白い光がこぼれだす。
「な、なにをした!」
「お前は強い。さすがの余も今のお前には勝てぬ、今のお前にはな。」
白い光はどんどんとその光量を増していき、二人を包み込んでいく。
「ならばお前から‘今のお前’を奪うまでのこと…。」
「きさまあああああ!!」
光はさらに明るさを増し、二人の姿が視認できぬほど、あたりはその輪郭を徐々に失っていった。
(お前から次に奪うのはお前の命だ。それまでその姿になった自分の運命を呪うがいい。)
朦朧とする意識の中、魔王のその言葉だけがくっきり耳に残っていた。