☆08☆
「あいつの家がわかったぜ…。少し遠いけどな…」
いつもの学校の屋上でけんじが真顔で言って来た。
「ふ〜ん…。お前ホントに調べてるんだ…美代子の事…」
「確か、小学生から同じ学校だったんだろ?
じゃあ、学校での態度は何となくわかるだろ?」
「…いや、あんまり。暗い感じの印象くらいだよ…」
「…実は今は両親とは別居中らしい。
あいつには姉さんがいて二人暮らししてるらしいよ」
「あ、そうなんだ…。何で両親とは別々に住んでんの…?」
「…たぶん、実家は更に学校から遠いからかな?
だから少しでも近くに引越したんだろ…」
「…ふ〜ん。」
美代子から弁当をもらうようになってから一週間が経った。
その間俺はナンダカンダ言いながらも美代子からの弁当を残さず食べている。
…ピピッ…
「お・メールだっ」
“ヤッホー☆今、あたしからの弁当食べてくれてるかな?
今日はハルマキ作ってみたよぉ〜(>_<)”
「ははは…。美代子らしいや。
よおし、返事送ってやるか…」
…そう!俺はあれから美代子とメールもやるようになってしまった…。
特に理由はないが、
美代子に対する気持ちを変えたら別にイヤなものではないように思えて来た。
確かに度を越えた彼女の愛情表現は恐い時もあるが、
それさえなければそんなにイヤな気分ではない…。
“美代子、今日もおいしかった。
ハルマキもかなりうまかったよ”
“ピッ”
送信ボタンを押した。
(俺ってズルイよな〜…
いくら弁当がうまいからって好きでもない美代子から
毎日作ってもらうなんて…)
俺は弁当箱を袋に入れ、そのまま寝転がって空を見上げた。
俺は今、美代子に対して悪いと思った。
最近までの俺ならそうは思わない。
美代子の事なんてどうでも良かったはずだ…。
…なのに、美代子に罪悪感を感じ、美代子の事を考えてばかりいる…。
「よぉ、何考え事してんだ?」
ぼんやりしているに俺に気付いてか、
けんじが質問してきた。
「…うん…」
「愛子っちか…?」
「………。」
「美代子か…?」
「…最近、よくわかんないんだ。自分の気持ちが…」
「それって、美代子を好きって事なのか?」
「それはない。でも、前よりは悪く思ってない…」
けんじは意味がよくわからないのか首をかしげていた。
「…そうそう、美代子の実家は肉屋だったよ。
だから弁当とか肉がよく使われてるだろ?」
「そういや、肉多いな。
でもあのキムチ味の焼肉はうまいよ。
肉屋の娘だから肉料理は詳しいってワケか…。」
「だから、太ってんだよ。
肉の食べ過ぎで!ブクブクさ!
お前の三倍は食べてるぜー」
「……。」
「あいつの姉ちゃんも美代子みたいに太ってんのかな?
…今度写真に撮って来てやろうか?」
俺はけんじの言い方にムカついていた。
気付けば口を開いてる。
「もうやめろよ。そーいうの…。
お前こそ美代子とやってる事一緒じゃねーか。
ストーカーみたいに後尾けたりして…」
「…なに急にかばってんの?美代子はお前の事知りつくしてんだぜ!
こっちもあいつの事知らなきゃ、手が打てないじゃん。」
「だから、もういいよ。前よりは美代子の事警戒してないし…」
「…わからないぜ。それがあいつの作戦かも…」
「…大丈夫だよ…」
「なんだよ。お前は愛子ちゃんが好きなんだろ?」
「……あ、ああ。」
「俺達はまだ美代子の事知らな過ぎる!うかつに近づかない方がいい!」
けんじはムキになって言った…。
だが、それよりも俺が美代子に対しての気持ちの変化の方が俺は気になった。
(…まったくけんじにはマイッタ。
俺が被害者だったのにあいつの方が入り込んでるなんてね…。
まあ、あいつは完璧主義なトコあるし…
たしか、親父さんが亡くなる前探偵やってたとかどーとか言ってたっけな。
だからなのかな?プライドとか関係してんのかなー?)
と、まあ考え事しながら歩いてたら目の前に愛子ちゃんが立っていた。
「ちょっといい…?」
「う・うん…」
「…、久しぶりね?口きくの…」
「あ、そういや、そうだね…」
俺は少し緊張してた。
愛子ちゃんも何だかぎこちなかった…。
「あ・美代子からの弁当残さず食べてるんだってね?えらいねー」
「…ああ。うまいからね。つい…」
「でしょー?
実は私も森下君に作った弁当のあまりモノを美代子からもらってるの。
彼女が食べてってしつこいからさ。
それがかなりおいしくて、今は私からお願いしてるくらいよ!…あははは…」
「あ、そうなんだ!あははは…」
(何だか久しぶりに愛子ちゃんの笑顔を見た気がする…。
その笑顔に俺はホレたんだよな〜)
俺は嬉しかった。
ここ最近は美代子の事で彼女をよく困らせていたから。
そんな彼女と笑顔で話せたから…。
そして忘れかけていたドキドキ感が
また俺を動揺させていた。
この主人公って単純ですよね?
感想お待ちしております。