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6話:オーナー、登場

 今日はル・スリーはお休みです。

 皆さんの怪我の手当てが最優先ですからね!!



 「おい、誰のせいでこうなったと思っている」

 


 桑原さんの背中に湿布を貼りながら、にこにこと答えた。



 「それはもちろん……」

 「あなたのせいですね。川野 藍さん」



 そっと佐藤さんに目を向けると、体中が凍りついた。

 佐藤さんが……笑っています! 怒られるよりも怖いです。



 「うーん、女の子があそこまで怖いとはね……」

 「うぅ……僕はトラウマになりそうだなぁー」

 「俺達って結構モテたんだね! ちょっとうれしい」



 3人が口を揃えて言うたびに、私は端っこに縮こまってしまう。

 皆さん、無事でなによりです……。



 「痛っ! もうちょっと優しくできねーのかよ!!」

 「す、すみません」



 そろーっと消毒液を桑原さんの膝につけたとき。

 からんからんとドアが開く音がする。



 「僕たち、こんな恰好じゃ出れないから……藍ちゃん、出てくれるかな?」

 「は、はい」



 片桐さんがにっこり微笑みながら、そう言った。

 やっぱり優しいですねー、片桐さんは。

 そう思いながら、店先に出ていく。



 「申し訳ありません。当店は本日、休業でありまして……」

 「オーナー!?」



 後ろから駆君の声が響いた。

 え? オーナー!?



 「どーも! 遊びにきちゃった」



 ぺろっと舌を出す男性。この人がオーナーなんて……びっくりです。

 金髪に染め上げた髪は私より長くて、耳にはたくさんのピアス。整った顔立ちをしていますが……凄くチャラそうです。



 「兄さん!」



 え? 兄さん? 振り向くと、今度は佐藤さんの姿。目を見開いて、口をぱくぱくしている佐藤さんはいつもの佐藤さんらしくない。



 「え? オーナー? それに……佐藤さんのお兄さん!? ええー!?」

 「どーも、かわいこちゃん」



 オーナーと呼ばれたその人はぱちっと上手なウインクをしてみせた。




----------

-----




 「どーも。オーナーで孝太クンの兄の佐藤 透馬でーす! 趣味は……ビリヤードかな?」



 いやいやいや。これが佐藤さんのお兄さんですか!?

 ちょっと意外です。いや、かなり意外です。



 「兄さんは相変わらずですね。で、今日は何の用ですか?」

 「うっわー、孝太クンも相変わらずまっじめー」

 「何の用ですかって聞いているのですが」



 だんだんと佐藤さんの声に苛立ちが見えてくる。

 佐藤兄はそれにおかまいなしに話を進める。



 「えっとー今日来たのは、藍にゃんの事なんだー!」

 「あ、藍にゃん……」

 「うんっ。えーっと、藍にゃん。ここでのバイト……辞めてくれないかな?」



 にこにこと笑顔を絶やさず佐藤兄は言うが、口調は真剣そのものだった。

 冗談……じゃないみたいですね。



 「えっと、何故……ですか?」

 「うーん、邪魔だからっ」



 はっきり言うところと怖いところは佐藤さんに似ていますね。

 そんな佐藤兄の言葉を片桐さんが遮った。



 「オーナー。意味もなくこの子を辞めさせるのは無理があると思うんだけど」

 「俺もさんせーい」



 片桐さんに続いて、駆君が続けて口を開く。

 皆さん! そんな風に言っていただけると、嬉しいです!!

 感激で目を潤ましていると、佐藤兄は目を細めた。



 「もちろんっ。意味はちゃんとあるよ! 実はね、ル・スリーの売り上げの伸びがよくないんだ……。原因を調べてみたら……藍にゃんでしたっ!」

 


 軽い口調の佐藤兄だが、声色は恐ろしく冷たかった。

 すると、桑原さんがいぶかしげに尋ねた。



 「どういうことだよ」

 「えっと、苦情がきてるのっ! なんで、君たちの中に女子が独りだけなんだっ! ってね。可愛いお嬢様達が、嫉妬に狂ってるんだ」

 


 え……。じゃあ、私がル・スリーに迷惑をかけてるんですね。

 それなら私は……。



 「こいつは辞めさせねーよ」

 


 桑原さんが無愛想な口調で言った。

 すると、佐藤さんが佐藤兄を少し睨みつけた。



 「兄さん。さすがにそれは不合理かと思いますが……。一応、川野さんも役にはたってますよ」

 「そーだよー。オーナー、おねがい! あーちゃんを辞めさせないでー」



 藤堂さんは少し目を潤ませている。

 皆さん……。ありがとうございます。



 「んーでもなぁ、じゃあ、一回藍にゃんと話させてっ。二人っきりでっ」



 誤解を招くような言い方は辞めてください! オーナー!

 すると、桑原さんは私に視線を移す。



 「お前はどうしたい?」

 「辞めたくないです。けど、皆さんに迷惑をかけるなら……」

 


 そう言いかけた時、桑原さんが私の額を小突いた。



 「馬鹿か。迷惑なんかじゃねーよ」

 「まぁ、少し失敗することもありますが……」 

 「俺は藍に居てほしいけどなー」

 「藍ちゃんの失敗は僕がサポートするからさ!」

 「あーちゃん、辞めないでよー」



 私はこんなに恵まれていたんですね。凄く嬉しいです。

 そんな5人に私の心はほっこりして、微笑みを浮かべた。



 「ふうん。そんなにその子がいいんだっ。じゃあ……」



 不服そうにそう言って、にやりと笑った。

 そんな笑みに私の頭は疑問でいっぱいになる。

 すると、ばっと腕を掴まれ……



 「この子、かりってくねー!」



 佐藤兄は私を引っ張りながら店を出た。

 ままま待って下さいー!! 皆さん、助けてー!!



  

 



 



 

 


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