☆18☆
美代子はそのまま泣きながら眠っていた。
そして、少しの時間が過ぎた頃、
「…森下くん…」
「……ん?」
「お姉さん…あのまま寝たみたいね…」
「ああ、そうだね。彼女も精神的にかなりマイッてるだろうし…」
「このままだとお姉さんおかしくなって私達は殺されてしまうわ…」
愛子ちゃんは身体を動かしながらモゾモゾとしていた。
ロープを解こうとしているのか…?
「…警察が来るんだろ?」
「…そうね。でもその前に…ホラッ」
そういって愛子ちゃんは立ち上がった。
「…あっ!」
「ナイフをスボンのポケットに入れてたの…おかげで切れたわ…」
「…よかった!ほら、早く逃げろよ」
「何言ってるのよ!あなたも逃げるのよ」
愛子ちゃんがそういうと俺は首を横に振る。
「…いや…俺はこのまま残る…」
「…え?ばか言わないで!
このままだと死んじゃうかもしれないのよ!」
「……ああ…」
「あなた正気?そんな事、私が許さない」
「……美代子は…俺のせいで自殺したんだ…俺が彼女を殺したようなもんだ…」
「…でも…それは美代子が選んだ事よ…仕方ないじゃない…」
「けんじだって…関係ないのに巻き込んだ!美佐子だって…彼女だって追い込んだ!」
俺は思わず大声を上げた。
「しっ…!お姉さんが起きちゃう…」
愛子ちゃんは美佐子を見た。
「…とにかく…俺は動かない…」
「だめよ!あなたもここから出るの!」
「俺…この先…どうなるんだ?ここから出て…
あるのはみんなを殺した罪悪感だけ…そんなの耐えられない…」
「森下くん…」
「そうよ!それならここに残るべきよ!」
美佐子が起き上がりながらそう言った。
「…美佐子…」
「愛子…もう、アンタはいいわ。許してあげる…。
でも拓郎君はダメ。あたしと一緒に死ぬの…」
「何言ってるの?死ぬなんて一番卑怯なやり方じゃない!」
「…卑怯か…そうだな…俺は最低だ…だから死んだ方がいいんだ…」
そう言った瞬間、俺の頬に衝撃が走った。
愛子ちゃんが平手打ちをしたのだ。
「森下くんっ!しっかりして!ねえ!お願いだから…」
必死になってる愛子ちゃんを見ても俺は無反応だった。
「あはははは…おかしい!おかしいねー」
美佐子は愛子に指差しながら笑っている。
「何がおかしいのよ!森下くん?ねえ!」
「………。」
俺はただ黙っていた。
「あははは…。どいて、愛子…」
「ねえ!森下くんっ」
「どきなさいって言ってるでしょう!」
バシッ!
愛子ちゃんが倒れこむ。
「くっ…!」
「……くふふ…見苦しいわ愛子…」
美佐子は俺にしがみつくように抱きついた。
「これで拓郎くんはあたしのもの…あなたから初めて奪ったわ…
きっと美代子も満足してるはず…」
愛子ちゃんは身体を起こしながら美佐子を睨んだ。
「…あなた…カン違いしてるわ…そんな事して美代子が喜ぶと思ってるの!?」
「喜んでるわよ!美代子の事いちばん知ってるのはこのあたしなのよ!
美代子はあなたなんか嫌いなんだから…!」
「…あなた…ホントは嫉妬してるんでしょ?」
「…なにが?」
「美代子を私や拓郎くんに取られて…」
「…!」
その言葉に美佐子の顔は歪んだ。
「だってそうじゃない?…美代子はお姉さんを置いて死んじゃったもの!
独りで勝手に死んじゃったから−」
「違うわっ!あたしは美代子の為を思って…」
ドンドン…!
「警察だ!ここのドアを開けなさいっ!」
ドアのむこうで声がした。
「やっと来た…」
「…愛子…アンタが呼んだの?」
「そうよ…森下くん!これで助かるわ!私達助かるのよ…」
「……。」
愛子ちゃんは俺の肩を掴んだ。
でも俺は遠くを見ているだけだ。
「さっさと開けないと、このドアをぶち抜くぞー!」
ドン!ドン!
「はいっ!今開けます……きゃあぁぁ!」
ドサッ!
愛子ちゃんは美佐子のスタンガンによって倒れた…。
「まったく邪魔なオンナだわね…」
美佐子はスタスタと台所へ向かった…。
「…はあ…はあ…シビレて…動けない…」
愛子ちゃんが必死でドアに向かって動いてる姿を俺は見つめていた…。
そして美佐子はビニールを引っ張って来た…。
そう美代子を…
いよいよラストスパート!
あと二回で最終話!
感想くださいな♪